ゆびィンタビュー vol.17 vivid undress
ゆびィンタビュー | 2019.11.29
PROFILE
vivid undress
「2014年、別々に音楽活動をしていたメンバーが出会い結成されたロックバンド、通称"ヴィヴィアン"。
実力派のメンバーが奏でるテクニカルかつソリッドなサウンド、相反するような大衆性のあるヴォーカルkiilaの歌声を武器に、"J-POP突然変異型ROCKクインテット"と称し、活動を始める。
2018年、2019年と代官山UNITで2年連続で行なわれたワンマンライブはともにSOLD OUT、現在その他都内ライブにおいてもSOLD OUT必至となっている。
12月4日バンド史上初となる1stフルアルバム「混在ニューウェーブ」のリリースを持って、待望のメジャーデビューを果たす。」
- まずは出会いから結成に至るまでの流れを伺いたいです。もともとは皆さんそれぞれで音楽活動をされていたそうですね。
kiila(Vo)
私はもともとシンガーソングライターとしてソロで活動していたんです。地元は大阪で、上京してきたんですけど、なかなか上手くいかなくて「もう音楽やめようかな」って漠然と思い始めていて。kiila
でも当時バイトしていたライブハウスのブッキングマネージャーの方が「やめちゃダメだよ。俺がいいヤツを紹介するから」って、まずギターのyu-yaを紹介してくれて、そこからyu-yaが一緒にバンドをやりたい人がいるからってベースのsyunnを連れてきてくれて。それとは別に初代のドラムも決まっていて、その人がキーボードのrioさんを連れてきてくれて、2014年に最初のメンバー5人が集まったんです。- yu-yaさんとsyunnさんはどういう関係性だったんですか?
syunn(Ba)
当時、お互いにやっていたバンド同士がたまたま知り合いで、対バンとかもよくやっていたんですよ。ふたりとも同い年だったし……仲良かったかどうかはちょっと覚えてないんですけど(笑)。- yu-yaさんは一緒にやりたいと思ったから誘ったんですよね。それって仲が良かったからでは?
yu-ya(Gt)
なんででしょうね?全員
(爆笑)。yu-ya
なんだか浮かんだんですよ、syunnが。rio(Key)
「なんでこいつ誘ったんだろう?」とか思ってない?(笑)。syunn
でも、たしかにyu-yaは輝いてたんですよ。だから僕もyu-yaとバンドやれたらなって思っていて、そしたら声をかけてもらったので。- 実は相思相愛じゃないですか。rioさんは?
rio
初代のドラムと僕の地元が同じなんですよ。熊本でバンド活動をしていた先輩・後輩っていう仲だったので、その繋がりですね。当時は僕、今と全然違う、ハードコアみたいなバンドをやっていて(笑)。- え!
rio
だから全然違う畑にいたわけですけど、最初は「kiilaちゃんのバックバンドとして弾いてくれない?」っていう誘われ方だったんですよね。で、最初に呼ばれて行ったのが制作現場だったっていう。- 制作現場?
rio
今まさに曲を作ってますっていうところにいきなり行ったんです。そこにはすでにメンバーがいて作業してたんですけど、僕はもう「この人たちは何をしているんだ?」と(笑)。kiila
スタジオで音合わせするんじゃなくて、それぞれにパソコンを持ち込んでDTMでいきなり曲作りから始めたんですよ。- その時点でもうただ者じゃない感満載です(笑)。
rio
「気持ちでジャーン、じゃないの?」って思ったのを覚えてますもん、非常に(笑)。- 音合わせはしていなくとも、さすがにkiilaさんの歌声は聴いていらしたんですよね?
syunn
いや、話をもらったときはまだ全然聴いたことがなくて。たしか僕はその曲作りのときに初めて聴いたんじゃなかったかな。yu-yaはライブを観に行ったんだよね?yu-ya
紹介してくださった方から1回ライブを観に来てほしいって誘われて、そのときは誰とやるか教えてもらってなかったんですよ。で、「すごい上手い人がいるな」と思ってライブを観てたら、「実はさっきの子が……」みたいな流れで紹介してもらって。- じゃあkiilaさんの第一印象は“歌の上手い人”?
