アーティスト・斉藤壮馬の第2章――『in bloom』シリーズで季節のうつろいを表現し見えた“その先”とは

斉藤壮馬 | 2020.09.04

 声優としてはもちろん、アーティストとしても色とりどりな世界を描いて魅了する斉藤壮馬が、“季節のうつろい”“世界の終わりのその先”をテーマにした楽曲を3連続配信する『in bloom』シリーズで、アーティスト活動第2章をスタート。6月27日配信の「ペトリコール」、8月19日配信の「Summerholic!」、9月配信予定の「パレット」と、季節それぞれの情景をまとった楽曲たちの作詞・作曲を手がける彼は、どうやら新たな扉を開いたようだ。表現者としてまさに“in bloom=満開”を迎えようとする斉藤壮馬の、“今”に迫る。

――アーティスト活動第2章の幕開けを飾るのは、“季節のうつろい”“世界の終わりのその先”をテーマに3連続配信する『in bloom』シリーズ。「ペトリコール」は梅雨、「Summerholic!」は盛夏、「パレット」は夏の終わりと、斉藤さんならではの感性で描く季節それぞれの表情は、とても色鮮やかですね。
斉藤壮馬:そう感じていただけたならうれしいです。デビューシングル「フィッシュストーリー」から始まった旅路が、1stアルバム『quantum stranger』、1stライブ「quantum stranger(s)」を経て、ひとつのゴールに辿り着いたのかな、と思いまして。これまでは“終末”や“世界の終わり”というテーマを持つ楽曲が多かったんですけど、また違った世界、“その先”の物語を描いてみたいな、という新たな気持ちの芽生えから、今回は季節ごとの自分の好きな部分を表現できたのではないかな、と思っています。
――まず、6月27日に配信された「ペトリコール」は、“雨が降ったときに地面から上がってくる匂いを指す言葉”であるタイトルに相応しく、雨の情景が思い浮かぶナンバーです。
斉藤:結構前に思いついて、iPadの中に放置してあったサビのメロディが、すごく雨っぽくて。リリースする時期的にも、自分のやりたいことともマッチしたんですよ。そこからわりとすんなり、フル尺の曲ができたんです。
――雨音から始まり、弾む足取りを思わせるサックス、ピアノ、ベースの重なりも心地よくて。
斉藤:イントロのサックスのリフは、曲作りの段階で僕がギターで弾いていて、デモ音源にもギターで入れてもらったんですけど、サックスがいいな、と閃いたんです。アレンジャーのSakuさんに、「ここはこういうサックスのリフを入れてください」とか、「左耳側にノイズギターが聴こえるようにしてください」とかっていうお願いをして、丁寧に調整していただきました。
――しなやかな歌声、サビのハモりも素敵です。
斉藤:この曲、歌うのがすごく難しくて、キーの低いAメロなんかは“低音出るかガチャ”状態だったんですけど(笑)、レコーディングのときにはわりとスムーズに録れたんですよ。サビのハモは、僕もすごく気に入っていて。レコーディング当日に僕とSakuさんとエンジニアさんで、どんなメロディにするかその場で試行錯誤しながら、楽しみながらレコーディングできました。
――一般的に憂鬱とされる雨の日ですが、<メランコリイ しらんぷり>、<かな かな かな><鳥のように寄り添い 酔いどりーみん>といった語感も楽しく、<晴れはまだこなくていいから>というフレーズは、雨に惹かれてしまう斉藤さんならではのものだろうな、と感じます。
斉藤:「ペトリコール」の主人公は、雨の中でもすごくいい気分なんだろうな、っていう(笑)。
――一方で、雨の中軽やかに歩むような歌詞の中に、<狂い咲くような>というフレーズをしのばせた意図も気になります。
斉藤:本人は楽しいんでしょうけど、周りからはどこか常軌を逸しているように見えるかもしれないし、もしかしたらホラーっぽさを感じるかもしれないし。この曲を主観的な曲ととらえるか、客観的な曲ととらえるかで、聴き心地が変わるかもしれません。エンタメのポップスですからね、聴いた方それぞれにいろいろな受け止め方、考察をしてもらえたら、作り手としてもうれしいです。
――一転、8月19日に配信される「Summerholic!」は、夏に似合うアッパーなバンドチューン。どんな種から生まれた楽曲なのでしょうか。
斉藤:8月に配信するなら、抜けのいいサマーチューンが相応しいのかな、と思いまして。たまたま家でギターを弾いていたら、最初のギターリフが生まれて、そこに僕の好きなコード進行を乗せてみたら、いい感じになったんです。これまで、100%明るいような楽曲は発表してこなかった僕ですけど、リズムが強くて、BPM(テンポ)も速くて、とにかくノれるような曲になりました。
――ドラムは高橋宏貴さん(ELLEGARDEN, PAM)、ベースは須田悠希さん(ex.Suck a Stew Dry, ex.THURSDAY’S YOUTH)、ギターは小野武正さん(KEYTALK)と、バンドメンバーもだいぶロックな面々で。斉藤さんのシャウトや巻き舌にも高まります。
