2ヵ月連続でリリースされたマイアミパーティ初の配信シングル「ウォルト」、「グリコ」

マイアミパーティ | 2021.01.21

 これでもかというくらい想いが言葉となって詰め込まれた、ライブ感溢れる疾走ナンバー「ウォルト」。フォーキーな耳触りと深く胸に沁み入る切なさが不思議と心地好い余韻を残すラブソング「グリコ」。力強いバンドサウンドと血の通った温もりを感じさせるリアルな歌詞、さくらいたかよし(Vo /Gt)のやさしくもタフな歌声が多くのロックリスナーから注目を集める札幌出身の4人組バンド、マイアミパーティより届けられたのはまるでベクトルを異にしながらも、彼らならではの魅力をたっぷりとたたえた、そんな2曲だ。しかも彼らにとっては初の配信シングルとなったこの2曲、12月24日には「ウォルト」、1月20日には「グリコ」と2ヵ月連続でリリースされたのだからなんともうれしい。現在は東京を拠点に活動を展開、ネクストブレイク最有力候補のマイアミパーティにリリースされたばかりのこれら新曲について、たっぷり語ってもらった。なお、メンバー全員揃ってのインタビューはかなりレアだとのこと、行間から滲む仲睦まじさもじっくり堪能してほしい。

――マイアミパーティ初となる配信シングル、しかも2ヵ月連続リリースということで、今回、新たに配信という手段を選んだ理由をまずは教えていただけますか。
中川マサキユ(Gt):僕はけっこう昔からサブスクでいろんな音楽を聴いていて、そこで新しく見つけるものも多かったんですよ。なので、この機会に配信に力を置いてやってみるのもいいのかなって。
さくらいたかよし(Vo/Gt):音楽の聴き方はこれからもっともっと手軽になっていくだろうし、配信のほうが年齢問わず、若い子たちも手に取りやすいのかなっていう想いもありますし。
――逆に言うとCDという形態にあまりこだわりはない?
さくらい:正直言うとあるんですけど、現状を考えるとちょっとリスキーだなって。今までの僕らは、CDを出して、ライブをして、ライブハウスで買ってもらうというのがひとつの流れとしてあったんですけど、今現在、去年5月に「p.q.b.d」を出したあたりからコロナ禍でライブがまったくできない状態が続いていて、そうなると今までのやり方ではできないな、と。あと、「p.q.b.d」を出したときとかCDショップが閉まっちゃってたり、いろいろ重なっちゃったんですね。だったら次は配信にして、いろんな人が手に取りやすいようにしようって。それにCDも配信も、どっちにもいい点、好きな点はありますしね。
――選択肢が増えるのは純粋にいいことですから。
セルジオ(Ba):サブスクが主流になっているなか、マイアミパーティを知らない人が配信サイトで知ってくれるタイミングも増えると思うんですよ。今まで「僕ら、サブスクやってます!」って大々的に言ってなかったんですけど、今回こうやって「初の配信シングルを出します!」って告知することで以前より広まりやすくなったところは間違いなくありますし。
イワノユウ(Dr):僕もメンバーとまったく同じですね。そこでまた今まで僕たちのことを知らなかった人が新しく聴いてくれたりすると思うので、配信はすごくいいと思ってます。
――実際、昨年12月24日にリリースされた配信シングル第一弾「ウォルト」の手応えはいかがですか。
さくらい:非常に感じてますね。今まで以上にライブ感がある曲なので、今のなかなかライブができない状況のなか、初めてマイアミのライブを観たときのことを思い出したとか、ライブで観たマイアミの良さが沸いてきたって言ってくれる人がたくさんいて。やっぱりライブを観て僕らを好きになってくれた人が多いので、そういう意味でも出してよかったなと思ってます。
――ちなみにいつ頃、作られた曲なんですか。
さくらい:「ウォルト」はちょうど去年の「p.q.b.d」を出してすぐくらいには出来上がってた……よね?
中川:うん、それぐらいですね。
さくらい:その後、ライブが少ないなかでも演奏したりして、みんなで育てていった曲で。
