SideChestの変化も感じられるような、革新的な一枚

ゆびィンタビュー | 2021.03.23

 名古屋発の4ピースバンド・SideChestの2ndミニアルバム『Pabulum』が、3月10日にリリースとなった。ふたりのソングライターを内包しているSideChestだが、別々の感性や趣向を持った人間がいるからこそ感じられるバンドの可能性というものが確かにあって、約2年振りのミニアルバムとなる今作では、その部分が色濃く表れているように思った。とはいえ、メンバー全員に今作についての話を訊いたところ、そこのところを小難しく考えている様子は全くなかった。そういった、気負いなどを感じずに音楽を純粋に楽しんでいる精神性が、メロディや歌詞の良さにも繋がっているのだろうなと思えたし、取材中も笑いが絶えなかったので、そんな雰囲気も感じ取りながら読んでほしい。

PROFILE

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SideChest


名古屋発、4ピースロックバンド「SideChest」。
松岡拓実(Vo/Ba)のハイトーンかつ力強い声、そして松岡拓実と伊藤克俊(Gt/Cho)バンド内にふたりのソングライターという2つの柱を擁することで、それぞれからつくられる2面性のある楽曲を武器として発揮することでSideChestらしさを確立している。
2020年7月コロナ渦のなか急遽制作した配信シングル「Prima」、そして2020年9月に1年4ヶ月ぶりの全国流通となった2nd Single「Flashback」をリリースし、ライブができない環境下においても手を尽くし止まらずに活動し続けることで、ライブにも楽曲にも磨きがかかり着実にパワーアップしている。
そんなSideChestが2nd Mini Album『Pubulum』をBUNS RECORDSよりリリース!

  • SideChest結成の経緯はどういったものだったんですか?
  • 松岡拓実(Vo/Ba)

    初期メンバーは僕だけなんですけど、大学生の時に「軽音部には入らずに、スタジオで好きな音楽をやりたい」という理由で組みました。その頃はコピーバンドで、SHANKとか、歌謡曲をアレンジしてやったりしていました。昔から日本の音楽が好きだったので、例えば渡辺真知子さんの「かもめが翔んだ日」とか……。
  • 伊藤克俊(Gt/Cho)

    黒歴史だから喋んない方がいいよ!(笑)
  • 松岡

    ははは!(笑)当時は3ピースバンドだったんですけど、ギターをやっていた奴が辞めてしまって、高校時代の同級生でギターを弾けた克俊が入ったんです。そのタイミングでバンド名を“SideChest”と決めました。当時はライブの出方も知らない初心者だったんですけど、中学時代の同級生がライブハウスで働いていたことがきっかけで、徐々にライブをするようになりました。小林が入ったのは、その後です。
  • オリジナルの楽曲を作っていく中で、どういう音楽をやっていきたいかは固まっていたんですか?
  • 松岡

    いや、方向性的なものは当時もないし、今もないですね。
  • 戸田与久(Gt)

    やりたいことを、ただただやってるよね。
  • なるほど。2018年11月に『Green/再三再四』がリリースされたタイミングで戸田さんが加入して、3ピースバンドから4ピースになったんですよね?
  • 松岡

    はい。戸田が元々やっていたバンドが解散した時に、戸田から「お前のバンドで、ギターかベースをやらしてくれ!って頼まれたんですよ。
  • 戸田

    声とメロディが良かったし、SideChestには惹かれるものがたくさんあったんですよね。当時のSideChestはメロコアやギターロック系の8ビートの楽曲をやっていたので、リードギターがあった方がいいんじゃない?とアプローチしていきました。
  • 松岡

    でも、克俊は3ピースに対する美学があったから、戸田が入ることに納得はいってなかったよね。
  • 伊藤

    誰だよこいつ、って思ってた(笑)
  • 小林章人(Dr)

    尖りすぎやろ(笑)。僕は最初から4人でやりたかったから良かったです。
  • 伊藤

    俺も良かったと思ってるよ!(笑)
  • ははは!2020年になって、7月に配信シングル『Prima』、9月に2ndシングル『Flashback』の2作品をリリースし、今作の制作にも入っていったのだと思いますが、昨年はどういう過ごし方をしていたんですか?
  • 松岡

    ライブもないし、ひたすら曲を作って、練習していましたね。
  • 伊藤

    本当は6月に2ndシングルをリリースする予定だったんですけど、コロナの関係で9月になって、『Prima』と前後しちゃったんですよね。
  • 戸田

    シングルが出る頃には、ミニアルバムに入れる曲は大体出ていたもんね。でも、コロナ禍になって初めて、完全な“楽曲制作期間”がありましたね。前は、ライブと曲作りが並走していたので。
  • 松岡

    そうだね。アルバムに対するコンセプトも特に設けていなくて、その期間に出来た曲をとにかく仕上げるという感覚で作り上げていきました。
  • 伊藤

    自分たちがやりたい曲をやって、それが集まってアルバムになるっていう。昔のオレンジレンジみたいな感じっすね。
  • そうなんですね。でも、今作を聴いた感想としては、ふたりのソングライターを内包するSideChestの変化も感じられるような、革新的な一枚だと思ったんですよね。
  • 戸田

