緑黄色社会 愛しい人への想いを歌う、初の映画主題歌「想い人」インタビュー

緑黄色社会 | 2019.09.20

 「想い」とは崇高な言葉だ。そこにはどこか哀しさを漂わせながらも、溢れんばかりの愛しさや願い、祈りといった力強い心緒や、けしてそれらを口に出して伝えられない馳せる気持ちが込められていたりもする。そんな「愛しい人」に対する「想い」を歌やメロディ、そしてサウンドを通し綴った「想い人」とタイトルされた新曲が、緑黄色社会から届けられた。同曲は公開中の映画『初恋ロスタイム』主題歌として書き下ろされた楽曲。映画の根本となっている「想い」をリョクシャカ的な視点と、自身の「<想い>に対する<想い>」として描いている。ミディアムでダイナミズムに溢れ、今後永く歌い継がれていくであろうという感覚を抱かせ、聴いているうちに各人毎に思い浮かぶ「愛しい人」へと想いを馳せさせる同曲。是非あなたの「想う人」への「想い」をこの歌に重ね、その愛しい人に届けて欲しい。

EMTG:今回はかなり王道のポップス観ですね。ここまでの名曲の登場には正直驚きました。
小林壱誓(Gt/Cho):ありがとうございます。この曲は自分が作曲をしたものなんです。当初は特に「王道のポップスを作ろう」「良い曲を作ろう」と挑んだわけでもなく。映画(『初恋ロスタイム』)に寄り添った結果こうなったんです。とは言え、一聴して王道ながらも、わりと自由なメロディラインで、いわゆる「型にハマっていないもの」が出来たかなって。
EMTG:今回の長屋(晴子:Gt/Vo)さん作詞、小林さん作曲のコンビも作品としては初なので気になりました。
小林:今回は主題歌でもある、映画『初恋ロスタイム』について各々の角度から作曲をしたものを持ち寄り、選んだんです。結果、自分の作った曲が映画とのハマりも良かったようで。監督さんも推して下さったんです。
長屋:4人の中でも曲の持つエネルギーが凄く強くて。あと、一番耳に残るメロディだったのが選ばれた要因でした。それはその聴いた一瞬だけでなく、時間が経っても場所が離れても耳に残っている、そんな強さがありました。それはきっと私たちだけでなく、映画を観たり楽曲を聴いた人々の胸にも残るだろうなと。
穴見真吾(Ba/Cho):この曲が選ばれて“なるほどな……”って。もちろん僕やpeppe(Key/Cho)も作曲はしますが、どちらかといったら楽器隊が作る楽曲的なニュアンスが強くて。対して、長屋と(小林)壱誓は歌う人な分、歌をキチンと全面に考えて、活かし方も分かってると思うんですよね。
長屋:もちろん(穴見)真吾やpeppeも歌を意識して作ってると思うんですけど、2人だともう少しリズムや構成といったギミック的な面白さに重きが置かれている場合が多いかなと思います。対して今回は凄く歌心を大事にしてくれていて。おかげさまで歌詞も乗せやすかったし、歌っていても気持ちが良かったです。
EMTG:分かります。その歌心を凄く大事にされている感がこの曲にはあります。
小林:それに加えて今回はスケールの大きさも大事にしました。長屋がこの曲を歌っている姿をキチンと想像しながら書いたんです。バラードなので長屋の高音から低音まで幅広いダイナミクスも活かせると思ったし。これまでも自分で作詞作曲をした曲もありましたが、それはやはり自分が歌うことを想定して書いたものでした。この曲に関しては正真正銘、長屋が歌うことを前提に書きましたから。
EMTG:peppeさんはこの曲を客観的に聴いていかがでした?
peppe:私にはこういったタイプの曲は作れないなって。それは私がポップで明るい曲が好きだし得意かなというのもありますが、どうしてもこういった抒情的で人間味溢れる曲が浮かばなくて。
EMTG:この「想い人」は最後に向かってクレッシェンド(音楽用語「だんだん強く」)していく流れがたまりません。
小林:エネルギーをどんどん出し続けて、それがグングン大きくなっていく。そんな曲になったなって。それこそ何かに阻まれることなく、感情に任せて溢れるように色々なものが湧いた感じを上手く表せたと思います。
EMTG:凄くスムーズに聴きやすく、王道感を擁しながらも展開もしっかりとある面も耳を惹きました。
小林:僕としてはCメロがこの曲のエモさのポイントだったりして。その後のギターソロも涙をこらえるように抒情的に弾けたので全体的にとても満足しています。
EMTG:合わせて相乗効果で、歌もどんどんメロディに引き出されていくのが伝わってきます。
長屋:歌に関してはここまで感情を込めて、移入させた曲も無かったかも。私がこれまで歌詞を書く上で気をつけていたのが、いわゆる曲のDメロ。そこで本質を明かす、みたいなことをけっこうしていたんです。その分、Dメロで落ち着かせたり、リズムの展開をつけたりしていたんですが、この曲に関しては常に同じことしか言ってなくて。それこそ伝えたいことは一つしかなかったので。だからこそより強いエネルギーでCメロにいけたんです。
EMTG:その辺りかなりグッときました。
長屋:歌も、これまではファルセットを使っていたような高音をあえて地声で勝負したり。それ故の強さや曲に込めた想いがより表せたかなと。あと、「曲にクレッシェンド感がある」とおっしゃって下さいましたが、それはまさになんですけど、そのクレッシェンド感も全体だけでなく、メロディのブロックごとの中にもあって。さっきのCメロに関しても低いところから始まって高いところまで出す。そんなクレッシェンド感があったりするんです。
穴見:対して演奏も巻き込まれていくようにどんどんエモくなっていったんです。ライブでも既に演ってますが、バラードなんだけど、そこまであえて綺麗に演奏していないし……。
peppe:なんか「4人でこの曲を作り上げている」「一緒になってこの曲にメンバーみんなが感情移入している」、そんな気持ちでライブでは演奏している自分がいます。ある意味、これまで以上にバンドでやっている感があるのも面白いですよね、バラードなのに。
