門脇更紗、メジャーデビューシングル「トリハダ」に込めた思いとは

門脇更紗 | 2021.03.22

 配信シングル「トリハダ」でビクターエンタテインメントからメジャーデビューした門脇更紗は、1999年兵庫県生まれの21歳。10代のころからコンテストで結果を残しながら着々と成長してきた。まっすぐなメッセージと人なつっこいメロディ、凜としたさわやかな歌声が魅力だ。うれしい知らせに鳥肌が立ち、<このまま鳥になって/飛べてしまうんじゃないかって>と<理想>に向かって羽ばたき始めた彼女に注目したい。

──資料に《3歳のときに英会話教材に入っていた英語の歌で歌うことに目覚める》とありますし、幼少時から音楽に興味があったんですね。
門脇更紗:好きでした。SMAPさんの「世界に一つだけの花」を子供用の小さなマイクで歌ったりとか、習っていたバレエをおばあちゃんに披露したりとか、人前で何かやって見せるのが好きな子供でしたね。
──小学生のときにギターを手にしてシンガーソングライターを志すようになったとか。
門脇更紗:小学2年生のときに「CHE.R.RY」をauのCMで聴いたのがきっかけでYUIさんが大好きになったんです。その影響で10歳のときにギターを始めたんですけど、小学校を卒業するころにはシンガーソングライター以外にやりたいことが全然なくて。幼いときからピアノやバレエの発表会で人前に立つのが好きだったのもあって、「曲を作って人前で歌う」という以外のことが想像できなかったんです。なので、自分が想像できる唯一のものを追求してきての現在っていう感じですね。
──シンガーソングライターになるためのアクションはいくつぐらいから?
門脇更紗:中学2年生のときにあるオーディションを受けたんですけど、最終選考のひとつ前の一般投票で負けてしまったんです。ツイッターもその オーディションがきっかけで始めたぐらいだったので、友達やその家族に「投票して!」ってお願いしたんですけど、それでもダメでした。協力してくれたみんなに申し訳なくて悔しくてたまらなかったんですけど、そのオーディションの主催の方が「レッスンに来てみないか」と声をかけてくださって、東京にレッスンを受けに通うようになって、ライブ活動も始めました。
──初めてライブハウスに出たのは?
門脇更紗:高校1年生の夏でした。それまではオーディションと、あとレッスン先の発表会ぐらいです。ライブでお客さんに歌をお届けするっていうのをやったのは高1のときが最初ですね。
──そのときのことは覚えていますか?
門脇更紗:カバー曲をたくさんやりました。オリジナルは1曲だけ、オーディションに落ちた悔しさから「to look up」っていう曲を作って歌いました。知り合いがいっぱい来てくれたんですけど、めっちゃ緊張して、シールドをつないだまま退場してしまって「ブチブチブチッ!」って音が響き渡ったのをよく覚えてます(笑)。その後はやっぱり自分の曲を披露したいって思って、オリジナル曲がどんどん増えていきました。
──そして高校3年からは東京でライブをするようになったと。
門脇更紗:はい。今の事務所に入ってからですね。大阪のライブハウスに出てたとき、演奏が終わった後で「さらちゃん、呼んでるよ」って呼ばれて行ったら女性のお客さんがいて、その方から「興味があれば。」と渡された名刺に「スターダストプロモーション」って書いてあったんです。わたしYUIさんに憧れてたっていうのもあって、ずっとスターダストプロモーションに入るのが夢だったので、その時はめちゃめちゃ鳥肌が立ちました。
──「トリハダ」につながるエピソードですね。
門脇更紗:そうなんです。「興味があれば」って言われて「興味ありまくりー!」って思って(笑)そのときのことを制作スタッフの方に「鳥になるぐらい鳥肌が立ったんです!」って話したら「それ面白いね」って言っていただいて、「トリハダ」っていう曲を作ることになりました。
──なるほど。曲の話は追ってしますが、事務所に入って以降は?
門脇更紗:関西や東京のライブハウスやイベントにも出ましたし、地元の駅前で路上ライブをしたり、FM802とグランフロント大阪さんが共同で行っている「MUSIC BUSKER IN UMEKITA」っていうプロジェクトでオーディションに受かって、グランフロント大阪の広場で歌ったり。ライブ尽くしの高校時代でしたね。
──そして2019年の10月から東京に拠点を移した、と。その第1弾が2020年3月の「東京は」ですね。地方出身者の心情が素直に描かれていて、個人的に好きな曲です。