yu-ya
はい。独特の声だし、いいなって。syunn
僕も最初に聴いたとき、素直に上手いなと思いました。ホント個性的で魅力のある声だなって。- ちなみにkiilaさんはいつ頃からシンガーを志していらしたんですか?
kiila
幼少の頃からずっと歌をやりたかったんですけど、私の家がめちゃくちゃ厳しかったんですね。こっそりオーディションを受けたりもしたんですけど、ずっと反対され続けていて。kiila
でも高校卒業後の進路を決めるときに「音楽やりたいです」って頭を下げました。すっごい怒られましたけど、めちゃくちゃ説得して上京したんです。でも全然上手くいかなくて。作曲も行き詰まってしまうし、お客さんも全然増えないし、才能ないな、このまま音楽をやっていても意味ないんじゃないかなって。kiila
当時はとりあえず曲を作ってライブをすることしか頭になかったんですけど、それだけじゃダメなんだってことがわかったのはバンドをやり始めてからでしたね。- このバンドに巡り会ったことが突破口を開いた。
kiila
ホントすごいと思いました。みんながもう上手すぎて、私がやりたい楽曲のイメージもすぐに叶えてくれるし、こんなメンバーがよく集まったなって。私は奇跡だと思ってるんです。脳みその構造が全員違ってるんですよね。何か選択肢があったら、5人全員バラバラなものを選ぶし、育ってきたルーツも全然違う。なのにひとつの曲をやるとまとまるっていうミラクルがもう楽しくて楽しくて。「これは新しいことができる!」って思いましたね。kiila
私が上京して挫折したひとつの要因でもあるんですけど、東京って上手い人や個性的な人がたくさんいて「私ってなんだろう?」みたいな。めちゃくちゃ埋もれてるし、こんなところで勝っていける自信がないって思ったんです。でも、メンバーに出会ってこれなら本当に新しいこと、特別なことができる――このバンドでだったら勝負できるって。それは最初に曲作りをした1曲目から確信しましたね。- そこからインディーズで5年間、活動されてきたんですよね。でもバイオグラフィーを拝見するに、なかなか紆余曲折もあったようで。
kiila
ありました(笑)。- 2017年には所属事務所が閉鎖、自主レーベルを立ち上げられていますが、そのへんの経緯は?
kiila
事務所に所属してはいたんですけど、バンドとして未完成のまま動いていたので、その頃は自分たちの意志がまだ何もなかったんです。言い方は良くないですけど、やらされていることのほうが多くて。徐々に自分たちの中にやりたいことが芽生えてきてもできなかったりして。そんなときに事務所が閉鎖します、ということになって。kiila
実は当時、メジャーとの契約も決まっていたんですけど、それも白紙に戻っちゃったんです。「だったら自主でやろうよ」って2代目のドラムが言ってくれたのをきっかけに、自分たちでレーベルを立ち上げたんですよ。それから2年間、ずっと自主でやっていました。- かなり大きな決断ですよね、すべてを自分たちで切り盛りしようというのは。
rio
CDをリリースしたいっていう気持ちがやっぱりあったんですよ。どこかに所属していないとCDって出せないと思ってたんですけど、事務所を探しても見つからないし、それでも少なからず待ってくれてる人がいたので、このままリリースを先延ばしにはしたくないなって。だったら自主で、という選択をしたんです。- そうして発表されたのが3rdミニアルバム『ENDLESS』。その頃には自分たちがやりたい音楽の方向性や、自主性も含めた個性というものが芽生えてきていたんですか?
kiila
なんなら、その作品でようやく芽生えたんじゃないかって感じでした。それこそ作詞作曲も編曲も全部メンバーだけでやったことで、音楽に対しても、バンドに対しても、ライブに対してもいちばん向き合えたんじゃないかな。それまでとはだいぶ変わったと思います。- 考えようによっては、事務所の閉鎖が実は大きなチャンスだったのかもしれない。
kiila
後々になって思えば、ですけどね。そのときは必死だったのでよく覚えてないです(笑)。- そりゃ大変ですよね。スケジュール管理や経理的なことも全部ご自身たちでやっていらしたんでしょう?