――配信シングル第一弾が「ウォルト」になった決め手などはあったのでしょうか。例えばさっきおっしゃっていた“ライブ感”とか……。
さくらい:それもあります。あと……マイアミパーティはいろんな面があって、見る角度によって表情が全然違うんですね。例えばMVが爽やかだったり、曲調が疾走感に溢れていたり、触れやすい曲があったりするなかで、もうひとつ、僕はシビアな曲を出したいなと思っていて。そういう一面もあるんだよっていうのを提示したかったんですよね。単純にこの曲がすごく好きで、みんなに早く聴いてほしいっていう気持ちがあったのも、もちろん理由のひとつですけど。
――「ウォルト」という曲に対して思うところとか、何かありますか。
イワノ:機関銃みたいにバババッて、どんどん歌詞が自分に撃ち込まれてくる感じがすごく好きで。それに合わせて楽器隊も攻撃的というか、言葉と一緒に音も自分のなかにスッと入ってくるような、浴びるような音源にできたなと思ってます。
――これだけ機関銃の弾のように言葉が詰まっている曲をサウンドに乗せるのって難しいんじゃないかと思うのですが、そのへんはいかがでした?
中川:この曲は特殊な作り方というか……もともと曲を作りたい欲が僕のなかに生まれて、でも僕は歌詞を書けないので、そうなったときに「歌詞ください」ってさくらいさんにLINEで直接言ったんですよ。そしたら未完成の「ウォルト」の歌詞が送られてきて、そのなかに気に入ったフレーズがあったので「ここ、サビじゃないですか?」って最初はなんとなく作った感じだったんです。ギターと軽く打ち込みとかをして、そこから「とりあえずイントロはこういう感じで、あとはどんどんアレンジしていこう」みたいな感じでメンバーに投げました(笑)。
――歌詞からインスピレーションが掻き立てられて、曲になったわけですか。
中川:そうですね。まずタイトルに「ウォルト」ってあるように、キャラクターが浮かんできたんですよ。どこかにミッキーマウスがいるんです。で、ミッキーマウスを考えたときに、なぜかパレードが思い浮かんで、リズミカルにノれてダイナミックなイメージが頭のなかに出てきたので、それを音で表現していって。ギターを重ねたりとか、明るいフレーズを入れてみようとか、そうやって作ったものに、楽器隊の音や、さくらいさんからの新しい歌詞をどんどん乗せたりして出来上がった曲なので、サウンド的にも自信がありますね。
――ところでさくらいさん、中川さんから「歌詞をください」と言われて、どうでした?
さくらい:行き場のない歌詞っていうのがかなりありまして、僕はそれを“パンの耳”って呼んでるんですけど(笑)。真ん中のおいしい部分だけ使って、はじっこの余ったものたちは余ったものたちとしてまとめてるフォルダがあって、そこを開くと意外と「あれ? これ、メインになるじゃん」って歌詞が転がっていたりするんですよね。それをいつも「もったいないなぁ」って思いながら眺めていて、たまに自分で宅録とかして曲を作ったりするときに使い回したりもしてはいたんですけど。ちょうどそんなときにマサキユくんから声を掛けられて、そのフォルダを洗いざらい見ていたら「うわ、いいじゃん!」っていう歌詞がやっぱりあったので、それを広げたいなと思って渡しました。
――その段階の歌詞は、完成形でいうとどのあたり?
さくらい:たぶんサビかな。
中川:サビとAメロあたりの歌詞ですかね。
さくらい:たぶん<僕らは比べてばっか 遠ざかる人を目で追って>とかですね。これはSNSのフォロワーがばりばり減っていくときがあって(笑)。
セルジオ:ははははは!
さくらい:もともとフォロワーなんて少ないのに、増えたら増えたで減っていくのが怖いんですよね。一時期、何を書いてもフォロワーが減っていっちゃう時期がありまして、僕は何を書けばいんだろう?ってずっと考えていて。そうしたら一周回って、「いや、遠ざかる人を目で追わなくていいんじゃないか?」っていう考えになって、傍にいる人を大事にしようと思ったんです。それって普通に交友関係にもつながっていて、離れていく人は離れていくし、傍にいる人を大事にしないとなって。そう思って書いた歌詞をマサキユくんに渡したんですよ。
