Ivy to Fraudulent Game 独自性に富んだ2nd Single「Memento Mori」リリース

Ivy to Fraudulent Game | 2019.01.29

 Ivy to Fraudulent Gameの音楽は、醸し出す空気でもリスナーの心を激しく揺り動かす。2ndシングル『Memento Mori』も、そういう面が存分に表れている作品となった。緻密に構築されているサウンドの中に、とても豊かな世界が広がっているタイトル曲「Memento Mori」を聴けば、誰もが彼らの音楽が放っている独得な煌めきを発見するであろう。カップリングの2曲も含めて、聴きどころが満載の今作について、寺口宣明(Vo・G)と福島由也(Dr)に語ってもらった。

EMTG:みなさんの音楽は、音像に包みこまれる快感をすごく届けてくれますよね。
福島:「全体に意味がある」というようなイメージです。そういう意識は常に持って曲を作ってます。
EMTG:メロディやハーモニーだけではなくて、それを取り巻く残響、空白、音色、音の定位とかにも意味があるということではないでしょうか?
福島:はい。そういう要素が結果的にメロディにも影響するんですよね。聴こえ方、印象は、そういうものによっても変わりますから。
寺口:僕はこの人が作った曲しか歌ってこなかったから、これがスタンダードになっちゃってるんですけど、自分が作った曲を歌ってる時とアプローチが違うというか、昂揚感や入り方の種類が違うと思ってます。
EMTG:言い方を変えると、雰囲気、空気感によっても昂揚できる音楽ということなんだと思います。
福島:僕も音楽を聴いて、そういう体験をしてきたんです。「なんでこの曲を聴いて、こんなに感動したんだろう?」っていうことに基づいて、自分が作るものも設計してます。
EMTG:音って不思議ですよね。音楽理論で説明できる部分もあるけど、感覚的な領域は説明しきれないじゃないですか。例えば、「なんでマイナーコードは暗い印象で聴こえるの?」っていう問いに対して、「短三度を重ねてるからだよ」っていうのは、感じる印象のちゃんとした理由にはなっていないわけですから。
寺口:ほんとそうですよね。人間の造りがそうなってるってことなんでしょうけど。マイナーコードって、なんで暗く聴こえるの?
福島:わからない(笑)。でも、悲鳴を聴いたら恐怖を感じるし、そういうDNAに刻みこまれてることによるんでしょうね。
寺口:暗闇に恐怖を感じるっていうことみたいな?
福島:うん。そういうことじゃないかな。
EMTG:Ivy to Fraudulent Gameの音楽は、音によって左右される印象を緻密に考えながら作っていますよね?
福島:そうですね。そういうことができるのが音楽の難しさでもあり、魅力でもあると思ってます。
EMTG:メロディや歌詞の一節とかを挙げるだけでは、Ivy to Fraudulent Gameの魅力を説明しきれない感じなのも、そこが理由かも。
寺口:受け手によって捉え方の形が変わるのが、うちのバンドの曲だと僕は思ってます。
福島:そういうバンドだから、世の中にどう紹介するのかレコード会社も大変なのかも(笑)。いろいろ説明しても、自分でも腑に落ちてない感じになることがよくありますからね。
寺口:僕もこのバンドに関して上手く説明できないんですよ。「聴いてもらえればわかる」っていう感覚が一番強いです。曲を作ってる福島には、そういう部分をずっと持っててほしいです。でも、僕はふと耳にした時に「いいな」って感じてもらえるようなものでもありたいと思ってます。そういう両方が共存してるバンドでありたいんですよね。
EMTG:複数のメンバーが集ったバンドとして活動しているから、理想的なバランスが生まれている面もあるんでしょうね。もし、福島さんが4人いるバンドだったら、どうなったと思います?
福島:めんどくさい感じになるんでしょうね。
寺口:悟りを開いて音を鳴らさなかったり?
福島:活動に至らない可能性もある(笑)。
寺口:「人生そのものが1曲だ!」って言い出したり(笑)。
EMTG:(笑)Ivy to Fraudulent Gameの曲は、キャッチーでもありますよね。
寺口:そうだと思います。
福島:「自分が感動してきたものに基づいて作る」っていうテーマでやってますからね。音を徹底的に突き詰めるというのは、曲を作る側としてのこだわりですけど、聴き手として感動してきたものに対する感覚も常に持っていたいんです。
EMTG:そういう部分は、「Memento Mori」にも表れていると思います。ギターのコードの響きが醸し出す空気感も、すごく気持ちいい曲ですよ。
福島:リズムって感覚的な部分に対して作用するのに対して、コードは感情の部分に一番近いように思っています。そういうところも出ている曲ですね。
EMTG:歌詞に関しては、「死」を見つめることで「生」を浮き彫りにしていますね。
福島:はい。対照的なものを描くことによって、その間にあるものの連続が描けると僕は思ってるんです。そこに向き合って書いた歌詞です。
EMTG:どういう経緯で生まれたテーマなんですか?
福島:「普遍的なことを描きたい」というところからです。一番あらゆる人に共通するものって、「死」ですからね。
寺口:歌詞だけ読むと暗い内容の曲のように感じられるかもしれないですけど、実際に聴いてみると違った印象になる曲でもありますね。聴き終わった時に勇気を持てるような歌にしたいなということを思ってました。
EMTG:この曲で発揮されているような独自性は、今回のカップリングからも感じられます。2曲目の「trot」は、インディーズ時代から演奏している曲ですね。
