レビュー
Base Ball Bear | 2015.10.07
3ヶ月連続のリリースを展開しているBase Ball Bear。シリーズのラストを飾る第3弾「不思議な夜」で描かれているのは、深夜の散歩。湾岸エリアを「君」と歩きながら胸に刻んだ忘れられない仕草や表情、都会の風景、初夏の夜風の肌触りを捉えている。爽やかに躍動するファンキーなサウンドが心地よい。開放的に踊りたくなるサウンドも十八番であるベボベだが、この曲にはギラギラ煌めくミラーボールよりも、柔らかな月明かりがよく似合う。カーステレオのFMラジオから流れてきそうな「ベボベ流シティポップ」とでも言うべき仕上がりだ。
際立った何かが起きたわけではないが、記憶の底で生々しく息づき続ける場面というものに心当たりはないだろうか? この曲が浮き彫りにするのも、まさにそういうものだ。深夜の散歩をした主人公と「君」は、何か特別なことをするわけでもなく、始発が動き始めるまでの時間をただひたすら共有している。しかし、夜明けを迎えた時、彼らが噛み締めているのは、確実に少し変化を遂げた2人の関係性。エンディングの部分に出てくる《向かいのホームで手を振る君が、微笑む》という描写が、とても印象的だ。おそらく彼らが共に歩むのであろう新たな物語の到来を、さり気なく暗示している。小出祐介(Vo/G)は、ごくありふれているように見えるにも拘わらず当人にとっては決して平凡に通り過ぎてはいない風景を抉るのが、初期から非常に上手い。「夕方ジェネレーション」や「彼氏彼女の関係」など、インディーズの頃の曲も、何気ない場面の中に繰り広げられる劇的な何か、激しい心の揺らぎを見事に捉えていた。「不思議な夜」は、そんな彼ならではの作風、鋭い描写力を改めて示すナンバーだと言えるだろう。
今作はその他、「不思議な夜」のインストゥルメンタル、映画の予告篇風のアルバム特報も収録。そして、DISC.2はデモ音源やリミックスなどによるレアトラック集。盛りだくさんの内容を存分に味わいつつ、11月11日にリリースされる6thフルアルバム『C2』を待ちわびるとしよう。
【文:田中大】
リリース情報
「不思議な夜」
発売日: 2015年10月07日
価格: ¥ 1,800(本体)+税
レーベル: ユニバーサル ミュージック
収録曲
第3弾エクストリーム・シングル <完全生産限定盤>
[DISC.1]
1. 不思議な夜
2. 不思議な夜 (Instrumental)
3. アルバム特報
[DISC.2] ボーナス・ディスク(全19曲)
1.HR ※2002年11月頃
2.メタモルフォーゼ真っ最中(DEMO) ※2003年初夏
3.4D界隈(DEMO) ※2005年6月7日
4.ELECTRIC SUMMER(DEMO) ※2005年6月7日
5.東京生まれ ※2006年8月30日
6.17才(DEMO) ※2006年12月6日
7.ドラマチック(DEMO) ※2007年1月頃
8.協奏曲(DEMO) ※2007年6月27日
9.カジュアルラヴ(ホリ・ショーヘイver.) ※2007年8月2日
10. image club(NK1 Mix ver.) ※2008年7月10日
11. SCHOOL GIRL FANTASY(足立房文Remix) ※2008年9月23日
12.神々LOOKS YOU(DEMO) ※2008年12月22日
13.The Boy From Alone(DEMO) ※2009年7月頃
14. beautiful wall(DEMO) ※2009年7月頃
15.ヒカリナ(DEMO) ※2010年1月14日
16.クチビル・ディテクテイヴ(DEMO) ※2010年2月18日
17.17才(33才Remix by 高橋栗原) ※2010年7月13日
18. yellow(DEMO) ※2012年9月17日
19.「それって、for 誰?」part .1(DEMO) ※2014年12月15日