今年1月で21歳になったシンガー・ソングライターのAnlyが、8枚目のシングル「Beautiful」をリリース。この曲はMBS/TBS系全国ネットのアニメ『七つの大罪 戒めの復活』エンディングテーマになって既に大きな反響を呼んでいる。春を感じさせる“癒し”のこのバラードにはアイリッシュ風のサウンドが効果的に盛り込まれ、それがAnlyの豊かな歌声を際立たせているのもいいところだ。またカップリングでは高校時代に作ったノリのいいロックナンバー「SPOOON!!!」に加え、エド・シーランの「Shape Of You」を彼女らしくアコースティック・カヴァー。3曲に込めた思いを聞いた。

EMTG：8thシングル「Beautiful」はTVアニメ『七つの大罪 戒めの復活』のエンディングテーマということで。

Anly：『七つの大罪』は高校生のときから漫画で読んでいて、アニメが始まったときも「わーい」って喜んだくらいファンだったんですよ。だから新シリーズのエンディングテーマに決まったと聞いて本当に嬉しかった。今度のシリーズは戦いが多いんです。敵が10体くらいで来るので、倒しても倒してもキリがない。そういう戦いばかりのなかで、私の歌がちょっとした癒しになればいいなと思って曲を作りました。

EMTG：前から好きだっただけに、曲のイメージも湧きやすかった。

Anly：はい。エリザベスというヒロインがいて、その目線から見た主人公に対する愛とか、「守ってあげたい」という気持ちとかを、歌詞に含ませました。このアニメにはたくさんのキャラクターがいるんですけど、ひとりひとりにストーリーがあって、ひとりひとりに守りたいものと守りたい理由がある。だから、曲を聴いたひとがそれぞれ自分の好きなキャラクターに当てはめてくれればいいなとも思って。

EMTG：「守る」ということが大きなテーマなんですね。

Anly：自分なりにそう捉えて書きました。「守りたい」というのは、もちろん好きな人に対して沸き起こる感情かもしれないけど、例えば母親なら子供を守りたいとか、そういう面でも沸き起こる感情ですね。私がレコーディングのときに思い浮かべていたのはある友人のことで、最近その友達が「赤ちゃんが産まれたよ」って写真を送ってきてくれたんですけど、見たらしっかりお母さんとしての強い顔になっていたんですよ。それを見て、「守りたい」という気持ちが人を強くするんだなぁって思ったんです。

EMTG：歌詞の前半では《その不安から　あなたを守りたい》と歌っていて、後半では《忘れかけてた　大切なこと　ずっと　あなたと守りたい》と歌っています。“あなたを”から“あなたと”に移っていく。そこは意識して書き分けたんですか?

Anly：一方的な気持ちではなく、常に互いを見つめ合い、支え合っていければいいよねって思いがあったので。

EMTG：《信じ続けることが　奇跡のはじまり》とも歌っています。これもAnlyさんの実感として？

Anly：はい。全ては信じることから始まると思うので。「どうせできないだろうけど」って思いながら何かをやるより、「絶対できるはず」って思ったやるほうが叶うものじゃないですか。そこから始まる奇跡って絶対あると思うんですよ。信じることの凄さ、信じることの力というのは計り知れないものがあるので、それを忘れずに生きたいなって思っていて。

EMTG：そういった歌詞の強い思いや永遠性といったところに、アイリッシュふうのサウンド・アレンジがぴったり合ってますね。

Anly：ケルト音楽とかアイリッシュとかって、人と人とを繋げていく音楽だなと思うんです。去年の12月にチーフタンズのコンサートを観に行ったんですよ。チーフタンズといえばケルト音楽の最高峰ですけど、ライブの最後のほうではお客さんがみんな手を繋いでそこで回っていて、ステージにいたメンバーも客席におりてきて一緒に手を繋いでて。逆に、ステージの上にはお客さんがたくさんいる。それを観て「すごいな！」って思ったんです。音楽が人と人とを繋ぐっていうのはよく言われることですけど、イメージとしてではなく実際にそうやって繋がっていく状態を目の当たりにしたのは初めてだったので、びっくりした。それでさらにアイルランドの音楽が好きになって。だから「Beautiful」にフィドルとか笛の音が入ってるのもそういうイメージなんです。そういう音を入れることができて嬉しかった。

EMTG：以前からアイルランドの音楽はよく聴いていたんですか?

