PES、初のツアー“素敵なライブ”の東京公演をレポート
PES | 2012.12.08
RIP SLYMEのPESのソロ初ライブは、予想をはるかに超えるクオリティがあった。ポップな歌をヒップホップ・テイストのステージングで聴かせる手法は、まさにPESならではの楽しさで、新しい音楽エンターテイメントの誕生を予感さえさせるほど衝撃的な内容だった。
PESは今年5月にシングル「女神のKISS」でデビューして、10月にはフルアルバム『素敵なこと』を発表。すぐさまイベントに出演し、11月には初のツアー”素敵なライブ”を名古屋・大阪・東京で敢行。その注目のツアー最終日が赤坂BLITZというわけだ。
ソロのPESの音楽性の基盤にあるのは、80年代の“AOR”(アダルト・オリエンテッド・ロック)。山下達郎などに代表される、元祖J-POPといえる“大人が楽しめるロック”だ。ちょっと懐かしくて、オシャレなAORは、PESの世代のパーティ・ミュージックでもある。彼はRIP SLYMEの中核をなすソングライターなのだが、その“歌心”を全開にしたのが、“ソロの”PES”というわけだ。
期待の歓声が飛び交うBLITZのステージに、PESがCDジャケットのビジュアルで使われた猫のかぶりモノで登場すると、歓声が歓びの悲鳴に変わる。オーディエンスのハンドクラップをアオってからかぶりモノを脱いで、アコギを抱え、「ようこそ、素敵なライブへ」とひと言。「Say,hoo!」とさらにアオって、「素敵なこと、一緒にやろう!」と叫んで、間髪入れずアルバム・タイトル曲「素敵なこと」に突入。イントロでギタリストとドラマーが♪シャバラバラ シャバラバラ♪と楽しげなコーラスを付けると、それに続いてPESが歌い出す。それは大騒ぎのフロアを圧倒してよく通る歌声だった。
バックバンドは、レコーディングにも参加している4人。ベースはTotzan(とっつぁん)、ギターはヨースケ@HOME、ドラムは雅-MIYAVI-やフジファブリックのサポートで有名なBOBO、バンマス&キーボードはソウルフラワーユニオンの奥野真哉という腕達者たち。彼らが繰り出す極太のグルーヴに、PESは悠然と乗っかってフルスィングで歌いまくる。正直、ここまで歌えるとは思っていなかった(失礼!)。どんなライブになるのかドキドキしていたオーディエンスも、PESの圧倒的な歌声に完全に呑まれて、身体を揺らしながら聴いている。2曲目の「LOVE」が終わると、あっけに取られて一瞬シーンとなった後、爆発的な拍手が起こったのだった。
「どーもぉ、みなさん、PESでございます。帰ってまいりました、トーキョー! ただいま。去年の今頃、ソロをやることになりまして、生楽器で作りたいなと思って、ジュンスカの呼人先輩にプロデュースをお願いしてアルバムを作りました。しかも、ここに来てくれたみなさんのお陰でツアーもやれてることを感謝します。初めてのソロ・ライブなんで、こちら側もそちら側も、探り探りなことは否めない(笑)。ちょっと硬めのトークから、だんだん和らいでいくっていう。ま、出てきた時がピークだったねと言われないように、よろしくお願いします」。
このMCでフロアは一気に和む。そう、お客さんも緊張していたのだ。RIP SLYMEでのPESはMCとして大活躍しているが、ソロでは彼のもうひとつの顔、AORが大好きな“シンガーPES”として今、ステージにいる。“シンガーPES”がどんなライブをするのかは、誰も知らない。そんな不安をさっと解消するPESのしゃべりは、すぐに効果を現わして、続く「シーサイドラバーズ」では、会場中がコーラスを始めたのだった。
「はーい、“シーサイドなんちゃら”やったんですけど、どうですか? 今日はツアー3日目にして最終日。考えてみれば、2日目の大阪のライブの真ん中あたりが折り返しだったんだね。情報化時代だから、コンパクトにやらないと」と笑わせる。
