山崎まさよしのニューシングル「太陽の約束」は、光と希望をテーマに書かれた、かけがえのない日常へのメッセージ

山崎まさよし | 2012.05.01

 山崎まさよしが約1年7ヶ月ぶりにシングルをリリースする。今作は、豪華4大タイアップ付きの必聴曲。オリジナル曲2曲、カヴァー曲2曲で構成されるシングルは、山崎まさよしというアーティストの在り方を改めて知らしめてくれる4曲だ。さすがの作曲力、さすがの感性で描かれる歌詞、心を揺さぶる唯一無二な声の個性を充分に感じられる唄。シンガーソングライターとしての年齢と経験を感じさせる山崎まさよしが詰まった1枚。彼がこの1枚の1曲1曲に込めた想いを訊いた。

EMTG:5月2日にリリースされるシングル「太陽の約束」が作られた、きっかけからお聞きしてもいいですか?
山崎:この曲は、NHKさんの方から、『スタジオパークからこんにちは』のテーマを作って欲しいという依頼がありまして、作らせてもらった曲なんです。出逢いがテーマの番組でもあったので、未来に目をむけられるような楽曲に出来たらなと思いましたね。新しい出逢いこそが、未来への希望を持つきっかけとなったり、励みになるんじゃないかなと、そんなところを書いてみたという。そんなで、こんなです(笑)。
EMTG:すごく解りやすい説明でした(笑)。先方からのリクエストとして、何かテーマがあったりしたんですか?
山崎:いや。テーマはなかったんですけど、ちょっとテンポのある、メロディアスな楽曲がいいという、結構ざっくりとしたイメージでお願いされましたね。そこを踏まえたデモを作って先方にお渡ししたんですが、歌詞の部分だったり、いろんな条件がクリアになった時点で、最後まで突っ走りました。申し訳ございません!
EMTG:なんで謝るんですか!?(笑)。
山崎:いや、突っ走らせて頂いたことを謝ってみました(笑)。
EMTG:作られた時期はいつ頃だったんですか?
山崎:ごくごく最近ですね。ライヴを中心にやっていた1年間くらいは、ライヴに集中していたので、曲作りはほとんどしていなかったんです。
EMTG:なるほど。「太陽の約束」は、イントロからして印象的でした。ド頭がピアノ始まりだったので、しっとり行くのかな?……と思いきや、強いドラムが共存していて。あれは同期ですか?
山崎:はい。あれは、動悸息切れ?
EMTG:…………。
山崎:あ、どうもすいません(笑)。あれは同期です(笑)。もともと、あのリズムで作っていたんですけど、周波数を変えて敷いたんです。だから、ずっとあのリズムが後ろで鳴っているんですよ。うっとおしいでしょ。
EMTG:あははは。いや、うっとおしくはないですよ(笑)。でも、ピアノという生な感じと、機械的な音の同期の共存がとても立っていていいなと。奥行きがあっていいなと。
山崎:ありがとうございます。その同期のループ案は、プロデューサーからのモノだったんですよ。サビまでは淡々と進んでいって、サビで一気にひらけたいと。絶対にそっちの方がいいから、そうしてくれって、泣きながら頼まれたんで、そこまで言うなら。そうするから、泣くなよと。
EMTG:本当ですか?(笑)。
マネージャー:本当です(笑)。
山崎:ね。本当でしょ(笑)。アレンジ上の意見はちゃんと聞くようにしているんです。やっぱり客観的に見る目も必要だと思うし。それに、イントロのメロディにしても何にしても、結局元を作るのは僕なんで。あまりにも突拍子もない意見以外は聞くようにしてますね。
EMTG:ストリングスとピアノと歌のバランスがとても綺麗で。あ、なんかすいません、さっきから上から褒めてて(笑)。
山崎:あははは。いや、とんでもない。上からでもナナメからでも何処からでも褒めて下さい! 褒められるのは嫌いじゃないんで。
EMTG:ずっと同期がループしている隙間で聴こえてくるアコギの生音も、すごく入ってくる感じだったんですよね。
山崎:それはたぶんね、ピアノは8分で刻んでいるんですけど、アコギのアルペ(アルペジオ)は16分なので、縫うように聴こえてきてるんだと思うんです。
EMTG:なるほど! すごく計算されているんですね。隙間のアルペジオは本当に気持ちよく響いてきましたから。あと、歌詞とメロディのハマりもすごくて。“喜びはいつも少し先にあるから”というフレーズと“その痛みもその涙もこれから何かを愛する証(あかし)”っていうフレーズはとくに胸に残りました。
山崎:まいったなぁ、おい。
EMTG:あははは。またすいません、上から褒めて(笑)。
山崎:いや、それが一番励みになりますから(笑)
EMTG:歌詞は始まりから流れで書かれていったんですか?
山崎:そうですね、流れで書いていったんですけど、やっぱりすごく意識したのは、震災後ってことでしたね。僕たち人間は、物事を失って生きて行く訳ですけど、今から得るものってもちろんあるだろうし、今から取り戻すことも可能なことだと思うんです。そういう基本的なことが、復興に繋がっていくことでもあると思うんです。それになにが重要なファクターかと思うと、太陽の光というモノだと思うんです。雨の日ばっかりは続かない訳で。すごく原始的な考え方なんですけどね。雨があって晴れる日かあって、いろんなモノを育んでいく訳じゃないですか。
