teto、全15曲収録の最新作『超現実至上主義宣言』

teto | 2019.10.23

 前作にあたるアルバム『手』を出して以降、精力的なツアーを通してどんどん大きく成長を遂げているteto。いったい何が成長したのか? その答えはニューアルバム『超現実至上主義宣言』にある。ソングライターである小池貞利のパーソナルな景色を切り取っていた前作から、その基本となるサウンド感やテーマは引き継ぎながらも、今作の楽曲たちは明らかに自分以外の他者と対峙している。そして明確な相手が浮かび上がってきたからこそ、そのメッセージはよりストレートに、そして切実になっている。いったい今彼らは何を考え、何を表現しようとしているのか。以下のインタビューからそれを掴み取ってほしい。

EMTG:まずはアルバムを作り終えての手応えをお願いします。
福田裕介 (Dr):前も15曲で今回も15曲で。30曲通して聴けるぐらいのアルバムになったと思います。
佐藤健一郎 (Ba):半年ぐらいかけて録って。録り終えてからちょっと経ちましたけど、聴き込んでいくと、変わったところもありながら大事にしてるところはそのままだったりして。前作と聴き比べるとおもしろいですね。
山崎陸 (Gt):ツアーとかライブを通してできることの幅が増えて。前のアルバムより色濃く反映されてるんじゃないかなって思うんで。自分なりに手応えがあります。
EMTG:前作も15曲、今作も15曲というのは何かこだわりがあるんですか?
小池貞利 (Vo&Gt):今まで15曲のアルバムを聴く機会が結構多かったんですよね。15曲と長い曲数の中でも飽きないアルバムをドーンと2年連続で出せたらいいかな、満足できるかなっていうのは……一回、一区切りというか。そういうのはありましたね。
EMTG:シングルの楽曲もありますけど、この15曲、できた時期は結構バラバラなんですか?
小池:バラバラですね。去年アルバム出してからずっとツアーしてましたし、今年も梅雨ぐらいにワンマンツアーとかしてて、みんな結構疲れて忙しいなかだったんですけど、どうしても今年中に15曲で出したいと言ってたんで、ツアー中も休みの日に4人でスタジオに入って、休息もままならないままやったりして(笑)。
福田:前の15曲は再録もあったんですけど、単純に今回のほうが完全新曲というものが多くて。
佐藤:ツアー先で時間がないところで楽曲を制作したり、ライブ終わって次の日作ってまたライブしてとか。それが音にもかかわってきたりするのかなって思いましたね。
EMTG:どういうアルバムにしたいと思っていました?
小池:前作と重ならないようにというのはあったんですけどね。でも自分たちの根底にあるものからかけ離れたことをすると僕らも聴いている人も追いつかなくなっちゃうので、そこはどうしてもかけ離れられなかったというのはありますね。ま、かけ離れる必要もないんですけど。だから特に大きく変化をさせようとか考えたわけではなかったです。
EMTG:ちなみに、改めて振り返って、『手』というアルバムはどういう作品だったと思いますか?
小池:すごいパーソナルなものだったと思いますね。でもそれがそのときやりたかったことなので、そのときは満足するものになったんですけど、ちょっと物足りないところも増えてきて。ライブをしていくうちにだったり、自分で曲を作るときもそうなんですけど。
EMTG:確かに、すごくパーソナルなことを歌っていた前作から、今作は聴き手に何かを投げかける、メッセージするアルバムになったなと思ったんですよね。
小池:まあ、もともと相手がいるってことはもちろん生きていく上で誰でも考えることなので、それが曲に反映されていないのはどうなのかなっていうのはあったんですよ、前作のときから。ただそれはタイミングじゃなかったというか。少しずつ時間を経て、今このタイミングだからこそ面と向かって言えること、歌えること、バンドとして演奏できることっていうのが出てきて。だから次のアルバムはまた全然違うものになるかもしれないし、俺はそれで全然いいと思うんですよね。
EMTG:うん。それで今tetoが言いたいメッセージというところでいうと、前回のO-EASTでのワンマンでサダくんが「革命なんて起こさないでくれ」って言っていたのが印象的だったんですね。「ねぇねぇデイジー」の歌詞ですけど。それってある意味今作でのtetoの姿勢を象徴しているように感じたんですよね。わりとロックバンドって革命を起こしがちじゃないですか。
小池:起こしたがりですよね(笑)。それもかっこいいと思うんですけどね。でも俺はいいかなっていう。「いいかな」って思ってる人はきっと自分以外にもいて。もしかしたらメンバーもそうかもしれないけど、そういう人がいると革命が一方的な暴力になっちゃうので。だったらそれよりもっと身近なものを音楽にしていたほうが楽しいんじゃないかなって思いますね。
EMTG:「革命を起こすな」というのは、要するに今生活しているこの場所とか時間とか人に対する肯定だと思うんです。
小池:ああ……前作のときよりは、とくにメンバーのことを考えるようになっていて。前作は自分のことだけをほぼ歌っていたので。それはそれでよかったんですけど、バンドが続いていく上で、自分がこれやりたい、あれやりたいって言ってメンバーにそれを聞き入れてもらってやってきているので。そこは置き去りにはどうしてもできないというか、そういう気持ちに向き合うことが多かったですね。
