ユレニワ、2020年を経て得た強さとは?

ユレニワ | 2021.03.22

 1stアルバム『ピースの報せ』から1年と少し。アルバムを出した直後に新型コロナウイルスの影響が広がり、ライブも思うようにできないという状況は、彼らにとっては不運だったとしかいいようがない(もちろん、全ての人にとってそうなのだが)。だが、その1年があったからこそ、ユレニワはより強くなって戻ってくることができたのだとも思える。12月から4ヵ月連続で新曲を配信リリースしてきた彼らだが、その4曲が4曲ともすばらしいのだ。それぞれ全く違う方向性と色合いを帯びながら、どの曲も人間、この時代、そしてロックバンドの本質をガッチリ掴んでいるような手応えを感じさせる。まだ少し気が早いけど、やがて出てくるであろう次のアルバム、彼らにとっての決定打になるかもしれない。

――『ピースの報せ』を出したのが昨年の2月、緊急事態宣言が出る直前でした。あれから1年、いろいろなことを感じながらバンドをやってきたと思いますが。
シロナカムラ(Vo/Gt):はい。有観客でライブしたいという気持ちがあったのは間違いないですけど、考えるのに追われて、答えが出ないまま最初の自粛期間は過ぎ去っちゃったなって感じでしたね。こんな中でも無理にでもライブをするべきだっていう意見もあるかもしれないし、絶対にそんな音楽なんて(今は控えるべき)って思うバンドマンもいるかもしれないけど、一概になんとも言えないなって思いながら。
――今回連続配信リリースしている4曲もその時期に作ったもの?
シロ:そうです。もうめちゃめちゃ、2020年の1年ありきでできた曲たちですね。4曲とも違いすぎるぐらい違う楽曲なんですけど、生々しい感じがするなって思います。自分はずっと、人間らしい部分を貫くっていうことを考えてきたんですけど、今回はより自分の晒したくない部分っていうか、泥臭い部分がもっと出ている感じがする。なんか今までの人間らしい泥臭さに磨きがかかったというか。
――うん、人間臭いですよね。『ピースの報せ』も生きるとか死ぬとか、愛することとか、すごく本質的なテーマに向かっていましたけど、それをさらに自分の側に引き寄せている感じがする。それはやっぱり、コロナ禍の中を生きてきたリアリティみたいなのが影響しているのかな。
シロ:多少なりとも影響はあると思います。去年の前半、軽くうつ病みたいになってて、すごくしんどかったんですよ。そこからちょっとずつ立ち直って、バンドでの動きも少しずつ出てきたので、頑張って……まあ、バンドがきっかけで立ち直ったわけではないんですが、自粛を明けるか明けないかぐらいからはすごく自由になれたんですけど。前半はもうずっと酒飲んでた(笑)。
――そういうシロくんのモードってメンバーも感じ取ってたんですか?
シロ:いや、感じ取られてたら困るな(笑)。
RENJU(Dr/Cho):全然わからなかった。自粛期間中、僕はとりあえず毎日その辺走ってました。体力つけちゃおうって(笑)。何もできないから、とにかく前にあることやろうって。何やってた?
宮下レジナルド(Ba/Cho):もう、ずっとバイト。バイト嫌だなって思いながら。
シロ:コロナ嫌だな、じゃないんだ。何も変わってない(笑)。
種谷佳輝(Gt/Cho):俺は家で映画とか観ながら、これじゃダメだなって思って、グッズの通販を新しく始めたりとかしました。バイトも1回なくなっちゃったんですけど、復活してからは結構バイトしたりとか、大学生なんで卒業論文書いたりとかしてました。
シロ:俺たちも、この記事を見てる人たちもみんな必死だった。とくに「焦熱」とかはそういうのが出ているし、ほかの曲に関してもどこかしらこの状況っていうのは根本にあるなって思いますね。
――久々に集まって音を鳴らしたみたいなときは、結構盛り上がったんじゃないですか?
RENJU:盛り上がったっていうよりは、むしろみんな絶望に近い何かを感じてましたね。
シロ:そうだ、下手すぎて「うわ!」ってなった。最初ジャーンって鳴らした時は気持ちよかったんだけど……。
種谷:全然合わなくてね(笑)。
RENJU:音のバランスも悪くて、全部うるさくて耳が痛えなって。
種谷:やっぱり定期的にライブをやっていたことでバランスを保っていたんだなって思いましたね。
RENJU:だから、有観客でワンマンやったときの感動が死ぬほどデカかったんです。ユレニワだけのために来てくれる人がいるんだっていう。去年の3月から遮断されてたものが12月にやっと解放できて。ハッピーでしたね。
シロ:うん。やっぱりライブをやっていくしかないんだなって気持ちが4人の中で芽生えたかなって思います。もちろんお客さんへの感謝とか全部含めて、それが幸せなんだなっていう。これが俺たちのやるべきことなんだっていう確信を少しずつ少しずつ得ていく、その始まりの瞬間だったんだと思います。だから今、強くなってるんじゃないかな、音楽家として。より芯のある存在になっている気がするんですよ。バンドとして仲が良くて、結束力があってとかっていうことではないんだけど、個々の中にライブとか音楽に対する信念みたいなもの、確固たるものができたんじゃないかなって。
――それは今回の4曲を聴いてもなんとなく感じるんですよね。なんというか、「こういう感じでしょ?」っていうのが1個もない。それぞれの持ち場において全部考え尽くされているというか。散々考えて答えを探した結果、これにたどり着いているという感じはすごく伝わってきますね。
シロ:うん、そうですね。そういう感じはあると思う。
――では楽曲ごとに訊いていきたいんですけど、まず「Birthday」は、作曲のクレジットがRENJUくんと種谷くんの連名になっていて。これ、初めてですよね。
RENJU:これは特例なんです。基本的にメロディを作った人が作曲者になるっていうのがユレニワでは決まっているんですけど、この曲はイントロとアウトロがどうしても決まらなかったんです。そのときに佳輝が持ってきてくれたイントロがエグすぎたんで。そうやってできた曲を「RENJU作曲」とは言えねえなって思って、クレジットにも入れました。
種谷:この曲のアレンジは本当に難しかったんですよ。ギターも何回録っても「何か違う」がすごいあって。歌詞にあったもっと人間のエグいところみたいなイメージをどう形にするか、悩みましたね。
RENJU:「Birthday」っていうくらいだから。誕生って何もかも簡単じゃないじゃないですか。産むことも大変だし生まれてからのこともそうだし。死ぬまで80年、いろいろあると思うんです。そういうのもこの曲には表せていると思う。
