2018年のフレデリックを象徴するニューアンセム「飄々とエモーション」

フレデリック | 2018.07.10

 今年4月に地元・神戸 ワールド記念ホールでのワンマンライブを成功させたフレデリックが、7月11日にニューEP『飄々とエモーション』をリリースする。フレデリックには、これまでもバンドの大事なタイミングでターニングポイントとなる楽曲がいくつかあった。唯一無二の音楽を届けようという決意を歌った「オンリーワンダー」(2016年)、自分たちの居場所を作ろうという意味を込めた「TOGENKYO」(2017年)。その時々でバンドがいるステージを客観的に捉えつつ、バンドのスタンスをしっかりと音と言葉に押し込みながら、進化してきたバンドだ。そういう意味で、2018年のフレデリックを象徴するのが、「飄々とエモーション」になる。後半にかけて畳みかける壮大なコーラスワークが圧倒的な高揚感を生むナンバーは、間違いなくフレデリックのニューアンセムになるだろう。

EMTG:神戸 ワールド記念ホールのワンマン、すごく良かったと聞きました。
三原康司(Ba):そうなんですよ、ありがとうございます。
EMTG:去年あの会場でやることが発表されてから、そこに向けてのツアーを組んで。一丸となって辿り着いた場所だったと思いますけど、やり終えてどうですか?
三原健司(Vo&Gt):ワールド記念ホールでやるって決めてからは、1日1日を大事にして、毎回、自分たちのキャパを超えるぐらいの勢いでライブをやろうっていう話をしたんですよ。それを、ちゃんとやれていたので、神戸に立ったときは、感動よりも冷静になれる自分たちがいたと思ってますね。アリーナアーティストとして、良い意味で、ちゃんとこなしたなっていう。
EMTG:たしかに、ここ最近のフレデリックのライブを見てると、前よりもステージ上で冷静なのがすごくわかります。
康司:ちゃんと一歩一歩を積み重ねて、結果を出せたからでしょうね。
高橋武(Dr.):今回、神戸ワールドをソールドできたのは、すごく嬉しかったし、それもひとつの成功だったんですけど。さっき健司くんが言ってた、「アリーナアーティストとして、相応しいバンドになろう」っていうのは、そことは違う考え方じゃないですか。
EMTG:ええ、チケットがソールドすることと、ライブが良い内容かは別の話というか。
武:なんですけど、後者の意味でも、神戸ワールドでは、すごく冷静なかたちでライブをできたことで、ソールドアウトしたときとは、また違う達成感があったんですよね。そこまで過ごしてきた半年間が肯定されたような気がしたんです。
康司:やっぱり自分は音楽で生きていく人間なんだなって、本当に思いました。自分たちが作ってる音楽を求めて、これだけの人数が集まってくれるんだっていうのを感じると、勝手な使命感を感じるんですよ(笑)。この音楽で救われる人たちが、ひとりでもいるなら、俺は曲を作り続けよう、ライブをし続けようって。
EMTG:隆児くんは、どうですか?
赤頭隆児(Gt):やっぱり歓声がイベントとは違うじゃないですか。そういうのを聞いて、俺が高校生のときにコピーしてたバンドって、全然届かないくらいの存在だったんですけど、そっち側になれたのかなと思ったんですよね。
健司:たしかに、そっち側に変わった印象はあったなあ。
武:そのせいか、神戸ワールドが終わってから、それまでとは違う感覚でライブができていて。フェスとかの大きな会場でも、ちゃんとそこにいる一人ひとりと向き合えてる感じがするんです。フレデリックにとって、ターニングポイントになるライブでしたね。
EMTG:前回取材したのは、去年10月の『TOGENKYO』のときだったから、まだ1年も経ってないんですけど。いま喋ってても、4人とも自信がついたんだなって感じます。
康司:桃源郷の、その先にいますからね(笑)。
EMTG:で、そんななかリリースされるニューEP『飄々とエモーション』ですけども。スケール感のある曲ができましたね。
康司:完全にアリーナで鳴らすっていうのを意識してできた曲ですね。
健司:シンガロングの部分は意識して作っている部分でもあります。いままでのフレデリックやったら、“踊ってない夜は知らない”とか、メロディを詰めるところが多かったんですけど。ボーカルが大きいメロディで歌うことで、歌を基軸にしたグルーヴを作っていったんです。
武:レコーディングするときって、それをライブで鳴らしている姿をイメージすると思うんですけど、それがライブハウスじゃなくて、いまはアリーナになってきてるのが、いちばん大きい変化かなと思いますね。
隆児:もちろん大きい会場は意識したけど、音源は音源で良くないとダメやったりもしますし。結果的に、音圧はマックスじゃないですけど、決して薄いわけじゃない。そういうなかで、何をいちばん中心に置くかっていうのを考えたときに、歌だったんです。