寺口:そうです。作ったのは、17歳の時だっけ?
福島:うん。学校に行く時の風景の曲なんです。作った時は、そんなに深い意味を持たせていなかったんですけど、「Memento Mori」と繋げて解釈することもできるかもしれないですね。「もっと駆け抜けろ」ということを「trot」は描いてますから。あと、視点を変えるとライブの光景のように思える曲でもあると思います。
寺口:今回の3曲の中で、一番歌録りが難しかったのが、この「trot」です。昔録った歌を勝手に身体がコピーしちゃいそうになったので、何度も歌い直しました。
EMTG:10代の頃に作った曲が、こうしてメジャーからリリースされるって、すごくロマンがあることですね。
寺口:ほんとそうですね。17歳の時の曲を24歳になってもライブでやってて、こうしてCDになるって、嬉しいことです。この曲をライブで歌う時もそうだし、レコーディングした時も、あの時に戻るような感覚がありました。
福島:授業中に歌詞を書いたんですよね。それを考えると、改めてすごいことだなと思います。
EMTG:この曲を書いた頃の福島さんは、どんな少年だったんですか?
寺口:髪が短かったんですよ。まあまあいい高校に行って、1年生の頃はそこそこの成績だったらしいんですけど、僕と出会ってバンドを始めてから順調に成績が落ちて、卒業した時は、しっかりと最下位(笑)。
福島:そうなんです(笑)。
EMTG:(笑)寺口少年は?
寺口:勉強をしようとしなくて、垂れ流すかのように青春を生きてました(笑)。
EMTG:(笑)そんな寺口さんが作詞作曲した曲が、前作に続いて今作にも収録されますね。
寺口:はい。実は、まためっちゃいい曲を作ったんですよ。それも楽しみにしていてください。ペースは速くないんですけど、最近、曲作りをよくしてます。福島と何年も一緒にバンドをやってることによって培われたものは大きいなと、曲を作りながら感じてます。
EMTG:今回、収録される「低迷」は、温かくて優しいテイストの曲ですね。福島さんが作る曲とは異なる作風を僕は感じています。
寺口:福島と同じようなものは作れないので、自分らしさをどう出していくのかを客観的に考えるようにしてるんです。
EMTG:トオミ ヨウさんがプロデュースをしていますけど、新鮮なものを感じる仕上がりです。
寺口:この曲は、僕が20歳くらいの時からあるんですけど、大切にしていたんです。弾き語りで歌うものを越えなければ、バンドでやらないつもりでした。バンドで1回作ってみたんですけど、なかなか納得するものにできなかったので、プロデューサーさんに入ってもらうことになりました。
EMTG:新しい試みですよね?
寺口:はい。「どういう化学反応が起こるか、やってみない?」って言われたんです。それでトオミ ヨウさんにお願いしたら、僕が最初に作ったものとはまったく違う印象のアレンジになったんですよ。こういう音楽的な驚きと感動を味わったのは久々でした。
福島:曲がいい形になれば、それが一番ですからね。こういう形でやってみて、良かったと思ってます。以前よりも、視野が広がりました。
EMTG:「低迷」の歌詞は、まさに低迷するまま日々を過ごしている人物の姿が浮かびます。
寺口:すごく精神的に落ちてる時に書いた曲なんです。「俺は1人ぼっちだ」って言いつつ、助けてくれる人の手が差し伸べられるのを待ってるところもある自分をかっこ悪いなと感じながら、「これが生きていくっていうことなのかもしれないな」ということを思って作ったんですよね。
福島:この曲を初めて弾き語りで聴かせてもらった時に、その頃の寺口の状況がフラッシュバックしました。そういう曲をバンドとして昇華できたのって、すごくいいですね。「前を見てる」という意志が感じられるものにもなったのが、素敵だなと思ってます。
EMTG:曲を積極的に作るようになってから、何か変化はあります?
寺口:「インプットしていかなきゃな」ということを考えるようになりました。最近、『まんが日本昔ばなし』を観まくってるんですよ(笑)。僕は本を読んでると飽きちゃうので、観るようになったんですけど。『まんが日本昔ばなし』、面白いんです。お話に教訓的なものがあるのもいいんですよね。僕は喋りを聴くのも好きですし。
EMTG:落語も好きですか?
寺口:落語も好きです。素晴らしい芸術ですよね。さっきも聴いてました。
EMTG:そういう寺口さんのインプットによっても、Ivy to Fraudulent Gameの可能性はさらに広がっていきそうですね。今後の活動に関しては、ワンマンツアーが楽しみです。
寺口:ワンマンライブが大好きなので。前回のワンマンとはテイストを変えようと思ってます。作戦を練って、濃密なものにしたいですね。
福島:ワンマンでしか見せられないことってありますから、そういうものをちゃんと形にしたいです。ぜひ、いろんなお客さんに来ていただきたいと思ってます。
EMTG:会場の規模は、どんどん大きくなっていますね。去年の7月には、Zepp DiverCityでもやりましたし。
寺口:はい。「俺、Zepp DiverCityでやったんだよな」って思うこともあるし、「20代の半ばになるけど、まだ俺はここにいるのか」って思うこともあるんです。21歳くらいの頃は、「まだこれくらいだ。もっと行けるはずなのに、おかしいな」っていうのがすごく大きくて、今でもそういう気持ちはあります。でも、「俺たちのことを好きになってくれたお客さんは、ずっといてくれるんじゃないかな」っていう自信と前向きな気持ちを持てるようになりました。

