シフコンが意欲作をドロップ! 『Slowmotion』全曲解説インタビュー!

SHIFT_CONTROL | 2020.10.14

 No Big Deal Recordsの新人発掘オーディション「No Big Deal Records Audition 2019」でグランプリに輝き、今年1月に1stミニアルバム『Afterimage』で全国デビューを果たした岐阜発のギターロックバンド、SHIFT_CONTROL。そんな彼らが、早くも2ndミニアルバム『Slowmotion』を完成させた。
 本作には、コロナ騒動下におけるバンドの葛藤と負けん気が渦巻くリード曲「バーンアウト」をはじめ、ひと夏の思い出を綴ったノスタルジックなミディアムチューン「irony」、初の英詞に取り組んだポップかつエモーショナルな「アイウォンチュー」など、新機軸を感じさせるナンバーが充実。ライブができない時期に溜まっていたものが放出された、ミニアルバムながらも濃厚な1枚に仕上がっている。そんな新作について、演奏面の聴きどころやお気に入りのポイントなど、メンバー全員にたっぷりと語ってもらった。


――前作『Afterimage』も素晴らしい作品でしたけど、今作『Slowmotion』はそれをさらに超えてきたと感じました。
全員:ありがとうございます!
――『Afterimage』のリリースに伴うインタビュー(参考記事:岐阜のライブ巧者・SHIFT_CONTROL。初の全国流通盤リリース第一声! https://music.fanplus.co.jp/special/202002148971e1276)をさせてもらったのが2月で、直後に新型コロナウイルスの感染拡大で事態が急変しました。この半年はしんどいことも多かったですよね?
アサノチャンジ(Vo/Gt):そうですね。初めて今のメンバーで『Afterimage』を制作して、「よし! これから頑張っていくぞ!」ってところで、リリースはできたけどレコ発ツアーが開催できなくなってしまって。どうしようもないもどかしさはずっと感じてました。でも一方で、この事態によって生まれた時間もあるので、作品の精度をより高めることはできたのかなとも思いますね。
――気持ちを腐らせることなく、なんとか切り換えられたと。
アサノ:当時は「なんで今なんだよ……」という気持ちにもなりましたけど、やっぱり僕らだけじゃなくていろんな人がこの状況に苦しんでいて、人それぞれにマイナスな何かが発生してしまってるわけじゃないですか。だったら、今できることをやるしかないなって。腐った時期も正直あったよね?
岡村耕介(Gt):腐ってたね(笑)。だけど、この『Slowmotion』の制作があったおかげで持ちこたえられた感じがします。すべての力を注げたので。逆に言うと、それ以外はできることがなかったというか。
宮崎良太(Ba):本当にそう。このフラストレーションをエネルギーに変えて、作品へ注ぎ込むことに集中しました。
岡村:ザッキー(宮崎)の場合、『Slowmotion』とカレーに注力してた感じだよね。
宮崎:気を紛らわすためにね。家にいる時間が多かったんで、自炊でスパイスカレーをずっと作ってたんです(笑)。
くまおかりお(Dr):ザッキーが作るカレー、すごくおいしそうなんですよ。でも僕はいまだに食べたことがなくて。
――そうか。りおさん以外のメンバー3人はひとつ屋根の下で共同生活してるけど。
岡村:そうだった。すまん!(笑)。
くまおか:いつか食べたい(笑)。
アサノ:3人が一緒に住んでたのは良かったですね。「ライブできないね」みたいな感じで話したり励まし合ったりして、気を保てていた部分ってあると思うので。
宮崎:おかむ(岡村)も言ってましたけど、こういうなかで新作をリリースさせてもらえるのも本当にありがたかったです。
――そんな異例の状況で作った『Slowmotion』、どんな作品になったと感じてますか?
アサノ:制作期間とコロナの時期が重なったので、歌詞や曲調に少なからず影響が表われてますね。もどかしい状況に対する自分のフラストレーション、それを踏まえて「俺はこうありたい」という意志やエネルギーがしっかりと入ってる作品です。
宮崎:ライブ以外の聴かせ方ができた気がします。前作『Afterimage』の楽曲はライブ映えすることを前提にしてたけど、たとえば「irony」はちょっとチルな感じがあったりもして。振り幅が見せられる1枚になったんじゃないかなと。
くまおか:いろんな人に刺さる曲が揃ったと思います。この時期ゆえの苛立ちとかエモーショナルな部分とかもありつつ、もっと進化した音源を作りたい気持ちも出てきて、新しい挑戦がいくつもできましたね。
岡村:全7曲なんですけど、3曲と4曲に分けて時間をかけてレコーディングしたんですよ。そのうえコロナの状況もあったから、『Afterimage』のときよりも作品と向き合う時間が長かった感じがしますね。あとはみんなが言ってくれたとおり、今までのSHIFT_CONTROLにない要素も取り入れられたのが新鮮でした。
――先に録った曲というのは?
岡村:リード曲とプッシュ曲に挙げている「バーンアウト」「irony」「アイウォンチュー」です。
アサノ:結果的に、押し曲をすべて先に録ってました(笑)。
宮崎:5月にはその3曲をレコーディングしてたよね。『Slowmotion』のリリースは10月だけど、ライブもできない状況でしたし、それまでの間を空白にせず、何か発信したかったんです。なので、新曲を先行配信で出すことにして。
アサノ:バンドとしてどういう動きが見せられるか、そのあたりは臨機応変に考えていきました。

