満を持して再びメジャーへ! バンドの最新モードを玉屋2060%が語り尽くす!

Wienners | 2020.05.13

 パンクもハードコアもポップスもごたまぜにして熱いエモーションとともに爆発させる、このバンドがやっている音楽は日本はおろか世界を見渡しても他に類を見ないユニークなものなんじゃないかと思うのだけれど、そういうバンドがファンやリスナーの顔を意識して外向きに広げていく意識を持ったら最強である。Wiennersの最新アルバム『BURST POP ISLAND』はまさにそういう作品だ。現ラインナップになって5年の積み重ねと、ここ2年のツアーで得た確かな手応えをフルパワーでぶっ放す11曲。2度目のメジャーデビュー作となる本作への手応えを、バンドの中心人物=玉屋2060%(Vo/Gt)に語ってもらった。

――2度目のメジャーデビューですが、率直に今どういう気持ちですか?
玉屋2060%:なんか前回の時よりもちゃんと腰が据わったというか。足元が見えた状態でメジャーデビューするみたいな感じです。今回このタイミングでメジャーにしようって決めたのも……メジャーでやるってことは、より多くの人に届けるっていう意志じゃないですか。そこにメンバー全員で向かっていけるかという気持ちがしっかり揃ったと思います。今まではとにかく自分が作ったいいものを世間にぶん投げていくみたいな感じだったんですけど、そのぶん投げる球を、取れる速さで投げるようにしようというか。そこに今やっと足を踏み入れたなっていう感じがすごくします。
――いつ頃からそういうふうに意識が変わってきたんですか?
玉屋2060%:一昨年の暮れに「SUPER THANKS, ULTRA JOY TOUR 2018」っていうツアーをやって、去年「BATTLE AND UNITY TOUR 2019」っていうのをやって、そこでお客さんと接するなかで、「あ、俺たちの音楽ってちゃんと届いてるんだ」っていう実感があったんです。そこから、曲作りもそれを踏まえて考えるようになってきたんですよね。あの2つのツアーは大きかったです。

――その2つのツアーは何が違ったんだろう?
玉屋2060%:「SUPER THANKS, ULTRA JOY TOUR」は10周年の感謝の気持ちを各地に伝えるみたいなツアーだったので、必然的にライブの作り方もパフォーマンスもお客さんに向かっていくものになっていったし、「BATTLE AND UNITY TOUR」は対バン形式のツアーだったんですけど、そこで2バンドの融合みたいなものをどうやって見せようかっていうことをすごく考えて、今までだったら絶対やらなかったようなゲストとのコラボみたいなこともやったりとかして。それもお客さんにすごく喜んでもらえたんですよね。やってる自分たちも楽しかったし。そういうことがきっかけになったのかなって思います。
――その2つのツアーを経て、今年は「BACK TO THE ANIMALS TOUR 2020」というのをやったじゃないですか。あのファイナルの渋谷CLUB QUATTRO(アルバムの初回限定盤付属のBlu-rayに映像収録)、すごく新しいWiennersを観ている感じがしたんですよ。MCで「日本のミュージックシーンを変えるって言ってきたけど、そんなことはクソどうでもいい。俺たちは目の前のみんなの背中を押したいんだ」っていうことを言っていましたよね。
玉屋2060%:うん。日本のミュージックシーンとか音楽っていうところに対して突き抜けたいなっていうのは今でももちろん思ってることなんですけど、やっぱり自分たちのお客さんって本当に自分たちにとって誇りみたいなものなんです。目の前にいるのがこんなにかっこいいオーディエンスであることが誇らしいんですよ。もともとはその人たちのためにやってたわけじゃないし、極論を言えば俺は自分のために音楽をやってきたんだけど、その自分の音楽が、去年と一昨年の2つのツアーで自分の手を離れてお客さんそれぞれのものになっていったっていう実感があったんです。そうなったときに、「おまえらに向けて歌ってるんだぞ」っていう感じが強くなった。だから今はちゃんとフロアに向けて歌ってる感覚がすごくありますね。
――この『BURST POP ISLAND』は、今話してくれた“お客さんに向けて”というバンドとファンのストーリーと、あとは今のメンバーになってここまで走ってきたWienners自身のストーリー、両方がちゃんと投影されている作品だなと思います。今の4人なら、ガツンとシンプルに鳴らせばちゃんと届くんだっていう。
玉屋2060%:おっしゃるとおりです。じゃあなんでこうやってシンプルに削ぎ落としたものができるようになったかっていうと、やっぱり「この4人が集まったらもう大丈夫」って思えるようになったんです。削っていく作業ってどうしても怖いじゃないですか。今までそこにビビってた部分はあるんですけど、「UNITY」っていう曲をライブで演奏したときに、なんか全然そんなの関係なかったっていうか、「ああ、もう俺らが鳴らせば大丈夫じゃん」みたいな自信が生まれたんです。
――そういう意味では、前作『TEN』のときとはまったく違いますよね。あのアルバムはどちらかというとアイディアやコンセプトに4人のパーツをはめていく感じだったから。
玉屋2060%:そうですね。『TEN』は、たとえばインド音楽をダンスミュージックにしたらこうなるとか、中東の音楽をハードコアにしてみたらこうなるとか、音楽的なアイディアをWiennersなりに噛み砕いて追求するアルバムだったんですけど、今回の『BURST POP ISLAND』でいちばん大きいのは「開けたものにしたい」っていうことだったんですよね。スタジオで曲作ってる時にも、メンバーの間で「この曲はどうなったらもっとライブでお客さんがぶち上がれるだろう」みたいなことを結構話したんです。「この先の展開こうなったらすげえおもしろいけど、それではわかりにくいからもうちょっと展開を足そう」とか「ビートを変えてみよう」とか、そういうところまでデザインして届けるっていう。それで作った「ANIMALS」っていう曲がツアーでフロアにはまり狂ってたので。それは実感として自信になりましたね、本当に。