――それが、こうなったんですね。
さくらい:はい、壮大に(笑)。
セルジオ:僕、「ウォルト」を作ってる途中で思ったことがふたつあって。ひとつは、最初は早口で取っつきにくい感じがあったんですけど、聴けば聴くほど沁み入ってくるというか、徐々に頭のなかでループして、気づいたら歌えるようになっていたんですよ。さくらいとふたりで、早口でAメロとかを歌い合ったりできるぐらいになってきて。
――取っつきにくそうに見えて、実は口ずさみたくなる曲だった。
セルジオ:そういう曲なんだなって思ったときに、ふたつめに思ったことが、さくらいの歌ってる音を大事にしよう、と。例えば、さくらいが歌う音程に対してベースもその音程と同じ音を重ねて聴こえやすくするとか、そういうことを意識してましたね。今まであんまりそういう作り方をしてこなかったんですけど、今回は歌をよりよく聴かせるようなベースにして。弾いていても楽しかったですね。
――みなさん、言葉と歌をすごく大事にされたんですね。イワノさん、先ほど機関銃のように歌詞に撃ち抜かれるとおっしゃってましたが、いちばんグッときたのってなんでした?
イワノ:最後のサビの<愛されることは何よりも時間がかかる/僕らのクラブのリーダーが 教えてくれてる>、そこがいちばん好きで。曲調はシリアスなイメージなんですけど、その歌詞が聴いてる人のことを肯定してくれてるっていうか、お客さんに向けてもそうだし、バンドをやってる僕に対しても響くものがあって。僕たち、曲を出してもバーンと跳ねることって今まで起きてないんですけど、そんな僕たちに対しても、ゆっくりやっていけばいつか花開くっていうような感覚にさせてくれてる歌詞だなって。
さくらい:ああ、そう思って書いてたわ!(一同爆笑)
セルジオ:ウソウソ(笑)。
さくらい:いや、捉え方としてね。
イワノ:僕にはそう感じられて好きでした、その歌詞は特に。
――これを聞くのは野暮かもしれないですが、歌詞のなかの<僕らのクラブのリーダー>って誰ですか。
さくらい:ミッキーマウスのテーマ(「ミッキーマウス・マーチ」)の歌い出しの歌詞が<ぼくらのクラブのリーダーは>で、これはそのパロディ(※オマージュ、のほうが適しているかも)というか。その歌でのリーダーはミッキーマウスなんですけど、僕のなかではウォルト・ディズニーで。<ぼくらのクラブのリーダーは>ミッキーマウスかもしれないけど、さらに一歩引いたらウォルト・ディズニーだな、じゃあウォルト・ディズニーが教えてくれたことってなんだろう?っていう。
――ええ。
さくらい:だいぶ昔の話なんですけど「ライムライト」って曲を出したんですよ。そのときは(チャールズ・)チャップリンにスポットを当ててこれまたシビアな曲を作ったんですけど、それは皮肉のまま終わっちゃった曲なんです。
さくらい:それから6年ぐらい経って今回、ウォルト・ディズニーにスポットを当てるとなったときに、最初はもっと皮肉で終わらせようと思ってたんですけど、それだと「ライムライト」と変わりないし、僕自身、成長してないように思えて。だったら、もっともっと開いたものにしようって広げていったんですよね。ウォルト・ディズニーのやってきたことや世に出してきたものと、僕らの人生が重なったりはしないんですけど、学ぶことは名言集に載ってる以外にもたくさんあるなって思ったので。
――そもそも、なぜウォルト・ディズニーにスポットを当てようと?
さくらい:すごくおこがましいんですけど、ウチらのバンドに似てるなと思っていて。例えばウォルト・ディズニーが作ったミッキー・マウスですけど……ミッキーマウスって顔が今までにかなり変わってるんですよ。形を変えて、形を変えて、形を変えて、ようやく愛される、みたいな。この歌詞を書いたとき、たぶん落ち込んでいたんですけど、「これで上手くいかなかったとしても、それは答えではないんだな」って思ったんです。形を変えて、形を変えて、形を変えないとミッキーマウスは今に至らなかったし、形を変えたことによって失くしたものもあるかもしれないけど、それも踏まえて<愛されることは何よりも時間がかかる>、それを<僕らのクラブのリーダーが 教えてくれてる>って自分を鼓舞するような。あと、やっぱり名言集を読んでいてもウォルト・ディズニーってすごく出てくるんですよね。他にも僕の好きな名言を言ってる人はたくさんいるんですけど、ウォルト・ディズニーってすごく出てくるし、わかりやすいなって。