1.バーンアウト

――では、ここからは楽曲について、収録順に掘り下げていければと思います。まず、リード曲のM-1「バーンアウト」。この曲はそれこそ逆境を感じさせる歌詞になっていて、苦しい状況にある挫けてしまいそうな誰か、あるいは自らに必死で声をかけているような曲ですね。
アサノ:コロナの騒動が始まって間もない時期に、ミニアルバムの中で最初に作ったのが「バーンアウト」なんです。楽曲の背景としては、まさに僕らの思い描いてるバンドの展望と世の中の動きがどんどんズレていって、まったく進んでいきたいようにならなくなってしまったことがありますね。で、ツアーが中止になったりする事態まで起こるのは予測できてなくて、気持ちの整理もなかなかつかない――そんな自分の想いがいちばん色濃く出た曲です。これはデモの段階で、リード曲になるイメージがすでにありました。
岡村:「バーンアウト」のデモはワケあって外出先の個室トイレで聴いたんですけど、曲が良すぎてもう興奮しちゃって……! 危うく便器が壊れるところでした(笑)。
アサノ&宮崎&くまおか:あはははは!(笑)。
くまおか:チャンジはスタジオとかでふいにハマってるフレーズを弾いたりするんですけど、そんな感じで「バーンアウト」を聴いたとき、僕も思わず「めっちゃええやん!」って言いましたね。
宮崎:SHIFT_CONTROLの代表曲になると思います。僕たちはライブがかっこいいバンドでありたいんですけど、その一角を担える曲に育っていく気がしてますね。
――<君はいつまで聞こえないフリをしている?>という、ひんやりとした歌詞も刺さります。
アサノ:自分を叱咤してるところがあるんです。「今がどれだけ良くない状況だとしても、いつまでもくよくよして動かないでいたら何も変わらないよ」っていう強いメッセージを込めて。ひいては、聴いてくれた人の背中を押せるような曲になればうれしいですね。サビの転調で、気持ちよく視界が開けた感じにできたので。
――「バーンアウト」は燃え尽き症候群という意味ですか?
アサノ:そうです。仮タイトルの時点で、もう「バーンアウト」でしたね。直感的に出てきた言葉が最初からしっくりきていて、「燃え尽き症候群になるくらい全力で取り組んでみろよ」という覚悟と自分への奮い立たせが入ってます。今こうして振り返ってみると、<光は差している>と歌っていたり、「負けちゃいられないだろ」みたいな気持ちが前に出てるなって改めて思いました。自分の行動の結果や成果がなかなか目には見えなくて投げ出してしまいたくもなるけど、これまでやってきたことがマイナスになることは絶対になくて、やったらやった分だけ必ず良くなっていくはず――そんな想いも反映されてますね。それはこの4人で作る音楽にすごく自信があるからなんです。

