Bentham、両A面シングル「激しい雨 / ファンファーレ」で堂々のメジャーデビュー!
Bentham | 2017.04.11
結成から7年。下北沢の老舗インディーズレーベルKOGA RECORDSに所属しながら、ライブハウスを中心に精力的な活動を続けてきたBenthamが、いよいよ4月12日にリリースする両A面シングル「激しい雨 / ファンファーレ」でメジャーデビューを果たす。ここから何があっても4人で突き進むんだと、昂ぶる感情をエモーショナルに奏でる「激しい雨」と、新たな旅立ちへの想いを瑞々しいコーラスに乗せた祝祭の歌「ファンファーレ」。それぞれ異なる表情を見せるふたつの軸を中心に、多彩なアレンジで聴かせる全4曲は、正直、Benthamにこれほど音楽的な切り札があったのかと驚かされるものだった。ライブで盛り上がるだけがBenthamじゃない。そんな彼らの本領がいよいよ発揮されそうだ。
- EMTG:メジャーデビューを発表してから、かなり反響があったんじゃないですか?
- 須田原生(Gt):予想よりも大きかったですね。正直、Benthamがメジャーにいっても、そんなに「よっしゃー!」みたいなのはないのかなと思ってたんですけど。
- 辻怜次(Ba):一緒に喜んでくれる声が多かったですね。
- 小関竜矢(Vo・Gt):あと……みんなメジャーが嫌いなんだなと思いました(笑)。
- EMTG:ああ(笑)。「Benthamはメジャーに行って変わっちゃうんじゃないか」って?
- 小関:そういうことじゃないと思うんですけどね。それでバンドが変わっちゃうのは、バンドの責任じゃないですか。僕らは何も変わらない。それこそ協力者が増えるっていうメリットしかないのに、「どうなっちゃうんだろう?」とか、そういう声もあるんですよ。
- 須田:「行っちゃうんだね……」ってね。
- 小関:まあ、昔は俺もそうだった。でも、10年前といまのメジャーは違うじゃないですか。ぶっちゃけ、どこからがメジャーかもよくわからないし。いまはバンドがちゃんと主張できるようにもなってる。これからはバンドがメジャーシーンを作っていくと思うんですよね。
- EMTG:そのとおりだと思います。
- 小関:僕らって、自分たちの音楽を詰めていくスタンスではないと思ってるんです。だから恩返しをする人にはして、ちゃんと仕事としてバンドをやっていきたいっていうのもあるから。それに向けて曲も作ってきたし、ライブでは苦手なこともやってきたので。
- 辻:なんか赤裸々だ……。
- EMTG:その小関くんの言い方だと、いろいろ誤解を与えそうだなあ(苦笑)。
- 全員:あはははは!
- EMTG:つまり、Benthamは自分たちがやる音楽を、ただ理解してくれっていうんじゃなくて、ちゃんとお客さんと一緒に分かち合えるかたちでやってきたってことだと思うんです。それを、ちゃんと商業ベースでもやっていきたいってことですよね。
- 小関:うん。俺らが“バンドよがり”にならないっていうことですよね。もちろん自分たちのやりたいことも、その時々で消化しながらなんですけど。ファンの人だったりとか、ちゃんと自分たちを必要としてる人たちが、必要になれるような楽曲を作っていくっていうのを意識してるんです。だから、ライブでは……実は、最初は、「のってるか?」とか「楽しんでるか?」ってやったりするのも、苦手だったりしてて……。
- EMTG:わかります。一見、Benthamはライブで盛り上げてなんぼみたいなバンドに見られるけど、本当はそれだけじゃないし。そういう見られ方をするのも覚悟のうえで、いまのライブシーンが求めるものは何かを考えながら、活動してきた。
- 辻:そうですね、それがこれまでだと思います。ライブを作るっていうのは、どういうことなのか?っていうのを、すごく自分たちでも学んできたんです。
- 須田:だから、振り返ってみたときに、最初は苦手だったことが、いまも苦手なのかって言うと、そうじゃなくて。自分たちの解釈も変わってきてるんですよ。苦手だけど、やって良かったなって思うところも多かったなと思いますね。
- 鈴木敬(Dr):本当にいろんなことを試しながらやってきたんです。
- EMTG:結成からここまでは7年が経ちましたけど、長かったですか?
- 須田:長くなかったです。お客さんでも「もうメジャーなんだ?」っていう反応と、「まだメジャーじゃなかったんだ?」っていう反応があるんですけど。僕ら的には一瞬でしたね。
- EMTG:そんなインディーズ時代を経ての今作です。メジャーデビュー作であるということは、意識しながら作ったんですか?
