前へ

次へ

“Slow Music Slow LIVE ’12”、8月24日のライブをレポート!

Slow Music Slow Live | 2012.09.07

 いよいよ定着してきた“Slow Music Slow LIVE ’12”は、音楽好きの大人たちのための“夏のミニ・フェス”。その初日の24日は、昼間の暑さが一段落した夕暮れに、オープニング・アクトの阿部芙蓉美と永野亮からスタート。二人はそれぞれソロで活動するシンガーソングライターで、この日はコンビを組んで、おのおののオリジナルを歌う。押すタイプの永井と、引くタイプの阿部の声がうまく噛みあった「Paris」で、会場から大きな拍手を浴びていた。

 今年のフジロックで大評判を呼んだ星野源が登場。いきなり阿部&永野の後を受けて、「いいな。月明かりの下で女子と歌って。こっちは一人ぼっち……よりすぐりの暗い歌を持ってきたので、一緒に暗い気持ちになろうぜ!」と笑わせる。力強いギターのアルペジオで「ひらめき」、続く「くせのうた」は少し暗い歌で、会場はすっかり星野のペースに引き込まれる。
 先に亡くなってしまったおばあさんを思うおじいさんの歌「老夫婦」がいい。会場の周囲は本門寺のお墓で、まさにこの歌にピッタリのシチュエーションだ。おそらく星野は自分のナイスな“暗い歌”の選択に、密かにほくそえんでいるに違いない。
「みなさん、蚊に刺されたりしてないですか? 僕は1曲目で膝を刺されました。“ムヒ”、ある?(笑) ここからちょっとずつ明るくしていこうと思います」。ロックンロール・タッチの「営業」、ヒットシングル「夢の外へ」で明るく盛り上げる。個性を打ち出しながらも、1曲が短いので、単刀直入に心に届く。このあたりの観客の心理を読む力が、星野の強みだ。
 そして「くだらないの中に」は、代表曲に恥じないシャープな内容。独特のストーリー設定を持つソングライティングは、人間の心のヒダを見事に映し出す。そうした歌詞の魅力に加えて、ラストの「フィルム」はもちろん、全曲、音楽性が豊かで、その豊かさをシンプルな弾き語りが引き出していて、伸び盛りの星野の現在を堪能できるライブとなった。

 スガシカオはすっとステージに現われて、立ったままアコギを肩にかける。星野源の名残りでざわめく会場に向かって、いきなり♪ぼくのいやしき魂よ♪と「ヒットチャートをかけぬけろ」を歌い出した。ド肝を抜かれてオーディエンスはしーんと静まり返る。と、その後すぐに大きな歓声が上がる。スガはさらにたたみかけるように、「スガシカオです。よろしくお願いしまーす」と叫ぶ。気合い充分の立ち上がりだ。
 次の「サヨナラホームラン」は♪何も手につかずに夜の八時ぼうっと見てるテレビ♪と始まり、現実の時間とシンクロしながら観客の心を一瞬でワシづかみにしたのだった。
「今日はトリってことで、星野くんかオレのどっちかがってことなんだけど、年令的にもオレが(笑)。でも、トリらしいことができるわけでもなく、あまりヒット曲もなく……なので、トリらしい雰囲気を出そうと、ストリングスの仲間を呼んできました」と、ストリングス・カルテットを紹介。「これでしっとり大人の夜を演出します」。そうして始まったのは、コンピュータ打ち込みが過激なリズムを刻む「19才」だった。“大人の演出”といいながら、この日、いちばんの大音量のトラックに切れの良いストリングスが絡んで、観客は身体を揺らし始める。ゴージャスで刺激的なサウンドが、改めて野外ライブの解放感を思い知らせてくれる。歌い終わって、「スローミュージックっていうこのイベントの趣旨的に、怒られないでしょうか?(笑)」とスガ。
 続く「黄金の月」は、スガのギターとストリングスが繊細なアンサンブルを織りなす、まさにスローミュージックの趣旨どおりのしっとりした大人のバラード。スガの表現力の幅を見せつけられた2曲だった。
 さらに次の2曲が凄かった。学生時代に通っていた坂道を題材にした「坂の途中」を、事務所を移籍した現在の心境と重ねるように弾き語りで歌う。しかし、スガの本心は次の「Progress」の方にあったように思う。♪あと一歩だけ、前に 進もう♪というリリックが、オーディエンスの耳に深々と刺さる。途中、マイクから離れて、スガは生声で「Ride on!」と観客に向けてシャウトする。それは自分自身を叱咤する言葉なのだと、僕は感じた。懸命に歌う姿と歌詞が完全に重なったパフォーマンスは、ただただ圧巻だった。
 再び打ち込みリズムがファンキーな「午後のパレード」では、観客と盛大にコール&レスポンスをして、本編が終了。
 観客の熱心なアンコールに応じて、スガがステージに戻ってくる。
「初対面だったんですけど、楽屋で星野くんと意気投合しました。もう1曲やります」。
 ストリングスがもう一度加わって、「夜空の向こう」をじっくり歌う。本物の星空の下で聴くこの名曲は、“Slow Music Slow LIVE”史上に残る名演となった。

【取材・文:平山雄一】
【撮影:堀清英】

tag一覧 ライブ イベント スガ シカオ 星野 源

セットリスト

Slow Music Slow LIVE ’12
“True Blue Moon”
2012.8.24@池上本門寺

    【阿部芙蓉美×永野亮】
  1. in seconds
  2. はじめよう
  3. あらしのよる
  4. 開け放つ窓
  5. highway highway
  6. Paris
    【星野源 】 
  1. ひらめき
  2. くせのうた
  3. 穴を掘る
  4. 老夫婦
  5. 彼方
  6. 営業
  7. 夢の外へ
  8. くだらないの中に
  9. フィルム
    【スガシカオ】   
  1. ヒットチャートをかけぬけろ
  2. サヨナラホームラン
  3. 19才
  4. 黄金の月
  5. 坂の途中
  6. Progress
  7. 午後のパレード
  8. ENCORE
    1. 夜空ノムコウ

トップに戻る