2.逆夢

――M-2「逆夢」はどうですか? 「バーンアウト」とは打って変わって、イントロからカラッとした明るい音色と活気のあるコーラスが聞こえてきます。
アサノ:「バーンアウト」を起点に曲を作っていくなかで、僕のマインドが前向きになってきたんですよね。SHIFT_CONTROLの曲って、暗いというわけでも、明るいというわけでもなくて。中性的なトーンのある、テクニカルでかっこいいギターロックが特徴だと思うんですけど、明るめの曲も作りたくなったんです。いろんな人にシフコンを知ってもらいたいし。
岡村:このギターリフはチャンジが考えてくれたんですけど、聴いててスッと入ってくるんですよね。かっこいいだけじゃなくて、可愛げもあるのがいい。
宮崎:「ワン、ツー、スリー、フォー!」のコーラスも、ちょっとアホっぽく叫んだりしててね。
アサノ:あと、間奏で叫んでるセリフ<単純にスキしか愛せない><永遠にこのままでいたい>は、4人の声をミックスさせてはいるんですけど、りおにメインで歌ってもらってます。
くまおか:きっかけは、初めてメンバーみんなで行ったカラオケなんですよ。「Override」(『Afterimage』のリード曲)がカラオケに入ったとき、それをドッキリで明かすみたいなことをやって。
――ツイートしてたやつですよね。見ました。
https://twitter.com/shift_control/status/1281528876032643074?s=20
くまおか:おー、ありがとうございます! そのときにほかの曲も歌ったりしてて、僕が歌った欧陽菲菲さんの「ラヴ・イズ・オーヴァー」がメンバーにとってはなんか良かったみたいで(笑)。「セリフのところ、あの声で歌ってよ」とお願いされたんです。
アサノ:りおの「ラヴ・イズ・オーヴァー」、序盤はすごく低いのに、サビでグワーッて高音になる歌い方だったんです。声を張って歌うあの感じが、切実に心から叫んでるようなイメージで、「逆夢」にハマるなと思ったんだよね。
宮崎:余裕のなさによって、より一生懸命というか、等身大で全力な感じが出てていいんですよ。
岡村:一応、メンバーそれぞれ歌って試してみたんですけど、結局りおが1位で採用になりました。
くまおか:急に行われるコンテストあるよな、このバンド。練習も心の準備もまったくできないままで歌ってるんですよ(笑)。けど、そんな楽しさがポップな曲調につながったのかなと思います。
――明るいサウンドに、絶妙にふわふわした歌詞を重ねているのも面白いです。
アサノ:そうなんです。僕は歌詞を書くとき、意味とかはいったん置いといて、まず歌えるように言葉を書き連ねて、あとで清書するんですけど、「逆夢」に関しては仮歌詞のほうが曲にフィットしていて。まさにふわふわした夢の中にいるみたいな……あえて言い切らない表現や浮遊感が肝に思えて、むしろそのテイストを維持したいという狙いがあったんです。なので、清書から仮歌詞に戻って、それを若干整えた仕上がりになりました。抽象性を楽しんでほしい曲かな。

