BLUE ENCOUNTが考えるヒーロー像とは? 現代のロックヒーローが教えてくれる新たな光――新SG『ポラリス』インタビュー

BLUE ENCOUNT | 2019.11.21

 『バッドパラドックス』から2ヶ月、11月20日にリリースされるBLUE ENCOUNTのニューシングル『ポラリス』。表題曲はTVアニメ『僕のヒーローアカデミア』第4期オープニング曲としてオンエア中だ。“ポラリス”という星の光はどんな意味を持つのか、そして今のブルエンが考えるヒーローとはいかなる存在なのかということを、絶賛ライブハウスツアー中のメンバー4人に訊いた。

EMTG:ニューシングル『ポラリス』のインタビューなんですが、まずは目下の「BLUE ENCOUNT TOUR 2019“B.E. with YOU”」の手応えから伺っていきたいです。
田邊駿一(Vo・G):はい。6月から7月にかけてのホールツアーでは、今思うと、ライブハウスの感覚で廻れたんですよ。お客さんの熱量がすごくて、お客さんと一緒に成し遂げることができたツアーだったと思うんです。だからこそ今回のライブハウスツアーでも、しっかり後ろの方まで音を飛ばすことが大事だと思っていたんですけど、お客さん一人一人の想いが顔に出ているのが見えるんですよね。その感覚が久しぶりで、初日の千葉LOOKからいきなり2曲足したりして。ダメだダメだ、ペース乱れてるじゃん!って、その日すぐにうちの近くの牛丼屋に集まって作戦会議しましたね。
辻村勇太(B):お客さんの誘い方は、ホールとライブハウスで違うと思うんですけど、基本的に僕らの姿勢がホールとライブハウスで変わるのは良くないなって思いました。お客さんからすれば、会場の形も天井の高さも違うわけで、そんなときこそお客さんがイメージするブルエンをしっかりやらなきゃ、ということを、今回のライブハウスツアーでもより感じていますね。
江口雄也(G):僕らとしては初めての試みだと思うんですけど、セットリストが毎回、異常に違うんですよ。これまでのツアーだったら、ある程度土台になる曲があったんですけど、もう1曲目から違う、みたいな。何年もやっていなかった曲だと、さすがに体が覚えていないんですよね(笑)。でもツアー日程の合間にはあまり練習もできなくて、時間的にシビアな中でいかにライブ本番までに仕上げるか、ということをストイックにやっています。お客さんを楽しませるのが一番ですけど、演奏に集中しすぎて楽しそうに見えないのは良くないし。毎回葛藤しながら、バランスを考えてやっています。
高村佳秀(Dr):久しぶりにやる曲もかっこいいなって、あらためて感じるんですけど、その上で、最新の曲の方がもっとかっこいいなって思うんです。自分で一番盛り上がるのが最新の曲、ということを、今までもそうだったはずなんだけどあまり意識したことがなくて。ちゃんと自分たちを更新してきたんだなということを、ライブ中に実感していますね。
EMTG:なるほど。そのツアー終盤にリリースされる『ポラリス』なんですが、『僕のヒーローアカデミア』のオープニングテーマとなっています。オファーを受けてからの経緯を伺ってもいいですか。
田邊:ホールツアーが始まる前後にお話をいただきました。前のシングル曲「バッドパラドックス」では、TVドラマの制作サイドから歌詞のリライトを頼まれまして。最初はドラマ愛全開の歌詞を書いていたんですが、逆にブルエンとしての想いやメッセージを込めて欲しい、って。じゃあ「ポラリス」ではその気持ちを絶やさずに、BLUE ENCOUNTを120%出したいな、という感覚でした。歌い出しの《あの日「守る」と決めた/約束はこの胸に》というフレーズは、仮歌の段階から浮かんでいたんですよね。制作はタイトなスケジュールだったんですけど、バンドを15年やってきたからこそ出てきた歌詞という気がします。よっちゃん(高村)も言っていましたけど、最近の曲の強さというのはそこだと思うんですよね。自分の心の中をちゃんと歌詞に出来るようになったという意味で、やっと今、スタート地点に立っているのかなと思います。アニメと僕自身、両者の世界観を踏まえた上で、自分の言いたいことを言っている歌詞です。