――そういうことだったんですね。一方で、2作目の配信シングル「グリコ」は一転、フォーキーな雰囲気もある切ないラブソングとなりました。
さくらい:僕はこの曲、大好きで。「ウォルト」も大好きなんですけど、この曲に関しては1年前くらいからライブでやっていまして、そのときに音源化希望の声がすごく多かったんです。「絶対形に残してほしいです」みたいな。なので今回リリースしよう、と。
――“僕ら”を掲げてアグレッシブに前進する「ウォルト」に比べて、「グリコ」はよりパーソナルなさくらいさんが出ている感じがしますね。
さくらい:そうですね、めそめそしてますね(笑)。
――みなさんは「グリコ」に対してどんな印象をお持ちですか。
中川:どうだろう……めそめそしてるとは思ってました(笑)。
イワノ:歌詞を読んだときに、主人公がさくらいさんに直結しなくて。歌詞を読んで、曲を聴いて、状況を思い浮かべながらドラムとかも付けたんですけど、さくらいさんとは別の人(“僕”)が女の子(“君”)のことを好きで、なのに告白もしてないし、遠くから見て心の中でその子に話しかけているようなイメージがあったんです。マイアミパーティの曲で「つれづれ」って曲があって、それも状況は同じなんですけど、「つれづれ」は、その人のことを好きすぎて夜も眠れないし、居ても立っても居られないみたいな、感情が昂ってるイメージだったんです。
イワノ:でも「グリコ」は一周回って悟りを開いているんじゃない?っていうような(笑)。
――そこがさくらいさんらしくない、と?
イワノ:実際、本人にあったことだったとして、一周回って大人になって、そういう考えになったのかなって想像すると面白いですね(笑)。
さくらい:丸くなっちまったよ……(一同爆笑)。
――この曲の聴きどころとか、個人的に注目してほしいポイントなどがあればぜひ伺いたいです。
イワノ:自分のドラムプレイで言うと、1番のサビが終わって、そこから雰囲気がガラッと変わるんです。自分のなかでは、そこですごく長い前奏が終わって、ここから曲が始まりました!っていうような演奏の仕方をしてるので、すごく好きですね。ここから一気に壮大になるというか。
中川:この曲はギタリストとして弾くよりは伴奏に徹しようと思って、何も面白いことをやってないんです。(ギタリストらしさが)あるとしたらギターソロぐらい。それ以外は別に面白いことも難しいこともしない、ただその曲をよくするためのギターを意識していて。あと、これは初めてなんですけど、今まではマイアミパーティの楽曲で打ち込みとかバンド以外の楽器の音を音源には入れてなかったんですよ。でも「グリコ」はバンドだけで演奏したときに、もっと(音を)増やせるなと思って。それで軽くストリングスの音や、間奏あたりに鉄琴の音が入ってるんですけど、それは僕が入れたいって言って、打ち込みで入れたものなんです。サウンド面でギター以外の楽器をイメージしたうえで、上手くやれてるなっていう、ちょっとそこは気に入ってます。
――ギタリストとしてのエゴではなく、もっと職人的に「もっとこの曲を良くするには」みたいなスタンスですか。
中川:楽曲のためにって感じで、ギタリストとして、とは考えてなかったです。普段からあんまり弾き込まないですけど(笑)、この曲に関してはもう何も弾かないでいいんじゃないかっていう勢いでギターを付けました。
セルジオ:でも僕はこの曲の2番のサビが終わったあとのマサキユくんのソロがめちゃくちゃ好き、すげぇファンで。
中川:ははは(照)。