kiila
はい。主に事務作業をやってくれてたのはrioさんですけど。rio
こんなにも大変なのかと思って、病んでましたね(笑)。自分のやることは音楽だけじゃないんですよ。リリース、流通、グッズの話、どうやってお金を運用しようか、とか。ミーティングだらけだし、チェックしなきゃいけない書類も山ほどあるし、「一体何をしてるんだろう?」って思ったりもして。rio
でも「絶対何かのためになる!」って言い聞かせてやってましたね。そもそも、みんなは計算に弱かったりとか(笑)、いろいろと特性があったので、「事務は自分が請け負うから、yu-yaは曲を書いて! kiilaちゃんは作詞して!」みたいな(笑)。kiila
役割分担しながら(笑)。- 自主で活動しながらも、いつかはメジャーに、みたいな気持ちはあったんでしょうか。
kiila
レーベルを立ち上げたときは正直なかったですね。とにかく新しい私たちを発信したいっていう想いのほうが強かったから、リリースできるならそれがいちばんで、メジャーとかインディーズとかは特に意識していなかったです。rio
でも自主でやることによって、自分たちのやりたいことがいち早くダイレクトにお客さんに伝えられたっていうのはあります。宣伝も自分たちでしなきゃいけないぶん、全部を丁寧にやることができるんですよ。rio
例えば、初めてのワンマンをやることになって、頑張ってチケットを売り切ろうって動いている僕たちの姿を如実に見てもらうことで、お客さんもドラマを観ているような……っていうと語弊があるかもしれないですけど、リアルタイムで感覚を逐一共有し合えるというか。そうやっていくなかで僕たちが本当にやりたいことっていうのもダイレクトに生まれてきて。- “本当にやりたいこと”って、具体的には?
rio
最初のワンマンで、代官山UNITをソールドアウトしたんです。ただ、それは2代目のドラムが脱退してしまうタイミングでもあって……。- 2018年3月31日ですね。
kiila
本当ならうれしい日のはずだったのに、応援してくれている人を悲しませる日にもなっちゃったんですよね。私たちのために日本全国、遠いところだと沖縄から来てくれた方もいて、そんな人たちを悲しい想いで終わらせたくないと思ったんです。kiila
実はそのワンマンの前、ドラムが脱退することが決まって残る4人で深夜のカフェに集まって話し合いをしたんですけど、そのときは私、正直バンドをやめようと思っていて。やっぱり自主でやってると上手くいかないことも多いんですよ。周りからは順調に見えていたかもしれないけど、個人的には結構打ちひしがれていて、疲れたなって。でも、そこでメンバーが「やるなら全力でやりたい」って言ってくれたんです。そもそもは私ひとりで始めていたことが、バンドになって、それがこうやって誰かの人生になっているんだな、だったら私も覚悟を決めようって。kiila
そういう気持ちでワンマンに挑んだときに「これだけの人が私たちのために来てくれたんだ。なら、この人たちのためにvivid undressをやろう」と思ったんです。そこから人生変えようぐらいの勢いで活動してきたので。rio
「この人たちを悲しませちゃダメだと思った」って、kiilaちゃんがこの間のワンマン(2019年3月23日/東京・代官山UNIT)のMCでも言ってたけど、そういう想いは自然にみんなの中にもあって。それって自主でやってきた期間が目覚めさせたものだと思うんですよね。- kiilaさん以外の皆さんには、やめるという選択肢はなかったんですか?
