レビュー
GRAPEVINE | 2012.02.21
1997年にミニアルバム「覚醒」でシーンに登場し、今年でデビュー15周年を迎えるGRAPEVINEの「MISOGI EP」は、デビューと同じく“ミニアルバム”というフォーマットでリリースされた。ちなみに「MISOGI=禊」とは、穢れを払うためや、前に進むために、氷水や滝に打たれ、身を清める儀式のこと。アニバーサリー・イヤーにしっくりと来るタイトルだ。
1曲目の「MISOGI」は、骨太なロックンロール。ホーンセクションが鳴り響き、<オンザロード><インジエア><フォーザピープル>と、いかにもロックなワードが叫ばれる。そんな中に<檀那><説法>といった仏教用語が散りばめられ、皮肉めいた言葉遊びが光る、ロックのダイナミズムと田中和将(Vo.)のインテリジェンスが見事に融合した傑作だ。
ちなみに、今作の収録曲は「ONI」「SATORI」「ANATA」など、全てローマ字表記されたものばかり。タイトルから得られる情報量は極端に少なく、曲の背景が見えにくいのだが、逆にそこから様々な世界が広がっていく。そして、その曲達はどれもやりきれなさに満ちていて、どこか寂しげだ。居なくなってしまったものへの喪失感と孤独(「ANATA」)、外界の喧噪からの自己防衛と逃避(「YOROI」)、そして、“探していた答えや光も見失うのは、ここがエデンだから”と歌いながら、タイトルでそれを完全否定する「RAKUEN」など、世の中の矛盾や憤りをぶつけるわけではなく、ゆっくりと確実に暴き出す歌詞が、心に染み込む。「禊」をするのはバンド自身か、それとも世界か──そんな問いかけが聞こえてくる作品だ。
【 文:山口 哲生 】