EMTG:今作の曲には「君」とか「あなた」とか、相手がいる曲が多いなって思うんですけど、それはもちろんtetoの音楽を聴いてくれる人、それから音楽と関係なく出会った人はもちろん、そこにメンバーも重なっているんですね。
小池:もう全部だと思うんですよね。そんなにすごく多いわけじゃないですけど、身近にいる人とか。こないだも実家行って、自分からバンドしてるって言ったわけじゃないですけど、バレちゃったので(笑)。それで音楽のことを訊かれたりとか、「身近な人を大切にしなさいよ」みたいなこと言われたりとか。そりゃそうだよなあって思ったので。そういう時期なのかなあって。
EMTG:メンバーから見てサダくんの変化みたいなものを感じるところはあったりしますか?
福田:前よりは開けている感じはしますね。いろんな人に向いてる。
佐藤:日常はわからないですけど、音楽的には他に対する広がりがある作り方というか。今回の曲はそういうふうに聞こえますね。
山崎:もちろん変わったところはいっぱいあると思いますけど、本人を前にして言うのは恥ずかしいんで――。
小池:割愛させていただきます(笑)。
EMTG:まあ、でも感じているものはあるってことね(笑)。
山崎:あります、あります(笑)。
EMTG:具体的に、制作におけるコミュニケーションみたいな部分で変わったところはある?
小池:作り方自体は変わってないですけど、求めるものは変わってきたのかな。フレーズだったり弾き方だったり叩き方だったり、あまり言わなかったことを言うようになったし、それは他のメンバーのなかでも言い合うようになってるというのはあるんじゃないかな。
EMTG:今回のアルバム、とくに後半の「コーンポタージュ」以降の5曲というのがアルバムのメッセージの肝だと感じたんですが。
小池:「コーンポタージュ」は作ったのいつだっけ?
佐藤:結構前。アルバムを作り始めた初期にレコーディングしたと思いますね。
小池:作ったときのことはあんまり覚えてないですけど、楽しい日があっても悪い日があっても、それは1日で終わりじゃないので。じゃあ次はどうしていこうかっていう、そのまんまですけどね。
EMTG:でも、それをすごくストレートに言っている感じはしませんか?「ただいまおかえり」とか「LIFE」もそうですけど、すごく率直に書いているなっていう感覚なんですけど。
小池:そうですね。以前はどうしても変化球が多いというか、もともとの性格もあって少し癖をつけるというのがあって。でもここいらでちゃんとストレートを投げられないとなって思いましたね。それも時期なのかな。もう少し王道というかストレートというか、それをこの4人で出すとどうなるのかなっていうのがあって作ってみた感じはありますね。
EMTG:それもやっぱり、受け取る人とのキャッチボールを成立させるためという気がするんですよね。そこの意識の変化が大きいんじゃないかなあと思うんですが、どうですか?
山崎:ああー。でも歳を取ったからなんですかね。自分が理解できなくても、他人が大事にしているものは大事にしたいっすね。前は「こんなもん」って感じだったんですよ。でも僕じゃないんで、その人は。
小池:よかったりするしね、人がいいって言ってるものって、結局。
山崎:そうなのよね。なんでかはわかんないんですけど……シイタケを食えるようになったみたいなもんですよね。大好きなんですよシイタケ、今(笑)。
佐藤:周りを考えるようには確かになりましたね。前はライブも自分が気持ちよくできたらいいなっていうような自分本位のところが大きかったんですけど、やっぱりライブって自分たちとお客さん、スタッフも含めてみんなで作るもんだと思うので。そういうことを考えながらやれるようになりましたね。歳を取ったからなのかわからないですけど(笑)。
EMTG:全部理由が「歳を取ったから」って、おっさんバンドじゃないんだからさ(笑)。
小池:おっさんバンド(笑)。
福田:(笑)。僕も、お客さんの顔とかもゆっくり見れるようになってきましたね。単純に楽しめるようになったかな。
EMTG:その感じって、今回のアルバムにすごく出ている気がするんですよね。
小池:なんか、自分勝手に――そういう表現はずっとしてきてないつもりなんですけど、たとえば「もっと愛をくれ!」みたいな感じはダサいなというのがあって。すごく独りよがりなのはダサいなというか、自分はしないなと思っていて。自分は寂しい、孤独だというのはわかるんですけど、それを表現にしちゃうと虚しいし、それを表現していること自体が寂しいなって思うんですね。だから、自分の感傷的になるところとか叙情的なところというのをいかに温かく、楽しく出せるかというほうが音楽としてはいいなと思うんですよね。
EMTG:つまり、さっき山崎くんが言っていた「シイタケが食べられるようになった」っていうのは、大げさにいうと自分はいろんな価値感とか感性があるなかで生きているんだっていうことだと思うんですよね。今のサダくんの話も同じで、みんながいる世界で生きていこうよっていう。『超現実至上主義宣言』というのはそういう意味合いなのかなって、僕は感じました。
小池:そうですね。そういうのもあると思いますね。