セルジオ:ライブ中、見ちゃうんですよね、マサキユのソロが始まる瞬間を。めちゃくちゃ気持ちよさそうな顔で弾いてるな~っていうのを見るのがすごく好きなので、ライブでもし「グリコ」をやったら、マサキユのその顔と、それを見ている僕を観てください(笑)。
さくらい:今日、サインもらって帰れば?(笑) 僕はまた歌詞の話になっちゃうんですけど(「グリコ」は)「ウォルト」とまったく逆の情景があって。「ウォルト」では<言葉でまだまだ救われたいし/いつか君を救いたい>って言ってるんですけど、「グリコ」のは中盤で<落ち着いた時に浮かぶ顔 一息つける特別な居場所/言葉を探す必要もなくて 言葉を隠す必要もない>っていう歌詞があって。これは僕がいちばん求めているところなんです。いちばん感情が昂ったときとか、落ち着くとき、気持ちを許したときって言葉がいらなくなっちゃうんですよ。沈黙が言葉よりもずっと信頼できる何かを生んでくれたりするんですよね。その瞬間をすごく大事にしたいんですけど、一方でそれさえも言葉で表現できないとまだまだだなって思ってしまう。沈黙も大事にしつつ、それを超える言葉もこれから探していかないといけないなっていう。結果として「ウォルト」と「グリコ」では言葉に対する真逆の見方や、言葉の良さをそれぞれに表現したって感じになりましたけど……この歌詞は好きですね。
――たぶん言葉と沈黙は表裏一体なんでしょうね。どちらも含めて言葉なのかもしれないし。
さくらい:そうなんですよね。言葉をどれだけ探しても、一瞬の沈黙には勝てないんだけど、でも一瞬の沈黙を手に入れるためにはたくさんの言葉を知っておいたほうがいいしな、とも思うし。いつも闘ってます、沈黙と言葉と。
――言葉で言い表せなければ歌にならないし、みたいな葛藤もあるでしょうしね。私は<<グ・リ・コ>と<チ・ヨ・コ・レ・イ・ト>という言葉選びがとても秀逸だなと思いました。
さくらい:そう、あと(気に入っているところ)はそこですね。<グ・リ・コ>と<チ・ヨ・コ・レ・イ・ト>。
――<パ・イ・ナ・ツ・プ・ル>はないのかな、とも思いましたが(笑)。
さくらい:<パ・イ・ナ・ツ・プ・ル>も入れようと思ったんですけど、入らなかった。<パ・イ・ナ・ツ・プ・ル>だと雰囲気が崩れるので(笑)。
――あはははは。さて、ついに東京での初ワンマンライブ『サイカイ』が渋谷・WWW Xにて開催されます。
さくらい:本当に楽しみのひと言ですね。3マンライブとか、僕らを観に来てない人たちの前で演奏するのも楽しいんですけど、100%僕らを観に来てる人っていう環境でライブをやるっていうのは東京では初めてで。ワンマンだからこそできる昔の曲とか、久々に聴いてもらえるのはすごく楽しみです。お客さんの層にも歴史が見えるでしょうし、スタッフがいて、友達が観にきてくれたりして……もう結婚式みたいな日になるんじゃないかと思って(笑)。その日、ステージに上がって僕らがどう思うのかなっていうのも、ひとつ楽しみですね。
――そこで何を届けたいですか。
さくらい:タイトルにもあるように“サイカイ”(=再会)なので「僕らは元気だし、音楽もやめる気ないから」っていうことを伝えたい。伝えたいっていうか、安心してほしいかな。今、やめていくバンドも多いし、“大切なお知らせ”も増えるだろうし。だけど、いつでも僕らは音楽をやっているから「また会いにきてよ。それまで元気でお互いにいようよ」みたいなことを言い合えたらいいなって思いますね。
――音楽を続けていく、というのはもう揺るぎないんですね。
さくらい:そうですね……あれ、みんなは大丈夫? 「いや、ちょっと……」とかない?(一同笑) いや、でもそこは大丈夫です。
――その言葉が聞けただけでもよかったです。だって地元・札幌から東京に出てきてほどなく、こんなことになるとは思わなかったわけじゃないですか。これからっていうところでコロナ禍に見舞われて、でも折れずに音楽を続けていくって言ってもらえるのはファンにとってすごくうれしいことですから。
