初ホールワンマンライブの渋谷公会堂公演をレポート!
plenty | 2011.12.12
ワンマンライブとしては初のホール会場・渋谷公会堂。plentyは、どんな演奏を繰り広げるのか?
周囲の観客も大いに期待している様子が窺われた。SEが流れ、ブルーのライトに染まったステージ上に現れたメンバー達。江沼郁弥(Vo&G)がギターをストローク、クリーントーンによるコードが広がり、1曲目「待ち合わせの途中」がスタートした。張りつめた空気が漂う幕開けであったが、曲が展開するにつれて劇的な開放感を帯びていく。毎回思うことだが、plentyのライブの光景は静かだ。しかし、奏でられるサウンドの全てには生々しいエネルギーが脈打っている。そして、それを受け止める観客は、胸の内に熱い興奮を渦巻かせている。息を呑みながらサウンドを浴び、音像の中を漂う喜びを届けるplentyのライブの魅力を、冒頭から強く噛み締めさせられた。
3曲目「後悔」までを連続して演奏し、チューニングを始めた江沼。暫く沈黙が流れていたが、ふと言葉を発した。「今晩は。plentyです。今回のツアーから参加しているドラムの中畑さんです!」。サポートドラムの中畑大樹を観客に紹介し、「人がすごいですね。後ろの方、見えてますか?こっちからは見えてないけど(笑)」、淡々とした語り口なのに、どこか飄々としている江沼の言葉を聞いて和やかに湧いた観客。そして「人との距離のはかりかた」が始まった。胸に深く迫るメロディ、透明感溢れる歌声、美しい起伏を描いて展開するアンサンブルが本当に素晴らしい。瑞々しいアルペジオを主体としたパート/バンドが一丸となったパワフルなパート、対照的なアプローチを交わし合う「からっぽ」。力強いビートを叩き出しつつ駆け抜けた「ふつうの生活」。3曲を続けて演奏した後、再びMCへ。
「今日がツアーファイナルです」、チューニングをしながら江沼が語り、ふと長い沈黙が流れた。その空白に対して「……今、無を楽しんでいます」という人を喰った言葉を発した江沼が妙に可笑しかった。「今日の会場は椅子がありますが、座って観ちゃいけないとか、立って観ちゃいけないとかない。好きなようにして。焼き肉奉行みたいなのいるじゃん? あんなのふざけんなだよね(笑)。言いたいのはそれだけ」。そして、聴かせてくれたのはタイトル未定の新曲×2。ガレージロック的なザラついたサウンドとフィルターのかかったヴォーカルによる曲。スピード感たっぷりに駆け抜ける曲。どちらもこれまでのplentyとはひと味違うテイストであった。
「栄光にはとどきそうもない」「理由」など、お馴染みの曲が次々と披露された中盤。ますます彼らの音楽に深く浸ることができた。しっとりした演奏がダイナミックな高鳴りへと転じ、胸にグッと迫って止まないメロディが抜群に煌めいた「明日から王様」の演奏が終わった時、観客の間から一際力強い拍手が起こったのが印象深い。
「終わりない何処かへ」の演奏を終えると、江沼が今後のplentyの活動の告知をした。「またツアーをします。初日は来年4月8日の野音。野外だね。寒そうだね。どうする?まあいいか。ツアーが終わったらレコーディングって感じ。目指せアルバム……かな。どうかな?」。そして、ライブの終盤へと突入していった。綺麗なコードを響かせつつ、やがてディストーションの強烈な迸りへと転じた「拝啓。皆さま」。新田紀彰(B)の奏でるベースラインが、曲全体をダイナミックに牽引している様を体感した「少年」。キレの良いビートを全員で叩き出した「枠」。そして、ラストの曲「あいという」は圧巻であった。下手側にカルテットのストリングス奏者がスタンバイ。意外な光景を見て、ざわついた観客達。ステージの背景には雪のような白い粒子が降る映像が流れ始め、演奏がスタートした。plentyが奏でるサウンドにストリングスが奥行きを与え、何かとても大きなもので包み込まれるようなひと時が生れていた。演奏が終わり、一人一人のプレイヤーを江沼が紹介し始めた時、突然現実世界へと戻ったような不思議な印象を覚えた。「plentyでした。またどこかでお会いしましょう」とメンバーを代表して挨拶した江沼。いつものようにアンコールはなく、すぐに終演となったが、大満足だ。しかし、こんな素晴らしいライブは、毎日だって味わいたい。来年のツアーが早くも待ち遠しい。
【 取材・文:田中 大 】
【 撮影:柴田恵理 】
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リリース情報
セットリスト
- 待ち合わせの途中
- 最近どうなの?
- 後悔
- 人との距離のはかりかた
- からっぽ
- ふつうの生活
- 新曲
- 新曲
- 栄光にはとどきそもない
- 理由
- 明日から王様
- 大人がいないのは明日まで
- 空が笑ってる
- 終わりない何処かへ
- 拝啓。皆さま
- 少年
- 枠
- あいという