yu-ya
なかったですね。syunn
2代目のドラムが先陣切っていろいろやってくれてたので、言ってしまえば大黒柱がなくなるような、そういう不安はもちろんありましたけど。でも単純にもったいないって思っちゃったんですよね。rio
わかる!syunn
「これだけのメンバーが集まることなんて、たぶんもうないんじゃないか……それだったら納得いくまでやりたいな」と。- そんな大きな転機を乗り越えて、前を向いたvivid undressにtomokiさんが加わったんですね。
tomoki(Dr)
最初にサポートで参加したときは、もうヴィヴィアンは4年くらい活動してたんだっけ。kiila
そう、4年。tomoki
僕は4年間もやっているバンドを経験したことがなかったので、すごく経てきているものがあるなと思ったんですよ。いろんなことを経てきたからこその基盤ができているというか。みんな上手くて音楽的な面でも尊敬できるし、メンバーそれぞれに一本、芯が通ってる部分を感じて人間的にも羨ましいというか、憧れのような感覚もありましたし。yu-ya
……過去形(笑)。kiila
過去形だね(笑)。tomoki
ありますし!全員
(爆笑)。tomoki
このバンドに関わっていたら僕自身も成長できるんじゃないかなって。- みなさんはtomokiさんのドラムをどう思いました?
kiila
私はボーカルだからドラムがめちゃくちゃ重要なんですけど、相性がピタッとハマったんですよ。いろんな方にサポートしていただいた中でもtomokiは特にハマって、「あ、この人だ!」って。上手い人って無限にいますけど、相性はなかなか合わないんですよね。また奇跡を生み出してしまいました(笑)。syunn
すごく歌を大事にする叩き方というか、丁寧だし繊細さもあるからkiilaが言ったように絶対歌いやすいんです。僕もいつも歌を大事にしようと思って弾いているので、リズム隊としてもすごく合うなって。まだまだ粗い部分もありますけど、一緒に突き詰めていけたら最高のものができるんじゃないかなって思ったんですよね。kiila
伸びしろを感じたんだね(笑)。tomoki
俺、そんなこと言われてない……。kiila
きっと今日しか言わないよ(笑)。たぶん二度と言わない。tomoki
このインタビューの音源ください!全員
(爆笑)。- 今年3月のワンマンでtomokiさんの正式加入も発表されて、いよいよメジャーデビューとなるわけですが、実際にメジャーを意識し始めたのはいつ頃だったんでしょう。
kiila
『ENDLESS』の次の制作に入る前ぐらいから、やるならメジャーデビューしたいし、事務所も付けるっていう話し合いはしていましたね。具体的に何かが決まっていたわけじゃないけど、目標として絶対そこに行くと決めてました。自主のまま、どこまで自分たちでやれるか未知だったんですよ。次に何かを経験するにしても、このメンバーだけだと今までやってきた範囲のものにしかならないと思ったので、新しい脳みそ、新しい世界を知ってる人を入れたかったんです。私たちとは違う人が入ることによって、vivid undressの世界が広がっていけばいいなって。- そう思えたのも自主レーベルでしっかり活動してきたから、もう初期の頃みたいにはならないという自信がついたからでしょうね。
kiila
自信はつきましたね、最初のワンマンを経て。この人たちのためにデッカいバンドになりたいっていう想いがあったので、本当にファンのみなさんのおかげです。- 自主制作最後の作品となる4thミニアルバム『赤裸々』はそうした気持ちで作られたんでしょうね。ラスト曲「シンガーソングライター」はまさしくその意志表明みたいな曲だなと思いましたが。
kiila
そうですね、『赤裸々』はもうメジャーを見据えて作ってました。「シンガーソングライター」という曲は『赤裸々』を作るときにいちばん最初にできたんですよ。作品を表すいちばんの曲で。- あの曲を作ったときの気持ちが今に直結している、と?