EMTG:いいお話ですね。
山崎:震災で気付けたことって本当にすごく大きかったし、すごく大切なところだったと思うからね。
EMTG:そうですね。一番人間の根本的な部分なとこですよね。
山崎:そう。だからね、人間としての根本的なところ、原始的なところをね。
EMTG:2曲目の「あなたしか知らない朝」は2011年の1月よりOAされて話題を呼んだ『ダスキン企業』のCM曲ですが、この曲はドラムレスな楽曲でもあるので、同じミディアムチューンでもだいぶ印象が違いますね。
山崎:そうですね。この曲も1曲目と同じくCMソングとなることが決まっていたので、そのCMの映像を見ながら、サントラを作るように作っていったんですよ。先にオフラインが上がっていたので、デジタルのセッションデータに貼付けて作っていったらそうなったのさ。ドラムレスになったのは、そういう経緯があったからってのもありますね。映像にテンポがあるとドラムが入りやすいんですけど、【主婦のある日の1日】という映像だったんで、そんなところをテーマにして歌詞を書いちゃったのさ。
EMTG:“書いちゃったのさ”って……洋楽雑誌の外タレインタビューの記事みたいな語尾はやめて下さい(笑)。
山崎:それを言うなら、“そういうところをテーマに歌詞を書いちまったのさ!”だね(笑)。
EMTG:そうですね(笑)。
山崎:つまり、そんなホワッとしたイメージの映像に乗る楽曲でもあったから、ドラムでリズムを構成してどうこうというより、ピアノの弾き流しみたいな感じの曲の方が映像にあってたんです。それで自然と結果ドラムレスになったって感じだったんですよね。リズムをちょっと感じさせるといったら、チェロのピチカートとかだったかなと。
EMTG:なるほど。イメージを音に変えていかれた感じなんですね。のほほんなイメージが目の前に広がりますからね。
山崎:そうですね。1曲目は、太陽をイメージして、外に広がるイメージで、ストリングスも大人数で弾いてもらってるんすけど、2曲目は、カルテット編成で室内楽みたいな感じで弾いてもらったんですよ。そんなところでもこの2曲は対比が出てると思いますね。
EMTG:なるほど。Aメロのウクレレの音も、この曲にピッタリですよね。
山崎:ウクレレの威力ってすごいですよね。ウクレレって、音が前に立つんですよ。
EMTG:音がハッキリと出るってことですか?
山崎:そうそうそう。どんな楽器よりも鳴るんですよ。普通のアコースティックギターはオケの中に入ると見えにくい音になってしまうんだけど、ウクレレは周波数が真ん中なんで、マイク乗りがいいんですよ。だから素朴な感じを出すにはすごく適しているんですよ。バイオリンと同じなんですよ。バイオリンもソロ楽器だけど、ウクレレも立派なソロ楽器なんですよね。ウクレレの音を聞くと、絶対にハワイか海辺に行きますよね(笑)。
EMTG:そうですね(笑)。だいたいタイアップのある曲は、そういう作り方をされるんですか?
山崎:そうですね。だいたいそういう作り方をします。映像がないときは、絵コンテとかを見て、コンセプトの説明を受けて作っていきますね。
EMTG:なるほど。だから山崎さんの曲は映像が浮かびやすいんですね。そして3曲目の「君が好き」。この曲は、『キリン フリー』のCMソングで、坂本九さんの楽曲のカヴァー曲となる訳ですが。この時代の曲って独特な臭いがありますね。
山崎:そうですね。この曲ね、東京オリンピックのときに、セレモニーで歌われた歌らしいんですよ。それくらい古い曲なんですよ。1964年にリリースされた「サヨナラ東京」というシングルのカップリング曲だったらしいんです。時代的には「上を向いて歩こう」と同じ時期くらいなのかな。
EMTG:山崎さんはこの曲、知ってらっしゃったんですか?
山崎:いや、知らなかったです。
EMTG:1964年だとお生まれになっていらっしゃらないですもんね。
山崎:お生まれになっていらっしゃらないです、僕(笑)。
EMTG:じゃぁ、なぜこの曲を?
山崎:この曲は、代理店の方から、“この曲をカヴァーしてもらえませんか?”というリクエストがあったので、聴いてみたところが出逢いだったんです。それで、いい曲だなと思って。ぜひ、ということでお受けしたんです。「見上げてごらん」とかも同じ時代の曲なんですけど、生まれてなくても知ってません?
EMTG:知ってますね。すごくいい曲だなっていう印象です。