3.irony

――そして、M-3「irony」。SHIFT_CONTROLはこういう切ないトーンの曲もやれるんですね。
アサノ:以前はなかったタイプの曲ですね。さっきも言ったとおり、SHIFT_CONTROLって小難しいアプローチが好きなバンドではあるんですけど、シンプルでありながらもエモくなっちゃうような夏の曲を書いてみたくなって。「ポップな感じもできるんだぞ」って聴き手を驚かせたい気持ちもあったし、今年の夏はまず友達と遊びに出かけるイベントができなかったじゃないですか。でも「本当はこうありたい」という願望があったので、僕が専門学校に通ってた頃、免許を取ったばかりでお金もそんなにないのに、友達と車で初めて遠いところ――岐阜から金沢まで運転して行ったんですけど、そのときの思い出に浸って書きました。
宮崎:曲からも新しい一面が感じられると思うし、ミュージックビデオからも4人の関係性や人となりが伝わる気がするので、イメージが変わるんじゃないですかね。
くまおか:MVを観てもらえればわかるんですけど、本当に貧乏学生の夏旅行みたいな感じなんですよね。季節がテーマにある曲ってこれまであまりなかったから新鮮だし、そういう点でも親しみやすいと思います。「夏に聴きたい曲」になっていくのかな。「夏にドライブするときに聴きたい」とか。そうなったらうれしいです。
アサノ:バンドマンの遠征も思い浮かぶよね。夏にガソリン代を節約して、エアコン付けずに窓開けて走ってるみたいな(笑)。
宮崎:節約や貧乏って、意外に楽しかったりするもんな。そういう状況だからこそ、思い出になったりしてさ。
岡村:なんて言うか、懐かしさも感じる曲だよね。僕、テクニカルで速いフレーズよりも、「irony」で弾いてるようなちょっと古臭いアプローチのギターのほうが実は得意で。懐かしいトーンを出すために、このギターソロはオッサン臭さを全開にしたんですよ。今までのシフコンなら絶対に弾いてなかったソロで、個人的にとても気に入ってます。
宮崎:ブルージーってことね(笑)。あのギターソロは聴いてる間にいろんな情景が浮かんでくる。
アサノ:リフも味があるよね。「irony」は一度だけライブでやったんですけど、最後にみんなでコーラスするところで涙が出そうになっちゃいました。
――「青春」に「アイロニー」という言葉をくっ付けるのが、チャンジさんらしいのかもと思ったりもしました。<辺りをよく見渡してみたら/要るものはそんなにないな>とか、俯瞰した目線がところどころに存在してるのも。
アサノ:そうかもしれないです。ちょっと独特のテイストがありますもんね。俯瞰した目線は、やっぱりコロナの現実が関係してるかな。「いつまでもこの仲間たちとくだらないことをずっとやり続けていたい」という願いと、そうは言っても自由にできない現状とのギャップ。それが一歩引いて眺めてるようなタッチになったんでしょうね。すごく鋭いことを言われた気がします(笑)。
――「バーンアウト」でも<くだらないことで笑う顔が/どうしようもなく愛しいんだ>と歌っていて、「逆夢」でも<単純にスキしか愛せない><永遠にこのままでいたい>というセリフがあって、「irony」はその感じをギュッと濃くした印象です。
アサノ:本当だ。似たような言い回しをちりばめてたんですね。無意識だけど、そんな気がします。

4.死亡遊戯

――次は、タイトルからして強烈なM-4「死亡遊戯」。
宮崎:「irony」で夏の思い出にじんわり浸ってからの……。
岡村:ザッキーのベースにぶっ刺される感じだからね(笑)。
宮崎:実は初めてなんですよ、ベースから始まる曲。りおがチャンジに「そういう曲も聴いてみたい」と言ってくれて。これも新しい試みのひとつですね。僕もNUMBER GIRLの「鉄風 鋭くなって」とか、ベースがかっこいいリフを2回繰り返してバンドインするような曲が大好きなんです。「死亡遊戯」は1回だけでパンと入りますけど、そこはチャンジ節って感じですね。
アサノ:ベースで始まる曲ってすごくかっこいいんですけど、だからこそ僕の中ではハードルが高くて。ベースの単音のメロディーだけで楽曲を印象づける必要があるし、そこにシフコンらしさもないといけないので、ある種の挑戦でしたね。でも、今回はいいものが出来たと思います。
宮崎:歪んだベースで始まって、いきなりマシンガンみたいなドラムが来るっていう(笑)。
くまおか:僕らの間で「マシンガンフレーズ」って呼んでるんですけど、主にフロアタムとバスドラとスネアのコンビネーションで、マシンガンのような音を出すのが狙いです。これはどう録るかを、マイクの音量も含めて、チャンジとかなり打ち合わせしましたね。ザッキーのベースもおかむのギターも限界まで攻めたアレンジをしていて、今作の中では難易度が高い、トリッキーな感じになってます。サビはノリやすいんじゃないかな。
――前作の「かまうな」に続いて、カウベルの「#コン」も入ってますね。
くまおか:あ、そうなんです。「#コン」も入れてもらって(笑)。
アサノ:今作では「死亡遊戯」と「アイウォンチュー」の2曲で出てくるからね。りおのトレードマークになってきてます。
岡村:「死亡遊戯」は、制作段階とレコーディングを終えたときの差がいちばん激しかった曲ですね。僕の好きな曲ランキングでは、当初は下のほうだったんですけど、最後には一気に2位まで巻き返しました。
宮崎:へええ、そうなんだ!
岡村:すごくかっこよく録れたから、めっちゃ聴いちゃう。最終的にシフコンらしさもグッと映える仕上がりになったし。あとは、ライブでちゃんと演奏できるかどうかですね(笑)。
――<いーち にー 秋刀魚のしっぽ ゴリラの肋骨>と数え歌が入っていたり、ヘビーなサウンドの中にも遊び心がたくさんあって。
岡村:この歌、メンバーで僕だけ知らなかったんですよ。
くまおか:僕の地域では「ゴリラの息子」でした(笑)。
宮崎:場所によって違うのかあ。
アサノ:言葉遊びみたいなのをふいに持ってくるの、好きなんですよね。いろいろユーモアもありつつ、4つ打ち感もあったりして、フェスの舞台とかでも映える曲だと思います。