kiila
そういうことになりますね、意志としても。- ただ、メジャーはメジャーで、そこに足を踏み入れるのはかなりの覚悟が必要だと思うんです。本当にたくさんの人が関わってきますし、自主とはまったく違う困難も降りかかってくるでしょうし。
kiila
自分で新しい世界に踏み込むって決めたけど、やっぱり今までやってきたことの中に新しい人が入ると、異物混入じゃないけどそういう気持ち悪さみたいなものも正直、最初は感じていて。あと「本当に大丈夫ですか?」みたいな不信感、スタッフ一人ひとりに対する警戒心は当初ありましたね。「ウウ~ッ(←うなり声)」って手負いのオオカミみたいな(笑)。rio
でも最終的には迷いはなかったです。絶対的にこの人たちは信頼できると思ったからこそ、一緒にやろうと決めたので。やっぱり絶対的に大事なのは事務所、レーベル、僕たちのコミュニケーションをどれだけ風通しよくできるかだと思うんですよね。ちゃんと僕たちの意志を汲んでくださる方たちだなと思えたし、そこはすべて満たされているな、と。kiila
やっぱり決め手は人間性でしたね。- そして12月4日についにメジャーデビュー作にして初のフルアルバム『混在ニューウェーブ』がリリースされます。フルアルバムで曲数が多いというのもありますけど、今までの作品の中でいちばんバラエティに富んでいますよね。まさに『混在ニューウェーブ』、名は体を表すってこのアルバムのことだなって。
kiila
そう思ってこのタイトルを付けました。結構いろんなことができるバンドなので、幅を見せられるアルバムになったと思っています。- 1曲も同じタイプの曲がないのに、すべてがしっかりvivid undressの色をしているし、特にkiilaさんの歌が改めてすごいですよね。こんなにも歌声そのものも、表現力も豊かな人ってそういないのではないでしょうか。
kiila
ありがとうございます! 好きなんですよ、いろんな声を出すのが。この曲にはこういう歌い方をしようとか、そういうのが好きで意識的にやってますね。言ったら“歌の役者”みたいな感覚でやってます。- では今回、作品を作るにあたってテーマにしていたことや、核となっていたものは?
kiila
核は、ロックバンドとしてかっこいいアルバムにしようっていうことですかね。メジャーのレーベル担当ディレクターの方と話し合って、とにかくかっこいい、ロックバンドとしてのアルバムを作ろうって。- “ロックバンドとして”というのがちょっと意外というか、今の時代、逆に新鮮かも。
kiila
たしかに。でも私たちもDTMで制作したりしてますけど、結局は魂というか、ライブにしても情熱的にやっているので、そういう面でロックだなと思うんですよ。rio
今作は特にロックですね。あと、さっき『赤裸々』の話が出ましたけど、メンバーから見ていてもその頃からkiilaちゃんの歌詞がリアルというか、真実味を帯びてきた部分がものすごく多くなったと思っていて。kiila
よりさらけ出してはいます。私はもともと人前に立つのが苦手なタイプだったんですよ。だから自分を作って表に出ることが多かったんですけど、『ENDLESS』を経て、前作の『赤裸々』からどんどん自分のままでいられるようになって。これまでは猫をかぶるじゃないですけど、シャットアウトして自分を見せずにやってきた部分も、素のままでお話できるようになったりしたことが作品にも表われたかなって。- やっぱり最初のワンマンを経験して“この人たちのために”という気持ちが強くなったからですかね? ちゃんと自分のままで向き合わなければ、と思えたとか。
kiila
それに関しては自分では意識してないんですよ、全然。無意識にそうなっていって、殻がどんどん破れていった。rio
でも明らかにkiilaちゃんの哲学が生まれ始めて、それに伴ってお客さんの詞に対しての興味というか、もっとこの哲学を知りたいっていう動きが出てきてるのも僕は肌で感じていたんです。なので「しめた!」と思っていて。きっと今はほっといてもいい詞が書けるんじゃないかな。そうやって歌詞にしっかり哲学があるからこそ、楽器隊が毎回好き勝手させてもらえてるってところもあるかもしれないですね。ちょっと変な、面白いフレーズを入れてみたりとか。- そこは見事に好き勝手ですよね(笑)。それぞれに技を繰り出し合ってる感じが聴いていても楽しくて。
syunn
いつもそうなんですけど、レコーディングでは先に入れた者勝ちっていう(笑)。yu-ya
その風潮はあるね(笑)。- それ、ウワモノは不利じゃないです?
