DADARAY 2017年の集大成とも言える初のフルアルバム『DADASTATION』

DADARAY | 2017.12.05

 休日課長(Ba / ゲスの極み乙女。)、REIS(Vo・Key)、えつこ(Key・Vo)からなるバンド、DADARAYが1stフルアルバム『DADASTATION』を発表した。今年始動して以降、4、5、6月にミニアルバムを出し、6月に企画ライブ、7月から9月にかけてツーマン&ワンマンツアー、そして12月にフルアルバム発売と、怒涛のハイペースで活動しているDADARAY。彼女たち自身はどのような意識でこのバンドの活動に向き合っているのか? また、全曲の作詞作曲の手がけている川谷絵音(ゲスの極み乙女。、indigo la End)の思惑とは? REISとえつこの女性メンバー2人が胸中を明かしてくれた。

EMTG:今年春から、ミニアルバム3枚に、企画ライブ、ツーマン&ワンマンツアー、フルアルバムと、すごいペースで動いていますね。ご本人たちはどんな感覚なんでしょうか?
REIS:すごい強風の中を走ってるみたいな感じです(笑)。今言っていただいて思い出せるぐらい、目の前のことを達成していくのに精一杯で。バンドが始まってまだ1年も経ってないから、自分の立ち位置も見えるようで見えなかったりして、でも楽曲は生まれてきて色付けされていって。手探りのまま走ってますね。
えつこ:作る側ありきのペースなんですね、これは。だから川谷くんの作曲ペースが早いんじゃ……(笑)。
EMTG:それは川谷さんの方針なのか、単純に曲ができてしまうからなのか。なぜこんな怒涛のように活動してるんでしょう?
えつこ:どっちもあるのかな。自分の作った曲を自分が歌ってると、それを客観的に見ることはできないじゃないですか。だけどDADARAYなら、ライブの演奏に関わらないから自分の作った曲を外から見ることができる。自分の信頼できるプレイヤーと、好きな歌声のボーカルがいて、実演されて……そういうのが楽しいんだろうなって見ていて思いますね。
EMTG:川谷さんはこのバンドのプロデューサーと言っていいんでしょうか。
えつこ:完全にプロデューサーですね。何をするにも川谷チェックが入ります(笑)。本人もともとプロデューサー気質というか、ゲスの極み乙女。とindigo la Endもセルフプロデュースでやってるし。
REIS:ライブのとき、川谷くんがアドバイスくれることもあって。盛り上げ方とか、MCでえつこちゃんがもっとしゃべったほうがいいとか。
EMTG:1stフルアルバムのタイミングですので、改めてDADARAYの成り立ちについて聞かせてください。そもそも発起人というと?
REIS:人選は川谷くんですね。私はボイトレの先生が川谷くんと同じ方で、入れ替わりのときに挨拶するくらいだったんですけど、突然「こういうプロジェクトをやりたくて歌ってほしい」って連絡が来て。テストで歌ってみるだけかと思ったらそれが本チャンになってビックリしました。
えつこ:私は川谷くんと数年音楽を一緒にやってるんでわかるんですけど、REISは絶対的に川谷くんの好きな声なんですね。嫌なクセがないというか、丸みを帯びてる声質なんだけど抜けがよくて耳なじみがいい。
REIS:私としては、自分の声は抜けるし軽いから、ハイトーンで歌いたくないんですよ。自分ではミドルのキーが合うかなと思ってるんですけど、川谷くんの曲は真逆のめちゃくちゃ高いキーで。
えつこ:REISも私も、ソロでは自分が歌いやすいように自分で曲作ってるけど、DADARAYではそういう曲がないじゃない。川谷くんのクセをふんだんに取り入れた曲ばかりだから、メインボーカルはホントに大変だと思う。私は“絵音節”って呼んでる、川谷くん独特の歌い方があって。それを体に入れる作業は……。
REIS:すごい大変でした。デモを聴いてすぐ歌ってみる、スピード重視な現場なので。
EMTG:DADARAYを始めてから自分の歌の変化についてどう感じてますか?
REIS:「こういう自分を見られたら恥ずかしい」って思うポイントが減った気がします。家でダラダラしてる髪ボサボサの自分もそうだし、めちゃめちゃ怒ってるときの自分、泣いてるときの自分、気が抜けてるときの自分……そういうのもひっくるめてライブで生かせるようになってきたというか。自作の曲だと、そういう自分を見せるのがどこか恥ずかしくてキレイに取り繕ったりしてたんですけど、川谷くんに「楽曲によって演じ分けたらいいんじゃない?」って言われて。やってみたら、新しい表現の幅が広がって、それを恥ずかしいとも思わなくなったんですね。ショーをやってる感覚に近いのかな。
えつこ:うん、初ライブの頃と今では、ちょっとREISの目の色が変わってるなって思う。DADARAYという荒波に揉まれてたREISが、波の中でも1人で立てるようになってきた。凛としてる感じだね。
EMTG:えつこさんは、DADARAYを始めてからの変化はありますか?
REIS:私は純粋にえつこちゃんの歌声のファンだから、始動した当初から「えつこちゃんももっと歌ったらいいのに」って思ってたんですね。それが徐々に実現されて、ツインで歌うようになったり、キーボードの印象的なフレーズが増えたりして。えつこちゃんに変化があったというよりは、もともとあった能力が発揮されるようになった感じがします。
えつこ:キーボードのフレーズは、自分で考えるときもあるし、川谷くんが鼻歌でイメージを伝えてきたものをコードに合わせて起こす場合もあって。例えば「WOMAN WOMAN」のイントロは自分で考えました。「美しい仕打ち」のイントロは川谷くんの「トゥールル、トゥールルみたいな感じでやって」っていう鼻歌をメロディに起こして、シンセで弾きましたね。「僕らのマイノリティ」も鼻歌。川谷くんの現場は、与えられたことだけをやるんじゃなくて、センスを問われるっていう場面は多い気がします。
EMTG:一方、休日課長のプレイヤーとしての資質はどう見ています?
えつこ:プレイに絶対的な安心感がありますね。もしかしたら体型もあるかもしれないけど(笑)。何も言わなくても絶対にカッコいいことをやってくれるっていう信頼を私は置いてて。だから、縁の下の力持ち、大黒柱っていう存在ですね。
REIS:課長がどういうプレイヤーか……考えたことなかったくらい、絶対的な存在感があったんだなって。ピアノや歌は上モノなので、自分がリズムを見失いそうになったときに課長の音を聴いてそこに戻すと、「あっここだ」って落ち着くんです。課長のベースはすごい重量感があるけど、ギターみたいに歌ってるなって思うことがあって。
えつこ:自由だよね。曲をぶち壊さないギリギリのラインで遊んでる感じ。
REIS:遊んでても絶対歌に当ててこない。歌がつられるようなラインを入れてこないっていうのかな。歌を聴くのが好きなんだと思うんですよね。
えつこ:そこはやっぱ、プロとして考えて作り込んでるなと思います。
EMTG:『DADASTATION』を通して聴いてみて、お2人は川谷さんの作る詞、曲にどんな印象を抱いてますか?
REIS:Aメロ、Bメロはその場で衝動的に生まれたままの原石状態、対してサビは作り込んでくるイメージがあります。そのバランスがすごくいいなって。いつもAメロ、Bメロを裏切ってくるサビがあって面白いです。私が自分で曲を作るときは、何回も何回も繰り返して、厳選して良いものを生かしていくんですけど、川谷くんは話すようにメロディを書いていくんですよね。
えつこ:その中でもDADARAYの曲は女性目線の詞が多いですかね。
REIS:DADARAYの曲で描かれる女性像は、自分の観念とは真逆なんです。生き方とか考え方とか。「WOMAN WOMAN」とかも、えー「つまらない人生」って自分で言い切りたくないなー私はって思う。嫉妬心とか羨む気持ちとか、そういうのを持たないようにしているタイプ。だから自分的に好きじゃない感情が全面的に出ている曲を、どう歌ったらいいんだろうって最初は戸惑いましたね。自分の中で時代感や演じる人物のモードを変えたりして、消化してます。
EMTG:メロディラインやアレンジも含めてSっ気がありますよね。DADA(=規定の秩序や常識に対する否定、攻撃、破壊)がバンド名の由来なくらいですし。
えつこ:なんか……野蛮?(笑)。荒ぶってて心配になるくらいですよね。今、女性も強くならざるを得ない社会じゃないですか。例えば恋愛でズタズタに傷ついても、仕事中は毅然としてなきゃいけない。でも家に帰ってきたときにドロドロの汚れた感情があふれ出す。オフになった瞬間のドロドロが、この歌詞に表れてる気がします。そういう意味で共感する人は多いんじゃないですかね。
REIS:歌ってるREISにかぶせて、モヤモヤやドロドロの感情を消化してくれたらいいな。そういう役割ができたらいいなと思いながらやってます。
EMTG:DADARAYは“川谷絵音の曲を女性ボーカルで歌う企画バンド”と見られてる部分が強いかもしれませんが、今後バンドとして固有の進化を遂げていくのを楽しみにしてます。
えつこ:DADARAYだけのスタイルを確立していきたいと思っています。最近のバンドシーンにおいても、ツインキーボードボーカルってなかなかないスタイルだと思うので。
EMTG:「少しでいいから殴らせて」も、REISさんとえつこさんが両方メインのツインボーカルですよね。DADARAYにしかできないこと曲だと思います。
えつこ:そうですよね。ようやくリスナーに対して特徴を見せられるようになってきたかなという気はします。ゲスの極み乙女。、indigo la Endとは違うんだよっていうのを見せるにはどうしたらいいかは、今後もずっと考えていくテーマだと思います。
REIS:独自のカラーが出て確立していくと、詞も含めて表現はどんどん変わっていくのかなと。私も育っていく一面を見たいな。

