plentyの日比谷野音、ホーン&ピアノのサポートを携え、豊かなサウンドがドラマチックに響いた
plenty | 2015.11.11
3年半ぶりに日比谷野外音楽堂でのワンマンを行ったplenty。この季節にしては早い肌寒さが、ゆったりしたテンポにも緊張感を湛えた彼らのサウンドによく似合った。若者が集まる街ではハロウィンで大騒ぎになっていたが、それもここには必要ない。plentyとその音楽を共有することで、この夜の日比谷野音は十分満ち足りていた。
イモージェン・ヒープの「hide and seek」が流れ白いスモークの中に3人のシルエットが浮かび上がると、待ちかねたオーディエンスから暖かい拍手が起こりオープニングは「プレイヤー」。江沼郁弥(Vo、G)が鋭角的なギターに乗って歌い出し、3人は互いの調子を確かめるように向かい合って音を合わせる。今年はスタジオにいる時間が長かったから、その位置が落ち着くのかもしれない。幻想的な照明に「ボクのために歌う吟」がふわりと浮かんだようだった。
「寒いですけど、楽しんでいきましょうね!」江沼がオーディエンスに声をかけ、最新作『いのちのかたち』からの「子どものように」「above」と調子を上げていったところで、「突然ですが、ここでスペシャルゲスト!」とsébuhirokoを呼び込んだ。会釈しながら登場したsébuがピアノにつくと、最新作で参加した「心には風が吹き 新しい朝をみたんだ」「よい朝を、いとしいひと」を躍動感のある演奏で披露。ピアノが入ることでアンサンブルが華やかになると同時に緊張感も生まれ、新田紀彰(B)と中村一太(D)もプレイに力が入る。江沼の弾き語りで始まる「人との距離のはかりかた」は2年前(2013年)にsébuと録音した曲だが、改めて新鮮な響きになっていたのは昨年からメンバーとなった中村の存在が大きい。曲が終わるとsébuが静かに退席した。
このバンドならではの完結にして奥深い「あいという」、ダイナミックな演奏になった「ドーナツの真ん中」を3人で聴かせたところで、「ここでもうひとかたゲストの方を紹介したいと思います」と江沼がホーン・セクションの山本拓夫(sax)、村田陽一(trombone)、西村浩二(trumpet)を呼び込む。「レコーディングの時から一緒にやらしてもらって、すごいんです。一緒にやれるのが不思議なぐらい。楽しんでいきましょう」と彼らとの共演に興奮ぎみの江沼が歌い出したのは「体温」。控えめだが存在感のあるホーンズが、柔らかく分厚くサウンドを盛り上げる。続く「或る話」ではファンキーなホーンズとともにグルーヴィーな演奏になり、新田のベースが唸った。
再び3人だけになっての「先生のススメ」はロックバンドらしくソリッドに聴かせ、「待ち合わせの途中」は更にダイナミックな演奏になった。そしてドラム・ソロから曲に入った「枠」では、いつものようにオーディエンスがあげる腕に、一段と熱の入った演奏で応えた。どっしりと構えた「最近どうなの?」は江沼の澄んだハイトーン・ヴォイスが夜空に響き、「さよならより、優しいことば」のメリハリの効いた構成がドラマチックにテンションを上げた。
「気持ちいいです。ありがとうございます」と言った後で江沼は感情の高ぶりを抑えきれずに「ア”~~!」と叫び、新田は「天気が良くて良かったですね」と優しく語った。江沼に促されて中村は「今年はワンマンやってなかったから、plentyのためにこれだけの人が来てくれて嬉しいです」と喜びを伝えた。そして江沼の紹介で再びsébuが登場、ピアノとともに力強い演奏となった「よろこびの吟」と、「愛のかたち」の起伏に富んだ演奏はフィナーレにふさわしいスケール感があり、高揚感を浮き彫りにして歌う江沼にひときわ惹きつけられた。
アンコールに応えてsébuとともに3人が登場。江沼は「寒いっすね、ステージは暖かいと思われがちですけど、これ(照明)LEDなんでめっちゃ寒いです」と笑いを誘い、「全然違うテンションの曲」と「somewhere」。弾き語りの前半とバンドの入る後半とが呼応して、立体感のある曲になった。そしてホーンセクションも再登場して「今度は全員攻撃で」と「ETERNAL」へ。ホーンズがジワジワとソロを歌に重ね、ピアノとともにスリリングで前衛的とさえ思える要素をブルージーな演奏に仕立てていく。また「傾いた空」では一転してタフでグルーヴィーなホーンズとピアノに、ハイトーンな歌にも気合が入った。リズム隊の二人も呼応して生まれたダイナミズムは、plenty史上最強だったのではないか。今年はライヴの機会が少なかっただけに、このワンマンに3人は全力を注いでいたのは言うまでもないが、それが着実に次へのステップを予感させるものになっていた。2016年、年明け早々から始まるツアーでの彼らが、楽しみで仕方ない。
【取材・文:今井 智子】
【撮影:柴田 恵理】
リリース情報
セットリスト
2015年 秋 ワンマンライブ
2015.10.31@日比谷野外大音楽堂
- プレイヤー
- ボクのために歌う吟
- 子どものように
- above
- 心には風が吹き 新しい朝をみたんだ
- よい朝を、いとしいひと
- 人との距離のはかりかた
- あいという
- ドーナツの真ん中
- 体温
- 或る話
- 先生のススメ
- 待ち合わせの途中
- 枠
- 最近どうなの?
- さよならより、優しいことば
- よろこびの吟
- 愛のかたち
- somewhere
- ETERNAL
- 傾いた空
- 蒼き日々
お知らせ
plenty ワンマンツアー “いのちのかたち”
2016/01/14 (木) 吉祥寺 WARP
2016/01/16 (土) 新潟 LOTS
2016/01/17 (日) 仙台 darwin
2016/01/22 (金) 福島 club SONIC iwaki
2016/01/24 (日) 札幌 PENNY LANE24
2016/01/30 (土) 福岡 DRUM LOGOS
2016/01/31 (日) 大阪 なんばHatch
2016/02/02 (火) 長崎 DRUM Be-7
2016/02/04 (木) 熊本 B.9 V1
2016/02/06 (土) 高松 DIME
2016/02/07 (日) 広島 CLUB QUATTRO
2016/02/10 (水) 金沢 AZ HALL
2016/02/11 (木・祝) 名古屋 Electric Lady Land
2016/02/13 (土) 東京 EX THEATER ROPPONGI
plenty ワンマンツアー “いのちのかたち” 追加公演 "いのちのかたち(生命的形状)"
2016/02/20 (土) 台湾 高雄駁二 LIVE WAREHOUSE
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。