長屋:ライブで歌う時もその辺りは非常に感じていて。みんなのエネルギーや想い、エモい気持ちを一心に背負ってただ前だけを向いて歌えています。例えばRPGのラスボスに挑む、そんな勇者な気分というか(笑)。
穴見:ちょっとその挑む時のMP(マジックポイント=RPGゲーム等でキャラクターが持つエネルギー値)を聞きたいよね(笑)。もう完全にマックスを超えてそう。
EMTG:リリックもシンプルですが、かなり秀逸で。私は聴いていて親の背中が浮かんできました。
長屋:今回は映画の主題歌を前提に大きなテーマとして捉えつつ、そこに寄り添い過ぎない歌詞を目指しました。映画の中にもある「想い合う気持ち」みたいなものは大きなテーマとして持ちつつ、あとは最初から曲のタイトルにあった「想い人」という言葉を頼りに紡ぎ出していったんです。この曲の歌詞に関しては、私の中では完全に母を想って書きました。この年齢になって、分かったこと、見えたこと、気づいたことも踏まえて、母に自分のこの想いを伝えたいと、ずっと思っていたんで。
EMTG:その辺り非常に伝わってきます。
長屋:愛しさや今まで育ててくれた感謝、なるべく一緒に居てあげたいなとか、これからも変わらず色々な場所に一緒に行きたいな……みたいなことを伝える歌を作りたいとずっと思っていて。そんな中、この映画の主題歌のお話があり、ようやくこの気持ちや想いを歌に込めて伝えられるぞと。でもこの場合、私にとっては母なんですが、みなさんにとっての「想う人」を思い浮かべたり重ねたりして是非聴いて欲しいんです。
EMTG:分かります。この曲は凄く主観と鳥瞰が居合わせており、通常このような感情が込もった歌だと、自分の想いだけを詰め込むタイプが多い中、この曲はやや違うなと感じながら聴いてました。
長屋:実はこの曲を書いた当初は、自分の想い一辺倒でした。この気持ちをずっと伝えたかった分、もっとパーソナルなものだったんです。そこからどんどん幅広く多くの人に伝えたい、気持ちを重ねてもらいたいと気持ちが移っていって。「私はこう思ってますが、みなさんもそうですよね?」といった気持ちに行き着きました。
EMTG:先ほど「先にタイトルがあってそれに引っ張られて」とおっしゃってましたが。
小林:もうこれは当初から、“「想い人」っていう曲を作るぞ!!”と作曲に挑んだんです。だいたい僕の仮タイトルは途中で変更されるんですが(笑)、このまま採用されて。タイトルは僕の大事な人のその大事な人を想ってつけたし、作曲していきました。
長屋:ほんと曲にピッタリだし、いいタイトルだなって。私たちの曲でタイトルから拡げていったのは過去に「アウトサイダー」ぐらいしかなくて。そんな中、この「想い人」って言葉は大事にしたかったんです。強い言葉じゃないですか「想う」って。だから、歌詞の中にあえてこのワードを出さなくてもいいな、と思って入れなかったし。色々なものを想像させる強さもありますからね、このワードには。
EMTG:この曲は凄く歌い継がれていく歌だろうなって。娘が母にこのような気持ちになったり、その娘の娘がまたある時にこんな気持ちになったり……。誰かに対して想い、その想っている人も誰かのことを想って……と連綿的に繰り返されていく感じがして。
長屋:その不変性は考えました。色々な流れや流行り廃りがある中で、いつ聴いても響く曲にしたくて。人が人を想う気持ちって、この先も形は変わるかもしれないけど、永久的に続いていくと思うし。それに向けて思いを馳せて書いた面もあります。自分の世代もですが、親世代にも響いたり、この気持ちは伝わってくれるんじゃないかなって。
peppe:お母さん世代にもとても刺さる曲だと思います。従妹のお母さんからも、「いい曲だね」と連絡が来ましたもん。自分が過去に経験したり、今そう想われていることが伝わったんでしょうね。
長屋:若くて今は分からなくてもいつかは分かる日が来るものですよね。
穴見:想ってても口に出せない人もいるかもしれない。そんな方は是非この曲を通して、その想いを伝えて欲しいです。
EMTG:ところでどうでしたか? 自分たちの初の映画主題歌が実際のスクリーンから流れた瞬間は?
長屋:かなり気恥ずかしかったです(笑)。(観ている間)それまで映画に凄く集中し感情移入していたこともあって、自分が主題歌であったことなんて忘れていたんです。そんな中、「想い人」のイントロが流れ出してきて……。一瞬で我に返りました(笑)。でも、なかなかこういった経験って出来ないよな……って。しみじみ感じました。
小林:もう曲が流れ出すタイミングがベスト過ぎて。「きたーっ!! どうですか?みなさん?」って(笑)。
peppe:私、学生時代にこういったタイプの映画が好きでかなり観ていて毎度感動していたんですが、今回はそこに自分たちの曲ですから、ねぇ。ある種、自然過ぎて。流れた時にはかなり没頭していたのとストーリーに溶け込んでいたので実感が湧かなくて。観終わった後からジワジワと(笑)。
EMTG:そういえばこの「想い人」のMVは、かなり映画とリンクしてましたね。
穴見:間あいだに自分たちの演奏シーンのフリーズがインサートされているんですが、その部分は基本、実際に自分たちフリーズしているんです。じっとしておかないといけなかったので、途中若干プルプルしそうになりましたが、なんとか頑張りました。
EMTG:11月からは1ヵ月にわたりワンマンツアー「リョクシャ化計画2019」も行われますね。
長屋:会場も増えて、キャパも上がり、今回の東名阪はホールでもあるんです。かなり初めてづくしのツアーになりますが、セトリ、演出、ライブでのアレンジ等、かなり色々なことをしたいと考えているので、楽しみにしていてください。かなりパワーアップもしていて、必ずみなさんの想像を超えるライブを魅せますから。是非各会場遊びに来て欲しいです。

