毎年、池上本門寺で行われている「Slow Music Slow Live」。2011年のレポ、第2弾!
Slow Music Slow Live | 2011.09.28
中止になった金曜日とはうって変わって、雲ひとつない晴。Opening Act の森恵はSlow Music Slow LIVEオリジナル・グッズの団扇を片手に現われて、力強いアコギ弾き語りで潔いアーティスト・キャラクターをしっかり印象付ける。
一方でsleepy.acは、エコーやエレクトリカルな楽器を駆使した独自のサウンドワールドを展開。北海道出身というルーツを強く感じさせる“涼しい音”を境内に響かせる。
この日はサントリーのブースが提供している“白州ハイボール”が飛ぶように売れている。
ユニークだったのは、OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND。フィドル(バイオリン)を操るマルチプレイヤーのいるバンドらしく、バリエーションに富んだ演奏を次々に聴かせる。今、音楽シーンに広がっている“アコースティック・ロック”の重鎮にふさわしい迫力で、会場を引っ張っていく。sleepy.acの“透明感”とは対照的に、“肉体”を感じさせるバンド・アンサンブルは、この日の暑さにぴったりの興奮を呼んでいた。
大橋トリオは鋭いポップセンスでカリスマになる一方、布袋寅泰のカバーアルバムに参加するなど、現在、最も目の離せないアーティストのひとりだ。この日も彼がステージに現われただけで、ムードが一変。ギターやピアノを弾きながら歌うと、不思議な懐かしさが会場に漂う。洋楽から得た豊かな音楽性と、最近特に深くなった日本語詞の到達力を背景に、名曲「A BIRD」などを披露。まさに“ポップ・マニアック”なヒーローとなっていた。前日に出演したBONNI PINKや持田香織とコラボするなど、ある意味、このイベントの中心人物の一人と言えるかもしれない。
個性的な女性ボーカル畠山美由紀は、最近またオンエアされているロマンスカーのCMソングで注目を集めている。この日も「ロマンスをもう一度」を歌うと、会場から拍手が起こる。
スペシャル・アクトは、超ベテランの長谷川きよし。60年代から独自のスタイルで音楽活動を続けてきた巨人で、ユニークなアコギプレイと、まったく衰えを感じさせない声に、会場から賞賛の拍手が起こっていた。
さてイベントの大トリは、Char。ジャンベ古田たかし、スタンディング・ベースTOKIEというアコースティック・トリオ編成の、満を持しての初披露となった。
Charは、奥田民生、山崎まさよしとアコースティック・ユニット“三人の侍”を結成していて、今年のライジングサンにはそこに斉藤和義も加わって楽しい演奏を繰り広げた。エレキギターだけでなく、Charはアコギ奏者としても独自の領域を築いている。その新リーダー・ユニットだけに注目が集まる。客席にはこの日、出演したミュージシャンの顔も数多く見られた。みんな、ビール片手に“憧れのギター・ヒーロー”の勇姿を期待を込めて見守っている。
すると、アメリカ南部のテイストの、ダウントーアースな演奏が始まった。どこかで聴いたことのある曲だ。おっ、これはレッド・ツェッペリンの「Your Time Is Gonna Come」ではないか。ブリティッシュ・ロックのスタンダードをアメリカ風味にアレンジしてしまうとは、なんとも痛快なスタートだ。
「いい天気でよかったですね。昼間から聴いてる人、倒れてください。そしたら“Charのライブで失神”っていう記事が(笑)。昔、おばあちゃんが『幽霊は楽しいことやってるところに寄ってくる』って言ってましたけど、なんか客席のお客さんの数が倍ぐらいに見えます・・・あ、見えてるの俺だけ?」とお寺でのライブ・ネタで笑わせる。それもそのはず、Charは本門寺の近くで育ったので、よくこの境内で遊んでいたのだ。その後もグルーヴィーな演奏が続く。
「宴もタケナカではございますが」と、Charの本名“竹中尚人”を織り込んだダジャレから、アドリブでブルースを演奏し始める。
アンコールではCharのアイドル、エリック・クラプトンの大ヒット「Wonderful Tonight」をアンプラグドでカバーして、観客を大歓びさせた。
地元でのリラックス気分は会場を楽しくさせ、さらに軽快なプレイを引き出して、CharはSlow Music Slow LIVE 2011の大トリの役目を貫禄で果たしたのだった。
さて来年はどんな“音楽ドラマ”がこのイベントから生まれるのだろうか。楽しみに待つことにしよう。
【 取材・文:平山雄一 】
【 撮影:堀清英/撮影:三吉ツカサ(OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND)】
セットリスト
Opening Act :森恵
- 時を越えて
- 傷
- 笑顔でいられるように
- メロディ
- ドングリ
- palette
- マザーグース
- 賛歌
- メリーゴーランド
- coffee stain
- Black and Blue Moning
- In all of a day
- all the way
- Bamboo leaf boat
- Camp(新曲)
- Pilgrimage
- 夢の跡
- baumkuchen
- carnival
- here to stay
- 月の裏の鏡
- A BIRD
- トリドリ
- Help me
- ロマンスをもう一度
- シクラメンのかほり
- 詩の朗読
- 美しき故郷よ
- 花の夜舟
- けし
- カルナヴァルの朝(黒いオルフェ)
- 別れのサンバ
- 組曲ふるいみらいよりEagle(鷲) Joy(喜び) Insect(昆虫) Nest(巣) Rainbow
- 夜はやさし
- ダニー・ボーイ
- Your Time Is Gonna Come
- Wasted
- Wondering Again
- Get High
- All Round Me
- You’re Like A Doll Baby
- Smoky encore
- Wonderful Tonight