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本質を鮮やかに示した、SEKAI NO OWARIの最新ツアーをレポート

SEKAI NO OWARI | 2012.05.22

 ステージ上にまず登場したのは、小さな白いロボット。昨年の武道館公演でも前説をしたOMC-1(声を担当しているのは山寺宏一。「OMC」とは、形がお餅に似ていることに由来する)だ。注意事項などを愛嬌たっぷりのトーンで語り、「いよいよロックショーの始まりです!」と開演を告げると、星空のような電飾が瞬いた。そして始まった1曲目は、「スターライトパレード」。オートチューンがかかった深瀬慧(Vo & G)の歌声が冒頭を飾り、煌びやかにバンドサウンドが躍動していく。2曲目「虹色の戦争」は、場内の熱気をさらに力強く加速。DJ LOVE(DJ)が腕を振り上げて煽ると観客はますます沸き立ち、曲の終盤では大合唱となったのであった。

 「天使と悪魔」までを一気に演奏すると、最初のインターバル。「今日は東京の最終日。俺たちも楽しむんで、みんなも楽しんでください。早速次の曲へ行こうと思います!」。DJ LOVEのMCを挟んで、すぐに「ファンタジー」が始まった。ハンドマイクでステージを巡りながら歌う深瀬。キレの良いフレーズを次々放つ中島真一(G & Sound Produce)。軽快なビートを叩き出すDJ LOVE。清楚な白い衣装を揺らしながらプレイする藤崎彩織(Pf)。4人は実に楽しそうであった――ここまでは開放的な雰囲気のナンバーが続いたが、次の曲からは趣きが変化した。4つ打ちのビートが響き渡る中、シェイクスピア、北野武、フロイト、スティーヴ・ジョブズなどによる「死」に関する言葉がスクリーンに映し出されたのだ。そして始まったのは「不死鳥」。柔らかな肌触りではあるが、死生観が静かに迫って来る。この曲と絶妙にリンクしながら、我々をさらなる思索へと誘ったのが「死の魔法」。壮大に高鳴るサウンドを、観客はじっくり受け止めていた。

 「僕らはみんな幼馴染。昨日は彩織ちゃんの話をしたから、今日はなかじん(中島)の話をしようかな。知り合ったのは小学生の時。ポケモンの話をしていて。中学になってからは、2人ともゆずが好きになって、一緒に公園で弾き語りをしていました」。深瀬が中島との思い出を語り始めた。高校を出てからは、曲作りをするようになった彼ら。多摩川の河川敷でレコーディングをしていたら、お巡りさんに職務質問されたというエピソードも飛び出し、観客の間から笑いが起きた。「ラップの曲を作りたいよね、と話し合ってできた曲を今日は持ってきました」。披露されたのは「Love the warz」。MCの和やかなムードが、曲が始まるや否や一気にシリアスなものへと切り替わった。そして、レーザーや映像を駆使しながら様々なメッセージを投げかけた「世界平和」「Never Ending World」が続いた。キャッチーさとシリアスな世界観をごく自然に行き来しながら表現するのがSEKAI NO OWARIの醍醐味であり、彼らが今回のツアータイトルとしても掲げている言葉「Entertainment」の本質であるということを、改めて実感させられるひと時であった。

 「去年、武道館をやることになった時に深瀬が『歌を作って歌いなよ』と。僕は凡人。『こんな人が何を歌えるのかな?』って考えたんだけど、僕に唯一歌えるのは『メンバー、スタッフ、みんなに会えて嬉しい』ってこと。そういうのを曲にしました」と語り、アコギを弾きながら歌われた中島のソロ曲「TONIGHT」。途中から深瀬がコーラス、タンバリン、鉄琴、藤崎がピアニカ、DJ LOVEがカホンで合流。4人の仲の良さが伝わってくる心温まる演奏であった。そして、ライブはいよいよ佳境へ。「白昼の夢」を皮切りに、新曲「生物学的幻想曲」、ノスタルジックで何処か和的なメロディが心地よい「花鳥風月」、観客が固唾を飲んで耳を傾けた「幻の命」……精緻なアンサンブルを堪能できる曲が演奏された。

