超満員の会場で、これまでとこれからをきっちりと見せつけたTHEラブ人間のワンマンライヴ
THEラブ人間 | 2012.03.29
東日本大震災からちょうど1年後にあたる3月11日。この日でなければ伝えられなかった大切なメッセージや慈しみの気持ちと共に、THEラブ人間は、自身2回目のワンマンライヴを行った。
2009年1月の結成から3年。その思いや意気込みが表れた今回のライヴタイトルと共に、この3年の間に彼らが何を得、今に残し、今後成そうとしているのかが、キチンと明示された、この日。超満員の渋谷クラブクアトロは、開演前から高い期待値に満ちていた。
お馴染みのSEに乗って5人がステージに現れると、フロア前方の密度が一層高くなる。SEがフルコーラス終わるタイミングで、ボーカル&ギターの金田康平が「THEラブ人間 フロム東京」と一言。それを呼び声に、金田の爪弾くアルペジオに谷崎航大の抒情的なバイオリンが絡み出し、そこにバンドサウンドのダイナミズムが加わる。1曲目は「東京」。彼らの壮大さを伝えるには、申し分のない出だしだ。2番では、ベースの岡本絵美のボーカルも加わり、それがさながら男の言い分、女の言い分の様相を表す。自身の生活を省みさせるかのような同曲に、様々な土地よりここに集ったことに関係なく、この東京が、今この会場に居る、それぞれの人たちの街へと化していく。
「3年前から分かっていたよ。あなたの時代を俺たちが変えてやる!!」と金田。それを合図に飛び込んだ狂暴なデモンストレーション音の中、弾んだ服部ケンジのドラムが現れると、楽曲に躍動感が芽生え出す。続いては「悪党になれたら」だ。現時点では未作品化ながら、既にライヴでは数知れず歌われてきただけに、会場のリアクションもバッチリ。この曲から彼らのライヴの特徴とも言える、会場を巻き込んでの大合唱が生まれ出す。そして、「りんごに火をつけて」では、キーボードのツネ・モリサワが柔らかい音色で温かい演出を施し、会場に優しい雰囲気をじんわりと広げていく。
「今日はたっぷり演るぞ、クアトロ?!!」と金田。それを表わすかのように、この日はダブルアンコールを含め、彼らの持ち歌のほどんどが歌われた。そして、この後発表された5月16日発売のニューアルバム『恋に似ている』からの曲も、ほぼ全曲がプレイされた。さらに、続く「アンカ―ソング」をはじめ、アルバム未収録の新曲3曲も披露された。「アンカーソング」は、前のめりなドラミングと、グル―ヴィーなベースも印象的で、リレーの最終ランナーになったかのような気持ちにさせられるナンバーだ。
なにもこの日は、これからばかりが鳴らされたわけではない。これまで培ってきた曲たちも、この3年の彼らの軌跡を示すべく放たれた。懐かしがりながらも、今や気持ちや存在は、まったくそこにはないことを歌った、インディーズ時代から人気の高い「京王線」、昨夏発表のメジャーデビューEPからも「若者たちの夕暮れ」「抱きしめて」が、鬼気迫る歌唱と共に、聴く者の胸をキリキリと締めつけていく。
また、中盤にはポップな曲が立て続けにプレイされた。サビの部分での弾みながらのみんなの大合唱も印象的な「わたしは小鳥」、楽曲の持つ春の雰囲気とセカンドラインのリズムが会場を弾ませた「これはもう青春じゃないか」、ブライトな曲調と適度な上昇感の中、人生という列車について歌った「西武鉄道999」が会場に一体感と明るさを呼び込んでいく。
ここでのMCでは、やはり去年の3月11日について、金田から語られる。そして、震災で亡くなった方々を慈しむべく、ステージ/会場交え、1分間の黙とうが捧げられた。「ここからは幸せになっていくための新たな第一歩を踏み出していこう」との金田MCの後、ツネがレクイエム的な音色を奏で始め、そのMCとオーバーラップするかのような「レイプミ―」に入る。積み上げたものを崩すことや、また振り出しに戻ってしまうことへの恐れを、優しく諭し、もう一度やり直すことの勇気や大切さを後押ししてくれる同曲に、会場全体も震災以降の自身の気持ちや、これからの自分を投影させていく。
そして、シングルヒットしたポップナンバー「大人と子供?初夏のテーマ?」、ぶっきらぼうなありがとうのつぶてが会場に放られた「砂男」では、会場中が"待ってました!!"の大合唱。これらの曲が、もはや多くの人のアンセムと化していることを実感する。そして、「俺たちの手で世界を変えるんだぞ!何を言われても関係ねぇ!俺はあんたたちと一緒になるからな」との、金田による力強いアライアンスの後、本編ラストに放たれた「おとなになんかならなくていいのに」では、会場の電気も全開。「Everything’s gonna be all right Nothing’s gonna change my world」の大サビのフレーズでは大合唱が起こり、みんなが心の中で、"そうだ、やっぱりこれでいいんだ!!"との気持ちを重ねていく。
アンコール前には、この日用意されていた重大発表として、4/14に公開レコーディングが行われること、5/16には上述のニューアルバムが発売されること、次のワンマンライヴが7/22に恵比寿リキッドルームで行われることが告げられる。
そして、アンコールの2曲は、ニューアルバムから「愛ってかなしいね」、そして、それ以降の新曲「Goddbye City」が高らかに歌われた。
既に予定していた曲を全てプレイし終えた彼ら。鳴り止まぬダブルアンコールの中、会場からのリクエストに応え、結成の地でもあり、活動の拠点でもあった下北沢を歌った「Shimokitazawa nite」、会場/ステージを含め、全てをデトックスするかのように「黒いドロドロ」が放たれる。特に「黒いドロドロ」の「それでも行かなくちゃならないんだぜ」のフレーズは、これからもズンズン進んで行く彼らの気概と、それについて行こうと決意した、この日集まった人々の気持ちも一緒に引っ張っていく力強い宣言のようにも響いた。
結成からのこの3年と現在、そしてこの先を、震災からちょうど一年というこの日にしか伝えられないメッセージや慈しみも含め、きっちりと手渡してくれた、THEラブ人間。ライヴ中、金田は何度も「俺たちについてくれば間違いない」と心強く叫んでくれたが、震災から1年、今みんなが待っているのは、こんなグイッと強引に自分のところに、聴く者、観る者を惹き寄せ、「一緒に歩んで行こうぜ!!」と、力強く、高らかに歌ってくれる彼らのような歌や存在なのではないのか...と、このライヴの帰路、何度も思った。
【取材・文:池田スカオ和宏】
リリース情報
セットリスト
- 東京
- 悪党になれたなら
- りんごに火をつけて
- アンカーソング
- 京王線
- 八月生まれのきみの結婚式
- 若者たちの夕暮れ
- 抱きしめて
- わたしは小鳥
- これはもう青春じゃないか
- 西武鉄道999
- レイプミー
- 大人と子供 (初夏のテーマ)
- Bedside Baby Blue
- 砂男
- おとなになんかならなくていいのに ENCORE
- 恋ってかなしいね
- Goodbye City
- Shimokitazawa nite
- 黒いドロドロ
お知らせ
【MONOBRIGHT/THEラブ人間
TWO MAN TOUR 2012「ブラ人間」】
2012/04/02(月)横浜CLUB LIZARD
2012/04/03(火)宇都宮HELLO DOLLY
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。