山崎:ですよね! そうなんですよ。あの時代の曲ってすごくいい曲が多いんですよ。途中にジャズっぽいフレイバーが入っていたりとかね。ジャズっぽい、ビックバンド・オーケストラの音をバックに坂本九さんが歌われていたりするので、空気間もすごくいいんですよ。「君が好き」もそんな空気間はあるので、その原曲との対比で、ちょっと泥臭くしたかったんです。バストロンボーンとか入れて、ニューオリンズっぽい印象にしたんです。ほぼ原曲に近いアレンジなんですけど、そこだけはこだわりましたね。
EMTG:なるほど。歌詞のカタカナ英語も時代背景を感じさせますよね。
山崎:そう。ほんまに発音これであってんのかな?って思いながら歌いましたね(笑)。歌詞もいいですよね。“君が好き”っていう言葉がすごくストレートに入ってきますよね。
EMTG:そうですね。「太陽の約束」もそうですけど、あまり激しい展開ではないじゃないですか。構成的にシンプルだからこそ、ちゃんと一番伝えたいことが気持ちに入ってくる気がしたんです。
山崎:解ります。そうですよね。今の時代、いろんな言い回しを含め、すごく言葉が増えてきてると思うんですよ。そんな中で僕らがやらなければいけないことは、言葉を音楽に落とし込むところだから、それを全部詰め込むのは、僕らが怠けてる証拠なんですよ。
EMTG:怠けてる?
山崎:そう。怠けてるってことなんです。僕らは一番伝えたい言葉や、どうしても伝えたいと思う気持ちや言葉を、もっともっと選んで音楽に落とし込んでいかなければいけないと思うんです。それは、シンガーソングライターとしての仕事でもあるし、作詞家のしかるべきところだと思うんです。言いたいことを細かく包み隠さず言う音楽は、また別なジャンルだと思うんです。そういうコラボがあってもいいとは思うんですけど、僕は、端的に何かを言葉として音楽に落とし込む音楽を聴いて育ってきたし、そこで作詞家さんたちは悩んできただろうし。だからこそ、僕の音楽は、そうであるべきだと思うんですよね。だから、主観的な想いを楽曲にする場合は、正直すごく悩みますね。そういう意味では、CMソングとか、何かのテーマ曲を頼まれる方が、なにか1つの手がかりとなるから助かりますね。さっき言ったように映像とか絵コンテがあれば、それが手がかりになりますからね。その物語の続きを書け!って言われたら、めちゃめちゃ悩むと思いますけど(笑)。
EMTG:アーティストさんの中には、CMやタイアップ曲の中に、どう自分色を出すか? というところで悩む方もいらっしゃいますよね。
山崎:あ、そういう悩みね! それは、僕の場合、アルバムでやったらいいことなんじゃないかなと思いますね。僕の場合はそうしてますね。
EMTG:なるほど、すごく納得です。山崎さんのアルバムにはいろんな山崎さん色がありますかもんね。でも、すごいと思うんですよ、山崎さんって。自分のやりたい音楽を追求しているのに、マスターベーションになっていないのがすごい。聴き手がちゃんと楽しめてますもん。
山崎:ありがとうございます。また褒められちゃいましたね(笑)、嬉しいです。ありがとうございます。たぶん、僕も若いうちはそういうところに陥ってたと思いますよ。やりたいことを追求するって、難しいことだなって思ってた時代はたしかにありましたからね。でも、年齢と経験を積んで、来てくれる人を楽しませるのが一番だって思えるようになったんですよね。聴いてくれる人の笑顔が相乗効果となって、自分自身も、よりいい曲を生み出せるようになっていけると思うんですよね。本当に。今はそう思えるんです。
EMTG:素敵な変ですよね。4曲目の「浜辺の歌」も、『ユニクロ メリノセーター』のCMソングだったんですよね。この曲はギター1本で弾き語った唱歌のカヴァーですが。
山崎:はい。秋から冬にかけて使われる商品のCMソングでもあったので、この曲が選ばれたんです。淡々と弾き語りしてほしいというリクエストもあったので、弾き語りをさせてもらったんです。
EMTG:波の音もいいですね。
山崎:いいでしょ。あの波の音はね、実は宮古島の波の音なんですよ。昔、毎年宮古島でライヴをやっていたんですけど、その当時にエンジニアさんに録ってもらって、25分くらいのCDにしてあったんです。ちなみに、その隣りで僕はビール飲んでました(笑)。ことあるごとに使っているんですけど、僕の作曲ではなく、自然の作曲です(笑)。
EMTG:音色やテンポ感で随分いろんな印象に変化するんだなって、改めて思ったあったかい4曲でした。
山崎:ぜひ、じっくりと聴いていただけたら嬉しいです。
EMTG:今作は約1年7ヶ月ぶりのシングルということでしたが、この先にはアルバムも!
山崎:あるといいですね!
EMTG:いやいや、制作に入られると聞いてますよ。
山崎:あ、そうなんですか!?
EMTG:いやいや、ご自分のことですから!(笑)。
山崎:ね(笑)。無事、出来るといいですね(笑)。でも、一昨年にリリースしたアルバムは15周年の区切りということもあったのでね。次はどんな感じになるんですかね?
EMTG:ご自分のことですから!(笑)。
山崎:あははは。そうですね、みなさんに、良かったって言って頂けるように頑張りたいと思います。

