地元・名古屋を拠点に活動する５人組、ヒステリックパニックのメジャー1stミニ・アルバム『LIVE A LIVE』が凄い！ ラウドからJポップまでジャンル横断の独自のミクスチャー・センスを持ち、エクストリームな音像を鼓膜に叩き付けてきた彼ら。今作は「ライヴ」、「生と死」をテーマに掲げ、聴き手と同じ目線に立った上で、現場（＝ライヴ）にこだわったストレートなアプローチが冴え渡っている。フロアを巻き込み、リスナーとの一体感を心がけた最狂のサウンドについて、メンバー５人に直撃した。

EMTG：今作は全編通して、曲調も歌詞も振り切ったフルスイング作ですね！

Tack朗（Gt・Vo）：制作前にどんな作品にするかを話し合ったときに、全曲ライヴで盛り上がれる曲にしようと。だから、ライヴ映えする楽曲や歌詞を作ったら、結果フルスイングというか、ど真ん中に150キロで投げたみたいな作品になりました。

とも（Vo）：フルスイングなのに、ピッチングの話になってるけど？

Tack朗：なぜ投げてたんだろう（笑）。

EMTG：表題でも謳っていますけど、“ライヴ”を作品テーマに据えようと思った理由は？

とも：去年の秋ぐらいですかね。

おかっち（Ba）：前作はライヴ向けというより、（楽曲を）幅広くというか。

とも：CDで聴く方に気持ちを置いていたので、次はもっと攻めたくて。ちょうどギター陣が７弦を導入しようかというタイミングも重なったから。

EMTG：7弦ギターを導入しようと思ったのは？

$EIGO（Gt・Cho）：今回３曲で７弦を使ったんですけど、初期の感じに戻ろうというテーマもあって。ドロップAというキーなんですけど、よりヘヴィなところにトライしようと。

EMTG：原点回帰みたいなニュアンスもありました？

とも：一周回って、戻って来たような感覚はありますね。

Tack朗：メジャーで３年目になるんですけど、１、２年目でポップに広げたり、お客さんを楽しませることも考えたけど、作品を出す中でマンネリしてきた部分もあって。今回は昔の楽曲に近づけつつ、加えて、メジャーで幅広い楽曲を制作してきたニュアンスも取り入れて、新しいものを作ろうと。なので、チューニングも大幅に下げました。

おかっち：ただ原点に戻るんじゃなく、武器をもう一つ増やした感覚ですね。

EMTG：なるほど。

Tack朗：ライヴを意識したので、お客さんの目線に合わせて、シンプルでわかりやすい曲を作りたくて。

おかっち：前作の曲もライヴで盛り上がるけど、テクニカルなことをやっているから、手元を見ちゃうんですよ。今回はシンプルなフレーズが多いので、フロアにも目が行き届くし、さらに煽れますからね。

$EIGO：それでもテンポは速いけどね。フルスイング感はある（笑）。ヒスパニに求めているのはこれでしょ？って。

EMTG：聴き手のツボがわかるようになってきたんですかね？

とも：今までかっこつけすぎていたのかなと。ヒスパニがかっこつけても、あんまりかっこ良くないことに気付いて。ダサい方がかっこいいんだって、それは共通認識としてありました。

おかっち：ダサくて泥臭い方が似合っているかなと（笑）。

$EIGO：弦楽器に関しては音選びも楽でした。まっすぐ！　男！　みたいな音色で行こうと。

EMTG：曲作りはスムーズに？

Tack朗：わりとスムーズじゃないかな。

$EIGO：各楽曲の大筋はシンプルにバババッと決まりましたね。

Tack朗：「A:LIVE」だけは納得がいかなくて作り直したけど、それ以外は順調に進みました。

やっち（Dr）：「A:LIVE」は一から作り直したから。各々のフレーズも結構変わったので、今作の中では一番大変でした。今回はシンプルと言ってるけど、ドラムだけは難しくなってるんですよ（笑）。それはこの場で言いたいです。

