全国各地で、今夏の最高気温を記録した週末。

　VAMPSが、猛暑と豪雨を吹き飛ばす、爽快で熱い光景を作り上げた。

　8月10日＆11日の2日間に渡り、山梨県・山中湖きららで開催された「VAMPS LIVE 2013 BEAST PARTY」。両日ともに、1万人を動員する盛大なパーティーとなった。

　1日目。日中の暑さが、まだ猛威をふるう17時30分。ライヴはスタートした。

　オープニングでは、HYDEとK.A.Zが左右のステージ脇から、4輪のバギーカーで登場。最前列の観客の前を走り、そのままステージへ。ステージ中央から客席へ伸びるランウェイに姿を現したHYDEは大歓声を送る観客に、ヴァンピース（手で作ったピースを裏返しにしたジェスチャー。VAMPSライヴのレスポンスサイン）を掲げて見せ、「HELLO」で、サビを観客に歌わせた。突然マイクを向けられたにも関わらず、大合唱でレスポンスする観衆。パーティーは、最初からエンディングのような大盛り上がりとなった。

　中盤。一旦、ステージを後にしたVAMPS。再び姿を現したのはHYDEとキーボードのJIN。ランウェイの先端で「少年時代」（井上陽水のカバー）を、ピアノの弾き語りで、しっとりと聴かせた。曲のエンディングでは、HYDEがマイクごしに“Chu”とキスを飛ばす。うっとり聞き入っていた観客から、黄色い歓声があがった。K.A.Zを含め、他のメンバー達もステージに戻ってくる。リラックスしたムードで、まるで友達とおしゃべりするようなＭＣが続いた後は、「皆の好きな曲を夏っぽくしてみました」というHYDEの言葉から「MEMORIES」のボサノヴァ・バージョンなど、4曲をアコースティックアレンジで聴かせた。

　夜が来た。7月に発売された、彼ら初のダブルＡサイドシングル「REPLAY」、よりダンサブルに生まれ変わったファンキーナンバー 「TROUBLE」、大幅にアレンジを変えてさらにダイナミックなアンセムソングになった「REVOLUTION Ⅱ」と、立て続けにキラーチューンを放つ。笑顔で狂喜乱舞する観客も含め、VAMPSの本領が発揮された絶景が繰り広げられた。

　ゲスト登場。VAMPSのもうひとつのレギュラーパーティー、HALLOWEEN PARTYの常連・DAIGOとSHINPEIとともに「GLAMAROUS SKY」。スペイシーでど派手な衣装（懐かしきDAIGO☆STARDUSTのコスチューム）で登場したDAIGOは、両腕を垂直に広げるとカラフルな星が出てくるというマントを効果的に使い、HYDEとK.A.Zのアクションを盛り上げる。観客も大爆笑しながら、思いっきり踊っていた。全20曲が終わると、ステージ後方に花火が上がった。

　2日目。昼過ぎから山の向うで轟いていた雷鳴が、近づいてきていた。15時過ぎ。山中湖きらら周辺は、豪雨になった。開場直前。雨は上がった。 ステージから客席を眺め、その後方にある山々。その山の麓には、うっすらと虹が出ていた。

　17時30分。VAMPSのデビューシングル「LOVE ADDICT」で、2日目のライヴは幕を上げた。「はっちゃけようぜ」と、3曲目 「HUNTING」へ。HYDEはランウェイで、観客に向かい放水する。スクリーンに交互にアップになるHYDEとK.A.Z。両方とも、昨日に引き続き、満面の笑顔だ。5曲、一気に畳みかけた後、K.A.Zがマイクをとった。

「こんにちは?。さっきまですごく雨が降っていたけど、どこに避難してたの？」と挨拶。あっちこっちから思い思いのレスポンス。K.A.Zが、言葉を締め括った。

「今日は思いっ切り暴れて楽しんで行ってください。夏の思い出になるようなライヴにしたいと思うけど、そのためには、皆の協力が必要だからよろしく」

　７曲目。ニューシングル「ＡＨＥＡＤ」。K.A.Zのシャープなギターのカッティングがスピード感につながるハードなナンバーに、観客は足元の濡れた芝生も気にせず、ジャンプを繰り返した。

　中盤では1日目と同様、ランウェイの先端でアコースティックコーナーを披露。1万人の観客とゆるりと夏の夕暮れを楽しむ。HYDEとJINの弾き語りでは、矢沢永吉の「時間よ止まれ」を歌った。

