松尾太陽、古き良きものとニュータイプのミックスに――いま掴んだ“本当にやりたいこと”

松尾太陽 | 2021.02.17

超特急のバックボーカルであり、2020年にソロデビューを果たした松尾太陽。70,80年代の邦楽をこよなく愛し、好きなアーティストを尋ねると忌野清志郎や大滝詠一、マイケル・ジャクソンにプリンスといったレジェンドが名を連ねる。
音楽を深く掘ることが好きで、自分よりも誰かのためを優先する好青年のイメージが強い彼だが、腹のうちではどんなことを考えているのだろうか。2021年1月より始まった3ヵ月連続リリースの内容に触れると共に、胸中にしまいこんでいた本音に迫った。

――mini album『うたうたい』のリリース時、ソロで得たものをグループに持ち帰りたいとお話しされていたのが印象的でした。つまり、松尾さんはソロだからこそ得られるものもあると、お考えだということですよね。
松尾:ソロ活動を経験することで、もっと歌を好きになれるし、もっとクリエイターさんに寄り添えると思ったんです。超特急でもいろんな楽曲に挑戦させてもらっていますけど、グループ向けのテイストじゃないソロだからできる曲もある。作詞・作曲から手掛けることで、自分の息子や娘みたいに1曲1曲をもっと愛せるようになる。結果的に、シンガーとして曲のメッセージ性をより伝えられるようになるんじゃないかなって。ファンのみなさんにとって、僕の歌が音楽に興味を持つきっかけになったら嬉しいですよね。切なく歌っていたら「どうして切なく歌うんだろう」って想像したり、セットリストの組み方を見て「なんでこの流れなんだろう」って考えたり。ひとつひとつの曲にメッセージ性があるし、それを組み合わせることによって生まれるストーリー性やドラマもあるから。
――松尾さん自身が作品やアーティストのバックグラウンドを掘るからこそ、そう思う節は強そうですね。
松尾:表面的なものだけじゃなく裏側まで知ると、アーティストさんってもっと輝いて見えるんですよ。「この曲いいな」って思ったアーティストさんの思考に触れたり、作品を聴き比べてみたり。たとえ詳しくなかったとしても、音楽性の変化は感じられたりするじゃないですか。そういうのが、僕はすごく好きなんです。
――YouTubeでカバーしている作品が、最近のトレンド曲なのはなぜですか。松尾さんの趣向からすると、70,80年代のシティポップでもおかしくないよな……と。
松尾:僕にとって「歌ってみた」は、流行の曲やみんなが聴いている曲の良さを直接感じ取るきっかけなんです。実際に歌ってみることで、聴いているだけでは気づかなかった曲の良さを知ることができるから。新しい自分を次々に出していきたいし、もっと今の音楽を理解したい、勉強したい。ゆくゆくは松尾太陽が、古き良きものとニュータイプのミックスになれればいいなって思っています。
――面白いですね。古き良きものとニュータイプのミックスって。
松尾:結局どっちも好きだなって思ったんですよ。ニュータイプってすごいじゃないですか。誰でもアーティストになれる時代のなかで、今まで聴き馴染みがない楽曲がグワって駆け上がっていく姿を見ると、人を惹きつける何かがあるんだろうなって思いますし。正直なところ、僕はコード進行とか音楽理論みたいな詳しいことはわかりません。でも、聴こえる音の振動を通して、熱意や歌声の力強さ、繊細さを感じることはできる。最近はエモかったり力強かったり、人間味溢れる楽曲が増えてきた気がしています。「エモい」って一言で片づけたくはないですけどね(笑)。そういったエモさや力強さ、弱さって、どれだけ曲のジャンルが違っても、どれだけスピードが速くなっても遅くなっても揺るがない。伝え方が変わっても、結局は通ずるものがあると思ったんです。だったら、今は誰もいない古き良きものとニュータイプのミックスになっていきたいなと。古き良きものもニュータイプもミックスも表現できるようになったら、それって最強で最高じゃないですか。
――たしかに、そうですね。ちなみに、ここ最近で度肝を抜かれた曲は何ですか。
松尾:Adoさんの「うっせえわ」。17歳であれを歌えるのは、やばいですよね。僕が17歳のときは、まともに歌もダンスもできていなかったので、そういう人生もあるんだなって思います。
――3ヵ月リリースの第1弾である「Magic」は、まさしく古き良きものを愛する松尾さんがニュータイプに挑戦した1曲ですよね。
松尾:実はBTSさんの「Dynamite」からインスパイアを受けているんです。2019年に初めてソロライブをやったとき、お客さんが座って静かに見てくれていたのが印象的で。もちろん、それもありがたいんですけど、もっとライトを振ったり一緒に盛り上がったりできる曲があってもいいなと。
――歌詞もとても甘くて……。
松尾:気持ちの高ぶりが出ているロマンチックな内容ですよね。本当に輝いた言葉が羅列されている。超特急を含めても、ここまで軽快な英歌詞の曲は初めてだったので、僕にとって挑戦で。英語の発音もそうですけど、地声とファルセットの切り替えが難しく、流れるような歌い方の使い分けは苦戦しました。
――その頑張りがあって、ポップで華やかな1曲に仕上がっていると思います。ぜひライブの際は、BTSのように歌って踊ってほしいです。
松尾:やりたい気持ちはあるけど、あそこまでできるかな(笑)。ライブができるときまで、温めておきますね。
―― 一方で「体温」は、Omoinotake節炸裂のバラードですね。
