Nulbarich、Vaundy & n-buna from ヨルシカとの初のコラボ作「ASH feat. Vaundy」

Nulbarich | 2020.11.10

 Nulabrichが初めて客演を迎え入れて制作した新曲「ASH feat. Vaundy」。カップリングでふたりのボーカルを生かした秀逸なリミックスを披露しているn-buna(ヨルシカ)も含めて、ニュースを聞いたときはちょっと意外なマッチングだなと思ったりもしたのだが、聴いてみるとこれがすばらしい相乗効果とケミストリーを生み出している。7月にリリースした「LUCK」で大々的にフィーチャーした80sサウンドのテイストをよりブラッシュアップしたサウンドの上でナルバらしいグルーヴとVaundyらしい歌心がせめぎ合うこの曲はいかにして生まれたのか? 昨年12月に開催したさいたまスーパーアリーナワンマン「Nulbarich ONE MAN LIVE ―A STORY―」を第1フェーズの終わりと位置づけ、年が明けてからはLAを拠点に音楽に向き合ってきたJQのなかで、どんな感情が生まれたのか? じっくり話を聞いてみた。

――去年の12月にさいたまスーパーアリーナでワンマンをやって。そこからの次のビジョンも持っていたと思うんですけど、そこからコロナ禍になってしまって。進み方としてはどうですか。
JQ:12月の段階で第1フェーズを本当に終わらすつもりで……散りにはいかないんですけど散りに行くつもりというか、いったんNulbarichをリセットするぐらいな気持ちでいて。その後、2020年入ってから僕自身LAに移住して、音楽活動をするときにはこっちに来るって感じにしたんですけど……そうやって制作環境も変えていく年にしようと思ってたんで。進んでいるビジョンとしては、LAに行って、フレッシュな自分の感覚みたいなものを磨くこともできて、今までにない自分たちに出会えてるっていう感覚はあるんです。だからコロナで足元すくわれたっていう感じは全然なかったですね。ライブができないっていうところ以外は理想通りというか、良質なインプットを自分がフレッシュな状況でフィールすることができるっていう。
――ああ、そうなんですね。
JQ:うん。かなり研ぎ澄まされたし、自分がルーツに持っているというか、好きな音楽と密接な関係値で寄り添えるようになったというか。コロナでロックダウンするアメリカやBlack Lives Matterにも直面して。家の前で車が燃えたりとか、銃声が聞こえるとかっていう、現地の人がLA暴動以来だって言っている状況のなかに置かれてしまって……ブラック・ミュージックが好きで、ただの小僧がそれをマネしてやってきたわけですけど、やっぱりこれはただのアートじゃないというか。本当に政治的なものからカルチャーが生まれてくるっていうのを、なんとなく肌で感じられた。そういうカルチャーに自分がいるという責任感みたいなのが、ちゃんと付きまとうようになって、なんか単純に「かっけえよね」じゃ済まされない気持ちになってしまったというか。ロックダウンになった瞬間に銃が売り切れて、それがニュースで普通に流れているんですよ。「やべえことになってしまったな」みたいな。
――それは確かにリアルですね。
JQ:起きてはいけないことだからこれをグッド・エクスペリエンスとは言えないんですけど、、自分の人生の中で、そこに自分がいたことで、よりディープに音を捉え始めるのかなっていう感覚はありますね。
――そもそもLAに行くって決めたときは、もちろんそんなシリアスな体験をするとは思ってなかったわけですしね。
JQ:そうですよね。なんか単純に環境を変えたいみたいな。2年前ぐらいから向こうのプロデューサーさんたちと遊びでコライトしてみたりっていうのはやっていて、友達も増えてきたし、何か新たな地としてはわりと踏み入れやすい場所だったし。本当はニューヨークがよかったけどフライト時間6時間ぐらい違うから、行ったり来たりしんどそうとか(笑)。 いわゆる今、差別されてしまっている側の人たちの友達も多いんですよ。その辺とか超リアルというか。なんかその問題に対して、ワーッて立ち上がってる友達が目の前にいるっていう。そこで僕は何を話せばいいのかみたいな。だから、予想外ではあったんですけどね。
――そんななかで作った「LUCK」という楽曲が7月に配信されましたが。あの曲にはそうした体験がフィードバックされている感覚はありますか?