EMTG：わかりました。今作は“ライヴ”に加え、“生と死”がテーマになっているんですよね？

とも：ライヴのMCとかでよく言っていたことが元ネタなんですけど、自分を含めて、若い人たちも生きるのがしんどい場面もあるだろうし。でもライヴの瞬間って、死にたいと考える暇もないくらい、みんな必死なんですよ。生きてる実感を感じられるのが、ライヴハウスという場所だなと。だから、コンサート的な意味のライヴと、生きるという意味でのライヴを掛けようと。そういう曲をもともと書こうと思っていたら、今回“ライヴ”というテーマが上がってきたので、じゃあ、アルバムごとそういう内容で行こうと。

EMTG：「全日本ぬるぬる音頭」とか、聴き手によって好き嫌いが分かれそうなキワドイ歌詞もありますね。

とも：最低ですよね（笑）。作詞もヒスパニ節全開だから、普通の歌詞を書くのはやめました。

$EIGO：今、ライヴでこの曲だけやってるんですよ。おかっちがマイクで叫ぶんですけど、めちゃくちゃ盛り上がるんですよ。

Tack朗：ただ、歌詞を読んだときは、これ大丈夫？　と思いました。で、ともに聞いたら、「これはTシャツが濡れちゃう歌だから」って。

やっち：レコーディングは全裸で録りましたからね。

$EIGO：意気込みだよね（笑）。

とも：ライヴでみんなTシャツがぬるぬるになるだろうから、物販で新しいTシャツを買ってほしい！　という強い気持ちが込められてます（笑）。

EMTG：でもこの曲は“生と死”というテーマともリンクしてますよね。

とも：エロさの性も多少かかってますからね。生きるためにエロいことは不可避だなと。

EMTG：ええ。あと、今作は口ずさみたくなったり、コール＆レスポンスできるフレーズもてんこ盛りですね。

おかっち：みんなに声を出して、楽しんでもらいたかったから。

Tack朗：サビの中に合いの手を入れてみたり、お客さんも主導で参加できる余地も入れたくて。

EMTG：「月曜日が始まんで～」の「あばばばばば」のフレーズも面白かったです。

Tack朗：最初見たときは、「あばばばばば」って何？　と思いましたけどね（笑）。普通の生活では使わないよね。

やっち：ネット・スラングですからね。よく２ちゃんとかでビックリしたり、困惑した出来事があったときに使うんですよ。そういう言葉を使うのも、ともさんの良さかなと。

とも：その時に流行ってる言葉を使うのが好きで。10年前だったら、ない響きだと思うから。それは積極的に使ったら面白くなるかなと。

EMTG：それと今作はラップ的なアプローチも増えてませんか？

とも：そうですね。俺のパートが増えたので、役割分担がはっきりしたんですよ。前作はトリプル・ヴォーカルの面白さがあったけど、今回は自分のパートを全うする感じになりましたからね。

EMTG：メンバー一人ひとりの色合いも楽曲に明確に出てきましたね。で、今回のイラストを使用したアーティスト写真もインパクトがありました。これは？

とも：そろそろ本人じゃなくてもいいんじゃないかと。今回のリード曲が「ガチ恋ダークネス」で、恋愛ソングのつもりで書いたんですけど。自分たちを美化して描いたら、誰か間違えてライヴに来てくれないかなって。

Tack朗：詐欺じゃん！

全員：はははははは。

とも：やっちは骨格が違うからね。

$EIGO：やばいよねえ、やっちは。

やっち：再現度が高いのはTシャツだけじゃん！（笑）。

とも：しばらくはこのアーティスト写真で行きます。常にヘンなフックは付けたいですからね。

EMTG：わかりました。今作のレコ発ツアーも楽しみにしてます。

おかっち：30本ぐらいですかね。全公演でぬるぬるになりたいですね。

【取材・文：荒金良介】