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GRAPEVINE、祝福のデビュー15周年ライブをレポート!

GRAPEVINE | 2012.10.08

 今年、デビュー15周年を迎えたGRAPEVINEが、NHKホールのステージに立つ。GRAPEVINEはオールスタンディングのライブが常だから、席に座ってバンドの登場を待つファンは、いい感じでざわついている。その中を田中和将(g/vo)、西川弘剛(g)、亀井亨(dr)、金戸覚(b)、高野勲(ky)の5人が満員の場内をゆっくり見渡しながら登場。田中が「こんばんはー!」と大声で挨拶する。
まず始まったのは、最新ミニアルバムの曲「MISOGI」だった。カウベルが刻むステディなビートを中心に、超タイトなリズムがいきなりホールを支配する。♪釈迦に説法♪とシャウトする田中のボーカルは、ちょうどいい力の抜き方なのに、3階席の後ろまで言葉を届かせる。まさに実力派の“余裕”というヤツだ。続く「YOROI」も『MISOGI』からの曲で、こちらは西川がシェイカーを振ったり、田中と高野がスティックを持ってシンバルを叩いたり、非常にパーカッシヴな演奏を披露。どうやら最近のGRAPEVINEは、よりリズムを重視するようになっているようだ。
15周年ということで久々に彼らのライブを観に来たオーディエンスに、バンドの近況を“音で知らせる”オープニングだった。そう、GRAPEVINEはこの15年間、ずっと進化を続けてきた。その歴史を今日、見届けようという意識が、自分の中で自然と高まっていく。さらには昨年リリースのアルバム『真昼のストレンジランド』からの「This town」で、見事なツインリード・ギターを聴かせてくれたのだった。

「こんなにたくさん来てくれて、ありがとう! 今日は僕らにまつわる人たちが、各地から駆けつけてくれました。特別な仕掛けはありません。ドシっとやりますから、最後まで楽しんでいってください」 と田中が上気して呼びかける。ここから、GRAPEVINEとのタイムスリップが始まった。 「Darlin’ from hell」など、GRAPEVINEの持ち味であるエネルギッシュなアンサンブルに反応して、オーディエンスは心からの拍手と歓声を贈る。一心にプレイするメンバーの音のひとつひとつを聴き逃すまいと、総立ちの観客は微動だにせず耳を傾ける。激しく身体を揺すったりはしないが、彼らの音楽愛に満ちた胸が、熱くなっているのがわかる。

 田中が笑顔で話し出す。
「ここで、ちょっとしゃべりますよ。9月19日にベスト盤が出ました。その日がデビュー日だったんだけど、早15年も経ってしまいました。今までベスト、出してなかった。今からGRAPEVINEを聴こうかと思ってる人は、たぶんTSUTAYAで途方に暮れてると思うんで、ベスト聴いてください……って、このベストしか聴かんヤツがぁ(笑)。投票してもらったみなさんに作っていただいたベストです。今日、ライブ聴いてて、曲がだんだん遡(さかのぼ)ってるのに気が付きました? この後も懐かしいヤツ、行きますよ!!」
『Best of GRAPEVINE 1997-2012』は2枚組で、30曲が収録されている。GRAPEVINEは1997年から変わっていないとも言えるし、2012年のGRAPEVINEは別物だとも言えるミラクルなベストだ。そのミラクルが今、目の前で演奏されている。
ことに感慨深かったのは、初期の名曲の一群だった。ミディアム・ロックの「スロウ」(99年)は、メロディが抜群。「涙と身体」(98年)は♪幾つの夜明け過ごしてきた?♪というリリックが、バンドの長い旅路を連想させてグッとくる。
 そしてデビュー曲「覚醒」(97年)は、バンドの原点が田中と西川のギター・アンサンブルにあることを痛感させてくれる。僕はこの曲をバンド好きな友達の車の中でたまたま聴かせてもらって、一発でGRAPEVINEが好きになったことを思い出していた。彼らの楽曲は、初めから完成度が高かった。またこの日の演奏は、当時よりグルーヴが大きく、重くなっていたことにも感激した。
「今の曲が、デビュー曲でした。あっ、もし腰が辛かったら、座ってもいいですよ。僕らと共に年を取ってるんですから(笑)。楽しいですね! 楽しいですか?」 ここからはガンガン飛ばしていく。「FLY」で高野は立ち上がってギターを弾き、「BREAKTHROUGH」で亀井はリムショットでビートに切れを加える。ひときわ歓声が高くなった人気曲「マダカレークッテナイデショー」で、金戸がベース・ソロを決める。
本編ラストは、傑作「光について」。キャンドルの灯りをイメージした照明が美しい。曲が進むにつれて、ステージはどんどん暗くなっていく。最後に真っ白なライトでステージがバッと明るく照らされて、終わった。まさに「光について」にふさわしい演出だった。

