「一生かっこいいバンドであり続けたい」――信念をひもとく全員インタビュー!

感覚ピエロ | 2019.09.04

 感覚ピエロが初のベストアルバム『全裸』を発表した。2013年結成直後に自主レーベル「JIJI RECORDS」を立ち上げ、インディー/メジャーの敷居を飛び越えて、映画やドラマの主題歌に起用されるなど、独自のスタンスでシーンを掻き回し続けてきた彼ら。結成6周年というタイミングで出る今作にはそんなタイアップ・ナンバーを含め、「これぞ感エロ!」と言えるリード曲がずらりと並んでいる。また、令和初の「おっぱいの日」(8月1日)に「O・P・P・A・I Remixes」も先行配信されており、こちらは『全裸』の完全生産限定プレミアム盤に限定ディスクとして付属される。今回はベストアルバム『全裸』の中身を主軸に、感エロの揺るぎないバンド哲学に迫りつつ、11月4日に控えている幕張メッセワンマン公演に対する意気込みも語ってもらった。

EMTG:まずは先行配信された「O・P・P・A・I Remixes」について聞きたいんですが、このアイデアはどこから出てきたんですか?

「O・P・P・A・I Remixes」(teaser)

秋月琢登(Gt):ORANGE RANGEさんとか先輩と絡むタイミングがあまりないから、「こういう人にやってもらえたらうれしいな」と思って、僕らの希望を投げて。「O・P・P・A・I」は2013年に作った曲だけど、ライブでもマストでやるし、改めて1曲ピックアップしてブラッシュアップさせるなら、やっぱりこの曲がいいよねって。NAOTOさん(ORANGE RANGE)とかダメ元で「やってくれたらうれしいよね」って感じでスタートしました。
EMTG:NAOTOくんのリミックスは今回の5曲の中でもかなり変態度が高いですね。
秋月:そうっすね(笑)。共演したことがあるのは岡くん(岡崎体育)とハヤシさん(POLYSICS)だけですけど、皆さんいい感じで遊んでくださったから、ほかの方々ともいつか対バンしたいですね。
EMTG:5曲続くと途中で飽きてしまうんじゃないかと思いましたが、まったくそんなことなくて。5人5様の解釈が面白かったです。
横山直弘(Vo/Gt):こちらからの要望は一切なく、「好きにやってください」とお伝えしたんですよ。人それぞれのクリエイティブがあるんだなと改めて気付いて、自分もワクワクしましたね。
アキレス健太(Dr):この世に同じ「O・P・P・A・I」はひとつもないんだよと。大きすぎても、小さすぎてもいいんだよって。僕の中で裏テーマがありました。
秋月:なんか今日スイッチ入ってるな?(笑)。ええやん!
アキレス:はははは(笑)。
滝口大樹(Ba):声の素材は全部横山なのに、いろんな横山がいるから、そこが面白かったですね。「このフレーズをこう使うんだ!」って。
EMTG:そして、今作はベストアルバムになりますが、去年サブスクで69曲を解禁したのとはまた違った意味合いなわけですよね?
横山:そうですね。今回のベストは僕たちがリードトラックにしてきた16曲を並べました。そのときどきに「これを推したいんだよ!」という等身大のリード曲ですからね。「ありのままの5、6年を見てください」という意味があります。
秋月:ぶっちゃけ、サブスク69曲のほうがベストな気もするけど(笑)、いちアーティストとして物で残すことも大事かなと。あと、音源に対してリテイクせずに、2013年から駆け上がってきたまんまをひとつにパッケージしたから、それを踏まえて楽しんでほしいですね。

BEST ALBUM『全裸』(teaser)