5.アイウォンチュー

――続いては、M-5「アイウォンチュー」。また一転してポップなタイトルになって、ここで英詞が来ましたね。
アサノ:英詞も初の試みですね。「アイウォンチュー」はすごくいいサビのメロディーが先に出来たので、仮タイトルが「これはいいぞ」だったんですよ。
宮崎:すげえ仮題だな(笑)。
アサノ:どれもいいんだけど、特に良かったんだよね。サビのアンサンブルが4拍子なのに対して、メロディーラインがゆっくりな3拍子っていうポリリズムになっていて。何かがグルグル回ってるような、そんな気持ち良さがあるんです。始めはいつもみたいに歌詞を考えてたものの、このメロディーに言葉を乗せていくと、日本語じゃ言いたいことが収まり切らなかったんですよね。なので、英語の良さを活かしたほうがいいなと思って。
――チャンジさんの声の魅力が改めて伝わってくる曲ですよね。たしかに、この音像は竜巻がグワーッと起こってるようなイメージがありました。
アサノ:ありがとうございます。Bメロがないのも特徴かな。イントロ→Aメロと来て、すぐサビ。ドドドッ!と畳みかける感じで、そこら辺もインパクト大です。ライブでモッシュが起きてほしいですね。
くまおか:サビの<goodbye baby>が曲中に3回あるんですけど、このキラーワードを本気でかっこよく、様になって歌えるのはチャンジしかいないですよ。ポリリズムで続いていって、直前にブレスが入って、その<goodbye baby>がめっちゃ強く出てくるのが個人的に大好きなポイントなんです。
――こういうワードをかっこよく聴かせるのって、実は意外と難しい。
くまおか:そうそう。タイトルになってる<I want you>も含めて。
宮崎:チャンジの英語の発音ってかっこいいなと以前から思ってたんですけど、シフコンでは一度もやってこなかったんで、満を持してという感じもありますね。僕としては、ついに世に出るのがうれしい。ライブでどんな反応があるのかも楽しみな曲です。
アサノ:ちなみに、英語の発音はELLEGARDENに教えてもらいました。
岡村:それで発音がうまくなるのもすごいよ。<I want you, I need you>って歌うサビも超キャッチーなので、TikTokとかでぜひともバズってほしいです。

6.Error

――M-6「Error」は、変拍子や激情感が際立っているという点で、最もSHIFT_CONTROLらしい曲と言えそうですね。
宮崎:おっしゃるとおりです。僕にとっては懐かしいというか、「ひさしぶりに来たな」っていうノリかな(笑)。
岡村:『Slowmotion』には新しい試みが多いけど、「Error」は原点回帰的なものを感じるね。
くまおか:たしかに。初期衝動という言葉がふさわしいかもしれない。
アサノ:めっちゃシフコンらしい曲だよね。「チャンジを放っておくと、こういう曲を書くぞ」って意味でも(笑)。内面の狂気と言いますか、自虐や焦燥がガツッと前に出てる曲かなと。イメージとしては、一匹狼の男が主人公の、ちょっと棘のあるB級映画。そんなストーリー性が感じられる歌詞になってます。不満や文句をつらつらと述べて「世の中が異常なんだ」と思ってたんだけど、多数派から見たら「自分自身が異常だった」とわかってジ・エンド、みたいな。
――歌詞の一人称が「オレ」になっていて、言葉も強烈な印象がありました。
アサノ:そういえば、今まで意外と「オレ」は使ってなかったかも。だから、一段とむき出しで、なりふり構わず歌ってる感じがします。曲が出来るスピードもいちばん早かったし。
宮崎:そうか。いつもは「僕」「私」が多いのか。しかも、一人称自体をガシガシ使うタイプでもないもんね。
――カオティックなノリにセリフが滑り込んでくる箇所もあるんですけど、あそこはなんて言ってるんですか?
アサノ:エラーダイアログのメッセージの引用で、「技術的な理由により、アクセスが拒否されました。サイト管理者にお問い合わせください」ですね。この辺で遊びを効かせてます。