PESのMCは、ラップで使う言葉に近いライトな感覚にあふれていて、面白い。次のナンバーはRIP SLYMEにはないボサノヴァ・タッチの「君のような誰か」だったのだが、まったりとした楽曲をライトなMCで紹介するのは、PESだけのオリジナリティだ。
一方で、ゲスト・ラッパー“Yalla Family”が入った「この夜は終わらない」でオーディエンスが大盛り上がりすると、「みなさん、こういうのは得意ですね。はい、1回目のヒップホップは終了です」とPESが会場をからかう。ヒップホップもJ-POPも大好きなことをわかってほしいPESの作戦がハマって、BLITZは“PESワールド”にみるみる染まっていった。
本編ラストはデビュー曲「女神のKISS」。「今日は本当に楽しかったです。自分がどんだけ愛されてるかわかったし。最後にPVに出てくれたオレの友人が出てくるんで、よろしく」とPESが言うと、ステージ上にはド派手なドラッグクイーンが二人登場して踊りまくり、会場は見事に“PES主催のパーティ”になったのだった。
右肩上がりのライブは、アンコールでついにピークを迎える。まずは「RIP SLYMEメドレー(黄昏サラウンド~One~楽園ベイベー)」が凄かった。特に生のリズムで聴く「楽園ベイベー」は、重く弾ける超ド級のグルーヴが炸裂。そのノリを引き継ぐように、DJ SOULJAH、WISE、Tarantulaが加わったソロ・オリジナル曲「パーティーはどこだ!」で会場は大合唱になり、早くもPESのライブの定番曲になりそうな貫禄があった。
そして最後の最後は、アルバムのラストに収められているしっとりとしたバラード「Sunday」。「自分は音楽でやっていけるのかな」と思い悩みながら坂道を歩いていた頃の気持ちを歌ったこのミディアム・ナンバーが、この日のPESのベスト・ボーカルとなった。
「やれる曲は全部やった。またこの5人のメンバーで面白おかしく、ツアー、やりたいなぁ。曲を作るのも、Tシャツ作るのも楽しいし。みんなで一緒に人生を楽しんでいきましょう! PESのライブでした。また会いましょう」。
本気で人生を楽しむPESの“友達とのパーティ”を、そのままライブにしたような2時間だった。それはハッピーでヤンチャなおとなが心底楽しめる、PESにしかできない斬新なエンターテイメントになっていた。
【撮影:井手康郎】
リリース情報
素敵なこと(初回限定盤)
2012年09月12日
ワーナーミュージック・ジャパン
1.素敵なこと
2.Change
3.LOVE
4.interlude
5.パーティーはどこだ!
6.Pleasure
7.シーサイドラバーズ
8.真夜中のレインボー
9.君のような誰か
10.あなた
11.女神のKISS
12.OK! MEXICO
13.Sunday
Disc-2
1.女神のKISS MUSIC VIDEO
2.女神のKISS (OFF SHOT)
3.シーサイドラバー / 真夜中のレインボー (2in1 MV MIX) MUSIC VIDEO
4.シーサイドラバー / 真夜中のレインボー (2in1 MV Mix) (OFF SHOT)
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セットリスト
PES SOLO TOUR ”素敵なライブ”
2012/11/17(土)@赤坂BLIZ
- 素敵なこと
- LOVE
- シーサイドラバーズ
- 真夜中のレインボー
- 君のような誰か
- あなた
- 夜灯人
- 南の風に誘われて
- Change
- OK!MEXICO
- この夜は終わらない
- Pleasure
- 女神のKISS ENCORE
- RIP SLYMEメドレー (黄昏サラウンド~One~楽園ベイベー)
- パーティーはどこだ!
- Sunday
お知らせ
COUNTDOWN JAPAN 12/13
2012/12/30(日)幕張メッセ
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。