EMTG:最後にウォーウォーでシンガロングできるところの昂揚感は最高でした。
康司:すごくわかりやすい曲になったとは思いますね。ただ、単純にわかりやすくなっただけじゃなくて、そのぶん想像を膨らませられるところも増えてる。そのうえで、より大きなところにいってほしいっていうところが、これからのフレデリックだなと思います。
EMTG:「飄々とエモーション」という言葉は、どういう意味ですか?
康司:「飄々」って、流されるとか、良くないイメージもあるかもしれないけど、自分の意思を持てるからこそ、そこで起こる風にのって、いろいろな場所にいけるっていう意味かなと思っていて。そうやって自分たちの場所を選びたいというか。逆にプライドが重かったりすると、その場所から動けないじゃないですか。そういう意味で、「飄々」っていう言葉のかっこよさとか、強さ、日本人らしさもいいなと思ってます。
EMTG:その飄々としたなかにも、ちゃんと熱量があるっていう部分では、まさにいまのフレデリックの温度感を表すような言葉でもあるなと思いました。
健司:そうなんですよね。毎回、康司がリード曲を持ってくるときって、ひとつの答えを持ってきてくるなと思っていて。『フレデリズム』っていうアルバムでは、しっかり自分たちの柱を作れたし、去年1年間は、「自分の居場所を作りたい」「フレデリックを楽しんでくれる人たちの輪を広げたい」っていう答えが「TOGENKYO」だった。そういうのを経て、2018年、康司がこの「飄々とエモーション」っていうタイトルを持ってきた時点で、あ、これはもう、バンドのことを歌ってるんやろうなっていうのを感じたんですよ。
EMTG:ええ、すごくわかります。
健司:自分たちもデビューして4年が経つし、やってきたステージを考えると、もう新人って言える枠ではない。ギリギリ若手とは言えるけど、まだ中堅とは言えない。どうしたらいいのか、わからない時代に入っていくのかな?っていうのも感じてるんです。そういうときに、康司が「飄々とエモーション」っていう曲をもってきたから、「あ、この時期を俺らはこういうふうに過ごすんや」っていう、スローガンを掲げられたんです。それがフレデリックらしいなと思ったんですよね。それやったら、2018年は飄々と行こうやっていう。
EMTG:それを言葉ではなく楽曲で説明できるのがフレデリックのすごいところですよ。
健司:なかなかできないことだと思いますね。
EMTG:これを掲げたうえで、残り3曲についても話を聞ければと思いますけど。「シンセンス」もまた不思議な造語です。
康司:これも「飄々」と対(つい)になるというか、自分にとって「センス」っていう言葉を大事にしたいなと思ったんです。「センス」って、なんとなく囲っちゃう言葉のような気がするんですよ。「自分たちのセンスはこれだから」って。それを考えたときに、フレデリックって、自分たちが思ういちばん良いものを生み出しながら、いろいろなところの壁をなくそうとしてるバンドだし、新しいセンスっていう意味で、「シンセンス」っていう歌を作ろうと思ったんです。だから、これも僕らの決意表明ですね。
EMTG:たしかに、いまの20代後半のバンドって、自分たちのセンスで、いろいろなジャンルをミックスしてる人たちは多くなってるけど、フレデリックほど、オリジナルなものに消化できてるバンドって、実は少ない気がする。だからこそ、いまのフレデリックが自分たちのことを“新しいセンス”だって言い切るのは、ものすごく痛快です。
康司:うん、そうやって言ってもらえるのは嬉しいですね。
EMTG:あと、「シンセンス」は、隆児くんのギターで始まるのが新鮮でした。
隆児:初めてギターから入る曲なんですよ。だから、ライブでは緊張もするんですけど、その緊張も初めて味わったものだから、けっこうドキドキ感が楽しいんです。
武:そういう隆児くんのドキドキみたいなのが、良い意味でバンドにも伝わってる感じがしてて。僕らも新鮮な気分ですね。「シンセンス」のギターはじまりっていうのは、意外と、この曲の肝になってるんですよね。
EMTG:3曲目の「NEON PICNIC」はエイティーズ大好きなフレデリックらしい曲。でも、曲の展開がけっこう予想外で面白かったです。
康司:これはリズムだけで、けっこう踊れる曲ですよね。そのなかに、本来フレデリックにある歌謡性があって。歌詞は、台湾でワンマンライブをしたときのことを書いたんです。
EMTG:“NEON”は、台湾のネオン街のことですか?
康司:台湾の夜市をイメージしたんです。そこで迷子になってしまって。
EMTG:迷子!?
康司:そう、何も知らない街で、携帯もつながらなくて……。
武:電池が切れそうって言ってたよね(笑)。
康司:そのときに、すごい空間にいるなと思ったんですよ。なんとなく自分のなかで不思議な気持ちになったというか。それが、この曲には入ってるなと思ってます。