yu-ya
そうなんですよ。でも順番的にはキーボードよりギターが先に入れられるので、ギターはいっぱい入れちゃいますね(笑)。rio
だからキーボードなんて避けまくりですよ。「ここにももう音が入ってる! じゃあ僕はこっちで遊んでやる!」みたいな(笑)。- なのに、まったく破綻していない、むしろ絶妙に調和しているのがまたすごくて。ところでリード曲として3曲目「コンキスタドールの現実闘争」はMVにもなっていますよね。この曲をリードに選んだ理由は?
kiila
1曲目と3曲目ですごく迷ったんですよ。バンド内でも意見が半々に分かれるぐらいだったんですけど。「コンキスタドールの現実闘争」ってレコーディングでいちばん最後にできた曲なんです。それによって総まとめというか、vivid undressのいいところを全部ギューッと詰めた感じもあったし、自分がボーカルとして歌っていたときにいろんな表情や歌い方もできたし、何よりシンプルにかっこいいと思ったんですよ。kiila
メジャーデビューするって、イメージ的には「メジャーに行って変わったよね」みたいなことを言われがちじゃないですか。でも、それを絶対に言わせないぞと思って。私たちはこんなにかっこいいバンドだっていう意志表明をこの曲でできると思ったので、最後は迷いなく「コンキスタドール~」を選びました。yu-ya
今、kiilaちゃんが言ってくれたことにプラスして、自分的にはやっぱりメジャーデビューのアルバムだし“ネクストvivid undress”の要素を入れたかったというのもあって。だから完成がいちばん最後になったんですけど。1曲目の「ラストスタート」は今までのヴィヴィアンをブラッシュアップさせたような曲になったけど、「コンキスタドール~」ができたときは、さらにもう1つ要素をプラスできたという手応えはありますね。- もう1つのリード曲「出会えたんだ」はすごく素直でまっすぐな曲です。
kiila
これは私がvivid undressで初めて書いたラブソングなんです。アルバムの制作に入るときにディレクターから「ラブソングを書いてくれ」って言われたんですよ。でも私、このバンドで今までラブソングって書いたことがなくて、どうしようと思って。でもメジャー第1弾だし、チャレンジしてみよう、と。自分が伝えやすい感じで曲を書いていきましたね。- ちなみに、これまではyu-yaさんが比較的メインで作曲されてたと思うんですが、今回のアルバムはkiilaさん作曲のものが多くなっていませんか?
kiila
多いです。それは単純にやる気(笑)。私のやる気が誰よりも先行してたんだと思います。今回10曲入りのアルバムを作るにあたって提出したのが50曲くらいあって、そのうちの半分くらいがたぶん私の書いたもので。yu-ya
僕は、正解をひとつ作っては出す、というスタイルでやっていたんですよ。要は作った曲は絶対採用される曲にするっていうつもりで。- 確実に置きにいこう、と。
yu-ya
そう。なんていうんですかね、作っていても途中でダメな感じだなと思ったらどんどん捨てちゃうんですよ。これは聴かせてもいいかなってところまでいくのがすごく少ないんです、僕の場合。kiila
それで言うと2曲目の「グリーン・ステップ・グリーン」っていう曲はyu-yaがAメロBメロまで作ってて、サビができないまま「もうこの曲、やらないでおこうかな」って捨てようとしていたのを私が止めたんですよ。「むちゃくちゃいい曲だから絶対やろう!」って、サビ以降の展開を全部私が作ったっていう。- うわ、よかった! kiilaさん、よくぞ止めてくれました。
kiila
ホントに捨てなくてよかったです。なんだったら一番人気なんじゃないかってぐらい評判がよくて。- あの、もちろん全部がいい曲だというのは前提の上なんですけど、なかでも気に入っている曲を1曲だけ選んでいただくとしたら……?
