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阿部真央、「らいぶ夏の陣」In東京&大阪で完全復活!!

阿部真央 | 2011.09.06

 8月14日、東京、日比谷野外音楽堂。昨年末以来のワンマンライブに、阿部真央もバンドもオーディエンスも高ぶっている。喉のトラブルでライブがキャンセルになってから、ファンたちの心配が痛いほど伝わってきていたから、開演前の雰囲気は独特の熱があった。それにしても、BGMで流れている軽快なスカのリズム、日比谷の森を埋め尽くす蝉の声、まさに“夏の陣”にぴったりのシチュエーションだ。

 観客がわずかにざわめくと、ステージにバンドのメンバーがゆっくり歩いて入ってきた。一緒に何気なく阿部も現われたから、大きな歓声が起こる。久しぶりの再会は、こうして意外なほどあっさり実現した。
 髪を切った阿部に、オーディエンスの目は釘付けになる。どよめきにおかまいなしに、阿部はアコギを抱えて両手を上げ、マイクの前に立つ。すぐにドラムの佐野康夫がハイハットでカウントを出すと、阿部は♪Na-nananananananana・・・♪と歌いだした。「痛み」だ。最新アルバム『素。』のオープニング・ナンバーだ。毅然とした阿部の表情に、この日のライブに賭ける彼女の気迫がこめられている。ギター・ソロで激しく頭を振ると髪がスリリングに乱れ、長かったときとはまた異なる阿部のアクションの魅力が発揮される。ドキリとした瞬間だった。

 すぐに次の「ふりぃ」に突入する。阿部の名前を一躍有名にしたパワフルなロックナンバーだが、このタイミングで演奏されるとは。意表を突く曲順に一瞬、驚かされた会場が、すぐに歓びの声を上げて大合唱になる。続いて阿部のアコギがイントロの「人見知りの唄」。
「帰ってまいりました! この日をどんなに待ち望んだか。みんなに逢いたかったです。今日は楽しんでいってください」と叫んで最新シングル「モットー。」。ここで早くも阿部のエンジンが全開になる。ステージの左右に走りこんだり、タオルを回したりのパフォーマンスに、彼女の復活を待ち望んでいた観客も最初のピークを迎えたのだった。
「元気でしたか、みなさん。こんなに集まってくれて、ありがとう」。会場から「おかえりー!」という言葉が返ってくる。「みんなのそのパワーを感じたくて、帰ってきました。声も治りました。どうですか?」とステージ、会場ともに歓びを爆発させる。

 陽が落ちかけてだんだん照明が効くようになってきた「19歳の唄」あたりから、阿部の声にオーディエンスが集中し始め、バンドがはけて代わって登場した重実ジェームズのピアノだけで、2曲歌う。特に「側にいて」が素晴らしかった。阿部のボーカルの背中を押すように刻まれるピアノ。さらにそのピアノを包み込む阿部のボーカル。ふたりがひとつの歌をはさんで互いに高めあうハイレベルのプレイに、会場は暑さを忘れて聴き入った。

「今日はお盆の日曜日。スペシャルなことをやりたいなって考えてて。毎年、(忌野)清志郎さんが、この野音で やってた日なんですよ。私の楽器のケアをしてくれている山本さんは、ずっと清志郎さんの楽器を担当していた人で、何か因縁を感じると言っていて。私はお会いしたことはないんですが、清志郎さんの曲をやらしていただこうかな。一緒に歌ってもらえたら」と始まったのは、「雨上がりの夜空に」だった。「愛しあってるかぁい!」と阿部がひと声。まさか名曲中の名曲をこの日、阿部のライブで聴けると は。ベースの根岸孝旨が左足を蹴り上げれば、ドラムの佐野はストーンズのチャーリー・ワッツのスタイルで名曲に彩りを添える。ギターの西川進も和田建一郎も楽しそうにこのロック・クラシックに心を預ける。当の阿部は、ロックシンガーらしいアクションで、この素敵な“因 縁”を全身で楽しみながら歌い切った。

ライブは、終盤だ。エッジーなバンド・サウンドに乗って、阿部はいよいよペースを上げていく。「ポーカーフェイス」、「I wanna see you」ではバンドと阿部の4人が一列に並んだり、ぴょんぴょん飛び跳ねたり。阿部の歴代のライブバンドの中でも最高のグルーヴを持つ今回のメンバーは、 同時に音楽を心から楽しむ最高のミュージシャンたちでもある。