JQ:そうですね。意図的に消化したっていうよりは、あの80sサウンドって……やっぱりLAではあの頃のサウンドとか、あとはカントリーとかって、いわゆる日本のフォークとロック並みに根強いんですよね。年中流れているんですよ。毎年必ず、誰かがいわゆるビルボードにチャートインするようなポップスにテイストとして入れてくるし。ウィークエンドとか、ちょっとジャンル違いますけどブルーノ・マーズもそうだし。ブームじゃなくて常にいるんで、肌で感じるんですよね。それはそれで結構カルチャーショックだったというか。トラックのテイストはそういうところから影響を受けましたね。
――じゃあ、LAにいてリアルタイムで感じた音を落とし込んだっていう感覚なんですね。おっしゃる通り、日本で聴くと「今あえてこれをやってるのかな」って感じるんですけど。アメリカにおけるベーシックというか。
JQ:そう。まあ、「LUCK」に関しては全体的に振り切ってはいますけど。そういう部分で言うとLAに行った結果が自分の中で出た楽曲であったのかなって思います。
――ここまで振り切ったのはどうしてですか?
JQ:ロックダウン中は時間がいっぱいあったんで、結構考えたときに「やっぱりずっとワクワクさせたいな」って思って。みんな最初僕たちの曲を聴いて「こいつら何?」って思って入ってきてくれてるわけじゃないですか。その衝撃、そのワクワクを繰り返してみたいって改めて思ったんですよね。だからNulbarichの歴代の曲を見たときに「今これやったら面白いんじゃない?」っていう。あと単純に自分の中で80sブームが来てたのもあって、さいたまスーパーアリーナのアレンジもわりと80sに落とし込んでるのもあったんで、僕的には割と自然な流れだったんですけど、たしかにリリース物見ると結構いびつな感じはあるっていう。
――なるほど。
JQ:でも新たな挑戦をやり続けるっていうのはファーストシングルからそうだし、それによくみんなついて来てくれてんなって感じがすごくあります。僕は一番好きなアルバムなんですが、あのビースティー・ボーイズでさえ、セカンドでは苦戦したという人もいるじゃないですか。僕らは挑戦をして、さらに塗り替えることを繰り返し続けてるだけなんで。ただ成長して、振り幅が広がっていってるっていう。それを「こんなのも今回できるようになったのね、Nulbarichさん」みたいな感じで捉えてくれてる人が多いのかなっていう。
――そういう意味で、この「ASH feat. Vaundy」も、Vaundyをフィーチャーしていたり、n-bunaがリミックスしていたり、新たなチャレンジですよね。
JQ:うん。たぶんメンツだけでも十分なサプライズだと思うんですよね。Vaundyくんは出てきたときに、わりとNulbarichと同じ括りにされたりしていた気がするんですけど、彼のルーツをたどったりすると全然違うし、音楽の捉え方も全然ニュージェネレーションというか。音楽の消化の仕方がやっぱ全然違うんですよね。
――どうして彼とやろうと思ったんですか?
JQ:やりたいと思った理由は、やっぱり全部自分でやってるところから出てきてるっていう。僕も最初は自分で全部プログラミングして、そこをメンバーに手伝ってもらうみたいな感覚だったんで、そこは共通点あるだろうなって思って。あと、いい意味で絶対変わってる人だと思ってたんですよ。実際変わってたんですけど、超いいやつで。そうじゃないとやんないよね音楽って、って。
――n-bunaにリミックスをオファーしたのは?
JQ:ヨルシカは、事務所が一緒なんですがもともと気になっていて、歌詞がすごい好きだったんですよ。自分では絶対書けない歌詞だし、物事をはっきり言うからこそハッとさせられる言葉たちみたいなのがグサグサ刺さってたんで、興味はあったんですよね。それに、n-bunaくんもワンオペっていう。
――やっぱりそこなんだ(笑)。
JQ:いや、こんないい曲、素敵なアートに富んだ曲を書ける人とは、話してみたいなっていう。そしたら他の媒体かなんかでn-bunaくんが僕らのアルバムをレコメンドしてくれてたときがあって。「マジで? 知ってた?」みたいな。じゃあワンチャン頼んだらいけないかな?みたいな(笑)。それでお願いしたら快く引き受けてもらえて。リミックスって、その人の捉えたものを自分たちの楽曲として出すっていうことだから結構リスキーじゃないですか。リミックスって言った時点で、もう直せないんですよね、基本は。
――そのリミキサーの作品でもありますからね。
JQ:うん。だからそれがリスキーなんですけど「n-bunaくんだしいいか」みたいな。絶対に面白くなるなって思ってたんで。なんか、「この脳みそ持ってる人だったら大丈夫だろうな」っていう安心感があったんですよね。
――Vaundyとの制作はどうでしたか?
JQ:音源ができあがるまではほとんど会話してないんですよ。僕もLAにいたんで、最初Zoomミーティングで「どんな感じでやっていきます?」みたいな話をして「いったんこっちがラフ作るから」って言って。そこからは一切喋らず、できあがるまではデータのやり取りだけだったんですよね。それでミックスダウンの日に「どうも初めまして」みたいな。「あ、生Vaundyですね」みたいな(笑)。そんな感じだったんですよね。でも、楽曲の向き合い方に関しては、Vaundyくんさすがだなっていう感じでした。
――そもそも、こういうフィーチャリングとか客演みたいなことをやってみたいという気持ちはJQさんのなかに前からあったんですか?