――「ANIMALS」にしろ「UNITY」にしろ、すでにアンセム化してるっていう感じですもんね。
玉屋2060%:そうなんですよ。今まで俺らが曲作って「あ、これ超やばいじゃん、超盛り上がるっしょ」と思ってやっても意外とみんな付いてこれてないみたいなことが結構あって。想像の中ではめちゃめちゃ盛り上がってるはずだったんだけどなあ、みたいな(笑)。その反省も活かして……でも、だから変なことをやめるとかそういうことじゃなくて、どうやって説明したらこのエッジーな感じが伝わるんだろうっていう。
――曲そのものの作りとしても、お客さんが歌えたり手拍子できたり、お客さんの居場所がちゃんとある楽曲が多くなっているし。
玉屋2060%:今までそれをあえてやってこなかったところもあるし、ぶっちゃけダサいと思ってたんですよ。まあ、今でもダサいっちゃダサいと思ってるんですけど、単純にライブやってるときにお客さんのシンガロングを聞くとやっぱり鳥肌立つんですよね。それをもっと聴きたいって思うと必然的にこうなっていく。だから、「みんなで歌おうぜ!」とか「手拍子しようぜ!」っていうより、自分が熱くなるために「ここ全員歌えるっしょ!」みたいな気持ちですよね。
――「UNITY」と「起死回生の一発」がアルバムの序盤のハイライトだと思うんですけど、この2曲はまさにお客さんを巻き込んでメッセージを放っていくような曲ですよね。しかもすごくポジティブで力強い。「未来」とか「希望」とか、そういうことをはっきり歌っていますよね。
玉屋2060%:やっぱりそういうことって恥ずかしくてなかなか言えなかったところも自分にはあるんですよね。そういう言葉を俺が言ったところで一体誰が聞くんだ?みたいなのが心のどっかにあったし。だけど、それこそライブで俺らの曲で泣いてる人とか俺が喋ってるMCで泣いてくれてる人とかがいて、「あ、ちゃんと届いてるんだな」って思ったら、素直でポジティブな自分の気持ちを出せた。ここでこの言葉を俺が吐くことによって勇気づけられてる人がいるんだって思えるから、俺も本気で背中を押したいし、俺も音楽にそうやって背中を押されてきた人間なので、今度は俺が押す側だって自分で背負うようにしたところはあります。
――じゃあ、ここで歌われているようなメッセージっていうのは、もともと玉屋くんの中にあったものなの?
玉屋2060%:そうです。自分の中にずっとあったことだったんですけど、それをどう表現していいかわからなかった。どうしてもその前に照れ隠しが来てしまってたんですよね、今までは。でもそこで自覚と責任を負おう、メジャーだし、みたいな(笑)。「UNITY」は、ここまでストレートに言っていいのかって思ったし、最初はメンバーも戸惑ってはいたんです。でもこの曲はそういうふうにするしか伝える方法がなかった。これはWiennersのフロアの光景を思い描いて作ったんですけど、誰かは悔しい思いをしてライブに来てて、誰かはすげえ楽しそうにしてて、誰かは泣きながらライブを観てて、踊ってるやつもいればダイブしてるやつもモッシュしてるやつもいる、後ろで腕組みながらグッときてるやつもいるっていう……考え方も表現もバラバラなんだけど、ひとつの音楽で繋がり合ってるっていう。それがひとつになるってことなんですよね。違う人間が同じ方向を向いた時のとてつもないエネルギーっていうか、整頓されてないとてつもないエネルギーみたいなものを思い描きながら作りました。
――なるほど。「起死回生の一発」はどう?
玉屋2060%:この曲は「次の作品メジャーでやろう、やっていこうぜ」って決めた瞬間に作った曲なんです。Wiennersの意思表示の曲ですね。これも今までだったら自分たちがやっていくんだっていう、自分語りの曲になってたと思うんですよ。だけどちゃんと、俺たちの気持ちも含めてお客さんの背中を押す曲にできたなって。それぞれの境遇で起死回生の一発を放たなきゃいけないときっていうのがあると思うんですよね。そういう人たちの背中を押せる、押そう、押したいっていうふうに思って作れたのはすごく大きかったなって思います。メンバーと話し合いながら、もっと「みんなのもの」にしたいよねっていうのは常々言ってました。
――「みんなのもの」にするっていうところでいうと、この曲もそうだし、「ULTRA JOY」とか、アサミサエさん(Vo/Key/Sampler)の歌というのをすごく効果的に使っていますよね。大きな武器として捉えているんだろうなと。
玉屋2060%:そこも、今回のアルバムを作るうえでのテーマの1つでした。男女ツインボーカルで、あれだけキャッチーなポップアイコンがいるっていうことは相当な強みだと思うんですよね。それを前面に押し出したいよねっていうのはメンバーの共通認識としてあったんで、彼女の歌の比重をできるだけ増やしたいなと思ったし、おいしいところを彼女に任せたいなと思ったし。それはもう作曲の段階では相当意識してたところではあります。たとえば「起死回生の一発」の2番のAメロはアサミサエが歌ってるんですけど、あの歌詞を俺が歌っちゃったら、ちょっとマジな感じに聞こえちゃうというか、必死に聞こえちゃうと思うんです。そこをやっぱりあの子が歌うからキャッチーに響くんで。そこは強いなって改めて思いましたね。