【取材・文:武市尚子】

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リリース情報

太陽の約束(初回盤)

太陽の約束(初回盤)

2012年05月02日

NAYUTAWAVE RECORDS

1.太陽の約束
2.あなたしか知らない朝
3.君が好き
4.浜辺の歌

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■マイ検索ワード

もっと光を
そういえば、最近【もっと光を】で検索しましたね。「太陽の約束」のタイトルを決めるときに、タイトルに相応しいワードがないか調べていたんですよ。
そしたら、プロデューサーが、“いいのがあるんだよ! 「もっと光を」って、ゲーテが最期に言った言葉なんだよ”って言ってきたので、【もっと光を】と【ゲーテ】で検索して、その言葉の意味を調べてみたんです。そしたら、“ゲーテが最期に言った言葉”って書いてあったんです。
で、意味は?……と思い、更に調べてみたら、一般的には、“この深く、絶望的な世の中に、もっと光を!”っていう意味で言われたとされているんだと。でも、更によくよく調べると、“直訳すると、すべては全部嘘だったという意味ともとれる”って書いてあったんで、死ぬ前に言った言葉ってのも引っかかってたけど、“すべては全部嘘だった”って……更に最悪やん!って思って却下したという。そんな却下に役立った、非常にタイムリーな検索でした(笑)

■ライブ情報

「50th Anniversary audio-technica LiveParty -ありがとう50年- 」 2012/05/20(日)大阪国際会議場(グランキューブ大阪)
2012/06/03(日)国際フォーラム ホールA

「TOKYU MUSIC LIVE 2012」 2012/06/14(木)Bunkamuraオーチャードホール
2012/06/15(金)Bunkamuraオーチャードホール

Office Augusta 20th Anniversary
Augusta Camp 2012 in YOKOHAMA

2012/08/04(土)横浜赤レンガパーク 野外特設ステージ
2012/08/05(日)横浜赤レンガパーク 野外特設ステージ

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。