すべてを受け止める柔軟で力強い歌として表した、PUFFY@日比谷野音ライブ
PUFFY | 2011.05.31
10周年は、どしゃ降り。そのリベンジをかけた15周年の日比谷野外大音楽堂だ。
朝から晴れ上がった空の下、詰めかけたファンもリベンジの成功を確信している。いよいよ開演の時間が迫ってくると、遠い空になにやら黒い雲が・・・
ま、ま、大丈夫でしょう(笑)。
15周年限定ファンクラブ企画“劇団アセス”仕立てのメンバー紹介映像が流れ、座長の大貫亜美と看板女優の吉村由美がスクリーンに大写しになる。15年間、いつもユーモアを忘れずに活動してきたPUFFYらしいオープニングだ。
いきなりデビュー・ヒット「アジアの純真」からスタート。「ライブとアルバム作りの両輪を大切に」という師匠・奥田民生の教えを忠実に 守ってきたPUFFYは、最新アルバム『Thank You!』で初めて全面的にライブバンドとのレコーディングを果たした。もちろんその背景になっているのは、PUFFYとバンドとの信頼関係の深さだ。それはサウンドにも表われていて、「アジアの純真」がすっかりロックにアレンジされている。デビュー当時のニュアンスとは異なっているが、それが自然に聴こえてくるのは、彼女たちが10周年以降過ごしてきた時間の濃さの表われだろう。
アニメの キャラクターとしての全米で広く知られるきっかけとなった「ハイ!ハイ!パフィー・アミユミ」のテーマソング「Hi Hi」、「ジェット警察」と、ストレートなロックナンバーが続く。ロック・ボーカリスト然としたコスチュームに身を包んだ亜美と由美が、そうしたサウンドを楽しんでいるのが印象的だ。応えて、ドラムス川西幸一を初めとするバンド・メンバーの演奏も熱くなっていく。
そして4曲目に、新曲「SWEET DROPS」を披露。オールデイズ・ポップスを彷彿とさせるメロディを、二人がスィート・ボイスで歌う。もしかしたらこれまでのPUFFYナンバーの中でも、いちばんカワイイかも。この“ロックとポップ”の振れ幅の大きさが、やはりPUFFYの魅力の核なのだ。
師匠OTが『Thank You!』に提供してくれた「マイカントリーロード」で、二人はブルースハープ(ハーモニカ)をプレイして感謝の心を込める。が、そのとき、ポツリポツリと雨粒が。一瞬、会場のオーディエンスはフードをかぶったり、タオルを頭に巻いたり。歌い終えた亜美が「全員でダマシ?」と突っ込むと、「これも演出と信じたい」と由美がボケる。すぐに止んだ雨は、師匠からの激励を込めたお祝いだったのかも(笑)。
「Wake up,Make up」では、スチャダラパーのANI、Boseが登場して盛り上げる。加えて、南流石率いる“流石組”のダンサーがインスピレーションに富んだパフォーマンスを見せてくれたのも、 PUFFYならではの演出だった。
アクロバットのように小節単位でレパートリーを つなげたメドレー「カニ食べ行くのでしょう」や、切ない「マイストーリー」、ファンの人気曲「赤いブランコ」、ラストは「ハッピーバースデイ」で締めた。
アンコールの前に、震災を受けて「私たちに何が できるだろう」と考え、ツアー・タイトルを変更したこと、会場の外に募金箱を設置していることを告げる。「とくするからだ」、「愛のしるし」と懐かしいナンバーを歌った後、最後の最後に歌った、チバユウスケの手による名曲「誰かが」が素晴らしかった。
震災も15 周年も、すべてを受け止めてくれる柔軟で力強い歌を、PUFFYとして表現する。こうしたスタンスを獲得する道のりが、彼女たちの15年間だったのだ。
【 取材・文:平山雄一】