斉藤:毎回、素晴らしいミュージシャンの方にサポートしていただいていますけど、「Summerholic!」では高橋さん、須田さん、小野さんだからこそ生まれるグルーヴ感、細かいニュアンスが曲をいきいきとさせていて、本当にありがたいです。歌に関しては、同じフレーズを2回歌ってユニゾンさせることで絶妙なズレが生まれるダブルトラックという手法のおかげもあり、洋楽っぽく仕上がったなと。これまでの自分の楽曲にはない雰囲気を、存分に楽しんでいただきたいです。
――歌詞には、<ぴーかんの夏晴れ>なのに<クーラーがんがんの密室(パラダイス)>にこもる、という意外性があって。
斉藤:そうなんです、すごくいい天気だから絶対に外に出ない、っていう。それって、ある意味贅沢な夏の楽しみ方だと思うんですよ。ストレートに書かずにひねくれた歌詞が多い僕ですけど、晴れているから家でだらだらするぞ、という前向きなこの歌詞は、1回しかひねっていない、僕なりに素直な歌詞だと思います(笑)。
――<幽霊だってはしゃいじゃいそう>というフレーズや、日本語っぽくない歌い方にしても、インパクトがあります。
斉藤:J-POPっぽい感じではなく洋楽っぽい曲なので、あえて英語っぽく聴こえる歌い方をしてみました。<幽霊だってはしゃいじゃいそう>というフレーズは、仕事の現場から現場へ移動するのに、自分が作った「Summerholic!」のデモを聴きながら歩いているときに浮かんだんですよ。空を見上げればめちゃめちゃ“ぴーかん”で、♪ぴーかんの夏晴れだ♪って口ずさんでみたら、メロディにめちゃめちゃ合うなと。さらに、“夏晴れ”を“夏ばれぇい”って洋楽っぽく歌いたくて、“れぇい”と韻を踏むには、と考えたていたら、暑かったその日、道行く人がちょっとげんなりして“幽霊”みたいにも見えて……(笑)。
――“夏ばれぇい”“ゆうれぇい”という楽しい重ねが生まれたわけですね。
斉藤:これはもう、偶然の産物ですけど(笑)。ちなみに、この間「Summerholic!」のMVを撮影しまして。自分しか登場しないのに、賑やかに<それじゃ乾杯!>ってどういうことなんだ??っていうホラー感なんかも、お楽しみいただければなと。
――そして、9月に配信予定の「パレット」は、愁い色もたたえたエモーショナルなロックナンバー。“揺さぶられる”曲です。
斉藤:繊細な「ペトリコール」のデモを作っているときに、その反動でしょうね、ギターの音がパワフルな曲が欲しくなって。自分でギターを弾きながら作っていたら、思いの外エモーショナルな、ナイーブかつ激情なデモができたんです。夏の終わりから秋にかけてという季節にも、『in bloom』シリーズの締めくくりにも、相応しい曲になりました。
――演奏を担うのは、「Summerholic!」と同じく、高橋宏貴さん、須田悠希さん、小野武正さん。どっしりしたリズム、小野さんの歌うギター、斉藤さんの心動かす歌声も鳥肌ものです。
斉藤:確かに、ギター、歌っていますよね。低音がめちゃめちゃ出たバンドサウンドで、楽器の音も歌声もだいぶ歪ませていますけど、それくらいの感情の重さ、つぶれてしまいそうな気持ちをド頭から感じてもらえるんじゃないかな、と思います。
――感傷的な歌詞にしても、思わず涙腺がゆるんでしまいます。
斉藤:歌詞に関しては、僕の好きな太宰治の掌編小説『ア、秋』の影響が色濃くて。“秋は、ずるい悪魔だ。夏のうちに全部、身支度をととのえて、せせら笑ってしゃがんでいる。”と書いている太宰に対して、夏の気配が秋に溶け込んでしまうのが寂しいと思っていたけど、季節は巡ってまた夏という季節に出会える、と僕は書いているんですけどね。
――夏を示す<きみ>に、聴き手それぞれに誰かを投影したり、記憶を重ねたりもしてしまいそうです。
斉藤:まさに、聴いてくださる方それぞれにグっとくるポイントがあるのかな、と思います。
――なにしろ、「ペトリコール」、「Summerholic!」、「パレット」という3曲で、斉藤さんの表現力と表現欲の豊かさにあらためて驚かされてしまいます。今回の制作を通じて、なにか見つけものはあったのでしょうか。
斉藤:自分はもともと、物事を論理的にとらえて理由づけをしたいタイプだし、音楽制作にあたっても、これはポップスのフォーマットを使おうとか、これは不思議な展開にしようとか、わりと計算して曲を書いていたんですね。でも、声優活動、音楽活動を通して、その先にある感性が大切だな、と考えるようにもなってきて。今回の3曲とも、自分の感性の赴くまま、感覚的に作ることができたんですよ。それゆえ、楽曲としていびつだったり、不思議な点があったりもするかもしれないんですけど、僕はそういう作品作りがすごく楽しかったので。今後、新たなテイストの曲も“in bloom=満開”になるんじゃないかな、と思っています。

