心の籠った手作り感覚に溢れた初の日本武道館公演をレポート!
SEKAI NO OWARI | 2011.12.06
暗転した場内。何かがステージ上を移動しているのが薄っすらと見えた。現れたのはなんとロボット! OMC-1(声優は山寺宏一)と名乗ったそのロボットによる前説が観客を沸かせた後、メンバー達が登場。スタートを飾ったのは「スターライトパレード」であった。「CAN’T SLEEP」(下手側)、「FANTASY NIGHT」(上手側)という文字がステージの両サイドで明滅し、温かい躍動感に満ちたサウンドを鮮やかに彩っていた。軽快なビートが力強い手拍子を呼び起こした「虹色の戦争」。マシーンから大量のシャボン玉が吹き上がる様が美しかった「天使と悪魔」……我々はみるみる内にSEAKAI NO OWARIの魅力へと引き込まれていった。
「Never Ending World」を堪能し、最初のMC。喋ったのがLOVE(DJ)だったので、みんなびっくり!
「初めてライブで喋ります。なんで今まで喋らなかったのかよく分からないんだけど(笑)」。そして彼は一度やってみたかったのだというコール&レスポンスを実行したのだった。「アリーナ、楽しんでるか? スタンド、まだまだ続くぞ! なかじんもやった方がいいよ」。LOVEの勧めで中島真一(G)もコール&レスポンスを行い、場内は和やかなムードと共に温まっていった。「次にやるのはそんなに盛り上がる曲じゃないんだけど(笑)、盛り上がってくれたらすごいと思います」という深瀬慧(Vo&G)の言葉を経て始まったのは「死の魔法」。フロイト、シェイクスピア、北野武、『ONE PIECE』のDr.ヒルルクなど、様々な人物が語った「死」に関する言葉が大型ビジョンに映し出される光景を眺めつつ、曲に籠められた想いが鮮やかに心に沁み入って来るのを感じた。
ハンドマイクで深瀬がステージ上を軽快に巡りつつ歌った「不死鳥」。観客が頭上でクラップしながら開放的に踊った「yume」の演奏が終わると、ステージ上には中島だけが残った。「今日のために歌を作ってきました。初めて作詞をしたんです。人前で歌うのも初めて。この瞬間を想像して作りました」。そう語って、アコースティックギターを弾きながら聴かせてくれたのはタイトル未定のナンバー(ギリギリまで考えたが、結局決まらなかったのだという)だった。曲の途中で他の3人も合流。深瀬はタンバリンと鉄琴、藤崎彩織(Pf)はピアニカ、LOVEはカホンを担当して合奏しつつ、アットホームな雰囲気で我々を包んでくれた。
柔らかなアンサンブルの広がりを体感した「白昼の夢」。グリーンのレーザー光線を使用した舞台演出が美しかった「世界平和」を経て、いよいよ後半戦へ。印象的な見どころとなったのは、深瀬が高校生の頃にベートーヴェンの「月光」をピアノで練習しながら思いついたリフから生まれたのだという新曲「Love the warz」だ。ラップ的なアプローチを織り交ぜたヴォーカルを聴かせたこの曲は、とても新鮮だった。
郷愁を誘うメロディを感じながら、観客の掲げた腕が優しく揺れた「花鳥風月」。ピアノのイントロの時点で歓声が起こり、観客の歌声が彼らの演奏と美しく融け合った「幻の命」。名曲を堪能したところで、深瀬が「あと2曲です」と告げた。「やだ?!」という残念そうな声が挙がったが、本編のラスト2曲も本当に素晴らしいものだった。深瀬が時折マイクを客席側に向け、歌声を交わし合いつつ開放的なサウンドを響かせた「ファンタジー」、圧倒的な一体感を生んだ「青い太陽」が爽やかな余韻を残し、本編は終了した。
「今日のライブの演出を半年前から考えてくれた彩織ちゃんに拍手!」(中島)「ロボットのセリフを考えたりもしました」(藤崎)、といったやり取りがあり、アンコールへ。1曲目は昨年12月に行なわれたC.C.レモンホール公演でのアンコール1曲目でもあった未発表曲「眠り姫」。そして、ラストは「歌えたら歌って欲しいです。いける?」という深瀬の問いかけに観客が全力で応えた「インスタントラジオ」。藤崎がとびっきりの笑顔を浮かべながら演奏しているのが遠目にもハッキリ見え、深瀬はもちろん、LOVEもDJブースから飛び出して駆け回るなど、メンバーもエキサイトしていたが、特にはじけていたのが中島。客席の柵前へ降りてギターを弾きながら巡り、観客と何度もハイタッチを交わし合っていた。演奏後「なかじん、どこ?」と深瀬が探してしまうほどであった。
全ての演奏が終わり、メンバーがステージを後にすると、再びOMC-1が現れて、終演の挨拶をした。藤崎が総合演出を担当したというエピソードにも表れているが、全篇に亘って心の籠った手作り感覚に溢れていた。初の日本武道館公演という晴れ舞台だが、インディーズの頃から変わらない彼らの活動姿勢を嬉しいくらいに感じたライブであった。
【 取材・文:田中 大 】
【 撮影:関 信行(go relax E more)】
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