「これからも進んでいく!!」との、力強い意気込みに満ちていた、Base Ball Bearの最新武道館ライヴ
Base Ball Bear | 2012.01.20
Base Ball Bearのこの日の日本武道館でのライヴは、結成10周年の一環として行われたもの。しかし、そこにあったのは、けっして感慨深さなどではなく、むしろ逆。前を向き、今を見せ、そして、これからの彼らへと想いを馳せさせる、そんな一場面一場面であった。
彼らがこの武道館でライヴを行うのは2度目。奇しくも前回も2年前の同日であった。
2011年11月にリリースされ、自身の最高順位を記録した4枚目のフルアルバム『新呼吸』の作品記念的なライヴでありながらも、同アルバムからは5曲のみ。アンコールも含めプレイされた全21曲は、古くはインディーズ時代の曲もあり、これまで発表されてきた作品群を網羅したセットリストであった。
最初に今回のライヴの総括的な感想を書くと、各曲が擁する世界観に圧倒される曲が多かったなという印象。特に本編中盤から後半にかけての次から次へと繰り出されるハイライトの連続には、嬉しそうに、楽しそうに、まるで"待ってました!"と、全てを受け入れ、各曲に振り回され、その世界観に捲き込まれる自分がそこにいた。
普段はシートでもかぶせ、隠しているステージ後ろの空席部分もさらけ出し、ライティングも通例の武道館アーティストよりも控え目。”割とこじんまりとしたオープンなステージだな…”。これが会場に着席し、ステージを観た私の第一印象だ。しかし、実はそこには理由が…。まっ、その辺りは後ほど。
18時8分。ラウドなSEが会場に鳴り渡り、まずはドラマーの堀之内がステージに登場する。ステージの袖から袖へと挨拶をし、ドラムキットに座ると、1人でジュークボックスR&R的ビートを叩き出す。合わせて会場もクラップハンズ。そんな中、ステージ後方の無人のスタンド前列に、ボーカル&ギターの小出、ベースの関根、ギターの湯浅の座っている姿が。その3人が1人1人順番にステージに降りて来、各々の音を堀之内のビートの上に乗せて行く。1曲目はインディーズ時代からの人気曲「夕方ジェネレーション」だ。あの頃より数倍ダイナミズムさが増した演奏と、確かな歌がオーディエンスをいきなり惹きつける。続いては、そこにスリリングさと勢いを加えるように同じジェネレーション繋がりの「Stairway Generation」が放たれる。湯浅がシンフォニックな音色を楽曲に交える中、ステージ後方の無人のスタンドからは色とりどりのライティングが。”そうか、だから後ろの客席はむき出しだったのか!!””こんな活かし方があったとは...”と、先程の印象が一変し、<やられた感>に変わる。そして、ダンサブルな「ELECTRIC SUMMER」にインすると、関根のコーラスも楽曲に加わる。ダンサブルさがメインながら、そこにさりげない変拍子を交えるところがいかにも彼ららしい同曲。変拍子を交えたが故のサビのストレートさが気持ちいい。湯浅も早速雄弁なギターソロを会場いっぱいに響かせる。
ここでMC。小出が「2011年を全て捨て去るつもりで演奏し、歌う。一緒に武道館になってもらっていいですか?」と会場とのアライアンスを確認する。
続いてはダンサブルなナンバーが2連発。いきなり会場を夜明け前のマジックアワーへと誘った「yoakemae」、小出のスキャットが場内のスリリングさを煽った「Fragile Baby」が、フロアを乗らせるだけでは飽き足らず、躍動感たっぷりに踊らせまくる。
「前回は初の武道館ということもあり、少々まとめ的なライヴをしましたが、今回は最新のBase Ball Bearを見せます」と力強く小出が語り、特別にみんなの知らない他のメンバーの驚くべくところを長い時間に渡り、各々のメンバーがトーク。完全に会場が和んだところで、中盤戦へと突入する。エッジ―なギターも印象的だった「BOYFRIEN℃」、関根がセンターに立ち、更なる歓声が上がる中、彼女のリードボーカルが会場の心をつかんだ、ストレートで疾走感のある「WINK SNIPER」、堀之内のドラムソロの後、全く初めての経験だったという彼のティンパニーのソロとシンバルの一撃に続き、小出のファンキーなギターカッティングから「転校生」へ突入すると、会場にカリビアン的なファンキーでダンサブルな空間が生まれる。続いて、サカナクションの山口がゲストに呼び込まれ「kimino-me」を共に始める。”ハンドマイクで歌う山口も珍しいな...”なんて観ている中、小出、山口のツインボーカル場面も登場。会場を驚喜させる。
後半はガラリと雰囲気が一変し、楽曲に躍動感や生命力が加わっていく。個人的に、この日のハイライトだったと思えるのが、「十字架 You and I」、「スイミングガール」~「海になりたい」~「海になりたいpart.2」のメドレーと、ニューアルバム中、最も白眉だった7分に渡る大曲「新呼吸」の、もはや組曲とも言える世界観どっぷりのブロック。それぞれがソウルフルだったり、ドラマチックだったり、満天の星空に抱かれているかのような錯覚を起こさせたりと、違った世界観ながら圧巻のBase Ball Bearワールドを味あわせてくれる。
ラストスパートは、”もう最後まで突き進んでやる!!”と言わんばかりに勢いのあるナンバーが続く。会場中にコブシを上げさせ、大呼応を呼んだ「changes」、特効も炸裂し、金色のテープが舞う中、会場いっぱいに熱狂の渦を巻き起こした、関根の甘いボーカルも特徴的な「LOVE MATHEMATICS」、そして本編最後は、会場全体を天上へと誘った「CRAZY FOR YOU の季節」と、立て続けの豪気のナンバーが、それぞれの曲の持つ世界観へとオーディエンスを惹き込む。
アンコールは3曲。まずは、ゲストボーカルに、チャットモンチーの福岡晃子、ゲストラッパーに呂布を迎え、「この曲を武道館で演るのが夢だった」と語りプレイされた、小出と福岡のデュエットとそこに絡む呂布のラップも印象的だった「クチビル・ディテクティヴ」。そして、暗闇から抜け出し、光の中へと誘う「Tabibito In The Dark」。正真正銘のラストは、会場のライトも大全開。武道館の隅から隅までをパーティ会場へと豹変させた「祭りのあと」を演奏。演り切った感満載、見どころ満載、ハイライト満載のまさに満載づくしの武道館ライヴは終わりを告げた。
結成10周年のメモリアル的な意味も含まれたステージにも関わらず、終始そこにあったのは、気高いほどの次に向かおうとする力強い意志。感慨深さどころか、今現在の、いやこれからも力強く進んでいく、彼らの意気込みを充分に堪能させてもらった一夜であった。
【取材・文:池田スカオ和宏】
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リリース情報
セットリスト
- 夕方ジェネレーション
- Stairway Generation
- ELECTRIC SUMMER
- yoakemae
- Fragile Baby
- short hair
- GIRL FRIEND
- BOYFRIEN℃
- WINK SNIPER
- 転校生
- kimino-me
- 十字架 You and I
- スイミングガール?海になりたい?海になりたいpart.2
- 新呼吸
- changes
- LOVE MATHEMATICS
- CRAZY FOR YOU の季節 Encore
- クチビル・ディテクティヴ
- Tabibito In The Dark
- 祭りのあと