plenty、現体制での最後を飾った渾身のツアーファイナル
plenty | 2014.04.10
plentyの江沼郁弥(Vo,G)と新田紀彰(B)は、ツアー・ファイナルとなったZEPP TOKYOでの2時間半を、噛み締めるように過ごしていたに違いない。2月15日から始まったツアーは全て思い出深いものになっただろうが、この夜はひときわplentyにとって忘れ難い夜のひとつになろうとしていたことを、幕開けから江沼と新田は伝えようとしていたのだと思う。
柔らかな女性ボーカルのSEに導かれ現れた彼等は、最新シングル「これから」からスタート。柔らかなメロディに乗せた歌詞に添う江沼の歌が、フロアに染み込んで行く。サポート・ギターのヒラマミキオ、同ドラムスの中畑大樹の二人と共に、早くも熱気を帯びて行く演奏に江沼はステップを踏み、続く「ACTOR」のイントロはぶっといベースに合わせて新田は身体を揺らした。立ち上がりの良さはこのツアーが充実していた事を示していたが、そんな手応えを楽しんでいるように江沼が「イエイ!」とオーディエンスに声を掛けると、少々唐突だったせいか軽い驚きの声が起こったが、「楽しんでってください」と続ける江沼に拍手が送られた。
ヴォーカルを歪ませた「おりこうさん」「空が笑ってる」と曲が進むほどに演奏はスケール感を増し、江沼の歌も一層伸びやかになって行く。フロア一杯のオーディエンスへの気遣いもしながら、江沼と新田は全力で曲を進めて行った。力強いギターで始めた「プレイヤー」、シンプルな照明が曲を引き立てた「先生のススメ」「待ち合わせの途中」で演奏のテンションも上がればフロアの熱気も高まり、イントロで中畑が立ち上がってドラムを叩いた「枠」は、確かに何かの枠を壊して一気に気持ちを解放してみせた。「少年」では新田と中畑が向き合ってグルーヴィーな演奏を聴かせたり江沼がヒラマのエフェクトを操作したり。続く「劣勢」はこの4人ならではの一体感を見せつけた。
ツアー毎に逞しさを身に付けてきたplentyだが、この夜は本当にダイナミックで、フロアがうねるように揺れ続けている。そこに身を置きながらふと、4人の演奏はバンドと呼ぶに相応しい一体感とダイナミズムを持っているにもかかわらず、この4人を一つのバンドと呼べないもどかしさも私は感じていた。逆説的だが、それほどに4人はバンドだったのだ。
新田一人が残されたMCに続き江沼とのグダグダな会話でplentyらしいユルさも醸し出しながら、後半は更にタフなバンドらしさで盛り上げる。ダイナミックな起伏で聴かせた「拝啓。皆さま」から、じっくり聴かせた「good bye」までの数曲は、オーディエンスを引き込んで堂々と今の彼等を伝えていた。そしてアンコール。「DRIP」から始め、MCでこの日を日曜と勘違いした江沼が、「月曜日は…」ではなく「日曜日は…」と歌詞を変えた「明日から王様」や「あいという」に続けて「人との距離のはかりかた」を歌った後で、江沼は「2人になって3年、止まらずやろうと中畑さんと出会い…そしてヒラマさんと一緒にやりたいなって、1年やってきたんですが、この体制は今日まで。あとは5月のフェスまで」と宣言。理由は「プロである二人に甘えてしまうから」。そして今後は「まずはドラムを入れる。とても前向きな決断なので、これからもplentyをよろしくお願いします」。そう言って頭を下げる江沼と新田に、ヒラマと中畑もエールを送った。この4人が培ったものは言うまでもなく素晴らしく、また大きい。それを糧に江沼と新田は次へと進んで行くのだ。最後を飾った「蒼き日々」は4人の渾身の思いが宿った演奏を、明るく照らされた場内がひとつになって楽しんだ。この顔ぶれでのplentyであることを、江沼と新田は存分に楽しみ、心に刻み込んだことだろう。このゴールは、新しいスタートだ。記念すべき夜を咲き始めた桜の花が祝福していた。
【取材・文:今井智子】
【撮影:岡田貴之】
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リリース情報
セットリスト
plenty 2014年 春 ワンマンツアー
2014.3.29@Zepp Tokyo
- これから
- ACTOR
- おりこうさん
- 理由
- はずれた天気予報
- 空が笑ってる
- プレイヤー
- 先生のススメ
- 待ち合わせの途中
- 枠
- 少年
- 劣勢
- 或る話
- 東京
- 拝啓。皆さま
- ETERNAL
- いつかのあした
- 終わりない何処かへ
- good bye
- DRIP
- 明日から王様
- あいという
- 人との距離のはかりかた
- 傾いた空
- 蒼き日々
お知らせ
plenty presents 「今日は秋分の日」
2014/09/23(火・祝)大阪 梅田CLUB QUATTRO
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。