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コブクロ初のスタジアムライヴ@東京をレポート

コブクロ | 2010.12.10

「KOBUKURO STADIUM LIVE 2010」 2010.10.2(SAT)@味の素スタジアム

特別なことをやらないのに、とても特別だったスタジアム・ライブ

 コブクロ史上、最大規模のスタジアム・ライブながら、開演前のBGMはいつもどおりのジェームス・テイラー。すっきり晴れ上がった秋空の下、続々と入場してくるオーディエンスも落ち着いている。それでも会場を見渡せば、広い、広い。これからここで只今絶好調のコブクロのパフォーマンスが展開されるのかと想像すると、背中がブルッと来る。

メンバーがステージに現れ、観客が総立ちになり、小渕が「トーキョー!!」と叫んでギターを掻き鳴らし、すぐに黒田が「轍-わだち-」を歌い始める。その声の柔らかさに驚く。広さに対する気負いは、ほとんど感じられない。“普通の黒田”の声が聴こえてくる。だがよく考えてみれば、この広さで“普通”に聴こえてくるのは、黒田の声が相当“強い”からなのだ。この日のライブは、そんな“普通に強い”コブクロに何度も出会うことになった。
 「轍-わだち-」のギター・ソロで、ステージ両サイドに張り出した特設通路に、早くも小渕が走りこむ。まるでアリーナでのパフォーマンスのような軽々とした動きに、ここがスタジアムだということを忘れそうになる。さらには次の「君という名の翼」のピアノのイントロで客席から大歓声が上がり、抑えの効いた小渕の声が流れ出す。これもまた歌がよく伝わってきて、いきなりこの日最初のピークが訪れた。スタジアムで声を抑えることの効果が、最大限に発揮されている。“普通に強いふたり”は、すでに完全にスタジアムの広さを把握していた。
 歌だけでなく、MCもいつもと同じ調子。「Summer rain」が終わって、黒田の最初のひと言は「うるさーい!」だった。客席からどっと笑い声が上がる。その後のやりとりも、ふたりは感じたままにしゃべる。さすがにMCに関しては、普段よりもう少し間合いが空いているほうがいいと感じる。なぜなら、せっかくスタジアムなんだから、ゆっくり笑いたいので(笑)。

 この日、僕にとってもっとも印象的だったのは「I LOVE YOU」だった。かつて尾崎豊がこの歌を歌うのを、彼のライブで何回も聴いた。その後、様々なカバーアルバムやカラオケで友人が歌うのを何度も聴いたが、スタジアムで「I LOVE YOU」と対峙するのはおよそ20年ぶりだった。黒田の歌に、小渕が輪郭を付ける。もちろん尾崎が歌うそれとは違うものなのだが、そこには確かにスタジアム・クラスの「I LOVE YOU」が出現したのだった。
広い会場が似合う楽曲のスケールを、まったく損なうことなく歌い切る。それがコブクロのこの歌に対する愛情であり、コブクロという表現者の実力なのだ。僕は好きな音楽を聴くことを仕事にしている幸運を何度も感じてきたが、こんな経験は初めてだった。この歌が演奏されている間、不思議な感動が身体を満たし、尾崎が立つことのなかったスタジアムに、僕は呆然と立ち尽くしていた。
「2010年は“自由”年にしようということで、前半の半年間は原点に立ち返って、自分たちの好きな曲のカバーを25曲、レコーディングしてました。その中で、黒田が尾崎豊さんのライブビデオを見ながら、まだ吸収しようとしていたり・・・」という小渕のMCのアーティスティックな言葉に、僕ははっと我に返った。そして、この日のセットリストに巡り合った素晴らしい幸運を、じっくりと噛み締めたのだった。

 “夕暮れコーナー”の「Million Films」が心地よく響く。ガムシャラに歌っていた時期の作品「願いの詩」では、空に一番星が輝き始める。新曲の「流星」を披露したり、会場全員でウェーブを楽しんだり。本編ラストの「ストリートのテーマ」では、すべてのオーディエンスが快い疲労感に酔った。
「スタジアムだからって、特別なことをやらなくていい。歌と笑顔と歓声と拍手があれば、それがコブクロのライブ」という小渕のアンコールでの言葉が、すっと心に入って来る。新境地を感じさせる「Blue Bird」、最後の最後までアッパーなエナジーに満ちた「君への主題歌」で、実にコブクロらしいスタジアム・ライブは終わったのだった。

【取材・文:平山雄一】

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リリース情報

流星

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2010年11月17日

ワーナーミュージック・ジャパン

1. 流星
2. 流星(Instrumental)

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