門脇更紗:ありがとうございます。<エスカレーターはああ“左側か”/なかなか馴染めない>ですね(笑)。
──そして11月からは「さよならトワイライト」「いいやん」「ばいばい」と3連続配信リリース。このころリリースしてきた曲は比較的新しい作品ですか?
門脇更紗:それぞれ素材だけあった曲をフルに仕上げた感じです。「いいやん」は2020年の年始ごろにはあったんですけど、その後コロナの事があって、外出自粛期間中に完成させました。”おうちにいる時間もいいやん”、っていう気持ちで聴いてもらえたらなって思って、配信3部作に入れました。


──5月にリリースした「えのぐ」も、<テクスチャー>と<フューチャー>のかけ言葉が面白かったです。
門脇更紗:当時YouTubeで美容動画をいっぱい見てたんですけど、ファンデーションとか見せるときに「こちらのテクスチャーはすごく柔らかいです」とか言うじゃないですか。それで<テクスチャー>って歌ってたら、勝手に<フューチャー>が出てきたんです(笑)。こういう言葉遊びっぽいのも好きですね。


──僕が聴いたなかでは遊びっぽいのはあの曲ぐらいで、どちらかというと門脇さんの本来のスタイルは自分に素直なメッセージを伝えるほうですよね。
門脇更紗:まっすぐですね。聴いてくれる人の背中を押せたらいいなって。「トリハダ」は、鳥肌って怖いものを見て立つイメージが強いと思うんですけど、夢が叶う瞬間に立ついい意味での鳥肌もあるんだよ、ということを伝えたいなと思ったんです。
──佐伯ユウスケさんがアレンジをされていますが、更紗さんがまるまる一曲作ってアレンジに回すのか、それともある程度一緒に作っていくのか、どちらですか?
門脇更紗:トリハダは弾き語りでフルコーラスを作ってから「アレンジお願いします!」っていう状態でお渡ししました。「さよならトワイライト」と「いいやん」も佐伯さんですけど、こっちはご相談しながら、アイデアをちょっといただいたりして作ったんですね。その2曲の流れがあったから、佐伯さんならこうしてくれるかな、っていうイメージがなんとなく浮かんでたのでトリハダもお願いしたんですけど、予想をはるかに上回るかっこいいアレンジをしてくださいました。
──僕が面白いなと思ったのは<落ちていく羽たちが/また新しく生まれる>という表現でした。人の体毛から鳥の羽毛につながった感じで。
門脇更紗:そうですね(笑)。デビューシングルっていうこともありますけど、その前の<背中を撫でるような/ぞわぞわした感覚だ>を含めて、「今から飛ぶぞ!」みたいな感じが最初から伝わればいいな、と思って出てきたフレーズです。その歌詞が最後にもう一回繰り返されるのが大事な部分なんです。最初と最後では同じ言葉でも主人公の強さがちょっと違ってるみたいな。


