“かわいいい”と“女子”に振り切ることで見せた、the peggiesの男気と潔さ

the peggies | 2017.09.06

 今年の5月にメジャーデビューしたthe peggiesが、早くも届けてくれた2ndシングル「BABY!」。キャッチーなメロディと豊かな物語性を絶妙に融合させたタイトル曲「BABY!」、切ない心情をじっくりと描き上げる「ずっと」――ライブ活動を精力的に積み重ねながら手にしたエネルギッシュなサウンドを土台としつつ、魅力的な世界を開花させている1枚だ。バンドにとって勇気の要る一歩でもあったのだという今作。自分たちだからこそ形にできる表現を模索した末に、彼女たちが辿り着いた境地とは何だったのだろうか? メンバーを代表して北澤ゆうほ(Vo・Gt)に語ってもらった。

EMTG:今回のシングルの2曲はどちらもラブソングですけど、1枚としてのコンセプトは明確に決めていたんですか?
北澤:ゴールは決めていなかったです。いろいろ曲がある中で選んで、こういう形のシングルになりました。今までもラブソングを作ったことはあったんですけど、リアルなものは意外となかったんです。ファンタジー的な“楽しく歌詞をつけました”という感覚だったので、“伝える”というようなものではなかったんですよね。なぜなら、女の子女の子してしまうことへの抵抗があったからなんですけど。だから今回の「BABY!」は、久しぶりの“書こう”と思って作ったラブソングです。
EMTG:女の子女の子してしまうことへの抵抗があった理由は、何だったんでしょう?
北澤:中高生の頃からライブハウスに通って、かっこいいからバンドを好きになったので、“バンドはかっこいいもの”という自分なりの美学に縛られ過ぎていたところがあったんだと思います。それに、ライブハウスで活動しているガールズバンドには、なかなか女の子のファンが付かないんですよ。女の子に支持してもらうためには、女子らしさを消して、男っぽさを出すことが必要なんだと考えていたところもありました。でも、私たちは女の子の味方ですし、そうあるためには女子として堂々とするべきだと思うようになりました。
EMTG:大きな変化ですね。
北澤:はい。勇気の要る一歩でもありました。実はライブの感想とかで“かわいかったです”とか言って頂くことに、前までは少し抵抗があったんです(笑)。でも、“当時からかっこいいと言われるためだけにやってたか?”と振り返ってみると、そうでもなかったなと感じるんですよね。そもそも私の歌声も完全に女の子ですし、せっかく持っている武器を使わないのも不自然だよなと思うようになりました。だから、これからは“かわいい”と、どんどん言ってください(笑)。
EMTG:(笑)女子が女子であることに真正面から向き合っている姿って凛々しいですし、男性とはまた別のかっこよさの形があると思います。
北澤:私もそう思います。だから今回のMVも完全に“かわいい”に振り切った世界観で作りました。歌詞や曲もキュンとするものをベースにしています。“かわいいい”と“女子”に振り切っているthe peggiesの男気、潔さみたいな部分が伝わるといいなと思っています。女の子のかっこよさって“かわいい”の積み重ねなんですよ。
EMTG:「女の子のかっこよさとは“かわいい”の積み重ねである」って、名言ですね。
北澤:ありがとうございます(笑)。今回、「BABY!」を作ったことで、むしろ媚びていないものが表現できましたし、女の子がバンドと音楽を楽しんでいるというありのままの姿が、鮮明に伝わると思います。私たちの出す音は太いので、世界観が“かわいい”でも、ちゃんとロックバンドとしてのかっこよさを出せるという自信もつけることができました。今のthe peggiesは“こうあるべき”っていうものになろうとするのではなくて、“自分たち自身がなれるものになれるものになろう”という考えになっています。
EMTG:メジャーデビューしたことによるバンドとしての変化は、何か感じます?
北澤:良い変化がたくさんあります。一番大きいのは、私たちが自分たちなりに成長できるように助言してくださる方々が増えたということですね。今までは感覚的に曲を作っていたんですけど、伝わりやすいものにするためのヒントを頂けるようになったのが嬉しいです。いろんなものを引き出して頂いているので、成長できていますし、できなかったことができるようになっているんです。“音楽やってるな”っていう意識が高まっていて、とても楽しいです。
EMTG:「BABY!」も、そういう環境から生まれたわけですね。
北澤:はい。王道でシンプルな曲を作りたかったんですけど、まさにそういうものになりました。難しいことはしていないんです。歌がポップな分、the peggiesらしいパワー系のサウンドになっていますし、バンドとしての存在感を出せたと思います。“シンプルである”と“単純である”は全然違うというのを、作りながら感じました。
EMTG:シンプルと単純は、たしかに違いますよね。ゆうほさんがお好きなお寿司も、そうじゃないですか。
北澤:ほんと、そうです(笑)。シンプルだからこそ技を見せられるのがお寿司ですから。音楽と同じところがあるのかもしれないですね。
EMTG:「BABY!」は、手拍子をして歌える部分もありますし、ライブチューンとしても強力ですね。
北澤:はい。もうライブでもやっているんですけど、お客さんと一緒に楽しく盛り上がれています。ライブ映えしますし、ポップであって、バンドであって、ロックであるという、the peggiesの要素がすごく入った曲になりました。“自分たちはロックバンドなんだ”っていう意識が大きいですし、ロックバンドが好きだからこそ、好きなものでいたいんですよね。
EMTG:展開するにしたがって、主人公の恋する気持ちがどんどん高まっている雰囲気が伝わってくるのも、この曲の楽しさです。
