独特の「静けさ」に包まれた、plentyならではの雰囲気を堪能した一夜
plenty | 2011.07.05
場内が暗転して響き渡り始めた「東京」のイントロ。幕に覆われていて、ステージ上の様子は全く見えない……。膝を抱えた少年のイラストをひたすら映し出しながら1曲を丸々演奏し終えると、2曲目の「待ち合わせの途中」へ。張られたままの幕の向こう側でライトが明滅し、演奏する3人とマネキンの影が入り混じりながら躍動した。視覚効果で観客のイマジネーションをじっくり刺激する、ユニークなオープニングの演出であった。
ミュートしたギターが刻まれる中、ついに幕が開いた。現れた3人に向かって、観客から温かい拍手が届けられる。そして始まったのは「ボクのために歌う吟」。張りつめた透明感が徐々に熱気を帯びてゆく展開が気持ち良い。plentyは静寂と爆発、緊張と解放……コントラスト豊かに多彩なエモーションを表現しつつ、リスナーを曲の世界へとグイグイと引き込む。「最近どうなの?」「終わりない何処かへ」と、セットリストが次々進行する毎に、その魅力が深く胸に沁み渡っていった。
彼らのライブの雰囲気は本当に独特だ。その様子を端的に表わすならば「静か」。しかし、盛り上がっていないわけでは決してない。観客各々が曲とじっくり向き合い、無数の想いを無言で胸中に渦巻かせているのを肌で感じる。
そして、そんな観客達とバンドのコミュニケーションも、とてもユニークであった。「改めましてplentyです。人が多くて嬉しいです……」、ポツリと喋り、すぐに妙な間をつくる江沼郁弥(Vo&G)に対し、和やかな笑いと拍手が度々起こっていた。「やあ、みんな元気そうで……次に行きます」。不思議なテンポ感のMCを経て演奏再開。
中盤戦では演奏の表現力が光った。3人の演奏が絶妙に融合し、生々しい質感、立体感が生れる様にワクワクさせられた。瑞々しい広がりとアグレッシブな高鳴り……対照的なサウンドを行き交いながら聴かせた「栄光には届かない」。しっとりと爪弾かれるギターで幕開け、新田紀彰(B)と吉岡紘希(Dr)のフレーズが合流するや否や圧倒的な奥行きが生れた「大人がいないのは明日まで」は、特に素晴らしい演奏であった。
「喋ります。ツアーしてきました。今日でファイナルです……喋りなよ」、突然振り返って話を振られた吉岡は、戸惑った笑みを浮かべた。「新田と吉岡のマイクが用意されていないのは、俺が話したいからじゃないかと。2人に話させないようにしているように見えないかな? それは違うからね。それだけは言いたかった」。妙なことを気にしている江沼のMCに和みつつ、いよいよライブは終盤へ。
「上手く喋れないから次の曲。『届けばいいな』じゃなくて『届け!』という気持ちで歌います」と江沼が語って演奏されたのは「人との距離のはかりかた」。透明感と切実さを兼ね備えた江沼の歌声、激しくも郷愁を誘う美しいメロディに心を動かされた。江沼曰く「普段の自分の生活の歌」である新曲「ふつうの生活」。スピード感たっぷりに展開し、瑞々しいエネルギーを放出した「枠」などを披露し、爽やかながらも孤独感を色濃く滲ませる「空が笑ってる」の醒めた明るさに包まれながら本編は終了した。
アンコールのために再登場した3人を代表して江沼が語った。「秋になったらまたツアーをやります。11月25日はC.C.Lemonホール。あそこ名前が渋谷公会堂に戻るらしいよ。じゃあ、1曲だけやって帰ります。みなさんとまた会う約束をしようと思います」。嬉しい情報が発表されて沸いた観客に向けて最後に聴かせたのは、この日2回目となる「待ち合わせの途中」。激しくギターを掻き鳴らす部分も度々ありつつ、嵐の合間にふと覗く青空のような清々しさへと飛翔してゆくこの曲は、何度体感しても美しい。
「ありがとうございます」、演奏を終えると手を振り、すぐにステージを後にした3人。そのあっさりした様子を微笑ましく思いながら、心地よい余韻を暫くじっくり噛み締めた。
【 取材・文:田中大 】
【撮影:柴田恵理】
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リリース情報
セットリスト
- 東京
- 待ち合わせの途中
- ボクのために歌う吟
- 最近どうなの?
- 終わりない何処かへ
- 理由
- 後悔
- 栄光にはとどきそうもない
- からっぽ
- 明日から王様
- 大人がいないのは明日まで
- 人との距離のはかりかた
- ふつうの生活(新曲)
- 拝啓。皆さま
- 少年
- 枠
- 空が笑ってる Encore
- 待ち合わせの途中(2回目)
INFORMATION
♪plenty ワンマンツアー
"いつかのあの約束の場所で"
◆開始日:2011年10月30日(日)~
※ツアーの詳細はオフィシャルサイトをご確認下さい