【取材・文:池田スカオ和宏】





緑黄色社会 / 想い人

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リリース情報

配信限定「想い人」

配信限定「想い人」

2019年08月30日

ERJ

01.想い人

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緑黄色社会ワンマンツアー
「リョクシャ化計画2019」

11/08(金) 宮城・仙台Rensa
11/09(土) 新潟 GOLDEN PIGS RED STAGE
11/15(金) 香川・高松MONSTER
11/17(日) 北海道・札幌ペニーレーン24
11/22(金) 広島 クラブクアトロ
11/24(日) 福岡 DRUM LOGOS
11/30(土) 愛知・名古屋市公会堂
12/06(金) 大阪・NHK大阪ホール
12/08(日) 東京・昭和女子大学 人見記念講堂

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FM802 30PARTY Eggs presents
「MINAMI WHEEL 2019 EXTRA EDITION」

10/12(土) なんばHatch

緑黄色社会 one-man live in 八王子祭
10/13(日) 工学院大学 八王子キャンパス 体育館

LIVE HOLIC vol.25
10/14(月・祝) 京都MUSE

広島FM “MEET the RADIO”
大窪シゲキの9ジラジ in 福山平成大学御幸祭

10/20(日) 福山平成大学 御幸祭メインステージ

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。



■配信情報

緑黄色社会 / 配信限定「想い人」
ダウンロード、ストリーミング
https://erj.lnk.to/9X4oQWN

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