　ステージが、山中湖が、会場が闇に沈んでいく。

　真っ赤に光るステージ。上半身をむき出しにして、HYDEが叫ぶ。「夜は任せろ！」と「REPLAY」など、ライヴでお馴染みのラウドなナンバーを容赦なく叩きつけていく。アコースティックコーナーの時のフレンドリーな雰囲気とは一転、猛獣が牙を剥いたような迫力だった。「REVOLUTION Ⅱ」が終わったところで、ちょっと長めのＭＣ。9月25日に発売される彼ら初のベスト盤『SEX BLOOD ROCK N’ ROLL』をひっさげての海外ツアーが控えていることに触れると、会場から大きな拍手。さらに「ハロウィン、今年もやりまっせ」と告げると歓声があがった。楽曲に対してはもちろん、自分達のリアクションに、敏感にいろいろな反応を示す観客たちへ向かって、HYDEがこんな一言を。

「みんな敏感で嬉しい。（お互いの）息が合うよね。きっとS●Xすると気持ちいいね」

　嬌声に近い歓声が、次のひとことで、この日、いちばんの大歓声に変わった。

「今日は、僕の友達のギターのうまい人が来てるから、ちょっと出てもらっていいですか」

　登場したのは、L’Ａrc?en?Cielのken。VAMPSとともに、L’Arc?en?Cielの「I’m so happy」をプレイ。ファンに根強い人気の1曲だけに、観客、大喜び。泣き出す女の子もいた。嬉しきかな、HYDEの「もう1曲いっていいですか？　kenさん」という言葉に大声で「大丈夫でーす！」と答えるken。その直後に「おっぱい揺らせ！」と絶叫し、観客を煽る。爆笑しながら大きくレスポンスする観衆。HYDEがステージ中央で歌い出す。「HONEY」。１万人全員が、歌い出しだけで何の曲かわかる。日本の一時代を代表するロックチューンに、観客が一斉にはじけた。

　kenをステージから送り出した後、HYDEの「さあ、最後に暴れようぜ」という言葉で最後の曲「SEX BLOOD ROCK N’ ROLL」へ。ランウェイに走り出すK.A.Z。途中、ギターを背中の方に放り出し、上半身をぐるりと回し、元のポジションに戻すというアクション。K.A.Zのお馴染みのアクションに、ランウェイ前の観客が、一斉に万歳した。

「また帰ってくるから！　首洗って待ってろよ！　ありがとう！」

　HYDEのこの言葉で、VAMPSのこの夏のパーティーは終わった。パーティーの終わりを告げる花火が、夜空をカラフルに彩り、静かに闇に溶けていった。

　2008年にファーストシングル「LOVE ADDICT」をリリースしたVAMPS。HYDEの“オールスタンディング形式のライヴがしたい”という思いから、その活動の中心には、いつもライヴが あった。初のZEPP籠城型ツアーをスタートさせたのが2008年夏。2009年夏は、初めて単独で野外ライヴを行った。場所はユニバーサル・スタジオ・ジャパンだった。2010年の夏は、富士急コニファー・フォレスト。2012年夏には、愛知県蒲郡市のラグーナビーチに特設ステージを設置。海原を臨みながらのライヴとなった。そして2013年の夏は、前述したとおり。

　VAMPSのライヴには、いつも挑戦があったと思う。何が挑戦だったのか。もちろん、自分達と最小限のスタッフだけでライヴを作り上げていったのもそうだ。この挑戦は、もっとバージョンアップすることを目的に、今でも続いている。しかしながら、それ以外にも、大きな挑戦があった。

　ファンとの関係性だ。HYDEは、VAMPSをスタートさせてしばらくした頃、よくこんなことを言っていた。

「ライヴに来るだけじゃなくて、ライヴの日、1日楽しめるような場所を作りたい。仕事や学校を休んで、せっかく来てくれるんだから、ライヴ以外でも、もっと楽しんで欲しいと思うから」

　この思いが、これまでいろんなアイデアを生んできた。そして、この豊富なアイデアと、これまでの野外ライヴの経験がつながり、ひとつの形になったのが、今回の「VAMPS LIVE 2013 BEAST PARTY」だったと思う。

　これまでの夏の野外シリーズは、“VAMPS主催の真夏の野外イベント”という印象が強かったが、今年は“VAMPS主催の夏フェス”になっていた。

　観客を1日楽しませたいという思いから生まれた、ホスピタリティー。本人たちが、観客を熟知しているからこそ、共に作り上げることができた環境 もムードも、間違いなくVAMPSのオリジナルだと思ったし、そこには他のフェスとはまた違った居心地の良さがあった。

　自分達と観客が一緒に楽しめる、最高の空間を作る。

VAMPSの挑戦は、これからも続いていく。この挑戦は、海外ファーストアルバムとなる盤『SEX BLOOD ROCK N’ ROLL』とともに、この秋、海を渡る。

【取材・文：伊藤亜希】
【撮影：田中和子、岡田貴之】