ひらすら己のロック道を突っ走り続けるJの14周年記念イベントが、渋谷AXで5日間連続で行なわれた。それぞれの日にJのセレクションによる超個性的なバンドが出演。ラストデーのみワンマンという、非常にパワフルなイベント だ。その4日目を取材した。

　 最初に登場したのは、Pay money To my Pain。今年注目のラウドロック・シーンで話題の実力派だ。ギター・トリオ+ボーカルの4人編成で、低音をめいっぱい強調して小気味よく歪むサウンドデ ザインがこのバンドの特徴。パフォーマンスも演奏も、思い切りがいい。その上でメロディを大切にしていて、いろいろな角度から自分たちの音楽を鍛えてきたキャリアがうかがえるアクトだった。

　次はa flood of circle。ベースに新加入のHISAYOを迎えて再スタートしたこのバンド、ブルースというルーツ・ミュージックのとてつもない可能性を追求する姿勢は変わらない。Pay money To my Painとは好対照の、“歪まないサウンド”で芯の太い音楽の輪郭を描いていた。まだリズムに統一感が不足しているものの、佐々木亮介の突出したソングライティング能力は健在だ。特に「Sweet Home Battle Field」では彼のハイエッジな独特の声質とあいまって、このバンドの尋常ではない切れの良さが発揮されていた。

　the HIATUSが凄かった。スタート以来、音楽シーン最高のクオリティとクリエイティビティを発揮しているバンドのひとつだが、この日はこれまでとはまったく異なるレベルに達していると痛感するパフォーマンスを見せつけた。 「こんばんは、the HIATUSです。マサから何かないの？」と細美武士が言うと、ギターのmasa-sucksは、以前、Jのサポートもしていたから、観客から大きな声援が上がる。「the HIATUSを代表しまして、Jさん、14周年、おめでとうございます」と心からの挨拶。
そして「Jさんのファンはあったかいですね」と 細美がコメントして演奏された「西門の昧爽」は、この時代の日本に鳴らされる最高の名曲としてとても印象に残った。

　トリはもちろんJ。強力な共演バンドの後を受けて、堂々の登場だ。ドラムのスコット・ギャレット、ギターの藤田高志、ごっちんというメンバーで、Jはベースを弾きながら歌うスタイル。4人はルックスもスピリットもタフ丸出しで、最初の音からそれまでのバンドとは明らかに重さが違う。さすがに4日連続のライブで、1曲目「Die for you」でJは喉が疲れているのかなと思ったのも束の間、すぐにパワーは全開になる。「PYROMANIA」では途中のブレイクでオーディエンスがライターに火をつけて頭上に掲げるいつもの感動的なシーンが展開される。
Jは言う。「俺のライブはケガさえしなければ、 ルールはないから」。そう、数あるライブの中で、これほど安心して見ていられる“モッシュ＆ダイブ”は他にない。この日はスキンヘッドのお兄さんが、ダイブしたい男の子や女の子をひょいと持ち上げる“ジャッキ”の役割を果たし、フロア全員が倒れたり、つぶれたりしている人がいないか気遣いながら自由に楽しんでいる。

　後方上部の白色光だけで歌う「DEATH VALLY」が、この日いちばんのヘビーロック。一方でみんなが聴きたい「Feel Your Blaze」など選曲は、Jもオーディエンスも楽しめるように気配りされている。みんな、汗と笑顔で熱くなっていく。
　 ライブの最終盤ではステージにmasa-sucksも登場。ふとフロアを見ると、さっきのスキンヘッドお兄さんが自らもダイブ。巨漢だからヒヤヒヤして見ていたが、女の子も含めて楽々支えて前へと運んでいく。天井を見上げるお兄さんの満面の笑みが、この日のイベントの成功を雄弁に語っていた。

【文：平山雄一】