EMTG:「ポラリス」では、現代のヒーロー像を考えさせてくれる『ヒロアカ』と、自己犠牲をテーマにロックヒーローを引き受けようとしているブルエンがシンクロしていると思います。今回4人には、「ブルエンの考えるヒーロー像」というものを教えて欲しいんです。なぜこんなことを訊くかというと、ヒーローはすでにいろんな形、いろんな角度で描かれてきて、ヒーロー像を伝えるのが難しくなっている時代だと思うんですよね。
田邊:ああー、おもしろい。
辻村:やっぱり十代の、ちょうどバンドをやり始めた頃にELLEGARDENと出会って、フェスの映像とかを観ていたから、共感できたんだと思うんですよ。でも、かっこよく音楽をやっていくためにはいろんな情報が必要で、昔憧れていたものとはちょっと距離を置く時間があるんです。ELLEGARDENがかっこいいと思っていた自分たちと、進化するBLUE ENCOUNTがリンクしなきゃいけない。これまでやってきたことが一周回ってリンクして、「ポラリス」という曲が出来たと思っているので、そういう意味では原点に帰ってきているかなと思うし、今は胸を張ってヒーローに、ELLEGARDENに憧れているからって言えますね。
田邊:もちろん、颯爽と現れて物事を解決していくヒーローもかっこいいとは思うんですけど、こんなにボロボロになる?っていうぐらいボロボロにさせられて、それでもなかなか倒れなくて、弱々しい力でもどうにか敵を倒そうとしている姿というか。そんな行動力にいつだって胸を打たれるんです。ブルエンはどんなにでかいステージに立とうとも、そのボロボロさで勝負したいな、っていう。颯爽としたヒーローに憧れてはいたんですよ? そういうライブをしようとしても、最後には率先してボロボロになろうとしている自分がいるというか。でも、そっちの方が生きてるっていう感じがするんですよね。
江口:SNSやYouTubeが進んできて、昔よりもアーティストを身近に感じられる機会が多くなっていますよね。若い人は身近なぶん、ヒーローへの憧れの距離感を感じられなくなっているんじゃないかと思うんです。かっこいい先輩、ぐらいの感覚の人もいると思うけど、実際には見えない距離感じゃないですか。SNSで触れ合うことが出来たり、YouTubeでライブ映像も観られる環境の中で、それでもライブに行ってみたい、この人たちを生で体感してみたいと思わせるのが、今のロックヒーロー像なのかなって思います。
高村:圧倒的に強いヒーローもかっこいいですけど、何回も負けまくっている、負けを知っていて、それでもちゃんと立ち上がって歩く、走る、前を向くヒーロー像の方が僕は強いですね。誰かを救うにしても、それが大勢じゃなくて一人でもいいんですよ。誰かにとってのヒーローになるっていう、もっと身近で温かい存在というか。失敗をいっぱい知っている方が、強くなると思いますね。
EMTG:なるほど。田邊さんが「ポラリス」の歌詞の中で、愛や正義といった抽象的な言葉を使わずに、《この気持ちが初めての生きがいだ》という具体的なモチベーションを綴っていることが、今の時代のヒーロー像に繋がっていると思うわけです。
田邊:そうですね。原動力はやっぱり、生きがいを感じるかどうかだと思うので。今でも寝る間を惜しんでセットリストを考えたり、本当にしんどいんですけど、それでもステージに立って歌うと、気持ちいいー! 今日来て良かったあー! という瞬間があるから、俺たちはやり続けられるのかなって思います。その生きがいを誰かが受け取ったときに、愛だの正義だの言って欲しいんですよね。本当に『SICK(S)』以降、芯になるメッセージが出てきていて、BLUE ENCOUNTの楽曲があらためて道しるべになるように、困ったときにその光を辿って欲しいという気持ちで書いています。「もっと光を」という曲を書いたときは、その光が何なのかよく分からなかったんですけど、僕の中で「もっと光を」を越える曲ができたからこそ、あの光は「ポラリス」という星だったんだよって、今回言えたかなと思います。