――情報量がめちゃくちゃ多いですよね。いろいろなものが積み重なっているというか。歌詞もシロくんの人生観がすごく濃い形で出ている感じがするし。
シロ:まさしくそうですね。何やら重たい感じの雰囲気の曲ですけど、でもネガティブだとは思わないんですよね。結構ポジティブな歌ではある。
RENJU:歌詞めっちゃ悩んだよね。すごく時間かかってた。
シロ:多分、「Birthday」の歌詞って5年後には絶対書けないんですよ。同じメロディ、同じアレンジのものを受け取っても5年後は絶対書けない。それはコロナも関係なく、あの瞬間に作ったから書けたものだと思う。ものすごくぼやけた、抽象的なものだけを頼りに、光を目指して歩いていくような感触というか。
――曲の最後に<The answer is blowin’ in the wind>って、ボブ・ディラン「風に吹かれて」の歌詞を引用していますが。そこがシロくんのいうポジティビティですよね。結局そうじゃん?っていう。
シロ:そうですね。結局人生って、何事においてもそうじゃないですか。人の言葉借りておいてなんですけど(笑)。
――その言葉があって、次に配信されたのがバリバリのロックンロールである「だらしないね」なのもいい流れだなと思って。これこそ自由!って感じですよね。
シロ:これはそれこそ(気持ちが)落ちてた時期にめちゃくちゃな状態で書いてた歌詞を頼りに、なんとか落ち着いた頃に曲にまとめてメンバーに投げたっていう感じだったんです。でもライブで歌うとすげえ楽しく歌える。その当時の暗い気持ちを思い出したりしないんですよね。あんまり深いことは考えずに、なんか「ちくしょう!」っていうセリフと一緒みたいな。それ自体に別に意味はない、そのセリフが長いだけ、みたいな(笑)。
――<助けてくれ 僕はうじ虫になった>ってすごいフレーズですけどね。
シロ:ひどいもんですよね。
RENJU:すごい歌詞だよね、確かに。この曲はもう、シロからもらった段階でほぼ完成していたんです。かっこいいな、これでいいんじゃないって割とあっさりできた。
シロ:なんか無の状態でやったらこれになったんですよね。そのときの自然なものだったんじゃないかな。
――叫びたかったんだよね、きっと。
シロ:そうそう、「うじ虫!」って(笑)。
種谷:「うじ虫」って言いたいから作った曲?
シロ:ははは。そういうことにしておこうか。
――でもそれも含めて作らないとダメだった曲で、それができたからこそライブでも気持ちよく歌えるんじゃないですかね。その感覚はバンドの演奏にも出ている気がする。とにかくやりたいんだ俺は、みたいな。
RENJU:でも、シロと同じで何も考えてないんですよ。どれだけフリーダムにできるかっていう。
種谷:うん、どれだけ重い荷物持てるかっていう感じのテンションですね(笑)。
シロ:特にアウトロの前のベースとドラムの掛け合いみたいなところからベースのソロが入るんですけど、あそこは楽しいんじゃないかな。
宮下:めちゃくちゃ楽しいですけど、あそこちょっとクセがあって。リズム隊ふたりで合わせるときはうまくいくんですけど、バンドで合わせるとあんまりうまくいかなくて。
種谷:それ、俺らが悪いんじゃん(笑)。
宮下:いや、そういうことじゃないんだけど(笑)。アウトロ入る瞬間の「ここに行くんだよ」みたいなのが「あれ、合わなくない?」みたいな。まあ、その……楽しいですよ。
種谷:(笑)。ギターも、考えないようにしようと思ってレコーディングに臨みましたね。デモでシロが弾いていたイメージだけを頭に入れて、あとはその場のテンションだけみたいな。全員でロック少年って感じでした。
――わかりました。そして「焦熱」。ミュージックビデオも公開されましたが、素晴らしいですね。
シロ:ちょっとホラーなのかと思ったら、全然そういう畑にいるわけでもなく。MVというより映画じゃないですか。あの中で音楽が引き立つのかっていう話し合いを何回もしまして、ああなった。よかったなと思います。
――曲自体も、もちろんコロナの状況を描いているんだけど、でもすごく普遍的な人と人の関係性の話だなと思うし。いろいろな受け取り方ができますよね。アレンジもすごく凝ってますが、レジナルドくん、この曲の制作はどうでした?
宮下:めちゃめちゃ大変でした。この曲をベースで引っ張ってくれってRENJUに言われたんですよ。それで考えていざ当てはめても、これじゃない感がすごくあって。メンバーからも「こっちの方がいいんじゃない?」って言われたり、でもそれは俺はあんまり好きじゃないなって思って、また新しいのを出したり。っていうのを何度も何度もやって今の状態になりました。
RENJU:デモを聴いたときから、リズム隊が映えるだろうなって思ったんです。だからこそ逆にギターとかも難しかったよね。
種谷:リズム隊を映えさせたいっていうところでアレンジにこだわってたんで、ギターは最後だったんですよ。ってなった時に、じゃあギターは謙虚にいればいいのかな?ともちょっと思ったんですけど、いや、俺ギターも映えさせたいなと思ったんで、伸び伸びとやりました。
RENJU:で、間奏のギターで僕はまた感動して、「すごい、お前天才」っていうLINEを送りました(笑)。たぶん本当に難しかったと思うんですよね。
シロ:うん、すごいなあと思った。サビのリードギターとかも、引くとこ引いて出るとこ出るっていうか、歌詞をしっかり咀嚼したっていう意味で空気を読んでいるっていう感じがして。ものすごい心理描写に寄り添ってくれるギターだなって。
RENJU:やっぱりすごいよ。すごいようちらは。
種谷:そんなことばっかり言ってる、最近。だんだん恥ずかしくなってきた。
RENJU:マジ俺ら最高!って? そんな言ってないよ。でも、そう思ってればいいと思う、4人が。
――そして、「あばよ、ビューティー」。これはいい曲ですねえ!
RENJU:いい曲ですよねえ。大好きです、僕。
シロ:「いい曲ですよね」って、それしか言ってない(笑)。
RENJU:だっていい曲なんだもん。
――パーっとトンネルを抜けていくような明るさがあって、でもテーマとしてはすごく人間の芯を食っている感じで。どういうふうに作ったんですか?
シロ:これはイチから、メロディにしてもアレンジにしても、バンド全員で考えていきました。超効率悪いんですけど、オンラインでみんなで書き始めて。
種谷:しかもそれをYouTubeで録っておいて編集して出すっていう。見られながら作曲するっていう初の試みでした。ま、今後やるかわからないですけど(笑)。


