12月17日NHKホールでのツアー最終公演をレポ!
森山直太朗 | 2011.01.06
2010年6月に発売されたアルバム『あらゆるものの真ん中で』を携え、9月1日よりスタートした全国23箇所26公演に及ぶコンサートツアー2010『真っ白な鳩を九十九羽飼っていて』が、12月17日にNHKホールにて最終公演を迎えた。
静寂した場内にゆっくりと命が吹き込まれるように、リズムから順に音が重なっていき、「知らないことが多すぎる」で幕を開けた。薄らと浮かび上がった森山の歌声が場内に響き渡ると同時に、『真っ白な鳩を九十九羽飼っていて』の世界へと観客を誘った。ステージには、森山を含めて5人のバンドメンバー。通常の楽器に加え、楽曲によってはパーカッション、バンジョー、アップライト・ベースなどに持ち替えて披露。シンプル且つ完成度の高い『あらゆるものの真ん中で』の楽曲たちを見事に表現。各楽曲たちが呼吸しているかのような、息吹を感じる演奏と歌唱に、ただただ観る者の心を捉え、その心の奥底を静かに、それでいて熱く揺さぶっていった。
客席に向かって大きく両手を広げ、"どうも皆さん、こんばんは。森山直太朗です。ようこそお集まりくださいました"と挨拶。『真っ白な鳩を九十九羽飼っていて』というツアータイトルに触れ、"長いタイトルですけども、深い意味はありません。だから僕には絶対に聞かないでください"と初っ端から森山節を炸裂、観客の笑いを誘った。
そして"皆さんそれぞれの心のままに楽しんでください"と添えて、「生きてることが辛いなら」「夏の終わり」といったヒット曲を続けて披露した。曲と曲の合間には、森山による詩の朗読も挿入され、次に演奏される楽曲の世界観へと繋げた。そして、森山の弾き語りによるソロコーナーも。2010年を振り返り、"今年に限ったことじゃないですけども、僕は音楽活動でもプライベートでもいろんな出会いがありました"と森山。一番大きな出来事として、『あらゆるものの真ん中で』のサウンドプローデューサーである名ギタリスト、石川鷹彦氏の名前を挙げ、会場に来ていた石川氏に話しかける場面も。12月15日に発売されたばかりのアルバム『レア・トラックス vol.』の話に。
収録曲にはユーモアを交えた楽曲や珍タイトルのものが多く、中でも「うんこ」はTwitterなどのコメントが3000件以上寄さられたというエピソードを明かし、"「生きてることが辛いなら」の時もいろいろあったんですけども、人によってそれぞれ思いが巡るのは不思議な現象ですね"とコメント。客席のあちらこちらからクスクス笑いが起こる中、「うんこ」が披露された。そしてライブ後半戦は、それまでとは雰囲気が変わり、アップテンポのノリの良い楽曲を中心に展開。それまで座席に座ってゆったりと森山の歌を聴いていた観客たちも一斉に立ち上がり、手拍子をしながら楽しんだ。ツアーを通して成長してきた『あらゆるものの真ん中で』収録曲たちは、CDを聴いて受けた純粋性が保たれ、純度の高い状態のまま披露されたのだった。
アンコールでは、"また48秒後に会いましょう!"という予告通りステージに再登場。「うんこ」を発表したことで、"直太朗大丈夫か? どこへ向かっているんだ? という心配の声があるけど、俺はね、そういう人たちに言ってやりたい……ハッピーだよ!!"と力強く語り、本ツアーで披露してきた未発表曲「フォークは僕に優しく語りかけてくる友達」を熱唱した。
そして、アンコールラストを飾ったのは、自身の代表曲である「さくら」。ファンはその憂いを帯びたピアノと、凛とした力強さを持った森山の歌唱に酔いしれた。歌い終えると、会場からは大きな拍手が贈られた。こうして、終始、癒しと笑い、そして感動を生んだ濃厚な""直太朗ワールド""は幕を閉じた。
【 取材・文 : 牧野りえ 】
リリース情報
セットリスト
- 知らないことが多すぎる
- ラクダのラッパ --朗読--
- 雨だけど雨だから
- 花鳥風月
- 生きてることが辛いなら
- 夏の終わり --朗読--
- 例えば友よ
- 愛し君へ
- うんこ
- 臆病者
- 人のことなんて
- トニー・マイ・フレンド --朗読--
- なんにもないへや
- 四月になれば
- グングニルパーニャ --朗読--
- 夜の公園で渡すつもりのない手紙を書いている --朗読--
- トルコの人形
- 言葉にすれば 【アンコール】
- フォークは僕に優しく語りかけてくる友達
- さくら