──主人公はまるっきり門脇さん自身ではないんですね。
門脇更紗:違います。わたしの曲はそれぞれに主人公がいて、もちろん自分の経験も交えますけど、それぞれ聴いた人の想像する主人公が登場すればいいなって。自分が主人公になってもらってもいいし、わたしを主人公にして聴いてもらってもいいし、別の人を主人公にしても全然いいし。わたしだけの歌にはしないようにしてます。
──この主人公は自分の性格に近いと思いますか?
門脇更紗:近いですね。ふわふわしてるように見られがちなんですけど、意外と強気な感じで。悪く言われてもあんまりめげないタイプですね。
──もし「おまえはダメだ」と言われたら?
門脇更紗:「見る目がないな」って思うようにします(笑)。オーディションに落ちたときも、悔しかったけど「見る目がないな」って思って過ごしてきました。ただそのオーディションを受けてなかったら曲も作ってないし、ライブもしてなかったと思うので、受けてよかったと思ってます。
──メジャーデビューにあたっては感慨深いものもあるのでは?
門脇更紗:はい。不安もありますけど、大きな夢のひとつでもあったので、叶えられたのはすごくうれしいですし、これから活躍できる第一歩というか、通過点になればいいなって思います。今はすごく前向きな気持ちでワクワクがいっぱいですね。
──トリハダから羽が生えて……。
門脇更紗:このまま武道館まで飛んでいきたいですね。
──今後やってみたいことは?
門脇更紗:いっぱいあるんですけど、一個一個言ってもいいですか(笑)?
──お願いします。
門脇更紗:CMタイアップ、映画タイアップ、ドラマタイアップ、アニメタイアップ……書き下ろしをしてみたいというのがあります。あと、今は難しいけど、全国ツアーに行ったり、海外はさらに難しいですけど、台湾に仕事で行ってみたいです。プライベートでは行ったことあるんですけど、Spotifyで聴いてくれてる人の上位が台湾だったことがあって、あらためて興味が湧いていて。それと、これから練習が始まるんですけど、バンドで曲をお届けしたいです。日本武道館にはいつか絶対に立ちたいですね。
──タイアップ志向は面白いですね。テーマに沿って曲を作りたいということ?
門脇更紗:はい。実はすでにいくつかやらせていただいて、順次情報解禁できると思うんですけど、すごく楽しくて、全然苦じゃなかったので。自分の歌だけ書きたいわけじゃなくて、テーマに沿って書くっていうのがすごい楽しかったんです。これからもぜひそういうお仕事をしたいです。
──テーマがなくてゼロから曲を作る場合はどんなふうに?
門脇更紗:ふだんからスマホのメモとかボイスメモに歌詞やメロディの断片を溜め込んでて、「今日は曲を作ろう」って気分になったらそれを組み合わせて作ります。前はメロディを先に作ることが多かったんですけど、最近は歌詞から作ることが多くなりました。たまにメロディと歌詞がピタッとはまる奇跡みたいな瞬間があって、そういうときは絶対それを使うんですけど。
──そのピタッとはまってできた曲は、これまででいうと?
門脇更紗:「Diamond」(2018年のアルバム『雨の跡』に収録)ですね。♪君の声、君の瞳~、忘れ~ら~れな~い僕はダイア~モンド~、っていうフレーズ、メロディと歌詞が自分の中でバチーッ!とはまって、「ここは曲げられない!」と思ってそこから作っていった曲です。「こういう曲を作りたいな」って思って作ったんじゃなくて、ベッドの上で歌ってるときにこのメロディと歌詞が出てきたから、そのために1曲にしたみたいな(笑)。そういう瞬間は「きたっ!」と思うんですけど。


──小学生のころから『ハイスクール・ミュージカル』を見ていて、初めて買ったCDがテイラー・スウィフトだというほどの洋楽好きだから、歌詞よりもメロディを先に作るのは納得がいくんですが、それが逆になってきたというのはかなり大きな変化ですね。
門脇更紗:わたしも大きな変化だと思います。変な英語でメロディを作るんですけど、それをすると洋楽っぽいメロディにはなるけど、日本語がきれいにはまらないことに気づいて。それで「やっぱ歌詞からか」って思ったのと、やっぱり歌詞は大事だよなって。シンガーソングライターとしての成長過程にいるなって思います。
──自分で人の曲を聴いていても歌詞が印象に残る曲もありますか?
門脇更紗:はい。洋楽は和訳を見ないとわからないんですけど、洋楽の和訳って癖があるじゃないですか。「和訳という日本語」みたいな(笑)。和訳を読みすぎると影響されて日本語の歌とは違ってきちゃうから、和訳っぽい日本語にならないようにしなきゃって意識してます。日本の曲は、自分が曲を作り始めてから、めっちゃ歌詞をちゃんと聴くようになりました。YUIさんの曲はちっちゃいときは流れで聴いてたけど、今は歌詞をよく聴いて、あらためていい曲だと思いますね。
──なるほどね。そうなってもなんらかの形で洋楽の影響はあるんでしょうね。
門脇更紗:歌い方とかはけっこう変わったと思います。しゃくりが多くなりました。カラオケで歌うとしゃくりマークが半端じゃなく出ます(笑)。洋楽を聴いてたからなのかなと思いますけど、それが個性になってればうれしいですね。
──個性になっていると思いますし、一方で日本語がちゃんと聞こえるのも門脇さんの強みなんじゃないでしょうか。
門脇更紗:ありがとうございます。それはすごくうれしいです。それこそ歌詞を大事にしないといけないですね。変なこと言えない(笑)。
──去年1年間はコロナの影響でスケジュールがグチャグチャになってしまった部分もあると思うんですが、今年は状況が多少マシになると仮定して、どのように活動していきたいですか?
門脇更紗:やっぱりライブをいっぱいしたいですね。配信ライブではお届けしてるんですけど、お客さんに直接会えない時間が長い中で、制作に打ち込んだり、改めてボイトレを定期的に受けたりとか、自分でいろいろと積み上げてきたものもあるので、それを直接ライブでお届けしたいって気持ちが強いです。バンドの練習もこれから始まるので、バーッと一気に解き放てたらいいなって思いますね。

【取材・文:高岡洋詞】

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トリハダ

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2021年03月03日

ビクターエンタテインメント

01.トリハダ

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わすれものをしないように

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2021年04月07日

ビクターエンタテインメント

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