RENJU:素材も何もないところから「さあどうしようかね」っていう感じだったんで。YouTubeで出したのは1サビ終わるまでとりあえずできました、みたいな感じだったんですけど……。
種谷:本当は1曲全部作って「できました!」って番組を作りたかったんです。でも、よく考えたらそんなの無理だなって。今までその何十倍の時間をかけてやってきたわけで、結局、今回もYouTubeで公開したものとはガラッと変わってる。もちろん残っている部分もあるけど、イントロが違ったり。
シロ:でも、そのみんなでやったというのが曲に出てると思います。イントロからみんなの音の感じ方とかがすごく出ていて、変なんだけどピタってはまってる。
――賑やかだよね、雰囲気が。わいわいやっている感じが伝わってきます。ホーンの音も華やかですね。
種谷:あれは知り合いのトランペッターに入ってもらったんですよ。あのトランペット聴くと泣きそうになるんですよね。
RENJU:いやほんと、新しいことやってるし、でもいい曲になってるし。すげえ……。
種谷:はははははは。
――<宣誓、これから旅に出ても泣かないと誓おう>という歌詞も力強いですよね。
シロ:根本的には、昔の恋を見つめ直して書いた曲なんですよね。そこから前向きに旅をしていく、人生をこれから全うしていく中で「頑張っていきましょう」じゃないけど、そういう気持ちから書き始めたと思いますね。切ない気持ちと、前に進みたいんだけど足を取られる、でも頑張る、みたいなのを描きたかったっていう。
――2021年、まさにこれから頑張っていきましょうというタイミングでそういう曲が出てきたのも必然的だなと思います。個人的なところから出発しているのかもしれないけど、作り方にしろメッセージにしろすごく普遍的で。次のアルバムに向けても動き出している感じなんですか?
RENJU:これからやろうかなって。
シロ:動くための第一歩を考え始めました、って感じですね。だから若干、始まってる。もう、皆さん期待しちゃってください。

