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圧倒的な歌の力で包み込んだ、トータス松本in渋谷公会堂

トータス松本 | 2012.12.18

 全18曲2枚組というボリュームでリリースされたソロ第3弾アルバム「NEW FACE」を引っさげてのツアー。この日のライブは、アルバム同様「ロッケンロール」からのスタートとなった。客席はもう充分にヒートアップしているのだが、そこで煽らず、徐々に徐々にグルーヴさせていくようなバンドの音が会場を包んでいく。熱気ほとばしる大きな波が生まれたところで、Dr.池畑潤二の強靭なビートに導かれた2曲目「チェンジ」へ。お客さんの手拍子をガッチリ味方につけ、ガシガシと前進していく音そのものが目に見えそうな勢いだ。力強い幕開けの2曲からひと言挨拶を挟むと、トータス自身もギターを持って「マイウェイ ハイウェイ」?「ふたりでいたい」を披露。ここまでまだ4曲なのに「耳の中が汗でびちょびちょや(笑)」と、汗を拭いつつイヤモニを付けたり外したりしながらゆる?いMCを。本人いわく「今日は気合い入り過ぎてるからMCが空回りしてる」と言っていたが(笑)、客席との絶妙な距離感と間合いから広がる話題は尽きない様子だ。

「でも渋公は久しぶりやね。なんか嬉しいけど、ちょっと舞い上がるわ。ここ、好きなんですよ。独特の音の響きなんです。なんか音がバーンと派手じゃない?結構やってると気持ちが煽られるのよね」

 おもむろにアコギを持ちながら「季節外れだけど」と前置きして歌い始めた「プールサイド」、渾身の力で魂からの歌声を震わせた「ひとりになればわかること」、そして「愛してる(ウルフルズ)」とラブソングを3曲。トータス自身も「こういう曲をバンドでガツンとやると、曲の濃さがすごい。自分で書いた歌が、えらいエエ曲に聴こえますね(笑)」と語っていたが、たしかに、弾き語りなどのスタイルで削ぎ落としたものとはまた違う角度から、その曲が持っている芯の部分が押し出されているような印象だった。そんな素晴らしいサウンドを共に作り出しているメンバーを紹介し、曲は「わかってるやろ」。バンドのメンバーとお客さん、両者への照れ臭い思いを歌い飛ばすかのような晴れやかな表情だ。

「あぁ、スッキリした(笑)。みんなも今日はいろんなもん捨てて、スッキリさせて帰ってね。俺ももう全部吐き出すから。じゃあ、この頃すごく思うことを歌います。自分を支えてくれるいろんな人に対して思うこと、歌います」

 静かなオルガンの音色に呼吸を合わせて歌い始めたのは、「生まれ変わっても」。決意と感謝と深い愛を伝える言葉が、真っ直ぐ胸に響く。上手いとかきれいとかじゃない、そんなことをはるかに上回る「本気」を重ねたハーモニーが、この曲の素晴らしさをより熱っぽく伝えてくれていた。

 ライブもちょうど半ばの「バババーン」。衣装チェンジをし、カラフルなスポンジ銃のようなものを手に現れ撃ちまくる(タマには全部サイン入り!)。フロントでオーディエンスを沸かすトータスに気をとられがちだったが、この曲を演奏するメンバーのグルーヴがまたとんでもなく素晴らしかった。トータスが登場してくるまでのセッションがそのまま高まっていった感じで、まさにライブならではの醍醐味。この日コーラスの面でも大きくトータスを支えてきた元ROCK’A’TRENCHのG.豊田ヒロユキはここでも抜群の仕事っぷりを発揮していた。

 「いつもの道をゆく」、「無我夢中」、「ブランコ」と、飾らない言葉で素直な気持ちを伝える歌詞をじっくり歌い上げた3曲を経て、ライブはいよいよ後半戦へ。代表曲であり、名曲である「明星」や「バンザイ?好きでよかった?(ウルフルズ)」などおなじみの曲に加え、MCでは客席からのリクエストに応える形でサム・クックの「TWISTIN’ THE NIGHT AWAY」をアカペラで披露。「愛がなくちゃ?STARS」のメドレー、「笑ってみ」で会場中を笑顔にし、「若い頃と何も変わってない。このままの気持ちで行ったらエエんちゃうかなと思って書いた曲」だという「東京ニューフェイス」で本編は幕を閉じた。

 燕尾服にジーンズで現れたアンコールでは、「大阪のオッサンブギ」で等身大…というか「そのまんまトータス松本」人形が登場(笑)。あまりのリアルさに一瞬どよめいたが、2人(!?)並んで歌う姿はかなり見応えありました(笑)。「これで終わるわけにはいかないんで(笑)」ということでラストはもちろん「ガッツだぜ!!(ウルフルズ)」。この時目にしたのは最後を締め括る盛り上がりではなく、なんだか、今夜彼の歌から貰った次なるエネルギーが動き出した景色のような気がした。トータス松本のツアー2日目、渋谷公会堂。本当に清々しくて、楽しくて、気持ちがスカッと晴れ渡る素晴らしいライブだった。

【取材・文:山田邦子】
【撮影:HAYATO (Leggera)】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル トータス松本

リリース情報

NEW FACE(初回限定盤)

NEW FACE(初回限定盤)

2012年08月22日

ワーナーミュージック・ジャパン

ディスク:1
1. ロッケンロール
2. 笑ってみ(ドラマJoker<ジョーカー>ドラマ東野圭吾シリーズ“笑"主題歌)
3. チェンジ
4. 好きだと言え
5. プールサイド
6. 大阪のオッサンブギ
7. 知りたーい
8. 東京ニューフェイス
9. 生まれ変わっても
ディスク:2
1. わかってるやろ
2. いつもの道をゆく
3. バババーン
4. あっというまっ!
5. ふたりでいたい
6. 無我夢中(NHK「ロボコン2012」テーマソング)
7. ひとりになればわかること
8. ブランコ(ドラマ「ステップファザー・ステップ」主題歌)
9. STARS(フジテレビ系 ロンドン五輪中継 テーマソング)
ディスク:3
1. 明星
2. てんてこまい my mind
3. あの娘に会いたい
4. すっとばす
5. マイウェイ ハイウェイ

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お知らせ

■ライブ情報

FM Nagasaki Thanks 30th トータス松本 秦 基博 SPECIAL LIVE
2013/02/13(水)長崎市公会堂

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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