――KOZOくんのドラムも∴560∵ちゃんのベースもそうだけど、この4人でやる意味みたいなものも、そういうところに感じます。
玉屋2060%:うん。やっぱりそこはメンバーそれぞれ苦労して勝ち得たところだと思います。まだまだこれから先の可能性があると思うんですけど、1つ形として見つけられたっていうのはすごく大きいですよね。5年というのは時間がかかったなと思うけど、その5年がなかったら多分ここまでたどり着けていないと思うので、決して無駄じゃなかったなっていうか。迷ってた時期とかもあったからこそ、ここに辿り着けたんでしょうね。
――まさにそういうことを歌っている「NOW OR NEVER」からの後半の流れっていうのは、それまでの外に向かっていく感じとは違って、すごくパーソナルな思いが乗っていますよね。
玉屋2060%:はい。でも「NOW OR NEVER」も「プロローグ」も、自分が思ったことからの着想ではあるんですけど、ちゃんとお客さん一人ひとりに置き換えられるような曲になったんじゃないかなと思うし。そこまで昇華できたかなと思っていますね。序盤でエンターテイメント的な開けたところを見せてるからこそ、後半のエモーショナルなところでも突き放さない感じにできているというか。エモーショナルになると時として空回りしちゃうじゃないですか。自分の感情を出し過ぎちゃうとちょっと引いちゃうみたいな。そうならないようにできたなって思います。
――そして最後の「FAR EAST DISCO」はシンガロングあり、手拍子ありでまさにお客さんのための歌っていうところにまた帰ってくるという。
玉屋2060%:そうですね。もう大団円みたいな感じにしたかった。すごい平和の祭典みたいな――多幸感ですね、やっぱり。多幸感が欲しかったというか。その多幸感というキーワードもWiennersの1つの武器だって、メンバーの中でずっと話してるんです。パンクバンドで多幸感がここまであるバンドってあんまりいないよなという。それも自分が欲している世界観なので、最後にバチッとみんなで大団円みたいな感じにしました。
――この曲の最後の<music for the funs/dancing for the bonds>っていうフレーズは、このアルバムとしてもそうだし、今のWiennersの本質だなって思います。
玉屋2060%:はい、本質ですね。「bonds」=「絆」っていうことが言えたのもやっぱり今だからこそで。たぶん今までだったら「music for the funs」で終わってたんですよね。でもそうじゃなくて、そこまで言えたっていうのはすごく大きなことだなって思います。
――それが今後のWiennersの指針になっていくんでしょうね。
玉屋2060%:そうですね。もっとお客さんに届けたいっていう欲は高まっていってるし、音楽的にも――今、もう新たに曲を作ってるんですけど、この先にめちゃめちゃ可能性があるっていう感じの曲がすでに出来始めているので。それがもっともっと伝わるものになって、この輪が広がっていってっていうところを目指したいし、ライブの規模も単純にでかくなればでかくなるほどあり得ない光景が見えると思っているので。俺がいちばん伝えたいのは、やっぱり音楽の楽しさと根源的な部分、非日常的な興奮なんです。そのためにやっぱライブに来てもらうってことが大事だと思うし、今までWiennersを知らなかった人にもライブに来てもらって、「なんだこの世界は!」って思わせたいんですよ。だからそこに行くための努力は惜しまないっていう気持ちでいますね。

