かりゆし58、最新ミニアルバム「5」をリリースし、渋谷公会堂ライブを開催!
かりゆし58 | 2012.12.27
今回のツアータイトルの頭を飾っている「ハイサイ」なる言葉。沖縄の方言で、「こんにちは」「元気にしてる?」「調子はどう?」等の意味を持つ挨拶のひとつだ。"この言葉には、明るさと生命力、そしてバイタリティが詰まっているな…"と、耳にする度に思う。そして、まさにこの日の渋谷公会堂でのかりゆし58のステージは、その「ハイサイ」感に満ちたものだった。
彼らの最新ミニアルバム『5』は、非常に彼ららしいアルバムだった。ストレートで人間臭くて、ちょっと不器用で親しみ易い愛すべきキャラが曲毎に浮かび、それを伝えるサウンドは、これまで以上にダイナミズムに満ちており、より一層のスケールの大きさを感じた。そしてこの日は、そのミニアルバムからの楽曲たちも、ほぼ全曲披露。作品以上の大らかさとワイドさを伴って、時に直線的に、時に包み込むように、時に手渡しのプレゼントのように、時に傍らで歌われているように、我々の胸に届き、響いた。
これまでまるで沖縄に居るかのように場内に流れていた島唄の数々が止むと、それとは真逆の都会のクリスマスイブを思わせる賑やかで華やかな喧騒音が会場に流れ出す。スクリーン代わりのステージ幕に映るのは、クリスマスの街のイルミーション。"ああ、もうすぐクリスマスだな…"と温かい気持ちに浸っていると、突如、前川真悟(ボーカル&ベース)の力強い歌声が会場に響き渡る。そして幕にはメンバーたちのシルエットが。前川の歌声にアコギのイキイキとしたストロークが加わり、楽曲に更なる生命力が加わっていく。1曲目は「まっとーば」だ。幕がゆっくりと左右に開き、メンバーの姿が現れる。と同時に加わるガツンとしたバンドサウンド。まさしく「どストレート」なオープニングだ。真っ直ぐにブレず、刺さるように直接届いてくる歌とダイナミズムたっぷりな演奏。力強くも優しい歌が会場の隅々にまで染み渡っていく。続いてギターの新屋行裕による、メタリックなギターソロリフが会場に轟く。2曲目はメタルテイストたっぷりな「あいのりズム」だ。そのイントロに乗せ、「ハイサーイ。やりましょうか。遊びましょうか」と前川。会場を彼らの遊び場へと誘う。楽曲の本編に入ると、ギターの宮平直樹と新屋が左右に飛び散り、両サイドに用意されたお立ち台にてギターをプレイ。新作収録同様、ツインリードによるギターソロも披露し、ロックバンドかりゆし58を見せつける。続いて、レゲエの心地よさとサビでのストレートさのコントラストも気持ち良い「ノーグッバイ自分」、琉球旋律を交えた「夏草恋歌」と、ロックサウンドに様々な音楽性をブレンドした彼らの懐の深さとオリジナリティが連発される。
「一緒にいいライヴを作っていきましょう」との前川のMCの後は、「ゆい」「ナナ」「ただひとつだけ伝えたいこと」と、ゆったりとしつつ、彼らの出自やバックボーン、地元沖縄を感じさせる曲が続く。
中盤では、「せっかくのホールだからのんびりやるよ。みんなも椅子があるから座って聞いてよ」との前川の言葉の後、更なる奥深さとのんびりさを伴って、アコースティックスタイルのコーナーが展開される。このブロックでは4曲がプレイされたのだが、中でも光っていたのは、新作からの「あなたが好きだ」「また君に会いに」だった。温かい対話としみじみさが溢れた「あなたが好きだ」、心地よいレゲエのアイリーさに乗り、親愛さが会場に広がっていった「また君に会いに」は、この時のメゾッドも手伝い、より身近に感じられるものであった。
それらが終わると打って変わり、ロックバンドかりゆし58が再び現れる。疾走感のあるサウンドが会場中にコブシを生んだ「電照菊」、曲中のタオル大旋回の壮観さと「♪愛♪」のレスポンスが一体感を生んだ「愛と呼ぶ」、また、ドラム中村洋貴による、カウパンクノリのビートがブレイブ感を会場中に寄与した「南に舵を取れ」は、ステージと会場との距離を更に縮めるものであった。
ライヴもいよいよ後半。ここからはリスペクトに満ちながらも、ゆったりどっしりと伝えるべく歌が胸に響く。中でも、愛しい人が身近にいてくれる大切さを思い出させてくれた「愛なのでしょう」、母に向けての感謝の気持ちが、ステージを共に支えてくれる会場のファンに向けての手紙のようにも響いた「アンマー」、そして本編ラストの「証」では、「♪結んだ心は離れない♪」のメッセージがぐいっと会場中の気持ちをステージに引き寄せてくれた。
アンコールは1曲。充足感溢れる「オワリはじまり」が歌われた。歌い出しを会場の合唱に任せ、後にそのバトンをステージに戻すかのようなリレーションは、まさに一緒に歌を形成していった名場面の一つ。まことに感動的なシーンであった。「また一緒に遊ぼうね」と前川。その言葉と深々と頭を下げる挨拶を残し、彼らはステージを去った。
その後、終演を知らせるべく、この日のライブを振り返えらせてくれるように、ステージにはスタッフロールがゆっくりと映し出され、しばらく会場には大らかで心地良い雰囲気が残ったままだった。その映像が終わり、会場が明るくなると、入場時より明らかに元気になり、軽やかになっている自分を発見。"これぞ彼らのライヴならではの<活力>なんだろうな…"と、ライブを思い返しながら、その嬉しいエネルギーと共に私も帰路についた。
【取材・文:池田スカオ和宏】
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リリース情報
セットリスト
「ハイサイロード 冬がはじまるさぁー 南の国から2012」
2012.12.7 @ 渋谷公会堂
- まっとーばー
- あいのりズム
- ノーグッバイ自分
- 夏草恋歌
- ゆい
- ナナ
- ただひとつだけ伝えたいこと
- さよなら
- 言葉にできないこと 言葉がいらないとき
- あなたが好きだ
- また君に会いに
- 流星
- 電照菊
- 風まかせ
- 愛と呼ぶ
- 南に舵を取れ
- 恋人よ
- 愛なのでしょう
- アンマー
- 証
- オワリはじまり