Base Ball Bear、ダブルA面シングルで奏でる“夢”と“現実”の狭間に見た先
Base Ball Bear | 2013.11.21
- EMTG:「ファンファーレがきこえる」は、どういう経緯で生まれたんですか?
- 小出:前作の『THE CUT』の時にもお話しましたけど、僕は器用な方だから、作家っぽく作ろうとすると結構いかようにもなっちゃうんです。でも、他の人に提供するならばそういう作り方もいいけど、自分がフロントマンとして自分のバンドで歌うならば「何を歌うか?」っていうのは重要になってくるなと年々強く感じていて。だからこの曲は、まずはテーマ選びから入りました。それで出てきたのが「俺って普通だな」という常々思っていることだったんです。よくこういうことを言うと、「いやいや。アーティストなんだから」みたいなことを言われるんですけど、僕はみなさんが思っている以上にそういうことがコンプレックスなんですよ。いろんな天才の方々を現場で見ていますし、仙人みたいな人っているじゃないですか(笑)。そういう人たちと較べると、自分は音楽がいろいろ枝分かれしてきた中の1人だと思うし、「主役じゃないコンプレックス」を感じるんです。こんなことを思うのって、自分の業種だからこそなのかなと。そういう視点から書こうと思って作ったのが「ファンファーレがきこえる」です。
- EMTG:この感じ、多くの人にとっても分かることだと思いますよ。例えば会社員になって仕事が充実していても、何だか自分が末端の脇役に過ぎないような想いになることって、よくあるんじゃないですかね。
- 小出:そうなんでしょうね。でも、僕らの仕事はバクチみたいなところもあるから、この先すごくいい方向に転ぶ可能性もあるし、逆に悪い方向に跳ねる可能性もある(笑)。だけど、これはあくまで僕のステレオタイプな想像ですけど、会社勤めをしているとすごく沈むこともない代わりにすごく跳ねることもなさそうだなという感覚なのかなと。まあ、そういう違いはありつつも、「何か違うな」って思うことはあるんでしょうね。
- EMTG:現実に揉まれながらみんな生きているわけですし、そういう中で直面する葛藤に通じるものを多くのリスナーはこの曲から感じると思います。
- 小出:そうなってくれているといいですけどね。僕の理想像として、「時代」っていうものをちゃんと歌えるようになりたいなというのもあるので。でも、それを意図的にやろうとすればするほど空回るんです。だから外側と内側に向うものの中間を狙うような感じでずっとやってきたんですけど、そういうバランスの取り合いみたいなことにも疑問を感じるようになったんですよね。「やっぱ自分は自分にしか座れない座席を狙うべきだ」と。強引に外側に向こうとはせずに、内側に潜れるだけ潜ってやろうと思って。それで逆に突き抜けて矢印が外へ行けばいいのかなと。そう考えるようになってから「ファンファーレがきこえる」や前作の「The Cut(-feat. RHYMESTER-)」みたいな描写の曲が出てきているんです。「時代をありのままに歌うことはできないかもしれないけど、時代の中にいる自分を歌うことで、それが時代を歌うことに繋がるのではないか?」と。
- EMTG:個人的な表現が普遍的なものになっているケースって、古今東西のいろんな芸術にありますからね。むしろそういう作品の方が多いかも。
- 小出:いつだったか友人の福岡晃子という人に言われたんですけど……。
- EMTG:チャットモンチーの福岡さん(笑)。
- 小出:はい(笑)。あの人と作詞について、今僕が言ったようなことを話したんですよ。そうしたら、「心にすごく響く歌詞っていうのは、誰かのために歌ったものではなくて、超個人的なことを歌っているものだったりするんだよね」と。3、4年前ですけど、すごいなと思いました。僕はそういう発想でいたことがなかったから。
- EMTG:小出さんは作家として器用に書けるスイッチがあるから、そういう悩みに直面しやすいのかも。
- 小出:そうなんでしょうね。その時話したことの意味が、最近になってより分かってきています。
- EMTG:最近、ベボベの曲にリアルタイム感みたいなものが濃くなっている背景もそこなんでしょうね。昔の作品は青春の呪縛というか、忘れられない風景や感覚を描いたものが中心だったから。
- 小出:そうですね。もう、そういう学生の頃から十数年も経っていますから。感覚が薄れてきているわけではないんですけど、高い鮮度で歌うのが無理になってきたというか。そういうものを歌うこと自体が、最近思っている「今自分は何を歌うか?」っていうものの逆なので。もちろん作家的に書くのもいいし、やらないっていうことでは全然ないんですけど。例えば今回の「senkou_hanabi」は、作家的に書いた曲ですから。こっちは『閃光ライオット』の公式応援ソングっていうお題があって作った曲なので。
- EMTG:なるほど。今回の2曲って、小出さんの中にある「パーソナルスイッチ」と「作家スイッチ」の両方が発揮されているシングルですね。
- 小出:そうなっていると思います。完全にそういう住み分けで書きました。「senkou_hanabi」は、十代の子達に聴いてもらいたくて書いたのに対して、「ファンファーレがきこえる」は自分と同世代かむしろ上の年齢の人にも聴いてもらいたいと思っていたので。
- EMTG:では、2曲目の「senkou_hanabi」のお話へ移りましょうか。これの背景は?
