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命を謳う祝祭の宴、ACIDMAN「15th&10th Anniversary Tour」ライヴレポート

ACIDMAN | 2012.04.25

「各地でみんなに“おめでとう”と“ありがとう”を言われました。そうではなくて、僕達がみんなに感謝をするライヴです。生かされた命、与えられた命、本気で燃やして行こうと思いますので、最後の最後まで一緒に盛り上がって行きましょう!」祝祭の宴にかけつけたオーディエンス達の、ひときわ大きな歓声が会場中に響き渡った。

 シーンの最前線で唯一無二の音楽を鳴らし続けるロックバンド・ACIDMAN。彼らにとって2012年は、バンド結成15周年・メジャーデビュー10周年という節目の年である。それを記念して、2月にはベスト盤やインスト集をリリースし、Zepp Tokyoを皮切りにアニバーサリーツアーを開催。そのツアー・セミファイナルが、彼らの故郷でもある埼玉県・さいたまスーパーアリーナにて行なわれた。当日の天気は残念ながら雨。桜が咲いているにも関わらず、凍えるような肌寒さだったが、会場には多くのオーディエンスが集まった。

 始まりは「8to1 completed」。彼らの1stアルバム『創』の1曲目に収録されているSEだ。深遠な響きを持つギターが鳴り、荒ぶったベース音が会場に轟くと、客席から大歓声と手拍子が巻き起こる。ステージにかけられた紗幕には、微生物のようないびつな形の生命体が、どんどん姿を変えていく映像が映し出されている。無数の紅い目がギラつき、手足が何本あるか判別不可能。ただ、そこには力強い生命力が漲っている。映像へのこだわりが強い、彼ららしいライヴの幕開けだ。

 「今、透明か」が幕を隔てた向こう側から鳴らされると、メンバーのシルエットが一人ずつ浮かび上がる。極彩色の蝶が、光の粉を振りまきながら混沌とした世界を舞う映像が映し出される中で演奏が進み、紗幕が落とされると、再び大きな歓声が上がった。続く「造花が笑う」からライヴは一気に疾走し始める。メンバー全員楽しそうだ。サビ前のブレイクで手を高く掲げる大木(vo、gt)に、客席をガンガン煽る佐藤(ba)。そして、浦山(dr)のズタン!というドラム一閃で繋げた「CARVE WITH THE SENSE」の入りは、彼らが15年で積み上げきたキャリアや絆を感じさせ、会場をより熱くさせた。

 熱の籠った演奏が続く中、佐藤がウッドベースを手に取り、大木のカッティングギターが炸裂する「Dawn Chorus」や、浦山の変則的なドラミングがサウンドに熱を与える「Slow View」といった、インスト曲も披露。言葉やメロディーがなくとも、いや、むしろないからこそ伝わってくる音像が、会場を圧倒する。

 恒例の浦山のMCタイムでは、「今年の初めに、アフリカへ行ったときに買った“マサイ族の衣装”を着て、このツアーを廻ったのだが、飛行機より、新幹線より、京浜東北線に乗ってるときが一番恥ずかしかった」という話で会場を沸かせる。元々、高校の軽音楽部の仲間で結成されたACIDMAN。3人が向かい合って喋っている姿は、まるで高校生が部室でだべっているような雰囲気で、なんだか微笑ましくもあり、こんなにも大きな会場で壮絶な音を出しているのに、どこまでも自然体でいれることに驚かされた。

 そして、「14年前に作った曲、久しぶりにやってもいいですか?」と「酸化空」を披露。メンバーがいつ振りに演奏するかハッキリ思い出せないぐらいのレア曲の登場に、客席は大興奮。そして「to live」「Ride the wave」「赤橙」と、更に会場の熱を上げて行く。スリーピースという、バンドの形態として最もミニマムな編成なのにも関わらず、どこまでも広がって行く音世界。ドラマチックなアレンジが施され、雄大な自然がスクリーンに映し出された「リピート」や、心を持ってしまったロボットの悲哀を描いた「2145年」、そして、広大な宇宙に浮かぶ地球をバックに演奏された「ALMA」と、一大ロック・スペクタルを繰り広げた。