【取材・文:小川智宏】

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リリース情報

BURST POP ISLAND[初回限定盤]

BURST POP ISLAND[初回限定盤]

2020年05月13日

日本コロムビア

01.ANIMALS
02.MY LAND
03.UNITY
04.起死回生の一発
05.Kindergarten Speed Orchestra
06.YA! YA! YA!
07.ULTRA JOY
08.NOW OR NEVER
09.プロローグ
10.ゆりかご
11.FAR EAST DISCO

<初回限定盤付属Blu-ray収録内容>
■BACK TO THE ANIMALS TOUR 2020 FINAL 2020.2.15 @渋谷CLUB QUATTRO(75min)
■Wiennersのこと メンバーインタビュー(75min)

お知らせ

■配信リンク

↓各種ストリーミングサービスはこちら↓
https://nippon-columbia.lnk.to/PDWph6xT



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川島 麒麟 Twitter
最近「○○バトン」みたいなのよくあるじゃないですか。あれに正直ちょっと疲れた人に、「この画像をご自由にお使いください」って麒麟の川島さんが描いたイラストがあって。小学生ぐらいの坊主頭の男の子がちょっと照れながら「あ、バトンね。回せたら回しとくわ」って言ってる絵があるんですよ。それを無料で配ってて。それが何なんだろうなっていうのを見たかったっていう。

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