トータスが信じさせてくれたマイウェイ ハイウェイの先
トータス松本 | 2010.12.29
トータス松本
「ツアー2010 マイウェイ ハイウェイ」
@渋谷C.C.Lemonホール2010.12.14(Tue)
今振り返ると、トータス松本の1stソロアルバム『FIRST』は、ウルフルズとの現行活動との並行制作だったこともあり、どこか、<あえてウルフルズとは違うことを演ろう>という気概に満ちていた気がする。<ウルフルズのトータス松本>と<ソロアーティスト・トータス松本>との違いを必要以上にアピールしていたと言うか…。しかし、2010年秋に届けられた彼の2ndソロアルバム『マイウェイ ハイウェイ』は、それとは多少違った趣きを擁していた。
前述の違いをキチンと示しつつも、どの曲もより豪気になり、よりスッキリしたというか。前作でも自身の好きな音楽性や自分のルーツに根差し、自身のオリジナリティをそこにキチンとブレンドしてはいたが、よりその精度を上げ、それらが自然に伸び伸び出来ていた気がした。そう、より心や気持ちから発している<トータス松本の音楽>がそこでは鳴らされているように映った。
そして、今回の『ハイウェイ マイウェイ ツアー』は、そんなニューアルバムの曲を全曲演ってくれ、僕のそのおぼろげさを確信に変えてくれた。
黄色い緞帳(どんちょう)には、トータスの顔のドアップが。客電が落ち、ニューアルバム1曲目の「ドラゴンパレス」のSEが始まると、、緞帳を突き破り、枕を抱えたパジャマ姿のトータスが「遅刻!遅刻!」と言わんばかりに飛び出してきた。客席からの手拍子の中、パンツ姿のサービスも交え(笑)、そのパジャマからピンクのコンポラスーツに着替え始める。同曲が終わるタイミングで緞帳もアップ。そのまま「マイウェイ ハイウェイ」をギターを弾きながら歌い始めた。アメリカ南部臭のするア―シ―で乾いた力強いサウンドの上、【どこまでもこのハイウェイは続き、最後まで全力でまっすぐ走るゼ。一緒についてきてくれ】といわんばかりの歌に、会場も同乗する。そして、マラカスをシェイクし歌った「あいたい人は誰?」では、歌声もソウルフルに白熱。スリリングでダイナミックなサウンドが会場を70sへと惹き込む。
「最後まで踊って、腹をへらして帰って下さい」とは最初の彼のMC。続いて、オルガンを基調にしたスイートなソウルバラード「夢ならさめないで」、バックの「TORTOISE」の電飾も光り、サックスのメローなブロ―と共に、愛しい人の顔をみんなが思い起こした「いつもの笑顔で」と立て続けのミディアムバラードが場内をうっとりさせる。
ここで本格的なMCが。今日が2Daysの初日でなんだかソワソワしたこと。この日が開演10分押した理由を語りながら、日本のコンサートは開演時間が早いことをぼやく。
ライヴに戻ると、ハーモニカホルダーとアコギを持ち、ブルージーな雰囲気が会場を包んだ、カントリーmeetsブルースな「よしゃいいのに」、2管のサックスが加わり、ニューオリンズサウンドが会場をほんわかさせた「何をやってもケチがつく」が歌われる。
ここからはカバー2連発。まずは、サム・クックの「Twisting The Night Away」、アクションまでも本人を模して歌ったオーティス・レディングの「I Can t Turn You Loose」が歌われる。
ステージへの男性からの声援も増えたかな...?なんて思っていた矢先、MCでトータスも照れ臭そうにそれについて言及する。それを受け、客席からも調子に乗った男性ファン陣から、ハート交じりの声援がトータスへ飛ぶ(笑)。エンタテインメントなショーを完徹しながらも、このようなフレンドリーさとアットホーム観を与えてくれるところは彼ならではだ。
続いては、ミディアムなバラードの「どれだけの朝と夜を~シュアリ―・サムデイ~」、男性は憧れ、女性はこんな男性に...と想いを馳せさせた男気と不器用さの同居が会場を熱くさせた「サムライソウル」、反面、切ない想いを会場いっぱいに広げた「僕は海じゃない」、スライドギターとストリングスの音色が雄大さを醸し出し、ファンタスティックな世界に会場中を誘った「ポーチライト」と、ミディアムでしっとりとしたナンバーが連発される。そして、続く「クリア!」では場内も大合唱。どこもかしこも笑顔で呼応している。そして、「ガッツだぜ!!」が飛び出すと、会場もひときわ驚喜。ストレートで伸びやかな楽曲が会場に更なる活気を生む。本編ラストは、ステージも客席も、お互いのアイデンティティを再確認するように歌われた「明星」。「何もかも 間違いじゃない 何もかも ムダじゃない」の言葉が会場中を鼓舞した。
ここからはアンコール。まずはアコギ1本で「No Way」、バンドも加わり、果てしない感動を会場いっぱいに広げた「ミュージック」が歌われる。そして、「イェーイ、君に会えてよかった」の名歌い出しに会場が驚喜。もちろんの大合唱を生んだ「バンザイ?好きでよかった?」。そして、「これからも俺に『歌え!』と念じてくれ。それが強ければ、強いほど俺は歌い続けていく。歌のことは俺に任せてくれ」と力強いマニュフェストと、会場中がその言葉を信じ、ラストのソウルバラード「ハッピーアワー」が会場に大合唱を生む。
「まっすぐ行け!その先に必ずハッピーがあるから」と最後に伝えたトータス。彼のエネルギーとパワー、そしてバイタリティは、会場中に自身のマイウェイ ハイウェイの先に、キチンとハッピーが待っていることを強く信じさせてくれた。分ったよ、トータス。僕も自分の信念を貫き、このまま真っ直ぐ自身のマイウェイ ハイウェイを進んでみるよ」。そんなことを心に固く誓わせてくれたコンサートであった。
【 取材・文 :池田スカオ和宏 】
リリース情報
セットリスト
- ドラゴンパレス
- マイウェイ ハイウェイ
- あいたい人は誰 ?
- 夢ならさめないで
- いつもの笑顔で
- よしゃいいのに
- 何をやってもケチがつく
- Twisting The Night Away(サム・クックのカバー)
- ICan't Turn You Loose(オーティス・レディングのカバー)
- どれだけの朝と夜を~シュアリ―・サムデイ~
- サムライソウル
- 僕は海じゃない
- ポーチライト
- クリア!
- ガッツだぜ!!
- ストレイト
- 明星 Encore
- No Way
- ミュージック
- バンザイ~好きでよかった~
- ハッピーアワー 0l>