【取材・文:小川智宏】

tag一覧 J-POP シングル 男性ボーカル ユレニワ

リリース情報

Impressionist

Impressionist

2021年03月19日

MASH A&R

01.Birthday
02.だらしないね
03.焦熱
04.あばよ、ビューティー
05.Birthday(inst ver.)
06.だらしないね(inst ver.)
07.焦熱(inst ver.)
08.あばよ、ビューティー(inst ver.)

*3/19(土)千葉LOOKでを皮切りにライブ会場にて販売開始。

リリース情報

あばよ、ビューティー

あばよ、ビューティー

2021年03月17日

MASH A&R

01.あばよ、ビューティー

お知らせ

■配信情報

「あばよ、ビューティー」
https://friendship.lnk.to/HummingofWanderers
「焦熱」
https://friendship.lnk.to/SeesawInHeaven
「だらしないね」
https://friendship.lnk.to/IntheZIMA
「Birthday」
https://friendship.lnk.to/birthday



■ライブ情報

ユレニワ presents 「JURENIWA IS WORLD TOUR」
03/19(金)千葉LOOK
03/24(水)福岡Queblick
03/25(木)岡山PEPPERLAND
03/27(土)大阪CLAPPER
03/28(日)愛知 名古屋HUCK FINN
04/11(日)東京 新宿Marble *ワンマンライブ

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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