期待と熱気に包まれた、クリープハイプのツアー・ファイナル!
クリープハイプ | 2012.06.20
チケットが即日完売したという、クリープハイプの「つま先はその先へ」ツアー・ファイナル@赤坂ブリッツ。開演直前の会場は、その期待と熱気でいっぱい。メンバーが登場し、まずはボーカル&ギターの尾崎世界観がこう言った。「今日は6月9日、ロックの日と言われていますが、そんなの関係ないです。クリープハイプのツアー・ファイナルです。忘れられない一日にしましょう」。そんな宣誓と歓声の後に始まったライヴの1曲目は「愛の標識」。続けて、「愛は」「NE-TAXI」と畳み掛けると、1階フロアがグラグラと揺れるようなオーディエンスの熱狂が渦巻く。そのバンドサウンドや4人の佇まいは、しっかりとしたグルーヴを携えており、凛としたライヴ・パフォーマンスは実に頼もしく感じられた。それもそのはず、昨年あたりからジワジワと注目のニューカマーとして話題を集めてきたクリープハイプだが、バンドの結成は2001年。途中でメンバーが尾崎世界観だけになっても諦めずに続けてきた、そのキャリアと、執念にも似た覚悟が、音に、ステージに、あらわれていたように思う。「すごいですよ、この景色は。5年前の自分に真っ先に見せてやりたいなと思います」なんて尾崎のMCも感慨深い。
この日は最新アルバム『死ぬまで一生愛されてると思ってたよ』に収録された曲を中心に、インディーズ時代の曲も盛り込んだ、まさにこの場所まで辿り着いたクリープハイプの集大成的なセットリスト。しかも3~4曲ごとにMCを挟んで尾崎がお客さんの声を聞いては応え、コミュニケーションを取りながら進める。「こんなに雨が降ったのは誰のせいだ?」と、みんなに尋ねながらも、「グレーマンのせいだ!」と叫んで「グレーマンのせいにする」を演奏したり、そんな小さなことが会場の楽しい空気を作り上げていく。クリープハイプは鳴らす楽曲に対しても、それを聴いてくれるオーディエンスに対しても、とても丁寧な接し方をする奴らなんだ。たとえ楽曲の中で、どれだけみじめでやるせない感情や状況を歌っていたとしても、そこに込めた気持ちも、受け取る人の気持ちも、決して粗末に扱ったりはしていないから、心と心で、真っ直ぐに見つめ合うようなコミュニケーションが取れる。生きていく中で音楽に救いを求めたことがある者の、音楽への敬意が感じられる彼らのライヴは、観ていてとても気持ちがいい。
そんなロック・スピリッツが芯にあるからこそ、クリープハイプが鳴らしている音楽性って実は非常に豊かで自由。ファンキーなグルーヴもジャズのフレイバーなんかもところどころに織り交ぜながら、まるで民族音楽のようなメロディがクセになる「火まつり」、イントロから爽やかな「風にふかれて」、哀愁たっぷりに聴き手に訴えかける「ごめんなさい」と、1曲ごとに新鮮な表現力に心も体も踊る。終盤もヒリヒリとした尾崎のハイトーン・ヴォイスで心にこびりついた虚しさや孤独な夜をひっかくような「ABCDC」や、尾崎が「今日は家族が来てるんで!」と言ったにもかかわらず(笑)、オーディエンスがいつものように声を揃えて「セックスしよう!」と叫んだ「HE IS MINE」、「バンドを続けてて良かった」と本音を語って始まった「オレンジ」など、ハイライトが続いた。
そして迎えた本編ラストの「手と手」では彼らが全力で鳴らす音に、全力で応えるようなオーディエンスの熱気が混ざり合って、凄まじい一体感を生み出した。アンコールの「蜂蜜と風呂場」では、明るいイエローの照明に照らされて、みんなのジャンプ&ハンズクラップが輝いた。この曲がこんなにハッピーな景色を生み出すなんて!というような新鮮な驚きと感動が、そこにはあった。
このまま会場がどんどん大きくなって、お客さんが話しかける声が聞こえなくなったとしても、彼らが「その声を聞きたい」と、そして「この声を届けたい」という想いを忘れなければきっと、クリープハイプはこの素晴らしい景色を、更に素晴らしい景色に変えていくことが出来るだろう。そして、誰かがひとりで曲を聴いて心を重ねた時の、その寂しさや不安や行き詰まった感情は、こうしてたくさんのオーディエンスの前で鳴らされることで、幸せな光に包まれることが出来るんだってこと、もっとたくさんの人に経験して欲しいと思う。彼らにとっても、きっと大きな意味のあるツアーだったのだろう、最後は4人、ステージで照れくさそうに手を握り合って空に掲げた。
【取材・文:上野三樹】
【撮影:浜野 カズシ】
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リリース情報
セットリスト
- 愛の標識
- 愛は
- NE-TAXI
- バイト バイト バイト
- あの嫌いのうた
- リグレット
- チロルとポルノ
- グレーマンのせいにする
- 火まつり
- 風にふかれて
- ごめんなさい
- 左耳
- ABCDC
- SHE IS FINE
- オレンジ
- ウワノソラ
- 身も蓋もない水槽
- HE IS MINE
- イノチミジカシコイセヨオトメ
- 手と手
- 欠伸
- 蜂蜜と風呂場
お知らせ
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2012/7/2(月)渋谷O-EAST
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2012/7/5(木)名古屋CLUB QUATTRO
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2012/7/7(土)大阪・心斎橋 アメリカ村及び周辺13 会場
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2012/8/3(金),8/4(土),8/5(日) 国営ひたち海浜公園
※クリープハイプ出演日は8/5(日)になります。
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2012/08/8(水),8/8(木)新木場STUDIO COAST
※クリープハイプ出演日は8/8(水)になります。
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2012/8/10(金),8/11(土)石狩湾新港樽川ふ頭横野外特設ステージ
※クリープハイプ出演日は8/11(土)になります。
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2012/8/18(土),8/19(日)国営備北丘陵公園
※クリープハイプ出演日は8/19(日)オープニングアクト出演になります。
Re:mix 2012
2012/08/25(土)名古屋CLUB Diamond Hall/APOLLO THEATER
※2会場同時開催・出入自由
QUIET ROOM 2012 -晩夏の鐘-(尾崎世界観,弾き語りでの出演になります)
2012/8/30(木)ル テアトル銀座 by PARCO
SPACE SHOWER SWEET LOVE SHOWER 2012
2012/9/1(土),9/2(日)山中湖交流プラザ きらら
※クリープハイプ出演日は9/1(土)になります。
OTODAMA’11-’12〜音泉魂〜
2012/9/8(土),9/9(日)大阪・泉大津フェニックス
※クリープハイプ出演日は9/8(土)になります。
※その他ライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。