【取材・文:田中 大】





<ミュージックビデオ>

”Memento Mori” MUSIC VIDEO

リリース情報

Memento Mori

Memento Mori

2019年01月30日

ビクターエンタテインメント

01. Memento Mori (TBS系テレビ「CDTV」1月度エンディングテーマ)
02. trot
03. 低迷

お知らせ

■マイ検索ワード

寺口 宣明(Gt&Vo)
山田うどん おいしい
群馬にたくさんお店があるけど、行ったことがなかったんです。この前、友だちに連れられて行ったら、「おいしい!」って思って、山田うどんについて調べちゃいました。安いし、おいしい。山田うどん、好きです。

福島 由也(Dr)
インフルエンザ 潜伏期間
うちのベースがインフルエンザにかかったので、調べました。自分らが会ってた時にうつされたウィルスが潜伏しているんじゃないかと……。「潜伏期間は1日から2日」と書いてあったので、安心しました。彼の心配じゃなくて、自分の心配です(笑)。



■ライブ情報

<Ivy to Fraudulent Game "Carpe Diem" Tour>
02/02(土) 新潟CLUB RIVERST
02/03(日) 仙台CLUB JUNK BOX
02/10(日) 札幌cube garden
02/16(土) 高松DIME
02/23(土) 福岡 BEAT STATION
02/24(日) 広島CAVE-BE
03/02(土) 大阪BIGCAT
03/03(日) 名古屋CLUB QUATTRO
03/10(日) 新木場STUDIO COAST

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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