EMTG:曲を聴いて、「あ、康司くんが迷子になった曲だね」とは全く思わないですけど。ただ、「飄々とエモーション」みたいな、はっきりとしたメッセージがあるわけじゃなくて、どこか世界へと誘い出すようなテーマは、康司くんの得意技だなと思いました。
康司:そうですよね。この世界に浸ってもらいたいです。
健司:康司が、これは台湾の曲やって言ってくれたから、夜市の感じとかは、全員でイメージを共有しながら作ったんですよ。まあ、感情としては、「明るい」と言うよりは、別に何か悲しいことがあるわけじゃないけど、なんとなく切ないっていうようなもので。それを、どうやって表現できるか、みたいなところはありましたね。
EMTG:4曲目の「シントウメイ」は、キリンレモンとのコラボレーション曲です。こんなに爽やかなフレデリックの曲は、いままではなかったんじゃないかなと。
康司:たしかに。キリンレモンを飲んでた幼少期を思って書いたんですよ。自分が中学生時代だったらって、タイムスリップした状態で書いたので、若返った感じです(笑)。
EMTG:いきなり健司くんのアカペラで歌い出すあたりもインパクトがありました。
健司:歴史あるメロディを、自分の声で歌うのは嬉しいことやし、そのぶんプレッシャーもありましたね。そのなかで、今回は絶対に「俺の声や」って、わかってもらおうと思ったんです。変に真っすぐ歌おうとか、きれいに歌おうじゃなくて。
武:たしかにそうだね。僕は、この曲ですごく収穫だと思ったのが、「サビに入ると、フレデリックになるね」って、言ってくれる方が多いことなんですよ。
EMTG:いままでのフレデリックとは違う雰囲気のメロディですけどね。
武:そう、それに対して、ものすごくフレデリックっぽいって言ってくれてる。それって、フレデリックらしさっていうのは、歌詞の繰り返しとか歌謡感とか、いろいろあるけど、やっぱり健司くんの声なんだなっていうのを再認識したんですよね。
EMTG:このタイミングで?
武:いままでも思ってたけど、改めて感じたというか。今回のEPもいろいろな曲がありますけど、どの曲をやっても、フレデリックになる。それも、健司くんの声の存在が大きいんだろうなっていうのは、ここで確信めいたものを感じましたね。
EMTG:なるほど。今回のEPをリリースした直後には、自主企画ライブ『UMIMOYASU』が3年ぶりに復活というか、久々に開催されます。
健司:それこそ、いままでは自分たちの柱を立てるのが最優先の時期だったと思うんですよ。でも、いまは自分たちの居場所もできたから。そこに、また自分たちとは違う柱を持つ人を招き入れることで、新しい刺激がほしいなと思って。そういう意味の対バンです。
EMTG:大阪がポルカドットスティングレイ、愛知が雨のパレード、東京がUNISON SQUARE GARDENですけど、それぞれの関係性を教えてもらえますか?
健司:ポルカはラジオつながりですね。レギュラーラジオをやってるんですけど、うちの番組って、けっこう前の(時間帯の)番組と絡みたがるんですよ(笑)。それで、ポルカと交流が増えて、対バンをすることにしたんです。雨パレは列伝以来ですね。
EMTG:お互いに成長をする姿を見せ合う日になりそうですね。
隆児:そうなんですよ。
健司:あと、ユニゾンは先輩ですね。
武:ユニゾンもラジオのつながりだよね。
健司:ラジ友です(笑)。3バンドともイベントとかで一緒になることはあるけど、ツーマンをしたことはなかったので。今回、やっと実現できたので楽しみですね。

【取材・文:秦 理絵】

tag一覧 シングル 男性ボーカル フレデリック

リリース情報

飄々とエモーション

飄々とエモーション

2018年07月11日

A-Sketch

1. 飄々とエモーション
2. シンセンス
3. NEON PICNIC
4. シントウメイ
5. TOGENKYO Live at神戸 ワールド記念ホール2018
6. たりないeye Live at神戸 ワールド記念ホール2018

お知らせ

■コメント動画




■ライブ情報

UMIMOYASU〜巡り巡りゆくシンセンス〜
07/12(木)大阪 BIGCAT
07/13(金)愛知 THE BOTTOM LINE
07/19(木)東京 マイナビBLITZ赤坂

FREDERHYTHM TOUR 2018
〜飄々とインセプション〜

11/23(金・祝)横浜Bay Hall
12/01(土)新潟LOTS
12/02(日)富山MAIRO
12/07(金)金沢EIGTH HALL
12/15(土)高松festhalle
12/16(日)広島BLUE LIVE
[2019]
01/20(日)岡山CRAZYMAMA KINGDOM

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

トップに戻る