JQ:それこそ今年ですね。、僕らって最初にラジオでバーッてかかってそれでみんなに注目してもらって、まだNulbarichっていうものが確立する前に世間に出てしまったんですよね。なので、なんかお客さんも含めてみんなと一緒にNulbarichを作ってきたみたいな感覚があるんです。それを今まで一番重要視していて、だからコラボレーションとか、いわゆる他のアーティストと……「つるむ」って言い方はあれですけど、そうしちゃうとちょっと変な色が付いちゃうんじゃないかって思っていて。僕たちが透明なぶん、どんな色にも染まっちゃいそうな不安があったんで、あえてやってこなかったんですよ、コラボレーションというのを。でも、たまアリも終わって、ここからはもっとみんなを楽しませる側にならないとなって。いつまでもビビっていてもしょうがないっしょっていうので、コラボレーションとかやってみようっていう話になって。
――なるほどね。いや、Nulbarichがやるなら絶対女性シンガーだろうなって思ってたんですよ。Nulbarichの世界に、それこそ違った幅を生み出すみたいな。でもそこで出てきたのが、Vaudnyと取っ組み合ってるようなこの曲だったから驚きました。
JQ:そうそう。一番不安だったのは、相手も曲を作るから、いわゆるプロデューサーが2人いるみたいな感じじゃないですか。まあぶつかるだろうなと思ったんですけど、そのぶつかり方がきれいだったんで。
――結構、ガシガシ手を入れてくる感じなんですか? Vaundyは。
JQ:違う曲持ってきますからね(笑)。僕が「ここにメロを乗せてください」って言ったら「僕だったらこういうふうにします」ってトラックごと変えて持ってくる。僕がそこの一部の歌詞だけを取って、それ以外もう1回作り直すみたいな。そういうやり合いでしたね。「こう来たか!」っていう、悟空の「ワクワクすっぞ」がやっとわかったみたいな(笑)。
――それはお互いにゴールは見えている状態でやっていた感じなんですか? それともトライアンドエラーな感じ?
JQ:トライアンドエラーじゃないですかね。っていうか、大喜利? そもそもエラーだと思ってないっていうか。たとえば、ここにメロを乗せてみたら「あれ、歌いづらいな」みたいなことってあるじゃないですか。じゃあトラックも変えてみるか、みたいな。彼も僕も自分でしか作ってきたことがないんで、その自分の正解から作らないとたぶん全部が違和感なんですよね。彼も後で、「俺やっちゃったって思ってました、あのとき」って言ってましたけど、でもこれぞ“ケミストリー”みたいな。何か想定してないところに着地できて、なおかつ自分がかっこいいと思えるっていうのは、新しいかっこよさを発見してることになるんで、やる意味があったなって思っています。
――JQさん、KREVAの楽曲「One feat. JQ from Nulbarich」にも参加したじゃないですか。そこでの経験も活きていますか?。
JQ:やっぱりKREVAさんに教わった部分は大きいと思います。あの曲も最初はたたき台から全部作らせてもらって、それをKREVAさんが昇華してくっていう、それこそ、ただのフィーチャリングじゃない形っていうのを経験させてもらったんです。なんか、僕も誰かに来てもらったときは、もし、そこで自由にやりたいっていう欲があるならどうぞっていう感じにしたかったので。
――だから、単にフィーチャリングというだけではなく、文字通りコラボレーションというか、共作に近い形になったわけですよね。しかもすばらしいのは、最終的にはちゃんとNulbarichとしての新たなビジョンも見えるものになっているという。
JQ:まあ、さすがに食われないようにっていう(笑)。Vaundyくんは食う気バリバリでしたけどね。だからこそ聴いてくれる人が、ナルバ感のいいところとVaundy感、そのどっちかを基準で考えたときにどこかで違和感が生まれて、それが斬新な部分になっていくっていうか。いろんな楽しみ方があるのかなって思います。
――先程話してくれたように、Nulbarichっていうものを確立できたからこそ異化作用とか化学反応みたいなものをより楽しめるモードにいるっていうことですかね。
JQ:だといいですけどね、確立できてれば。何かができたかはわかんないけど次進もうって感じではあるんで。でもやってきたし、ここはもう自信持って。もうみんなの中にNulbarichというのがあると思うから、もっと自由に、みんなにサプライズしていくっていう。それがちゃんと落とし込めたと思いますね。「やっぱり音楽って楽しいな」っていうところにもう1回帰らせてくれた曲ですね。

【取材・文:小川智宏】




Nulbarich - ASH feat. Vaundy (Official Music Video)

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リリース情報

ASH feat. Vaundy

ASH feat. Vaundy

2020年10月28日

CONNENTONE

01.ASH feat.Vaundy
02.ASH feat.Vaundy (n-buna from ヨルシカ Remix)

お知らせ

■配信リンク

▼ダウンロード / ストリーミングはこちらから
https://jvcmusic.lnk.to/nulbarich_ash

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