- 小関:「激しい雨」に関しては、最初はデビューシングルの表題曲になるっていうことは考えてなかったですね。ただ、「パブリック」(インディーズデビューシングル『Public EP』 リード曲)のときと同じ感じだったんですよ。僕はあんまりピンときてないけど、メンバーが「良いサビじゃない?」みたいに言ってくれて。
- 須田:そうだったね。
- 小関:その前例もあるので、「じゃあ、大丈夫かな」と思って。レコーディングをやっていく段階で、これは僕らにとっての決意表明の曲になるんじゃないかって、変化してきた曲なんです。メジャーを意識したのは、2曲目の「ファンファーレ」のほうですね。むしろ「激しい雨」は、僕らしく書こうと思ってました。
- EMTG:じゃあ、意外とデビューだからって気負わずに書けたんですか?
- 小関:いや、最初、シングル曲のデモ出しでは、僕はいつもより数を出せなかったんですよ。やっぱりメジャーデビューであったり、メジャーシングルに対して考えるわけで。どうやったら、ふだん音楽を聴かない人が、たまたま聴いたときに「あれ?」って思ってくれるか、とか。そしたら、全然書けなくて。スタッフの人に相談したら、「そんなに心配しないで、いつも通りでいいから」みたいに言われたんです。それがデカかったですね。
- 辻:気負うんじゃなくて、いままで僕らがやってきたことの集約というかね。
- 小関:それを浸透させるためのデビューだから。それで、僕ららしくない歌を出しても意味がないじゃないですか。そこで踏ん切りがついて。いま、ミュージックビデオのリアクションもすごく良いので、インディーズの僕らは間違ってなかったんだなって思ってます。
- EMTG:エモーショナルな歌詞の勢いに寄り添うような、すごく堂々としたアレンジがいいなと思いましたが、楽器隊はどういうふうに楽曲に向き合いましたか?
- 須田:最初に「激しい雨」っていうタイトルが決まってたのと、サビのバーンとしたイメージが強かったので、僕の場合は、緻密にギターのフレーズをやったというより、勢いのまま動いてたところがありますね。すごく気持ちが前に出たっていうのはあると思います。
- 辻:ベースのフレーズは悩んだんですけど、オゼに相談したら、「辻くんらしいベースにすれば?」みたいなことを言ってくれたので。結局、これまで通り自由にやったんです。たぶんメンバーもいままでのBenhamを突き詰めた曲になったんじゃないかな。 鈴木:激しい中にも哀愁があるし、途中で“HEY!! HEY!!”ってライブの絵も見えるから、これまでにやってきたことがキュッと入ったような曲になったと思います。
- EMTG:そうやって「激しい雨」はこれまでのBenthamらしさを大切に作ったとしたら、両A面の2曲目にある「ファンファーレ」は、メジャーデビューを意識して書いたと。
- 小関:そうですね。いろいろなところで流れてほしいなと思ったんです。それはメディアとかではなくて、いろんな場面で。結婚式でも卒業式でも、何かお祝いの集まりでもいいし。そのときのBGMで使ってくれるような曲にしたいと思って書きました。自分たちのメジャーデビューっていう門出を祝うこと、プラス、いままで応援してくれた人に「行ってきます」っていう宣言と、「みんなも頑張ってね」っていうメッセージですね。
- EMTG:アレンジ的にも、そのメッセージが真っ直ぐに伝わるものになってますよね。
- 須田:全体を通して歌が入りやすいオゼらしい曲だったので、そこをいちばん立つように構築していったんです。コーラスもたくさん入ってるし、お客さんと一緒にシンガロングするっていうイメージがレコーディングのときにはありましたね。
- 辻:この曲はオケがすごくストレートなんですよ。シンプル・イズ・ベストな曲だなっていうのは念頭にあって。ふだんはない青っぽさも出てると思います。
- 小関:…で、そうだ!思い出した。アレンジができたんだけど、歌詞がなかなかできなかったときに、みんなのコーラスがファンファン言ってるのを聴いてたんですよ。それが、ファンファーレっぽくて。そこから、Dメロがバチバチッて出てきたんです。そういうふうに、「降りてきた!」みたいな曲のでき方は初めてだったかもしれないですね。
- EMTG:カップリングの「NEW WORLD」は、須田くんの作曲で、3拍子で刻むミディアムテンポっていう、いままでにはないタイプの曲です。
- 須田:これはドラムのリズムが先にあったので、そこから作っていったんです。さっきオゼが言ってたように、僕もメジャーっていう意識があったから、最初はメジャーっぽい曲を書いてみたりしたんですけど。これは、そうじゃなくて。ずっと、自分の中でやりたいなと思っていたこをやってみたっていう曲ですね。
- EMTG:作詞は小関くんですけど、どういうふうに膨らませたんですか?