Anly：聴いてました。私が初めて入った沖縄本島のライブハウスがあるんですけど、そこのひとたちがアイリッシュ好きで、演奏が始まると止まらないんですよ。沖縄音楽とアイリッシュってどこか通じるものがあって、例えば節回しとか。あの節回しが私は大好きで、いつか自分のオリジナルのポップな曲のなかにもそういう要素を入れ込めたらいいなと思っていたんです。あ、あと、『七つの大罪』自体、舞台がヨーロッパなので、ケルト音楽が使われることが多くて。その世界観と私のやりたい音楽の世界観もぴったり合っていたので、(プロデューサー / アレンジャーの)ジェフ・ミヤハラさんに話をして、こういうふうにアレンジしてもらいました。

EMTG：Anlyさんがそんなにアイリッシュ好きとは知りませんでした。

Anly：大好きなエド・シーランもそういうルーツをポップに混ぜたりしてますからね。エドのアルバム『+』の最後に隠れトラックとしてコーラスだけで歌っている「The Parting Glass」というのがあって、私はそれが一番好きなんですよ。だから『÷(ディバイド)』にアイリッシュの要素が散りばめられていたのも嬉しくて。ルーツを大事にする姿勢がいいんですよね。いずれ私も沖縄音楽を上手くポップな形で盛り込めたらなって思ってます。

EMTG：それ、すごく楽しみです。では、カップリング曲の話も。「SPOOON!!!」という楽しいロックナンバーですけど、これはいつ作った曲なんですか?

Anly：16歳のときですね。私が過ごしているこの教室がもしもスープだったら……みたいなことを想像して、そこに正義の味方がスプーンを持って現れたら救われるなって考えながら歌詞と曲が一気にできて。

EMTG：面白い発想!　どこからそんな発想が生まれたんでしょうね。

Anly：高校生らしい発想ですよね(笑)。クラスってよく仲良し同士でグループに分かれたりするじゃないですか。そのなかで私はフワフワといろんなグループを行き来したりしてたんですけど、そうやって外から客観的に眺めていると、あのコとあのコは喧嘩してたのにゴハン食べるのは一緒なんだな、とか、本当の気持ちを話さないで愛想笑いしながら友達っぽくしてるんだなとか、そういうのもちょっとだけ見えちゃうことがあって。

EMTG：ああ、それがこの歌詞の《ひとつまみだけの友情と　愛想笑いは自分量　もう抜け出してもいい頃さ》に繋がるわけですね。

Anly：そう。そういう愛想笑いとかって、今でもきっといろんな学校とかにあることだろうし、大人になって社会に出たら出たでやっぱりあることだろうし。そういうスープのなかからスプーンで救い出されたらいいのにって気持ちがあって、そこからこういう歌ができたんです。

EMTG：なるほど。すごくこう、胸がすくようなロックですよね。

Anly：ストレートなロックですね。こういう青春っぽいロックをレコーディングしたのはちょっと久しぶりだったかも。レコーディングは『北斗七星ツアー』のときのバンドと一緒に、一発録りでやりました。エンジニアさんもずっと一緒にやってくれてる人なので、「盛り上がっていこー！」っていう雰囲気が音にも出ている。楽しさとバンドの一体感を感じてもらえると思います。

EMTG：歌い方もいつもよりラフですよね。

Anly：打ち解けてるエンジニアさんに、「はっちゃけちゃえば?!」「1.2.3.4.っていうカウントもテキトーでいいから、楽しくやっちゃおうよ」と言われて、「じゃあ、いきますか」っていう感じで（笑）。全然飾ってない。素の私が混ざってますね。

EMTG：ライブで聴くのがとても楽しみです。それからもう1曲は、エド・シーラン「Shape Of You」のアコースティック・カヴァー。オリジナルとはアレンジをガラっと変えていて、完全に自分のものにしてますね。

Anly：アコギのチューニングを変えて、ブルージーでセクシーな感じを強調してみたんです。

EMTG：もともとセクシーな歌詞ですもんね。

Anly：そうなんですよ。「恋人を探すのならクラブじゃなくてバーがいいよ」みたいな歌詞が面白くて。エド、言いそう（笑）。それでこれもバーで歌ってるような雰囲気にしようと思ったんです。

EMTG：ループペダルを始めたのもエド・シーランの影響だと言ってたし、Anlyさんにとってエド・シーランという存在は本当に大きいんですね。

Anly：大きいです。結局、エドに辿り着いてしまう。私は胸を張って言いますよ、「大好きだぁ」って（笑）

EMTG：いつか会えるといいですね。

Anly：えーっ、でも会えたらどうしよう……。私にとって今はループペダルが本当に自分らしい表現方法だと思えるし、これからもっとループペダルでいろんな表現ができるようになりたいと思っているので、エドのループペダルはどうなっているのか、構造のことなんかもいろいろ訊いてみたい。あと、いい曲を作るコツとか。訊きたいことがいっぱいありますね。

【取材・文：内本順一】