【取材・文:鳴田麻未】

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リリース情報

DADASTATION

DADASTATION

2017年12月06日

ワーナーミュージック・ジャパン

1. 少しでいいから殴らせて
2. 場末
3. 大人やらせてよ (DADA ver.)
4. 美しい仕打ち
5. 誰かがキスをした
6. ダダステーション
7. トモダチ
8. WOMAN WOMAN
9. 僕らのマイノリティ
10. For Lady (Remix by YYIOY)
11. イキツクシ
12. 東京Σ
13. 優しく鬼に

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REIS
ノームコア
休日課長がけっこう同じ服を着てるんですね。それを総称する言葉が最近あったよなーと思って調べて、「ノームコア」にたどり着いたんです。「課長、ノームコアですよ!」って言ってあげました(笑)。普段いろんなものを選択してるから、着るものくらいは何も考えずに決めて、選択肢を減らすっていう意味らしいですけど。禅の世界ですよね。

えつこ
カルディ
indigo la Endのドラムの佐藤栄太郎が先日誕生日だったんです。当日に会うから何かあげようと思って。栄太郎は自炊でよくパスタを作るって聞いた記憶があったので、カルディを探して、パスタとオリーブオイルとトマトソースを買いました。


■ライブ情報

毎日がクリスマス 10TH ANNIVERSARY!
2017/12/13(水) 横浜赤レンガ倉庫 1号館 3Fホール

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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