- 小関:これは最初なかなか歌詞が書けなかったんですけど……。メジャーに行くまでの苦労を歌ってる歌です。“止まる事のない溜息”とか“期待ハズレじゃないよ”とか。世界観的にはアニメのようなイメージで、4人が主人公で「冒険にいくぞ!」みたいな気持ちにもなってるんですけど、それだけじゃない葛藤も出てますね。
- 須田:僕が曲を作ったときも、そんなに明るいイメージじゃなかったんですよ。そういうところもうまく汲み取ってくれたなと思ってます。
- EMTG:この曲は辻くんのベースの歪みにインパクトがありますけど。
- 辻:これは、そんなに歪ませてないんですよ。お借りしたベースを使って、レコーディングしたんですけど。そのベースが想像以上にパワフルな音を持ってて、倍音成分って言うんですかね、それですごく歪んで聴こえるというか。不思議なベースだったんです。
- 須田:どっちかって言うと、この曲はギターがクリアなんですよ。だから、余計にベースのラインが前に出てきてるのはあると思いますね。
- 鈴木:この曲は難しいよね。いままでは、「うわーっ!」って、勢いでやってるだけだった僕らとしては、かなり難易度は高い。
- 須田:繊細だもんね。
- 鈴木:こういう曲をペロッとやれるようになりたいな。
- 須田:そこも、これからですね。
- EMTG:4曲目には、遂に「夜明けの歌」がCDに収録されましたね。ずーっとワンマンでは大切な場所で歌い続けてきた曲ですけど。
- 辻:ここぞというときにやってきた曲ですからね。
- 小関:もともとは「鍵盤を入れたいね」っていうところからなんです。でも、このストーリー性というか。1曲目から聴いていったときに、全部が4曲目に集約される感じがいいですよね。歌詞はインディーズ時代から歌ってたままほとんど変えてないんです。
- EMTG:これ、ずっと訊きたかったんだけど、サビで何回も出てくる“僕のせいにしてくれよ”って、どういう意味で歌ってるんですか?
- 小関:働いてたりすると、どうにもならないことがあるじゃないですか。それを、やっぱりみんな自分のせいにしてると思うんですよ。何かのせいにはできないから。それを、僕、小関竜矢のせいにするんじゃなくて、僕がBenthamの曲として歌うから、それで、ちょっとでも発散させてくれっていう、そういう曲ですね。泣いてもいいし、叫んでもいい。溜め込まないで、全部を背負うよっていうような意味ですかね。
- EMTG:それを大切に歌い続けてきたということは、Benthamっていうバンドは、そういうスタンスで音楽をやるんだ、ライブをやるんだって、ずっと思ってるってことですよね。
- 小関:うん……そうだと思います。僕、自己犠牲系なんで(笑)。とにかく人を楽しませたいんですよ。全部、Benthamのせいにしていいから。そうやって、全部忘れて楽しめっていう想いもあるんですけど。プラス、自分自身も、Benthamをやる前のオゼと、やってからのオゼがいるわけじゃないですか。それで自分が何か押しつぶされそうになったときに、全部Benthamのオゼのせいにするんです。この曲ができたぐらいから、そういうのは任せてますね、この歌に。そうやって、いままで進んできたんです。
- EMTG:自分自身も、この曲に救われてきたんですね。
- 小関:そうですね。
- EMTG:で、この曲のピアノを弾いてるのは須田くんですね。最初にインタビューしたときに、影響を受けた音楽はクラシックって言ってたのを思い出しました。
- 須田:そうなんですよ。小っちゃいときからクラシックピアノをやってて。中3ぐらいまでやってたのかな。個人的には、たまにピアノを弾く動画をアップしたりしてたんですけど。やっぱりBenthamはギター、ベース、ドラムのバンドだから、いつ鍵盤を入れるかは考えてたんです。今回やってみて思ったんですけど、Benthamには、けっこうピアノがハマるんですよ。だから、これを機にちょっとずつやっていけたらいいなと思ってます。
- EMTG:今後もピアノの曲ができそう?
- 辻:もうできてます!
- EMTG:ライブだと、須田くんがピアノを弾くとき、ギターがお休みになっちゃいますよね。
- 小関:なので、僕のギターがスキルアップするんです。必然的に。
- 全員:あはははは!
- 小関:でも、それも楽しいんですよ。どんどんサウンド面でやれることを増やしていったら、ライブでのバリエーションも出せるじゃないですか。いま僕らは、基本的には同期を使わないスタンスなんですね。そのときの感情で、その人が鳴らしてる音を届けたいから。でも、同期には同期の良さがあるので、今後は導入するかもしれないですしね。
- EMTG:なるほど。今回のシングルでは、Benthamってこんなにバリエーションが出せるバンドなんだって発見があったんだけど、今後ますますそういう傾向になりそうですね。
- 小関:うん、音楽的な可能性はすごく見えてますね。いまはメジャーデビューっていうので、やることも多くて、若干アップアップはしてますけど(笑)。
- 須田:これが限界っていうのはないよね。
【取材・文:秦 理絵】
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リリース情報
激しい雨/ファンファーレ
2017年04月12日
KOGA RECORDS
1.激しい雨
2.ファンファーレ
3.NEW WORLD
4.夜明けの歌
2.ファンファーレ
3.NEW WORLD
4.夜明けの歌
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