- 小出:『閃光ライオット』は初年度から関わっているんですけど、あれって十代限定じゃないですか。番組のリスナーや観に来るお客さんの大半も十代。つまり「十代の子を十代が応援している」っていうかなり特殊な空間になっていて。そのテーマソングを書くっていうことになったので、その構図と構造を曲に盛り込めないかなと。自分のリアリティとして歌うのは違うと思ったので、やや引いた視点から描いています。『閃光ライオット』を花火大会に置き換えて、「同じ光を見つめる十代の子達」っていう曲にしてみました。だから登場人物がたくさんいる珍しいタイプの曲になっています。
- EMTG:サウンド面に関しては、どんなことを考えました?
- 小出:最近、結構ダビングで重ねる曲が多かったので、この曲はインディーズ時代みたいにシンプルに録ろうと思っていました。コード進行も簡単ですし。「Base Ball Bearがもし十代で『閃光ライオット』に出るとしたら?」っていうイメージです。
- EMTG:この曲で出場したら優勝するんじゃないですか?
- 小出:多分優勝でしょ。今年もしかしたらこの曲で優勝するんじゃないかと思っていたんですけど……できなかったですね(笑)。
- EMTG:(笑)十代の子達の風景と、その時代を過ぎた大人の目線が交錯する感じになっているのも印象的でした。
- 小出:十代の子達へのメッセージ……じゃないですけど、そういうようなものも盛り込むべきだと思ったんですよね。『閃光ライオット』って一夜限りのイベントですけど、それはひと夏で終わるんじゃない。「悔しかった」とかっていう気持ちも含めて未来のその子達に繋がればいいなと俺は思ってるぜ……っていうことはちょっと言っておこうかなと。
- EMTG:バンドをやっている十代の子達を見ると、いろいろ感じることはあります?
- 小出:ありますね。でも、ノスタルジーは感じないんですよ。なぜなら、自分達の十代の頃のバンド活動に圧倒的なリアリティがあるし、そこからずっと続いてやってきていますから。全く褪せていない。メンバーもずっと変わっていないですから。メンバー同士の話も同じことをずっと反芻しています。未だに高校3年生の時の国語の先生のモノマネを楽屋でやっているくらい。「もういいよ?。10年間やってるから」って(笑)。
- EMTG:(笑)そろそろまとめに入りますが……今回の2曲以降も、さらにいろいろ作っていたりするんですか?
- 小出:作らなきゃいけないはずなんですけど、なかなか書けずにいまして(笑)。手をつけ始めたらどんどん進む気もするんですけど、まだ今一つ深入りできていない状態です。
- EMTG:「ファンファーレがきこえる」に《人に告げず遠くの町へ逃げたくもなるけれど》ってありますけど、まさか……。
- 小出:それ、時々本当に思うんですよ。「全然知らない海沿いの町へ行って漁師とかしようかな……」と(笑)。
- EMTG:なんか切ない話になってきました(笑)。
- 小出:そういうことをちょっと思うんですけど、「いやいやいや!」って思って頑張るんです(笑)。だって絶対に無理ですから。そんなことも思ったりしつつ、少しずつ次に向って動き始めているつもりです。
- EMTG:楽しみしているファンのみなさんに何か伝えたいことは?
- 小出:まあ長い目で見守ってください(笑)。今回、日比谷野音のライブDVDも同時に出ますし、こちらも観て頂ければなと思います。
コントラスト豊かな2曲を収録したダブルA面シングル。「ファンファーレがきこえる」は、現実と格闘する中で浮上する葛藤を生々しく抉る。描かれているのは、自分が自分の人生の主役ではなくなっているような感覚。これは多くの人にとって身に覚えがあるテーマなのでは? そして、「senkou_hanabi」は、『閃光ライオット2013』公式応援ソングとして書き下ろされた。懸命に輝きを求める十代の少年少女達の姿を花火の光に託し、瑞々しい描写とサウンドを躍動させている曲だ。今作はどのような背景から生まれたのか? 小出祐介(G・Vo)が語る。
【取材・文:田中 大】
リリース情報
リリース情報
[DVD]日比谷ノンフィクションIII (通常盤)
発売日: 2013年11月27日
価格: ¥ 4,743(本体)+税
レーベル: EMI Records Japan
収録曲
1. BREEEEZE GIRL
2. PERFECT BLUE
3. GIRL FRIEND
4. 17才
5. 彼氏彼女の関係
6. アイノシタイ
7. 愛してる
8. BOYS MAY CRY
9. short hair
10. 君はノンフィクション
11. SIMAITAI
12. 真夏の条件
13. yoakemae
14. Tabibito In The Dark
15. 海になりたいpart.2
16. LOVE MATHEMATICS
17. HIGH COLOR TIMES (Enc1)
18. 祭りのあと (Enc1)
19. changes (Enc2)
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ビデオコメント
お知らせ
BAD FEELING
YouTubeでギターの教則動画を見ていたら、布袋寅泰さんの「BAD FEELING」のリフの弾き方を解説している動画をいくつか見つけたんですね。あれって、布袋さんの手のニュアンスで弾いているから、人によって全然違うんですよ。もう、その人の「BAD FEELING」になっているので、面白かったんです。なんだったら、本物の布袋さんも原曲と違っていたりして(笑)。僕も僕なりの「BAD FEELING」を見つけていきたいなと思いました(笑)。
■ライブ情報
Base Ball Bear2014年春ツアー
2014/03/25(火)渋谷AX
2014/03/30(日)なんばHatch
2014/04/04(金)名古屋BOTTOM LINE
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。