    革新的な一枚になりました。
  • 伊藤

    そうですね、革新的な一枚にしようと思って作りました。
  • 今までの話はどこに(笑)。
  • 伊藤

    でも確かに、1stミニアルバムと比べたら、曲のクオリティもグッと上がっていると思いますし、振り幅に関しても、今までやってこなかったけど、自分たちのルーツになっている部分が出せたとは思います。ゴリゴリにギターリフを使って、4つ打ちをやるようなバンドが周りにいなかったということもあって、隙間産業じゃないですけど、そういうことをやったら面白そうだと思ったんですよね。
  • 松岡

    自粛期間でとにかく時間があったので、メンバーがやりたいことを、各々詰め込めたんじゃないかな?僕は3人とは聴いている音楽のジャンルが多少違うので、正直そこで悩んだこともあったんです。でも、そこの引き出しの違いが、今作のバラエティーの豊富さに繋がったんだとも思っています。
  • 戸田

    うんうん。僕はギターロック育ちで、メロコアを聴いてこなかったというのもあるんですけど、今回で僕自身も好きな4つ打ちの曲があったりして、今までにないところに手を伸ばせた感覚はあります。
  • 小林

    僕も4つ打ちで、ダンスチューンとまではいかないけど、ノリが出るような曲をやってみたかったので、今回やれたことは嬉しかったです。
  • 戸田

    今までは2ビートで攻撃的な曲が多かったし、躍らせるようなリズムもイケるぜ!っていうところが出せたよね。
  • 伊藤

    小林は前にパスピエのコピバンもやってたもんな。
  • 戸田

    ボーカルでね。
  • え、マジですか!?
  • 全員

    全員:ははははは!
  • 伊藤

    嘘です、戸田と小林は音痴なんで(笑)。俺はストレイテナーやNothing’s Carved In Stoneが好きすぎるんですけど、そういう趣向を感じられるような曲が作れたことにテンションが上がりましたね。あとは、俺のギターリフで始まる曲もあったりして、ギタリストとしての見せ場もあるので良かったです。
  • ツインギターだからこその見せ場も多いですもんね。
  • 松岡

    そうですね。掛け合いや、バッキングとリードが入れ替わる部分もありますし。
  • 戸田

    今まではツインギターであることを活かしきれてなかったところもあったので、そこを突き詰められて良かったです。
  • 先程「変化を感じた」とお伝えしましたけど、松岡さんと伊藤さんの曲が寄り添うようになったといいますか、互いに歩み寄っているようにも感じたのですが、そこに心当たりはありますか?
  • 伊藤

    自粛期間中ということもあって、家でパソコンを使って曲を作るようになったんですけど、あまり大きな声を出せないから鼻歌で歌入れをしたんです。だから、歌に関しては、あまりギチギチに詰めていない状態で松岡に渡す形になったので、そこで歌い方を委ねた、っていうのはデカいかもしれないですね。
  • 松岡

    単純に聞き取れなかったんだよね(笑)。今までは、作曲中にふたりの意見が食い違ってバチバチする時が多かったんですよ。でも、今回はそうやって克俊がメロディやニュアンスを委ねてくれるようになったから、自分の癖や一番歌いやすいところを突き詰められたんだと思います。それに、この歌詞のこの行は歌い辛いとか、そういう意見をちゃんと伝えられるようになったのも良かったですね。
  • 戸田

    3曲目の「溜息」は、克俊と小林と僕の趣味に、松岡がメロディだけ乗っけるという作り方をしたんです。そういう意味でも、互いが寄り添えたというか、互いの良さが合致できた気はします。


  • この曲はソロやユニゾンもてんこ盛りですよね。
  • 松岡

    克俊がスタジオで、「溜息」の最初にくるリフを「カッコイイ」って言いながら、ずっと弾いていたんです。そこに各々がどんどん重ねていく形で作っていったんですけど、その結果、めちゃくちゃ長い曲になっちゃったんですよ。そこからひたすら引き算をして、いい感じに出来上がった曲です。逆に、1曲目の「燕」は、ショートチューンなんですけど、最初はもっと短かったです。頭サビだけの状態でした。
  • 今の状態よりも短いということは、かなりの潔さがありますね。リード曲の「Nimbus」は、どういう風に出来上がったんですか?
  • 伊藤

    何かの曲のMVの撮影をしている時に、俺がアコースティックギターを弾きながら鼻歌を歌っていたんですけど、そのメロディに対する小林と社長の食いつきがまぁ良くて、そこから作り始めましたね。でも、BPMも速いし拍が食っていて難しかったし、一番切羽詰まってました。


  • 伊藤

    小林は「Seaside」をスタジオで合わせながら作っている時も、「そのサビええやん」って言ってたもんな?
  • 小林

    「Seaside」のメロディは、このアルバムの中で一番良いメロディだと思うんですよね」
  • 小林さんのジャッジでその曲を作るかどうかが決まる的な一定基準があるんですね(笑)。
  • 伊藤