「この世界が始まって137億年。元々は、俺たちもみんなも、この楽器も、ここにある空気も、全てはひとつで、それがどんどんいろんな形に変わって、今は人間として生を受けていて……。そういうことを考えると、この世界は奇跡で溢れてるんだと思います。だから、命っていうのは、“何の為に生きるのか”とか、“生きる意味が分からない”とか、そういう悩みは持たなくてよくて、生きるっていうのは、生きてるだけで充分意味を果たしてるんだと思います。これからもこういうことしか歌えないと思いますが、その考えに何の不満も言わずついてきてくれたメンバー、バンドに共感してくれたスタッフ、自分達の音楽を受け止めてくれる大切なファンがいてくれて、今があります。ここに集まってくれた人、この瞬間が、俺の、俺たちの1つの証明だと思っています」

 そして、ゆっくりと、想いを込めて歌い始めた「ある証明」。3人は音を重ね合わせ、生の喜びを高らかにかき鳴らす。そのまま「飛光」、そして、スクリーンにファンやスタッフの写真を映し出した「Your Song」というライヴの鉄板ナンバーで本編を締め括った。

 アンコールでは「world symphony」「アレグロ」をドロップ。客席を再び盛り上げ、“今みたいに盛り上がって出て行った方がカッコいいんだけど、どうしてもやりたい曲があって……”と、「彩-SAI-」「廻る、巡る、その核へ」を2曲続けて披露。喪失と再生を繰り返す輪廻の物語を描いた映像と共に奏でられる繊細なアンサンブル。それは徐々に熱を帯び、最後にはすさまじい熱量の轟音となって会場を支配する。その余韻に包まれたまま、祝祭の宴は幕を降ろした。彼らの真骨頂を存分に堪能できた2時間40分だった。

 アニバーサリーライヴでは、感謝の気持ちを伝えるために、例えばオーディエンスの聴きたい曲、人気曲をとにかくやるというパターンもある。それはエンターテイメントとして素晴らしいことだと思うが、彼らは自分達のスタイルをキッチリと貫くことで想いを届けた。それは、ACIDMANというロックバンドが、リスナーに対して、そして自身の音楽に対して、どこまでも真摯であることの証明である。彼らはこれからも音楽を奏で続けて行く。まるで、命が巡り行くかのように。

【取材・文:山口哲生】
【撮影:TEPPEI】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル ACIDMAN

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リリース情報

ACIDMAN THE BEST BOX(初回限定盤)

ACIDMAN THE BEST BOX(初回限定盤)

2012年02月08日

EMIミュージックジャパン

01. 造花が笑う
02. アレグロ
03. 赤橙
04. 飛光
05. 静かなる嘘と調和
06. 波、白く
07. リピート
08. イコール
09. 水写
10. 廻る、巡る、その核へ
11. ある証明
12. 季節の灯
13. world symphony
14. スロウレイン
15. プリズムの夜
16. REMIND
17. UNFOLD
18. 式日
19. FREE STAR
20. I stand free
21. CARVE WITH THE SENSE
22. Under the rain
23. ファンタジア
24. HUM
25. DEAR FREEDOM
26. ALMA
27. 2145年

このアルバムを購入

セットリスト

  1. 今、透明か
  2. 造花が笑う
  3. CARVE WITH THE SENSE
  4. アイソトープ
  5. Returning
  6. FREE STAR
  7. イコール
  8. ファンタジア
  9. Dawn Chorus
  10. Slow View
  11. 水写
  12. 酸化空
  13. to live
  14. Ride the wave
  15. 赤橙
  16. リピート
  17. 2145年
  18. ALMA
  19. ある証明
  20. 飛光
  21. Your Song
ENCORE
  1. world symphony
  2. アレグロ
  3. 彩-SAIEN-
  4. 廻る、巡る、その核へ

お知らせ

■ライブ情報

ROCKS TOKYO 2012
2012/05/26(土)・27日(日)新木場 若洲公園
KESEN ROCK FESTIVAL’12
2012/07/22(日)種山ヶ原森林公園 種山ヶ原イベント広場

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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