辻村:「もっと光を」を初めてライブでやったとき、お客さんは曲を知らないのに、2番目のサビぐらいでもう歌おうとしてくれていたんですよね。一生懸命に聴いて、想いを受け止めてくれているっていうか。「ポラリス」はその手応えに近いですね。こいつら次はどんな光を見せてくれるのかなっていう期待に、応えられている曲だと思います。
江口:ギターに関して言うと、ライブでお客さんがめちゃくちゃ手元を見てくるんですよ。こっちを見ているんだけど、目が合うわけじゃない(笑)。でもそれは、制作しているときから意図していたことだったので、自分の中の課題をひとつクリアできたかな、という気持ちです。
高村:「ポラリス」は、掘り下げようと思えばどれだけでも掘り下げられる曲だと思うんですよ。セットリストの大事な部分に置いて、めちゃくちゃ刺さる曲にもなるだろうし、自分たちの演奏しだいで全然響き方が違う曲になる。わりとストレートな楽曲ではあるけど、かなりやり込まないと、本当の意味では伝わらない気がします。僕らにとっても大事な指標というか、“ポラリス”なんですよね。
EMTG:ありがとうございます。『ポラリス』の期間生産限定盤(アニメ版ジャケット)では既発曲がカップリングになっているんですが、初回盤と通常盤に収録された新曲「girl」についても、最後に訊いておきたいです。これがまた、いい曲なんですよね。全編が英語詞の、レイドバックしたグルーヴの8ビートロックで。違いが分かるブルエン、という感じです。
全員:(笑)。
田邊:めっちゃ嬉しいね(笑)。どっしりした渋めのロックで。たしか、行きつけのビアバーで古いギャング映画みたいなのを観ていて、こういう曲が流れていたんですよ。妙にかっこいいなって思って。そのマインドがそのまま出たみたいな曲です。歌メロや江口のギターフレーズで奇を衒うというよりも、構成をおもしろいものにしたくて。辻村にも歌メロにどう絡むかを考えてもらったり、よっちゃんは間奏のドラムをいかに渋く叩けるかを試して。Aメロがあまりにも渋すぎたので、そこだけ江口に指摘してもらって、明るめなメロディに直しましたね。
江口:早くライブでやってみたいです。(ツアー終盤の)Zepp Tokyoですかね。気持ち良さそう。

【取材・文:小池宏和】





BLUE ENCOUNT 『ポラリス』Music Video

tag一覧 シングル 男性ボーカル BLUE ENCOUNT

リリース情報

ポラリス

ポラリス

2019年11月20日

Ki/oon Music

01.ポラリス
02.girl

お知らせ

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■ライブ情報

BLUE ENCOUNT TOUR2019
「B.E. with YOU」※振替公演

11/25(月) Live House浜松 窓枠

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C3AFA Singapore 2019
~I LOVE ANISONG~

11/29(金)/11/30(土)/12/01(日) Suntec Singapore Convention & Exhibition Centre(シンガポール)

METROCK ZERO 2019
12/07(土) EX TEHATER ROPPONGI

LACCO TOWER 2マンツアー2019
五人囃子の駆け落ち騒ぎ~終大阪~
「青き出会いにかりそめの終焉」

12/14(土) 梅田BananaHall

MERRY ROCK PARADE 2019
12/22(日) ポートメッセなごや1号館~3号館

FM802 30PARTY FM802 ROCK FESTIVAL
RADIO CRAZY 2019

12/26(木) インテックス大阪

COUNTDOWN JAPAN 19/20
12/31(火) 幕張メッセ国際展示場1~11ホール、イベントホール

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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