    小林の前で倒れていった曲たちが何体もいるんすよ(笑)
  • 松岡

    自信満々で持っていった曲なのに、小林から「そのサビがAメロだったらいいのにね」とか言われると心が折れますね。
  • 小林

    悪く言っているつもりはないんですけどね……。
  • 伊藤

    悪気がないのもヤバイな!もう、【小林章人(Dr/門番)】って書いといてください(笑)
  • ははは!もはやそれが役割なんだ(笑)。伊藤さんが作詞作曲をしたものでいうと「Burgundy」もそうですけど、これはかなり攻めていますよね。サビのフレーズの畳みかけなんてまさに。
  • 伊藤

    これはアルバムのパンチ要素として作った曲なんですよね。
  • 戸田

    速いビートの中に、各々がカッコ良いと思えるアレンジを詰め込んでいったので、今までのSideChestのいいところを出せた曲でもあるよね。
  • 松岡

    でもこれは、元々克俊が持ってきたメロディだと全然歌えなくて、サビだけちょっと変えているんですよ。それでも結局キツかったんですけど(笑)。あの時のスタジオの空気の悪さはヤバかったな……。
  • 戸田

    小林は、「Burgundy」を聴いた時はゲート開いた?
  • 伊藤

    あの時は切羽詰まってたから、ゲートがガバガバだったんだよ(笑)
  • 小林

    いや、空気悪すぎて、俺もあの時は気ぃ遣ったもん。いいんじゃない?って。
  • 全員

    爆笑
  • 門番が気を遣うほどの空気の悪さだったのに、結果的にはいい曲が出来て良かったですね(笑)。今作には、シングル作品から「傍れ」が収録されていますけど、「Prima」ではなく「傍れ」を入れたのは、アルバムのバランスを意識した結果ですか?
  • 松岡

    SideChestにとっての初めての配信曲が「Prima」なんですけど、“CDでしか聴けない曲”と“配信でしか聴けない曲”ということに、それぞれ特別感を持たせたかった、というのが理由ですね。


  • なるほど。でも、ここに「傍れ」が入ることで、最後の「Selfish」への繋がりが綺麗になっていると思います。この曲はかなりメッセージ性のある曲ですよね。
  • 伊藤

    この曲は「傍れ」よりも前に出来ていたんですよ。俺はこのアルバムで「Selfish」が一番好きなんですけど、アルバムの最後にハマった時には爆発的な名曲だなと思いましたね。未だになんでこの曲をリード曲としてMV化しなかったのか疑問です。
  • 「Nimbus」のMVもめちゃくちゃ良いですけどね。ここまで色々とお話を伺ってきた中で、今作は、バンドとしてのバリエーションを広げつつ、プレイヤーとしての各々のルーツを表面化できた作品だということが分かりました。『Pabulum』(=糧)というタイトルであることもしっくりきます。
  • 伊藤

    今作はコロナ禍の中で作ったということもあって、歌詞についても前を向ききれていないし暗いものが多いんですけど、そういうマイナスな面も昇華させて、良い曲を生み出すことができたと思ってます。そうして出来上がったこのアルバムを、聴いた人の糧にしてもらいたいし、自分たちも今作を糧にしながらもう一歩上に行きたいですね。

【取材・文:峯岸利恵】

tag一覧 J-POP ミニアルバム ゆびィンタビュー 男性ボーカル SideChest

リリース情報

Pabulum

Pabulum

2021年03月10日

BUNS RECORDS

01.燕
02.Nimbus
03.溜息
04.Seaside
05.Burgundy
06.傍れ
07.Selfish

お知らせ

■ライブ情報

2nd Mini Album「Pabulum」Release
グレートポセイドンツアー

~初日シリーズ~
03/31(水)下北沢 SHELTER
w/ TETORA
04/17(土)神戸 太陽と虎
w/ Five State Drive/and 1 band
04/23(金)名古屋 APOLLO BASE
w/ Hakubi/Unblock

04/25(日)八王子RIPS
04/26(月)横浜F.A.D
04/27(火)千葉LOOK
05/04(火祝)高知X-pt.
05/05(水祝)高松DIME
05/07(金)岡山CRAZY MAMA 2nd ROOM
05/12(水)栄Party’z
05/14(金)静岡UMBER
05/21(金)広島ALMIGHTY
05/22(土)福岡Queblick
05/23(日)大分SPOT
05/25(火)小倉FUSE
05/26(水)周南rise
06/02(水)仙台enn 3rd
06/03(木)新潟GOLDENPIGS
06/12(土)岐阜ants
06/13(日)鈴鹿ANSWER
06/18(金)京都MUSE
06/24(木)金沢van van V4
06/25(金)松本ALECX
07/06(火)心斎橋BRONZE
07/09(金)渋谷TSUTAYA O-Crest
and more…

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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