 ラストは、いまの日本の状況に祈りを込めたバラード「光」を、感動的に歌い上げて終わった。

 アンコールを求めて、オーディエンスがいつものように「あ・べ・ま、オー!」とコールする。すると阿部がTシャツにキャップをかぶってひとりで登場。ハーモニカで童謡の「ふるさと」を吹き始める。それに合わせて観客が合唱する中、メンバー が出てくる。これもスペシャルな演出だ。
「ハーモニカ、初めてうまくいった。本番に強いぞー(笑)。本当に最高の日だね。これから阿部真央、前に進んで行くんで、ついてきて下さい」と、アンコールの1曲目は「ロンリー」。終わって、バンドが去り、ひとり残った阿部は、アコギ一本で 「母の唄」、最後はキュートな声でかわいいラブソング「ストーカーの唄?3丁目、貴方の家?」を歌い、完全復活を印象付けたのだっ た。

だが、完全復活ではあるが、正直なところ、「阿部真央の底力は、こんなもんじゃない」と思ったことも事実である。ペース配分やピークの作り方に手探りの部分があったからだ。もちろん、復活第一弾としては充分なレベルに達していたが、さらなる高みが待っているはずだ。期待して翌週、大阪に向かった。

8月21日、大阪はあいにくの雨。が、大阪城音楽堂でリハーサルが行なわれているとき、空に光が差してくる。さすが、“晴れ女・阿部真央”とスタッフに笑顔が浮かぶ。そしてこの日、阿部は力強く“久々の壁”を超えたのだった。

ライブ前に雨は一時、止んだものの、次第に強くなっていく。コンディションは決してよくない。が、それが返ってライブの一体感を強めることになった。
その口火を切ったのは、やはり阿部。序盤の「人見知りの唄」で、日比谷では見せなかった歌のフェイク(注:メロディを自由に変えて歌うこと)を織り込み、その日、そのときの気持ちを積極的に表わす。すると、それに触発されたようにギターの西川が、雨に濡れたステージに寝転がってギター・ソロをキメる。このミュージシャンシップ溢れるパフォーマンスに、阿部が満面の笑顔で拍手を贈る。オーディエンスも大興奮で、阿部、バンド、会場の好循環がスタートしたのだった。

こうなると、阿部は凄い。会場に渦巻くエネルギーの中心となって、ライブをリードしていく。そのことが彼女の実力をさらに引き出していく。たとえばビッグスケールのバラード「貴方の恋人になりたいのです」では女の子のオーディエンスに涙を流させ、「for ロンリー」では雨雲の向こうに隠れている太陽を男の子たちに思い出させる。「伝えたいこと」では、自らモップを持ってステージの水を拭き取るパフォーマンスを披露して盛り上げる。
「雨降っても、 いいじゃないかー! みんな、こんなに来てくれたんだからー!」と逆切れ風なMCも大受け。待望のツアー“阿部真央らいぶNo.3”をこの日に発表するというサプライズもあって、びしょ濡れの大阪のファンたちを全員、笑顔にしたのだった。

アンコールで 「最後の曲です」と阿部がアナウンスすると、「雨が止むまでやって!」と声が上がる。「雨が止むまでって、いいね」とニッコリ笑う阿部の表情が、“夏の陣”の成功を雄弁に語っていた。

【 取材・文:平山雄一 】

tag一覧 ライブ 女性ボーカル 阿部真央

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セットリスト

  1. 痛み
  2. ふりぃ
  3. 人見知りの唄
  4. モットー。
  5. 貴方の恋人になりたいのです
  6. じゃあ、何故
  7. 19歳の唄
  8. キレイな唄
  9. Don’t leave me
  10. 側にいて
  11. forロンリー
  12. MY BABY
  13. 雨あがりの夜空に(東京公演のみ)
  14. 伝えたいこと
  15. 走れ
  16. ポーカーフェイス
  17. I wanna see you
  18. いつの日も
  19. ENCORE
  20. ロンリー
  21. 母の唄
  22. .ストーカーの唄~3丁目、貴方の家~

リリース情報

素。(す)【初回限定盤】

素。(す)【初回限定盤】

2011年06月01日

ポニーキャニオン

[DISC:1]
1. 痛み
2. じゃあ、何故
3. モットー。
4. 19歳の唄
5. なめとんか
6. ヤだ
7. もう
8. TA
9. 走れ
10. ロンリー
11. for ロンリー
12. ストーカーの唄 ~3丁目、貴方の家~
13. 光

[DISC:2]
1. ロンリー -music clip-
2. 19歳の唄 -music clip-
3. モットー。 -music clip-
4. モットー。 -off shot-
5. 光 -documentary clip-

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お知らせ

ライブ情報

阿部真央らいぶNO.3~ZEPPとQUATTROだけでごめんねTOUR~
12月2日(金) HIROSHIMA CLUB QUATTRO
12月5日(月) ZEPP SENDAI
12月7日(水) ZEPP SAPPRO
12月12日(月) ZEPP OSAKA
12月14日(水) ZEPP FUKUOKA
12月19日(月) ZEPP NAGOYA
12月26日(月) ZEPP TOKYO

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください

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