 「ZEPP、まだまだ行けるよな? 悔いを残すんじゃねえぞ!」と、マイクを掴んでステージ前方へと飛び出し、我々を煽ったDJ LOVE。それを合図に「yume」へ。サビでは観客は激しいタテノリで踊り、頭上でクラップしながら応えた。そして本編のラストを飾ったのは「青い太陽」。深瀬が「歌える?」と問いかけてマイクを向けると、観客の歌声が場内いっぱいに響き渡った。

 アンコールを求める歓声と手拍子は、いつしか「スターライトパレード」の大合唱と化していった。4人はツアーグッズのタオルを掲げながら笑顔で再登場。中島は最前列の観客とタオルの引っ張りっこをして、大はしゃぎしていた。「ずっと気になっていたんだけど、あのLOVEがパッとしないんだよね(笑)」と、深瀬が真正面にいる観客を指差して笑った。たしかに、あまり出来が良いとは言えないLOVEのコスプレ姿……そんな微笑ましいやりとりを経て演奏へ。大量のシャボン玉が場内を飛び交い、エネルギッシュな手拍子を巻き起こした「眠り姫」。そしてラストを飾ったのは「インスタントラジオ」。ステージ上の彼らも、観客も完全燃焼した。

 ステージを後にした4人と入れ替わりにOMC-1が最後の挨拶を行い、エンディングVTRが上映された。スタッフクレジットが映し出され、最後に「総合演出 藤崎彩織」という文字が現れると、観客は賛辞の拍手を贈った。曲は勿論、CDジャケット、ミュージックビデオなどを含む、バンド活動に関する様々な部分をメンバー自身がプロデュースしているSEKAI NO OWARI。その魅力が隅々まで漲ったライブであった。

【取材・文:田中 大】
【撮影:上飯坂 一】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル SEKAI NO OWARI

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セットリスト

  1. スターライトパレード
  2. 虹色の戦争
  3. 天使と悪魔
  4. ファンタジー
  5. 不死鳥
  6. 死の魔法
  7. Love the warz
  8. 世界平和
  9. Never Ending World
  10. TONIGHT(中島ソロ / アコースティックバージョン)
  11. 白昼の夢
  12. 生物学的幻想曲
  13. 花鳥風月
  14. 幻の命
  15. yume
  16. 青い太陽
ENCORE
  1. 眠り姫
  2. インスタントラジオ

お知らせ

■ライブ情報

HALL TOUR 2012 「Entertainment」
2012/07/26(木)オリンパスホール八王子
2012/08/05(日)名古屋国際会議場センチュリーホール
2012/08/10(金)福井市文化会館
2012/08/12(日)広島上野学園ホール
2012/08/14(火)松山市総合コミュニティセンター(キャメリアホール)
2012/08/17(金)青森市民ホール
2012/08/19(日)札幌市教育文化会館(大ホール)
2012/08/22(水)新潟県民会館
2012/08/23(木)長野県・ホクト文化ホール(中ホール)
2012/08/28(火)神戸国際会館こくさいホール
2012/09/01(土)島根県民会館
2012/09/02(日)岡山市民会館
2012/09/08(土)石川県・本多の森ホール
2012/09/14(金)滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール(大ホール)
2012/09/16(日)なら100年会館 大ホール
2012/09/19(水)富山県民会館
2012/09/23(日)東京エレクトロンホール宮城
2012/09/26(水)大宮ソニックシティ 大ホール
2012/09/27(木)静岡市民文化会館 大ホール
2012/09/29(土)サンポートホール高松 大ホール
2012/09/30(日)高知市文化プラザ・かるぽーと
2012/10/04(木)長崎市公会堂
2012/10/06(土)福岡サンパレス
2012/10/08(月)神奈川県民ホール 大ホール
2012/10/10(水)市川市文化会館 大ホール

※その他ライブ情報・詳細はオフィシャルHPをご覧ください。

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