“スピッツらしさ”を第一に考えた、アリーナ・ライブの模様をレポート
スピッツ | 2011.07.14
最新アルバム『とげまる』を掲げたツアーのアリーナ・バージョン、SPITZ JAMBOREE TOUR 2011“とげまリーナ”をさいたまスーパーアリーナで見た。
通常のホール・ツアーとはセットリストに若干の変更がなされていて、オープニングの「聞かせてよ」は『とげまる』中の曲ながら、ツアーでは初めて演奏される。フレッシュな気持ちでアリーナに臨みたいというメンバーの意気込みが伝わってくる。
続く「俺のすべて」はライブの人気曲で、草野マサムネがタンバリン片手にハンドマイクで歌うと、広い会場にリラックスした空気が染み渡り、順調な滑り出しとなった。
以降、『とげまる』の曲と、それ以前のナンバーがバランスよく織り交ぜられてライブが進行していく。特に『とげまる』からの「TRABANT」、久々に演奏された「冷たい頬」、「猫になりたい」は丁寧な演奏が素晴らしく、前半のハイライトとなった。
アリーナだとメンバーの姿を生々しく映す映像が使われがちだが、曲の狙いに合わせてのスクリーン処理がとてもユニークだった。
スピッツは長いキャリアとライブの実績を持っているが、初めてアリーナ・ライブを敢行したのは意外なことに2年前。自分たちに似合うアリーナのスタイルをじっくり模索し、ついに実行に踏み出したわけだが、何より“スピッツらしさ”を第一に考えるポリシーがこの日もよく活かされていた。
「スピッツは今月、結成24年になります。次は古い曲です。アマチュア時代に近いアレンジでやってみます」と草野が言って始まったのは「鳥になって」だった。草野の言葉どおり、ハードで荒削りなアレンジで、ギターの三輪テツヤとベースの田村明浩の現在のプレイ・スタイルの原点を見る思いがして爽快だった。逆にドラムの崎山龍男は、おおらかで太いビート感覚を当時から変わらずに追求してきたことが伝わってきて、興味深かった。ソングライターである草野の歌も含めて、彼らはバンドの音楽的遍歴を、アリーナで見事に表現していた。
そうして、その成果ともいえる中期の名曲「ガーベラ」の演奏が、中盤をしっかり引き締めていた。
終盤の盛り上がりは、『とげまる』中の曲「探検隊」から。洗練されたロックにはスピッツの“今”あった。『とげまる』より15年も前に作られた「トンガリ,95」や、10年前の「8823」が同列に並ぶ。それもまた、実にスピッツらしい。
そしてアンコールで田村は言った。
「21年前に(この会場の近くの)大宮フリークスで『鳥になって』も『ヒバリのこころ』もやってました。今日は、目の前を見れば大勢の人がいるし、崎(山)ちゃんのほうを振り返ればライブハウスと同じ景色だし。両方を味わえる一日が過ごせて、幸せです」。この田村の言葉が、スピッツのアリーナの本領なのだと実感。バンドも会場もみんなニコニコしながら、「チェリー」を歌って、ほのぼのとした大会場ライブは終わったのだった。
【 取材・文:平山雄一 】
リリース情報
とげまる
2010年10月27日
A-hi Records
2. 探検隊
3. シロクマ * メナード「イルネージュ」TV-CMソング
4. 恋する凡人
5. つぐみ * レコチョクTV-CMソング
6. 新月
7. 花の写真
8. 幻のドラゴン * ブリヂストン「ブリザック」CMソング
9. TRABANT
10. 聞かせてよ
11. えにし
12. 若葉 * 映画「櫻の園」主題歌
13. どんどどん
14. 君は太陽 * 映画「ほったらけの島~遥と魔法の鏡~」主題歌"
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セットリスト
- 聞かせてよ
- 俺のすべて
- 恋する凡人
- ビギナー
- ロビンソン
- 幻のドラゴン
- メモリーズ・カスタム
- TRABANT
- 冷たい頬
- 猫になりたい
- 鳥になって
- ラズベリー
- ヒバリのこころ
- ガーベラ
- 新月
- 大宮サンセット
- シロクマ
- 夢追い虫
- どんどどん
- 探検隊
- けもの道
- トンガリ’95
- 8823
- 君は太陽 Encore
- スパイダー
- チェリー
INFORMATION
♪ロックのほそ道
◆2011年8月17日(水)、18日(木)
ZEPP SENDAI
[問]ノースロードミュージック
022-256-1000
♪Spitz×VINTAGE ROCK presents
新木場サンセット 2011
◆2011年8月24日(水)、25日(木)
新木場STUDIO COAST
[問]VINTAGE ROCK
03-5486-1099(平日12:00~17:00)
♪ロックロックこんにちは!Ver.15
◆2011年9月10日(土)
舞洲ロックロックこんにちは!特設会場
(舞洲スポーツアイランド イベントB広場)
[問]プラムチャウダー
06-6357-9944(平日 12:00~19:00)
※ライブの詳細はオフィシャルサイトをご覧ください