【取材・文:杉江優花】





斉藤壮馬 『Summerholic!』 MV

斉藤壮馬 『ペトリコール』 MV

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リリース情報

パレット

パレット

2020年09月19日

SACRA MUSIC

01.パレット

リリース情報

Summerholic!

Summerholic!

2020年08月19日

SACRA MUSIC

01.Summerholic!

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ペトリコール

ペトリコール

2020年06月27日

SACRA MUSIC

01.ペトリコール

お知らせ

■配信リンク

「Summerholic!」
https://www.saitosoma.com/disco/archive/?VVXX00749B01A

「ペトリコール」
https://www.saitosoma.com/disco/archive/?VVXX00695B01A



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環世界
簡単に言うと、生き物はそれぞれ固有の世界の見方があるという意味で、例えば、猫に見えてる世界、象に見えてる世界、人間に見えてる世界は、同じ物理現象を見てても、それぞれの知覚の仕方があると。なので、人間から考えたら蟻の寿命はこれくらい、みたいな感じですが、蟻本人にとっては、全然違う時間の長さや空間の大きさとして知覚されている、っていうのがありまして。ある人と話していて、これに近いような、物事っていうのは相対的な側面があるという話をしていた時に、そういえばと「環世界」という言葉が思い出されたんですけど、本当に自分が思い出した内容で合ってるのかなと思って調べました。また、これが『in bloom』シリーズの先のテーマの一つが、“生活”というのが自分の中にあって、個々の人たちの“世界の終わり”の後の暮らしというか、その後どうやって日々を過ごしているのかっていうのが今後のテーマになってくると思うんですが、すごい気が早いんですけど、生活のその“さらに先”というか。“世界の終わりの後の生活”の“さらに先”、となると「環世界」みたいなのかもしれないなと思って。それぞれの見方でしか世界を見ることができないのだから、分かり合えないのかもしれないけど、ただ、それぞれの世界の見方っていうものを、うまく音楽にできたらめっちゃ面白そうだなと思って。なので、再来年くらいには曲になっているかもしれません(笑)。

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