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サンプラーも起用 弾き語りの味わいを更に引き立てた山崎まさよしのステージ

山崎まさよし | 2011.02.25

5年ぶりのソロ・ツアーだ。弾き語りの名人の直球勝負に期待が集まる。窓をオブジェ化したシンプルなセットの前には、ギターとキーボードが置いてあるのみ。オーディエンスは、これから何が起こるかを十分に承知しており、ゆっくり登場した山崎を温かく迎える。

ステージも会場も、リックスした雰囲気だ。アーティストにとって、これほどのアドバンテージはないだろう。山崎のキャリアそのものといえる、ファンとの信頼関係だ。たった一人のライブでも、まったく淋しさはない。かえって距離が近づいて感じられる分、山崎を含めて会場中が微笑んでいる。

今回のツアーで大きくフィーチャーされているのは、“サンプラー”という機材だ。山崎がパンデイロ(ブラジルのタンバリン)などで刻んだリズムを、足元の簡単な操作で繰り返し再生してくれる。なので、山崎はそれに乗ってギターを弾いたり歌ったりできる。機材というより、ひとつの楽器と言っていいだろう。最近ではKREVAやオリジナルラヴの田島貴男がライブで使用して、パフォーマンスの幅を広げている。そして山崎は、“サンプラー使い”の中でも、かなりの名手。この夜も自分で作ったリズムに合わせて、オーディエンスとのコール&レスポンスまでやってのける。最初は“新兵器”の登場に驚いていた観衆も、これまで以上に楽しい弾き語りライブに、すぐに引き込まれていく。滑り出しの3曲で、早くも山崎の演奏と、オーディエンスのハンドクラップの呼吸がぴったり合ったのだった。

「どうも、山崎まさよしです。“ONE KNIGHT STAND”に、ようこそ。ツアーも今日で折り返しです。インフルエンザのマスクをしている人、少ないですね。大丈夫ですか?マスクされると、みなさんが喜んでいるかどうか、分からないんですよ」と軽く笑わせる。

このツアーのために購入したというサンプラーの“逆再生機能”を使って逆さまに言葉を録音して再生するコーナーがあったり、山崎自身のボイス・パーカッションをループさせる、技アリの曲も披露。遊び心たっぷりの演出に客席は大いに沸く。しかし、山崎の本領は、やはり本人の演奏の妙だろう。たとえば「セロリ」での、ギターの低音弦を親指で弾いてベースラインを際立たせ、高音弦でコードを奏でる“ひとりアンサンブル”はさすがだった。また、「君と見ていた空」では、ゴスペル・タッチのピアノプレイが光る。いったん座った観客は、説得力のあるバラードにじっと聴き入る。エンディングでは思い切り自由にボーカルのフェイクを長い時間行い、大きな拍手を浴びていた。“サンプラー”のもたらすアクセントを利用して、純粋な弾き語りの味わいを引き立てる、心憎いステージ運びだ。と、その直後、今度は強いビートのループをバックに、山崎が迫力あるエレキギター・ソロを決める。

アンコールで山崎が再び登場すると、客席から「頑張ろう!」と声が上がる。「はい、君も含めてね。昔は『頑張ってー』と言われてましたよ(笑)」。
「5年ぶりの弾き語りツアー、充実しています。一昨年、初めてコンサートをトバして、それ以来、あとどれくらい歌えるのか考えるようになった。ぜひ、またライブにいらしてください」としみじみ語り、最後の曲はアコースティック・ギターとマウスハープ(ハーモニカ)で締めた。徹頭徹尾、山崎一色のライブは潔く、かつ濃厚な味わいを耳に残したのだった。

【 取材・文:平山雄一 】
【 Photo by 矢部志保 】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル 山崎まさよし

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リリース情報

HOBO's MUSIC

HOBO's MUSIC

2010年10月27日

NAYUTAWAVE RECORDS

1. シングルマン
2. 君と見てた空
3. 創世歌
4. Introduction
5. Let's form a R&R band
6. ぼくのオンリー ワン
7. ルナちっく
8. HOBO Walking
9. ブランコ
10. 花火
11. I'm sorry

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