【取材・文:小川智宏】



teto セカンドアルバム「超現実至上主義宣言」トレイラー

tag一覧 アルバム 男性ボーカル teto

リリース情報

超現実至上主義宣言

超現実至上主義宣言

2019年10月23日

UK.PROJECT

1.光るまち
2.蜩
3.kill&miss
4.ねぇねぇデイジー
5.suimo amaimo
6.ラストワルツ
7.螺旋階段
8.夜想曲
9.不透明恋愛
10.声のもと
11.コーンポタージュ
12.時代
13.ただいまおかえり
14.全肯否定
15.LIFE

お知らせ

■コメント動画




■ライブ情報

ボロフェスタ2019
10/27(日)京都KBSホール・CLUB METRO

SUPER JUMPIN’JACK vol.3
10/29(火)大阪BIGCAT

2 MAN LIVE Vol.1「恋とジャーナル」
10/31(木)下北沢SHELTER

GLICO LIVE “NEXT”SPECIAL
11/11(月)大阪BIGCAT


teto 47都道府県ツアー
「日ノ出行脚」

[2019]
11/15(金)千葉LOOK
11/28(木)郡山CLUB ♯9
11/30(土)山形ミュージック昭和SESSION
12/01(日)秋田CLUB SWINDLE
12/05(木)長野LIVEHOUSE J
12/07(土)富山SOUL POWER
12/08(日)岐阜ants
12/13(金)神戸太陽と虎
12/15(日)和歌山CLUB GATE
[2020]
01/19(日)HEAVEN’S ROCK さいたま新都心VJ-3
01/21(火)滋賀B-FLAT
01/23(木)長崎DRUM Be-7
01/25(土)大分DRUM Be-0
01/26(日)佐賀GEILS
01/28(火)岡山PEPPER LAND
02/08(土)徳島club GRINDHOUSE
02/09(日)松山Double-u studio
02/11(火祝)静岡UMBER
02/19(水)奈良NEVERLAND
02/21(金)熊本DRUM Be-9 V2
02/23(日)鹿児島SR HALL
02/24(月休)宮崎SR BOX
02/26(水)四日市CLUB CHAOS
02/29(土)高知X-pt.
03/01(日)京都磔磔
03/07(土)桜坂セントラル
03/14(土)HEAVEN’S ROCK 宇都宮VJ-2
03/28(土)甲府KAZOO HALL
04/02(木)苫小牧ELLCUBE
04/04(土)北見ONION HALL
04/05(日)旭川CASINO DRIVE
04/18(土)福井CHOP
04/19(日)金沢AZ
04/23(木)周南rise
04/25(土)松江AZTiC canova
04/26(日)米子AZTiC laughs
04/29(水祝)高崎club FLEEZ
05/14(木)水戸LIGHT HOUSE
05/16(土)盛岡CLUB CHANGE WAVE
05/17(日)青森quarter
05/31(日)川崎CLUB CITTA’
06/11(木)高松DIME
06/13(土)なんばHatch
06/14(日)名古屋CLUB QUATTRO
06/20(土)福岡DRUM Be-1
06/21(日)広島セカンドクラッチ
06/27(土)新潟GOLDEN PIGS RED STAGE
07/03(金)仙台CLUB JUNK BOX
07/05(日)札幌PENNY LANE 24
07/17(金)Zepp Divercity TOKYO

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

トップに戻る