北澤:アレンジは1番と2番では変化させていますし、歌詞もいろいろ展開するので、ストーリーを楽しんで頂けると思います。
EMTG:この歌詞の主人公の女の子、恋心がエスカレートして、どんどん妄想がふくらんでいるようですね。
北澤:私たちは女子校だったので、少女漫画で描かれている恋愛を見て、友だちと“待って! ヤバいんだけど……”って盛り上がったのも青春なんです(笑)。経験したことがない内容でもキュンとして、リアルに感じられる少女漫画のような佇まいの曲を作りたいと思っていました。女の子だからこそ分かるキュンとするポイントってありますし、せっかく女子として生まれたんですから、そういうものを描きたかったんです。「BABY!」の歌詞を書くために、少女漫画をたくさん読み直したんですよ。付箋を付けながら(笑)。自分がどういうところにキュンとするのか、改めて知りたかったんです。
EMTG:女の子同士で少女漫画の話で盛り上がっていて楽しそうだった様子は、僕も学生時代に何度も目撃しました。
北澤:みんなで回し読みをするんです。“あの漫画の5巻、今、誰のとこなの? 早く続きが読みたいんだけど”というような感じなんですよ(笑)。
EMTG:(笑)“どの人がかっこいいと思う?”とかでも、盛り上がるんですよね。
北澤:はい(笑)。誰をかっこいいと思うかどうかで、性格が見える感じもあったりして。そういうのも楽しいんです。
EMTG:読者にオススメしたい少女漫画はあります?
北澤:私はものすごく詳しい方ではないんですけど、『ストロボ・エッジ』と『アオハライド』はオススメです。高校生の頃は、周りの友だちも一生懸命読んでいましたね。そういう経験も活かせたと思っています。
EMTG:《偶然を装うための計算をして 君にかける言葉 必死に探してる》は、少女漫画的なものをすごく感じるフレーズですけど、MVでの表現の仕方も良いですね。メンバーの3人が、絶妙なタイミングでスカーフを落とすじゃないですか。
北澤:撮影の時にカウントに合わせて落としたんです(笑)。MVの中には紙吹雪が舞うシーンもあるんですけど、あれも“せーの”のタイミングでやっているんですよ。MVもぜひ観て頂きたいです。男性とか女性とか関係なく、“これはかわいいじゃん”って思える絶対的な謎のかわいさを表現できました。シュールでゆるいところがあって、3人で楽しくやっている雰囲気が出ているのも、the peggiesらしいと思っています。
EMTG:普段の3人は、あのような感じなんですか?
北澤:はい。DVDに収録している完全版のMVは、紙吹雪を掃除している時の3人の会話が最後の部分に入っているんです。客観的に自分で観て、“こんなに楽しそうなんだ”と思って安心しました(笑)。
EMTG:(笑)では、カップリングのお話もしましょう。「ずっと」はタイトル曲とは対照的に、切ない想いが描かれていますね。
北澤:「BABY!」で元気いっぱいの少女のみずみずしさを表現できた分、それとはまた別の面を表現したかったんです。楽器の演奏に関しては、歌と歌詞をしっかり伝えることを意識しました。余白とか余裕とか、バンドとしての器の大きさを大事にしています。シンプルにするからこそ見えてくるものがいっぱいあるんだなと、作ってみて改めて思いました。
EMTG:《ずっと忘れないよ》《ずっと隣にいた》《ずっと側にいたかった》とか、主人公が恋愛の始まりから終わりまでの中で噛み締めた様々な形の《ずっと》を盛り込んでいるのが、とても印象的です。
北澤:おっしゃる通り、恋愛にはいろんな《ずっと》が含まれているんですよね。技と自分で言うとおこがましいですけど、そういう部分もこの歌詞で出せたのかなと思っています。日記みたいに描くのではなくて、ちゃんと詩として昇華できるようになったのが、最近の自分の成長なので、そういうところを感じて頂けたら嬉しいです。
EMTG:内容の濃いシングルになりましたね。今のthe peggiesだからこそできる表現を、すごく示せたのではないでしょうか。
北澤:はい。今までにあったようでなかったthe peggiesを表現できた2曲かなと感じています。みなさんに“こういう一面もあったじゃん”って感じて頂けるシングルかもしれません。新しいんですけど“新しく作った”ではなくて、“今まで秘めていたものを出した”というような、新しい扉を開いた感覚です。
EMTG:今後のみなさんも、さらに新しい扉を開くんでしょうね。
北澤:そうなるはずです。最近もいろいろ新しい曲のレコーディングをしているんですけど、“みんなびっくりするだろうな”というのもあるんです。the peggiesはいろいろなタイプの曲を作れますし、作りたいとも思っているので、これからも常に新しいものにチャレンジしたいです。私たち自身が自分たちの今後にワクワクしています。

【取材・文:田中 大】

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リリース情報

BABY!

BABY!

2017年09月06日

Epic Records Japan

1.BABY!
2.ずっと

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■ライブ情報

引っ提げないワンマン 名古屋・大阪編
11/22(水) 名古屋CLUB UPSET
11/23(木) 大阪Shangri-La

ダブダブdeベビベビ
09/15(金) 渋谷 WWW

イナズマロック フェス 2017
09/17(日) 滋賀県草津市 烏丸半島芝生広場

Jumpin’jack 2017
09/29(金) 大阪 BIGCAT

DECEMBER’S CHILDREN
12/02(土) 赤坂BLITZ

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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