 アンコールで5人が戻ってくる。
「アンコール、サンキュー!! 僕たち、毎年、ツアーやってるんで、来てくださいね」と田中。おそらくアニバーサリー・ライブということで、久しぶりにNHKホールに足を運んだファンも多かったはずだ。常に“今のロック”としてアップデートしてきたGRAPEVINEを楽しんでほしいと願う田中の、素直な気持ちから出た言葉は説得力があった。
西川と高野がタムタムを叩く「鳩」で大いに盛り上がった後、知らない曲が始まった。もろにブルースをベイスにした「TIME IS ON YOUR BACK」だ。GRAPEVINEにしてはワイルドなロックに、会場は異様にエキサイトする。ブルーノート(ブルースで多用される、独特の歪んだ音階)が全編を貫く。
「今の曲は、デビュー前にタワーレコードでカセットで売ってたヤツです」と田中。GRAPEVINEはブルーノートの入ったメロディから、 ブルーノートなしの美メロに展開していくところに、他のJ-ROCKバンドにない個性がある。またそれを田中が独特のニュアンスで歌い切るとき、GRAPEVINEのサウンドが出現する。そんなバンドの“前段階”に出会えた貴重なアンコールとなった。それこそが、GRAPEVINEらしい“アニバーサリー・ライブ”だった。
この後、NHKホールがライブハウスと化すほどに、GRAPEVINEは激しい演奏を続けた。クールとホットを絶妙にブレンドしたGRAPEVINEを形成するファクターのすべてを味わい尽くせたライブだった。

【取材・文:平山雄一】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル GRAPEVINE

リリース情報

Best of GRAPEVINE 1997-2012

Best of GRAPEVINE 1997-2012

2012年09月19日

ポニーキャニオン

ディスク:1
1. 覚醒
2. 君を待つ間
3. 遠くの君へ
4. 会いにいく
5. ナツノヒカリ
6. リトル・ガール・トリートメント
7. Our Song
8. 望みの彼方
9. here
10. 白日
11. スロウ
12. アナザーワールド
13. 風待ち
14. 光について
15. Everyman,everywhere
ディスク:2
1. 真昼の子供たち
2. Glare
3. 放浪フリーク
4. Darlin’ from hell
5. RAKUEN
6. 小宇宙
7. CORE
8. GRAVEYARD
9. 指先
10. Silverado
11. エレウテリア
12. 豚の皿
13. 超える
14. 棘に毒
15. FLY

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セットリスト

GRAPEVINE 15th ANNIVERSARY LIVE
2012.9.26@NHKホール

  1. MISOGI
  2. YOROI
  3. スレドニ・ヴァシュター
  4. Glare
  5. This town
  6. 真昼の子供たち
  7. Darlin’ from hell
  8. smalltown,superhero
  9. 豚の皿
  10. アナザーワールド
  11. (All the young)Yellow
  12. スロウ
  13. 涙と身体
  14. 覚醒
  15. FLY
  16. BREAKTHROUGH
  17. マダカレークッテナイデショー
  18. CORE
  19. here
  20. 光について
ENCORE
  1. TIME IS ON YOUR BACK
  2. その未来
  3. 会いにいく
ENCORE2
  1. エレウテリア
  2. Everyman,everywhere

お知らせ

■ライブ情報
BOROFESTA2012
2012/10/20(土)~21日(日)京都KBSホール

A ZIG/ZAG SHOW
2012/10/26(金)渋谷duo Music Exchange
2012/10/28(日)心斎橋Music Club JANUS

NICO Touches the Walls
1125(イイニコ)の日ライブ

2012/11/25(日)横浜BLITZ

12/13 SHIBUYA-AX
2012/12/13(木)SHIBUYA-AX

THE SOLAR BUDOKAN
2012/12/20(木)日本武道館

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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