EMTG:今作を通して聴くと、ロックバンドとして攻め続けた楽曲ばかりだなと。
秋月:僕らから“攻め”を抜いたら何もなくなるんで(笑)。
EMTG:活動の仕方もそうですが、楽曲にエッジ感がずっと宿ってますよね。
秋月:最初の「メリーさん」と最後の「ありあまるフェイク」を聴いても、やってることは一緒だなと思いますからね。
EMTG:自分たちの軸はブレてないんだなと再確認しました?
秋月:そうっすね。活動するうちに規模は大きくなるけど、軸足は動いてないんだなと。
横山:もともと感覚ピエロはみんな別々でバンドをやってて、その寄せ集めのようなメンバーでバンドを組んだし、今までは思ったように評価されなかったけど、絶対に成し遂げてやるんだ!という思いはこの6年ずっと変わらないですからね。
EMTG:2013年に結成したときはどんな音楽をやろうと?
横山:こういう音楽をやろうと明確に決めたことは一度もなくて。ただ、何がかっこいいのか、その肌感はメンバー全員同じだと思います。
EMTG:今なら、その感エロらしさを言葉にできます?
横山:お客さんから「エロ」と「エモ」の二面性があると指摘されて、ああ、そうだなと思うくらいです。だから、お客さんを通して、どういうバンドなのかを再確認できました。でもその意見に左右されることもなくて、ずっと等身大のまま、何かに振り回されずに自分たちのやりたいことを貫き通してきた感じです。
秋月:お客さんと作り上げた感はありますね。僕らは「O・P・P・A・I」をそれほどエロいとは思わないし。面白くディスるというか、風刺というか、僕らはひねくれてるから直球を投げたくなくて、そういうワードに繋げているだけですからね。お客さんにベッタリするつもりはないけど、お客さんありきでもあるし、僕らだけじゃ歩めなかったなと思います。
横山:僕らは手探りでいろんなことに挑戦してきましたね。
秋月:走らないと死ぬぐらいのスピード感でやってきましたからね(笑)。当時、仲のいいバンドがどんどん世に出て行って、嫉妬、劣等感、悶々とした気持ちがあったし、前のめりなアグレッシブ感は強かったと思います。行動力だけは当時からあったし、曲を作るスピードも早かったし、普通のレーベルに所属していたらできないことをやってましたね。
EMTG:なるほど。その都度、吐き出したいものを音楽にしてきた実感があると?
秋月:そうですね。単純にそのとき思ったことをバン!と出すのが自分たちのやり方に合ってるなと。だから、鮮度は大事だと思います。
横山:自分たちのテンションが上がる曲を作ってきたから、昔の曲も最近の曲も年代関係なく、ライブでお客さんに届いている感じはありますね。
EMTG:感エロってものすごくスローテンポな曲ってないですよね?
秋月:そうですね。そういうのも全然好きなんですけど、頭のどこかでライブを意識しているんでしょうね。たしかにアッパーな曲が多いです。生き急いでいる感じが出てるんじゃないかと(笑)。
EMTG:あと、歌詞のメッセージ性も一貫したものがありますよね。
横山:4人全員で歌詞を書いてるけど…感覚ピエロとして一貫したものはあるなと。
EMTG:エロをエンタメ化したものと、自分らしく本能のまま生きろというメッセージの二本柱があり、その根底には「自由に生きろ!」というメッセージを感じます。
横山:自由という言葉はキーワードですね。「拝啓、いつかの君へ」で歌ってることも「自分で考えて生きるとは何?」ということだし、それは自由であることを考えることに繋がりますからね。「A BANANA」という曲もマイワールドだけど、自由を感じられますし。
EMTG:その自由さって、内側から自然と湧き出たものなんですか? それとも、周囲の目を気にしてしまうタイプだから、理想像として掲げているものなんですか?
秋月:両方あるんじゃないですかね? 周りを意識して窮屈に感じて吐き出したものもあるし、内側から出てきたものもあるだろうし…。僕らはそんなにかっこいい生き物でもないから(笑)。両方、沸々とある気がします。
EMTG:沸々だったり、悶々としてあると?
秋月:それがないと、曲なんて作ってないんじゃないですかね。それを表現する技法が音楽だったという。
滝口:僕らふたり(アキレス健太)も自由にやらせてもらってますからね。普通のバンドなら受け入れてもらえないんじゃないかと(笑)。
EMTG:健太さんもいろんな意味でハミ出してますからね。
秋月:ハミ出すって、めっちゃいい言葉ですね(笑)。
アキレス:僕は生まれた時点でフリーダム・スタイルで生きようと思いましたからね(笑)。
EMTG:今作の中で「A BANANA」は健太さんが作詞を手がけてますが、さらに自由を謳歌した歌詞ですね。「桶狭間」「本能寺」という言葉を使いたかったんですか?
アキレス:めちゃくちゃ使いたくて、それがハマりましたね(笑)。
秋月:僕ら4人がやれば何をやってもいいんですよ。誰が曲を書こうが、僕ら4人でやれば感覚ピエロになりますからね。
EMTG:今作を締め括る「ありあまるフェイク」は怒りマックスの曲調じゃないですか。その中にひとつだけ謎めいた歌詞があり、「だからはじめから全部嘘だって言ってんじゃん」のラインにはどんな思いを込めて?
秋月:あの言葉いいんですよね。ある種、感覚ピエロを理解されたいけど、理解されたくないんですよ。生半可に決めつけられたくなくて。「O・P・P・A・I」と歌ってるバンドとか、エモいバンドとかって、そういうふうに決めつけられるのも正直ムカツクんですよ。最終的にはあなたに委ねるんだけど…あなたが思うほど浅くもないし、もしかしたらそんなに深くもない。自分の中であの一文はこのバンドには必要不可欠な言葉だなと。「この曲を聴いたら、感覚ピエロがわかります」みたいなバンドじゃないですからね。基本的には何に対しても中指を立ててるバンドですから。周りがやってないことに突き進むほうが性に合ってるし、その意味であの一文は全部をひっくり返す言葉だから気に入ってます。
EMTG:そういう気持ちが込められていたんですね。では、11月に幕張メッセワンマン公演を控えてますが、今の気持ちを教えてください。
横山:幕張に集まってくれるお客さんに対して、「本当に来て良かった!」と言ってもらえるステージにしたいですね。
秋月:あの規模感は初なので、それも挑戦ですね。100人キャパのライブハウスで始めたバンドなので、すごいところまで来たなと感じてます。だからこそ、ソールドさせたいけど、不安もあるし…全力で楽しませたいなと。
EMTG:幕張でやることがバンドの夢だったんですか?
秋月:それがね、全然そういうのじゃないんですよ。岡くん(岡崎体育)みたいに「さいたまスーパーアリーナでやるのが夢」とか言えたらいいけど、別に夢じゃないんですよね。
EMTG:じゃあ、なぜ幕張でやろうと?
秋月:武道館は嫌だったというだけです。
アキレス:みんながやってるからやろ?
滝口:僕らっぽくないよなって。メンバー4人が「武道館でやりたい!」みたいな憧れもないので。
秋月:幕張のほうが僕らっぽいかなと。どこどこでやりたいというのも特になくて。ただ、周りに負けたくないし、一生かっこいいバンドであり続けたいだけなんですよ。