さくらい:もちろん。そのために東京に来たっていうのもありますから。もしかしたら、札幌にいたら折れてたかもしれないし、なぁなぁになってたかもしれない。このままスタジオに入らなくなって、メンバーにもなかなか会わなくなって、誰もライブしようって言わなくなって自然解散みたいな。でも東京に来て、ずっと気持ちを鼓舞してきたので、だから崩れないんじゃないかなって思います。こんな状況にはなってしまったんですけど、東京に来たことはまったく後悔してないです。
――最後に、この2曲からマイアミパーティを知る人たちにおひとりずつ、メッセージをいただけますか。
イワノ:マイアミパーティの音楽はどんな音楽かって最近考えたときに、まず、その人のことを否定はしないっていう。自分が好きなバンドを聴くときってそのバンドが自分のことを全部肯定してくれてるように思っていて、僕たちも聴く人にとってそういう存在になれたらいいなって思ってるんです。そのうえで、その人の日常の景色をちょっとでも華やかにできたらいいなと。コンビニに行くときの夜道とか、帰りの電車のなかとか、そういうところで僕たちの音楽を聴いてくれたら、そのシーンをちょっと華やかにすることができるのかなって。今回の2曲からも、そういうのを感じ取ってもらえたら。
中川:今(イワノが)言ったように、僕も日常にある音楽でありたいなと思ってるんです。それがマイアミパーティであってほしいなって。イヤなことがあった日でも、普通に楽しいことがあった日でも、帰り道に聴く音楽がマイアミパーティであってほしい。なので、よろしくお願いします……上手く言えないですけど(笑)。
セルジオ:僕はやっぱりマイアミパーティってライブバンドだと思っているんですよ。「ウォルト」とか「グリコ」を聴いて、その感情でそのままライブに来てくれたら、僕らはホントいい演奏で返すからね、と思っていて。今、この状況だから、なかなか会えないのがすごくつらいですけど、またライブができるようになったときには爆発できるように今から準備しているので、ライブを観に来てほしいですね。
――ラストはさくらいさん、お願いします。
さくらい:マイアミパーティを聴いてくれた人で「刺さった」とか言ってくれる人はたくさんいて、いろんな人に聴かれれば、いろんな人からそう言ってもらえる自信があるんです。なんでかと言うと、みんな、考えてることや悩んでることは、大きくても小さくても形は違っても、もとを辿れば近いものがあるからで。大きさや形が違うだけで、みんな同じような不安を抱えているし、同じようなことで嬉しい気持ちにもなる。なので、ひとりじゃないよってことを伝えたいですね。突き放す“ひとりじゃないよ”じゃなくて、「僕も同じ気持ちだよ!」って思って歌っているので、聴いて何かを感じてほしいというよりは、安心してほしい。「ウォルト」「グリコ」もそういう2曲です。

【取材・文:本間夕子】

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ウォルト

ウォルト

2020年12月24日

Living,Dining&Kitchen Records

01.ウォルト

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グリコ

グリコ

2021年01月20日

Living,Dining&Kitchen Records

01.グリコ

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中川マサキユ(Vo/Gt)
家具
家具全般ですね。僕、東京に引っ越してきてから、すぐにまた引っ越そうと思って、ちゃんと家具を揃えてなかったんですよ。布団と電子レンジと適当なものしかない、家具というものがない家に住んでいて。引っ越しするかどうか悩んだんですけど、だったら今の家を良くしたほうがいいんじゃないかな、と。ベッドとかラグとか机とか、家具を全部揃えちゃおうと思って、今、Amazonでずっと調べてます(笑)。壁紙貼ってみようかな、とかいろいろ考えてるんですよ

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