rio
え~、どれかな~?kiila
難しいね。syunn
好きな曲で言ったら僕は「ラストスタート」がいちばん好き。技術的にもいちばん詰め込んだんじゃないかなって思うんですよね。rio
僕も最初「ラストスタート」に票を入れてたんですよ。この曲がいちばんヴィヴィアンらしいなと思うし、キーボードも変にユニゾンとかしててやり甲斐があるというか、演者としての面白さがあったんですよね。でも「グリーン・ステップ・グリーン」の間奏とかも、最初は「何これ?」って思ったけど、今じゃすっかり好きになってるしなぁ。kiila
クセになるよね。私、自分で考えて天才だなと思ったもん。全員
(爆笑)。rio
最初は反対してたくらいなんですけどね。「この展開、突飛すぎない?」って。でも不思議な中毒性があって好きになっちゃって。tomoki
ドラムアレンジに関してですけど、僕は「アブラカタブラ」を作ってるときがめっちゃ面白かったです。それこそなんでもありかなって感じで作れましたね。kiila
私は「まるで夜」かな。この曲は『赤裸々』を作ったあと、ちょっとぽっかり空いた期間があって、ひとりで家のベランダからずっと夜空を眺めていたときに作ったんです。制作に追われていないときにポンと出てきた、そのときの自分をそのまま表現した曲になってるなって。アルバムのいちばん最後に持ってきたのも夜に聴いてほしいなって思ったからなんですよね。あと、アルバムを最後まで聴いてほしいっていう意味も込めて、私は「まるで夜」を推します!yu-ya
僕は「another world」ですね。kiilaちゃんが作曲してるんですけど、kiilaちゃんの作る曲って先にメロディ、例えばアカペラとドラムだけで来たりとかするんですよ。そこに自分がコードを付けたりするんですけど、この曲は僕が昔から好きだったラウド系のサウンドがとてもイメージできたので、そういうコードを付けてみたりアレンジをしてみたんです。そしたらkiilaちゃんから「全然イメージと違ったけどよかった!」って言われて(笑)。kiila
いや、すごいかっこよかったから、これはアリだと思ったの。yu-ya
専門的な用語になっちゃいますけど、この曲のサビで同主調転調というものを一瞬だけしてるんですよ。本来はマイナーなのにそこだけメジャーを弾いてるっていう、そうすることで一瞬フワッとするんですよね、世界観がとても。- ホント隅々まで聴きどころ満載なアルバムで。これをスタートにこの先、vivid undressが目指すところは?
kiila
やっぱりこれだけ幅があるので、聴いてくださった方に「次は何してくれるんだろう?」っていうワクワクを持ってもらえたらと思って。目が離せないバンドになれたらうれしいですね。それって自分たちの首を絞めることにもなるわけですけど(笑)、でも、そうやってずっと楽しんでもらえるバンドになりたい。自分たちのためというよりも聴いてくれてる人のことをいちばんに考えてバンドをやるようになったので、みなさんに楽しんでもらえるバンドになりたいです!
【取材・文:本間夕子】
リリース情報
混在ニューウェーブ
2019年12月04日
徳間ジャパン
02.グリーン・ステップ・グリーン
03.コンキスタドールの現実闘争
04.出会えたんだ
05.HOT
06.アブラカダブラ
07.チョコレートシンドローム
08.another world
09.例えばもしも私が今死んだとしても
10.まるで夜
お知らせ
■ライブ情報
東名阪初ワンマンツアー
「メジャー突入!!~出会えたんだ~ONEMAN TOUR」
2020/01/18(土)愛知 名古屋CLUB UPSET
2020/02/16(日)大阪 Music Club JANUS
2020/03/21(土)東京 渋谷CLUB QUATTRO
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尚美ミュージックカレッジ専門学校 presents
おでん、はじめました。-寄ってらっ祭見てらっ祭-
2019/12/02(月)東京 渋谷WWW
w/ irune / マッシュとアネモネ / ヨイズ / WALTZMORE
下北沢にて製作委員会 / THEラブ人間 presents
下北沢にて’19
2019/12/08(日)東京 下北沢ERA
rockin’on presents JAPAN’S NEXT
渋谷JACK 2019 WINTER
2019/12/08(日)東京 渋谷ライブハウス8会場
ミソッカス presents みそフェス2020
2020/01/11(土)愛知 名古屋・新栄エリア6会場(kiilaのみの出演)
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。