【取材・文:荒金良介】

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リリース情報

全裸

全裸

2019年09月04日

JIJI INC.

01.メリーさん
02.O・P・P・A・I
03.Japanese-Pop-Music
04.D.B
05.A-Han!!
06.拝啓、いつかの君へ
07.会心劇未来
08.加速エモーション
09.ワンナイト・ラヴゲーム
10.等身大アンバランス
11.疑問疑答
12.A BANANA
13.ハルカミライ
14.さよなら人色
15.一瞬も一生もすべて私なんだ
16.ありあまるフェイク

リリース情報

配信リリース「O・P・P・A・I Remixes」

配信リリース「O・P・P・A・I Remixes」

2019年08月01日

JIJI INC.

01.O・P・P・A・I (TeddyLoid remix)
02.O・P・P・A・I (ハヤシ ヒロユキ remix)
03.O・P・P・A・I (naotohiroyama(ORANGE RANGE / delofamilia) remix)
04.O・P・P・A・I (shinnosuke yokota remix)
05.O・P・P・A・I (岡崎体育 remix)

お知らせ

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■ライブ情報

感覚ピエロ 5-6th anniversary 『LIVE - RATION 2019 FINAL』〜幕張ヴァージンはあなたのもの〜
11/4(月・祝)千葉 幕張メッセイベントホール

Rhythmic Toy World 10周年企画 『10Q』《Quest4》 〜革命の道化師〜
9/14(土)東京 渋谷CLUB CRAWL
w/ Rhythmic Toy World

TOKYO CALLING 2019
9/16(月・祝)東京 渋谷ライブハウス13会場

KANSAI LOVERS 2019
9/21(土)大阪 大阪城音楽堂

忘れらんねえよ主催 ツレ伝オールナイトフェス
10/5(土)東京 渋谷TSUTAYA O-EAST
w/ 忘れらんねえよ / Wienners / おとぎ話 / くもゆき / THEラブ人間 /四星球 / 2 / ネクライトーキー / 爆弾ジョニー / ハルカミライ / アルカラ / グッドモーニングアメリカ / PAN / ハンブレッダーズ / 眉村ちあき / MOROHA and more

AliA TOUR「AliAliVe2019 ?realize-」
10/13(日)埼玉 HEAVEN’S ROCK さいたま新都心
w/ AliA / Absolute area

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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