7.サナギ

――ラストはM-7「サナギ」。もしかして、岡村さんの好きな曲ランキング1位はこの曲?
岡村:えっ! なんでわかったんですか?
宮崎:すげえ(笑)。
――前作だと「ghost」が好きだとおっしゃっていたので、こういう曲調がツボなのかなって。
岡村:まさにこの感じの、ドラマティックに展開していく曲調が好きすぎるんですよ。歌詞もグッときます。
アサノ:「サナギ」の歌詞は、いちばん時間をかけて何回も書き直しました。自分たちが思い描く未来があって、それに対する現状、夢を見ていられる希望を、芋虫がサナギになって蝶になる過程を比喩にして表現した感じです。聴いた人の背中を押せて、僕らの背中も押してくれるような曲になったと思います。
くまおか:本当にパワーがあるというか。パン!と背中を押される感じがしますね、「サナギ」は。深く沁みてきて、演奏していても勇気づけられるんです。
――アウトロのギターでは、サナギから蝶になって羽ばたいていく画が思い浮かびました。
岡村:ありがとうございます! シフコンの曲って機械的なギターも多いんですけど、「サナギ」はすごく感情的で、人間味のあるフレーズを弾けたかな。「irony」のギターソロ然り、こういう表現ができたのは僕としてもうれしいです。
アサノ:フェードアウトで終わるのも、最近のロックバンドがやるのは珍しいと思うんですが、これは「終わり方がわからない、可能性のある未来」が信じられるようにしてるんです。もちろん、ライブでの締めがどうなるのかも楽しみにしていてもらえれば。
宮崎:野外の大きなステージで演奏してる姿が、自分の中で想像できた曲なんですよね。「俺たちには希望がある」とも感じさせてくれるし、現状を打破する意味でも今後すごく重要な曲になっていく気がします。
――あと、サビの<どこにも行けないはずの僕らが/いつかは飛べると 期待しちゃうんだ>って、SHIFT_CONTROLの楽曲を象徴するような歌詞ですよね。ネガティブなモードにあったとしても、最終的にはポジティブに向かうところが。
アサノ:はい。そこに関しては一貫して歌ってきたし、これからも歌っていくんだろうなと思います。
――ちなみに、アルバムタイトルが『Slowmotion』になったのは?
アサノ:ライブとかもそうですけど、自分が味わった衝撃的な体験って、のちに美化されたり、スローモーションに感じるくらいしっかりと思い出せるじゃないですか。初めて聴いた曲がすごく良かったら、曲のことを思い出したときに、印象深い歌詞やメロディーが頭の中でゆっくり再生されるみたいなイメージですね。このミニアルバムがそんな体験になってほしくて、『Slowmotion』にしました。
――そして、ツアーが開催できる日も楽しみに待ってます。
アサノ:東名阪+地元の岐阜でできたらという話はしていて、前作の分も含めてレコ発はやりたいです!
くまおか:なんとかやりたいね。
岡村:できるように準備します!
宮崎:ライブあってのバンドなので、僕らもぜひたくさんの人に観てほしいです。

【取材・文:田山雄士】

tag一覧 アルバム 男性ボーカル SHIFT_CONTROL

リリース情報

Slowmotion

Slowmotion

2020年10月14日

No Big Deal Records

01.バーンアウト
02.逆夢
03.irony
04.死亡遊戯
05.アイウォンチュー
06.Error
07.サナギ

お知らせ

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■ライブ情報

PREMIUM FRIDAY ~club vijon 18周年祭~
10/30(金)大阪 北堀江club vijon (※アサノチャンジ弾き語り出演)
w/ 池田篤(ニアフレンズ) / 宍戸翼(The Cheserasera) / 粟子真行(ココロオークション) / 寺本颯輝(postman) / 前田典昭(ソウルフード) / (O.A)五架ななみ

ニアフレンズ presents 高架下飲酒演奏楽団 vol.1
11/12(木)大阪 福島LIVE SQUARE 2nd LINE
w/ ニアフレンズ / ゴードマウンテン / ステープラー / Mr.EggPlant / (O.A)Axith

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