松尾:ソロでも超特急でも歌ってきていない世界観の作品になっています。聴き進めていくほど相手との距離が広がっていくような気もするし、言葉の意味もどんどん変わっていく。ひとつひとつの言葉に気持ちをこめて作詞をしてくださったのだと、歌ってみて改めて実感しました。デモを耳にしたとき、曲を聴くというよりもドラマを見ている感覚が強かったんです。聴き終わったあと、5,6秒くらい時間が止まったんじゃないかと錯覚したくらい。音楽が流れて、言葉が流れてくるだけで、映像としてイメージが湧いてくる。まさしく“音楽”な1曲をOmoinotakeさんに提供していただきました。
――松尾さんのバイタリティーを証明する2曲に仕上がったと思います。
松尾:ハッピーで高揚感ある「Magic」の1ヵ月後に、切ないバラードの「体温」がリリースされるのも深読みしちゃいますよね(笑)。この期間が空く感じがリアルというか、そういうタイミングすらドラマ性を感じます。
――3ヵ月連続リリースのラストは、松尾さんの作詞・作曲だそうですね。テーマは決まっているんですか。
松尾:リリースが入学や卒業の時期になるので、新しいことに挑戦する人への応援歌にしたいなと思っています。イメージは春や桜。
――“応援”って松尾さんにとってキーワードですよね。「掌」も、そういった想いがこめられていたような……。
松尾:僕自身、音楽に支えられたことが多かったからこそ、曲を作って届けることが応援してくれている人たちへの恩返しになると思っているんです。背中を押すほどのパワーはないかもしれないけど、せめて背中を支えられたらいいなって。自分が作詞・作曲をするときには、そういう軸がけっこうありますね。
――制作の状況は、いかがですか。
松尾:今は曲を作りながら「サビをもうちょっとこういうふうにしたいな」って、調整しているところです。「掌」と同じように山口寛雄さんと一緒に作曲を進めているんですけど、アイデアがポンポン出てきて本当にすごいんですよ。とても刺激をもらっているので、僕も「こういうことをしてみたい」と積極的に意見を出すようにしています。メロができあがったら、徐々に作詞にも手をつけようかなと。
――松尾さんは曲先で制作をされるんですね。
松尾:そうですね。基本的には鼻歌で曲を作って、それに詩を乗せていきます。ギターでも作曲をしたいと思って挑戦しているんですけど、なかなか難しくて(笑)。
――ご自身で作詞・作曲している時点ですごいと思います。シンガーとして活動していくなら、提供された曲を表現するので十分に成り立つじゃないですか。
松尾:ソロで活動するなら、作詞・作曲に挑戦するのは僕のなかでマストでした。エンターテインメントや音楽を0から自分で生み出したい、自分で届けたいという思いが強くて。ひとつひとつの作品をもっと自分の子どものように扱いたいからこそ、もっと自分の要素を濃くした作品を生み出していきたいんです。あまり欲はないほうですけど、それが僕の欲なのかも(笑)。
――お話を聞いていると、ソロデビュー時よりご自身のやりたいことやマインドが固まってきていますよね。
松尾:ずっと思考に靄がかかったような状態だったんですけど、最近になってようやくソロや超特急でやりたいことが明確になったんです。
――何かきっかけがあったんですか。
松尾:2020年の下半期を、「本当にやりたいことを探していこう」と思いながら過ごしてきたことが大きいですね。自粛期間って活動が制限されているなかで、それぞれが新しいことに挑戦していたじゃないですか。一方であの時の僕は、何をやりたいか本当にわからなくて。「どうしよう」と困ってしまい、すぐに動き出すことができなかったんです。そのもどかしさを、活動が再開してからのオンラインライブやレコーディングにぶつけてきた感じで。年末にあった超特急のオンラインライブを経て、自分のやりたいことがちゃんとまとまりました。2021年に入ってからは気持ちが切りかわって、毎日わくわくしているんです。語彙力を伸ばすために始めた読書も、空いた時間で練習するギターも本当に楽しくて。
――ソロデビュー時には「有言実行するタイプではない」とご自身のことを語られていたので、「やりたいことがまとまった」と言葉にするのは松尾さんにとって大きな変化ですよね。
松尾:歌手として追求していくためには、もっと貪欲になることも必要だなって。心のどこかで「やれないな」って諦めていたことにも挑戦したいし、やってみたいと思ったことは口にだして行動に移していきたい。離れた場所にあった点々が、線に繋がった感覚があるので。あまりジャンルにとらわれず、いろんな方に愛されるような楽曲を作っていきたいですね。そのなかで、自分の伝えたいことを曲や歌詞で表現していけたらいいな。

【取材・文:坂井彩花】




松尾太陽 「体温」 Music Video


松尾太陽 - Magic 【teaser】

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リリース情報

体温

体温

2021年02月11日

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01.体温

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Magic

Magic

2021年01月15日

SDR

01.Magic

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「体温」
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